デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

ビットコインのトレードオフ: デジタル経済Newsletter_8/1

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※このブログは8/1 8:00AMに書きました。ビットコインに関する情報は流動的なので個人の責任での運用を宜しくお願いします。

 

今夜HFでBitcoin Cashが生まれる公算が高い。コア開発者と対立しているマイナーのJihan WuらがBitcoin Cashとして外に出る。JihanはAsic BoostやAnt Bleedなどの不品行を働いていたみたいなので、彼のアウトはビットコインにとってはかなり調子がいいだろう。SegWit実装以降のレイヤー2の開発、実装に望みを託せそうだ。

先週のデジガレのNCCでもビットコインコア開発者はレイヤー2への期待と、安全性を最重視した開発・実装プロセスをすすめることを主張していた。

ただしスケーラビリティ論争が終わったわけではない。スケールとセキュリティ、非中央集権型のデジタルマネーとしての独立性などは複雑なトレードオフの関係になっているようだ。世界通貨的なポジション、VISAを超える処理能力などを思い描くグループ(金融業界出身者、ビジネスに多い)がいる一方で、セキュリティと独立性を重んじるグループ(開発者や熱狂的なユーザに多い)もいる。また同様の対立は起こりうるだろう。

新しいコインを作るよりも、ビットコインからハードフォークする経済合理性が勝るので、今後も似たようなことが起きるはずだ。何しろステークホルダーの熱量は高いのだ。

モバイル動画がデスクトップ動画を超える: デジタル経済Newsletter_7/28

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来年米国ではモバイル動画広告費がデスクトップ動画広告費を超えるとZenithが予測した。様々な動画配信プラットフォームでモバイル利用がマジョリティであると言われていて、予算計上の都合、統計を見てからの意思決定などで広告費の上昇が遅れて追いかけてきていると見るのが妥当だろう。

  • 家の中でのWi-Fi利用は定着している。デスクトップ・ラップトップではなくタブレットスマートフォンを利用するケースが増えている
  • 高容量のデータ通信パッケージが発達しつつある

ネットフリックスのQ2発表があり1億サブスクライバを超えたとある。予想以上にユーザはスマホのスクリーンでネットフリックスを利用しているとQ2資料は言っている。

動画が商業インターネットのトラフィックに占める割合は拡大の一途。今朝DIGIDAYの記事にもしたが、動画とコマースの組み合わせなど動画を視聴して「消費」するというやり方の外に拡大・融合する傾向が強い。

https://ir.netflix.com/events.cfm

https://www.recode.net/platform/amp/2017/7/17/15981376/mobile-video-consumption-25-percent-in-2018-online-video-peaks

ソフトバンクのIoT戦略はどの程度成功するか: デジタル経済Newsletter_7/24

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先週末、ソフトバンクの年次イベントで孫正義が講演している。この記事で説明しているように孫のAI / IoT投資は半端がない。孫氏はデータこそが21世紀の石油と語っている。それで The Economist  のこの記事を思い出した。おそらく巨大企業のエグゼクティブ層にデータが最も価値の高い資源だと伝えることに成功したのがこの記事なのだろう。

www.economist.com

私の知っているシニアも喜々としてこの記事を上げていたが、少し意地悪を言えば、この記事はThe Economistの特集記事のかなり前のページに置かれている要約版であり、本編ではないのである。本編も読んだがまあ当たり前の内容がかかれている(当たり前の内容を書くことも大事だ!)。

以下の部分は失敗を恐れてはいけないことを教えてくれる。日本社会で育ち暮らしていると、どうしても失敗を恐れる心が生まれてしまう。失敗を恐れることが最も大きな失敗だ。

実はスプリントに投資して、すでにソフトバンク複利でですよ、複利で毎年48パーセントのリターンを得ているのが実績なのであります。スーパーセルも97パーセントの複利でのリターン。投資した資本に対してリターンを得ている。 つまり、これは我々が単に1回打席に立って1回ヒットを打ったというのではなくて、意図して、考えて、戦略的に何回も打席に立った。空振りもしました。たくさん失敗もしましたけれども、ヒットのほうが大きかったことを意味しているわけです。

孫正義「人間の知能はもっと拡張される」情報革命がもたらすパラダイムシフトとは? - ログミー

しかし我々は、同じ志を持っている起業家たちと、テクノロジー、そこに資金を集めて、同志的結合、志をともにする仲間たちと一緒に革命を起こそうと考えているわけです。

孫正義「革命は力を持たない人々が成せるもの」10兆円ファンドで“情報革命のジェントレ”を目指す - ログミー

ARM、Didi Chuxing、NVIDIA、OneWebなど同社のIoTアームがどういう未来を描くか興味深い。日本自体はこのアグレッシブな投資を高い通信費、端末費を払いながら支えるだけなのは少し悲しいが。

想像し計画する人工知能: : デジタル経済Newsletter_7/21


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Deepmindが2本の論文を発表して、その内容をブログに完結にまとめてくれている。「想像し、計画するエージェント」を紹介している。汎用人工知能(AGI)の創造をビジョンにする同社らしい研究だ。

ブログを抄訳する。

  • エージェントは自らの中で行ったシミュレーションを解釈することを学習する。これはエージェントに環境のダイナミクスを把握するモデルを使うことを許容する。把握されたダイナミクスは必ずしも正しくないが。彼らは想像を効率的に使う。
  • 想像されたいくつもの道筋、問題を解くためにその事象と適合させる。効率性はエンコーダによって強化される。エンコーダは報酬を無視して想像から追加情報を算定する。道筋(報酬)が高い報酬をもたらさなくとも、有用な情報を含むだろう。エージェントは計画を構築するための様々な戦略を学習できる。
  • あるいはエージェントは、正確性とコンピューティングコストの異なるモデルを同時に学習できる。
  • これは広範な種類の効果的な戦略策定を提供する。一つのものをすべてに適用するアプローチに制約を受け、不完全な環境への適応性が限定されかねないということではなく。

メッシがミリセカンドで相手DFの動きを見て、シミュレーションを繰り返し、DFを抜くというようなことを実現しようとしている。報酬に必ずしも引っ張られないのが、強化学習の進化を伺える。

これをビデオゲームで試行していい結果を得たという。もちろん生物が置かれている環境はもっともっと複雑だ。スポーツをしていていいプレイをするとアドレナリンがどっと出る。それはやはり解いている問題が難しいことと関係している気もする。そういうアドレナリンという報酬が設定されていることこそ、今後人間が重点的に注力するべきところだと思う。

デミス・ハサビスCEOはより脳神経学における人間の脳のメカニズムの解明が人工知能開発の要諦だと話している。

https://deepmind.com/blog/agents-imagine-and-plan/

https://www.theverge.com/2017/7/19/15998610/ai-neuroscience-machine-learning-deepmind-demis-hassabis-interview

 

 

量子コンピューティングの足音: デジタル経済Newsletter_7/20


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今日は米有名VC「a16z」のポッドキャストから量子コンピューティングの話。

最近は人工知能開発でGPUはスタンダードになりつつある。「謎の半導体メーカー」で有名になったNVIDIAはAI特化型チップに多大な投資をしていて、この領域の独占を試みている。NVIDIAディープラーニングのライブラリを整備しており自動運転者や医療に急速な成長を見込んでいる。GoogleはTPUという人工知能の学習にフォーカスしたチップを開発し、同社の人工知能ライブラリとクラウド人工知能を水や電気のように人々に提供するビジョンをもっている。

GPUは画像処理向けで発達し機械学習への利用可能性で世界が広がった。TPUは当初から機械学習向けに開発されている。しかし、量子コンピューティングは次元が全く異なるという。

従来の高性能コンピューターの1億倍のスピードが確認されたことで、世界に衝撃を与えた。演算能力は「組み合わせ最適化問題」という膨大なデータ処理で、大きな威力を発揮する。そしてこの「組み合わせ最適化問題」を解く力は、現代のさまざまな科学に応用可能であり、数百年解けないと言われる問題を解けるようになるかもしれない。

クラウドの形で量子コンピューティングを利用できるようになるかもしれない。アプリケーションが生まれて「キラーアップは何だろう」と議論されることになるだろう。量子コンピューティングのマシンの内部は冷凍庫で超電導状態になっている。これはマイクロプロセッサ中心で発展してきたコンピューティングとは別物。

これはラスボス的な存在だ。あらゆる事象を一気に進展させる劇薬のようなものだ。世界がスマートなところに変わっていくことに使われればいいと思う。

Listen to a16z Podcast: The Cloud Atlas to Real Quantum Computing by a16z #np on #SoundCloud
https://soundcloud.com/a16z/engineering-quantum-computing-today

 

自分で自分に教える人工知能: デジタル経済Newsletter_7/14

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最も気になるニュースはDeepMindの研究者らが「自分で自分を教える人工知能」に関する論文を発表したことだ。DeepMindの人工知能が歩き方を教えている。

深層強化学習の応用で、A地点からB地点に動くことに報酬が設定されている。失敗を繰り返すが、それが学習の助けになる。

仮想のセンサーを搭載されたモデルが「前に進め」という命令を受けて動く。モデルは仮想空間上に表現された障害物や、与えられる妨害を交わして前に進んでいく。

何らかの状況が存在し、その解くべき方向がわかれば、あとはAIに投げると学習を繰り返して、その問題をクリアする、こういう未来を想像してしまう。人間のとっているアプローチとは異なる方法でたどり着いていると思われるので、われわれが知らない何かをニューラルネットワークは知っているのかもしれない。

この論文はかなりヘビーなのであとで読もう。

Emergence of Locomotion Behaviours
in Rich Environments

https://arxiv.org/pdf/1707.02286.pdf

 

www.youtube.com

DeepMindはカナダ・エドモントンに最初の海外AIオフィスを開設した。DeepMindはエドモントンにあるアルベルタ大学ともともと交流があるという。Googleのマウンテンビュー本社にもDeepMindの社員が常駐している。

Google’s AI powerhouse DeepMind is opening its first international lab in Canada - The Verge

 

MicroSoftiOSフォンでユーザがかんたんにObject Recognitionを利用できるSeeing AIをリリースした。女性を認識させると「28歳のハッピーそうに笑っている女性です」と認識。キャンベルスープの缶を見せると「これはキャンベルスープです」という。動画を観ると早いです。

www.youtube.com

Googleも開発者会議でGoogle Lenzを発表している。Amazon Goも物体 / 画像認識で、誰が何を持っていったかを認識しようという試みだろう。

本当に進歩が早くて愉しい。

 

 

インドもアリペイ型決済が主流に: デジタル経済Newsletter_7/12

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WhatsAppがインドでUPIの認可を取得しました。Wechatのようなコード型決済事業を行えるようになりました。数ヶ月前にFacebookがインドで決済事業に乗り出す噂されていました。同社のMessaging部門のトップは元PayPal幹部なので合点がいきます。

http://m.timesofindia.com/business/india-business/whatsapp-gets-nod-for-upi-payments/articleshow/59537161.cms

FacebookだけではなくGoogleUberも認可を受ける最終段階まで来ているそうです。モディ首相は昨年終わり頃に高額紙幣の流通を禁止して、キャッシュレス社会を目指すと宣言しています。この禁止がマクロ経済に響いているのが2017Q1の経済状況から明らかになりました。しかし、モディさんには曲げないでほしいですね。

インドでも中国型のペイメントの状況が生まれそうです。アジアで起きているイノベーションは本当に興味深いですね。

ビットコインマイナーの深い闇: デジタル経済Newsletter_7/12

日曜日から月曜日にかけて暗号通貨が暴落しました。引き金と見られているのは日本人投機家が投げ売ったことです。

https://twitter.com/ETHxCC/status/884588903180640256

取引額の最上位をビットフライヤーが占めてたようです。同社が昨年から広告を打って集めてきた、FXや株から流れてきたり、投機の初心者だったりする層が投げ売ったのでは、と推測されます。

主要なコインのファンダメンタルズはあまり動いていません。土日にかけて、Adam BackやYoursのRyanなどの間でスケーラビリティ問題をめぐる議論がTwitterで交わされていましたが、特に際立った進展を感じ取れませんでした。

Litecoin創設者のCharlieらは、BitcoinのMemory Pool(ブロックチェーンに格納される前のtxを貯めておくプール)が満杯だとされていたが、実際には誰かがスパムtxを仕込んでいるのではないかと暗に指摘しました。指摘時にはMemory Poolは空っぽで再び安い手数料とスピーディな取引を楽しめる状態でしたが、その後怪しい感じで再び溢れんばかりになりました。

https://twitter.com/SatoshiLite/status/884011944708931588

満杯状態で得をするのは、その見返りに高額の手数料を請求でき、ブロックサイズの拡大でより自身の立場を強化できるマイニングプールでしょう。マイニングプールは一枚岩ではないのですが、この件には何らかの協定があったと推測されます。

これらを踏まえますと、Segwit 2xはとても政治的な落としどころなのですが、短期的なビジョンに拘泥しています。Bitcoinをスケールさせた後から様々な収益ソースを拡大した方が長期的利益に適うのは傍観者からわかるのですが、利害関係者になるやいなや冷静な判断を下せなません。

これを踏まえると合理的な投機家はBitcoinを売って、有望そうなアルトコインを買うでしょう。したがって今回の暴落は極めて不合理行動が起きたと推測されます。情報が偏在していることに加えて、興味のないことに脳の回路を遮断する「バカの壁」効果が組み合わさり、不確実性の塊のような市場になっているのでしょう。とても興味深いです。

 注目記事

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モバイルペイメント VS 暗号通貨:デジタル経済Newsletter_7/10

最も気になるのは、ファーウェイCEOがGDPの50%に達したケニアのモバイルペイメント「M-Pesa」などに触れたプレゼンレポート記事です。Bitcoinが足踏み状態が続いているが、新興国ではアリペイ、微信包銭形のモバイルペイメントの普及が進んでいます。モバイルも銀行口座も持っていない低〜中所得者に対してモバイルとプリチャージ・コード読み取り型の、資本蓄積、支払手段を渡せば、ネットワーク効果が生まれそうなのは自明です。

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これらは暗号通貨と合流するのか、並列するのか、それとも暗号通貨よりも大きなパイをしめるのか。富裕国でこれを行う課題は、モバイルペイメントが既存金融機関・クレカ会社との提携が必要で、レガシーインフラの利用と、マージンの切り分けが必要になるので、ユーザーセントリックさを一部欠くことになります。だから富裕国には暗号通貨からの金融革命の方が簡単にもたらせるはずだと私は考えています。

ファーウェイはデバイスメーカーとして、新興国で勃興するこの決済ビジネスに絡もうとしているはずです(だからプレゼンで紹介するわけです)。モバイル製造は山あり谷ありでしょうし、発展途上国ではBATと競争しないでモバイルを基点に他のビジネスに食い込めるので、チャンスと考えているでしょう。

注目記事

円Yes銀行No! 画期的な暗号通貨Zen : デジタル経済Newsletter_7/7

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もっとも気になるニュースは一日遅れだが、仮想通貨のZen。これは「『日本円』みたいなものを銀行なしで使いたい」という仕組みですね。銀行口座に入るとそこから非効率的な仕組みを経由してタックスを取られます。つまり銀行は個人や法人の経済活動のコストになっています。「今までは応じていたけど、暗号通貨を使えば、もっと効率性が増すな、やってみよう」となったのです。

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例えば、某銀行のシステム統合、4000億円程度かかる見込みらしい。高すぎるんじゃないか? これ誰が負担するか? 某銀行のユーザーです。こんな話があっていいのだろうか。 しかも内実がこのブログのような感じらしいのです。100年古い話ですね。

https://anond.hatelabo.jp/20160707182245

ATMから現金を引き出したり、送金したりして手数料を上納しないといけない仕組みはおかしい。銀行のデータベース上で数字を移動させるだけの話なのですが、全銀ネットや銀行の勘定系と呼ばれるレガシーは80年代に完成した仕組みでビフォアインターネットの世界のものだ。 

他にも税理士・会計士、国税庁などの役割も暗号通貨の活用により簡略化が可能だと考えられます。エストニアは暗号通貨は利用していませんが電子政府とキャッシュレス化のおかげで税理士・会計士の役割が大きく縮小したと言われています。

税理士が消滅する日 エストニアの現状から考えたこと – 谷口孔陛税理士事務所

日本のように「法律的にはこうなってるので、このやり方だとこのようなリスクがあります」「御社の状況だとこんな節税が効果的です」というようなサービスは必要ない、ということになります。 

(中略)

同業の方ならわかっていただけるでしょうが、「税理士」という仕事が成り立つのは結局のところ日本の税制が複雑だからです。

この税制が変わるかどうかは、日本の官僚組織がどう動くのか・政治的にどのような流れになるのか、という部分が大きいので、講師の方もおっしゃってましたがこればかりは予測ができません。

税理、会計の管理に人的資源を割くのが大変になるほど、日本の人口は減っていくはずです。人的資源をより生産性の高い仕事に振り向けていくことが重要になっていくでしょう。

クラウドが描く未来。東欧の小国エストニアから税理士が消えたわけ|MFクラウド 公式ブログ

注目記事

  1. ブロックチェーンスタートアップOmise Go、タイのオンライン決済企業を買収。シンガポール本拠、日本人CEO。先月のICOの資金で買収。怪しいICOが多い中真面目な印象で、応援したい
  2. Omise acquires online payment business Paysbuy from Thai operator Dtac | TechCrunch
  3. メルカリがライブコマースに参入――まずは芸能人やタレントが登場、順次対象ユーザーを拡大予定 
  4. Amazonがワイン開発をしている。Amazon is now developing its own wines - Recode
  5. Deepmindの北米ブランチはカナダ・アルベルタ大学。Why Google’s newest AI team is setting up in Canada - Recode
  6. 中国が自動運転者開発で猛追走を開始。The Chinese Plan to Take Over All Self-Driving Cars - MIT Technology Review
  7. Accenture Interactiveの広告業界進出が半端ない。Accenture Interactive Is Taking Over The World, But It Won’t Be The Next Holding Company | AdExchanger

 

追記:時間があれば週末これを観よう

d.hatena.ne.jp

 

 

日系退職→起業、外資系がブーム:デジタル経済Newsletter_7/6

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注目記事

  1. 「私が国内最大手からインド系に転じた理由」。NTTデータの子会社で社長だった大西氏が全世界売上約1兆1495億円(2016年度)のインフォシスに移籍した経緯
  2. NECを退職し、新会社を立ち上げました。 - KaiGaiの俺メモ

  3.  SamsungもAI搭載ホームスピーカーをローンチ

  4. Bill Gates 15 predictions in 1999 come true and it's scary how accurate he was

  5. IBMのWatsonはマーケティングで盛り過ぎだが、大手企業管理職クラスの年代からの信頼や医療関係のデータをがっちり抑えているので、医療関係では有利

    A Reality Check for IBM’s AI Ambitions - MIT Technology Review

  6. 電灯型のAR投影機を使えば、オフィス作業は全部終わる

    Augmented Reality on Your Desk—All You Need Is a Lightbulb Socket - MIT Technology Review

1へのコメント:受託のIT人月産業、本格的な終わり

インドのインフォシスがこんな大きな企業だったとは。大西氏に限らず「日本村」から抜け出すと不満を言いやすくなるかもしれない。

これまで、ITを使った業務改革は、マッキンゼーやBCGといった「戦略コンサル」がトップにあり、その下がPwCやデロイトなどの「総合系コンサル」、その下にNTTデータなどの「ITコンサル」があるというピラミッド構造だった。起点はつねに戦略コンサルであり、いわば「文系」の考え方でできていた。

文系主導が大間違いだったことはよく分かる。MBAをこねくり回す人はそんなたくさんいらない。

大手銀行のシステム統合のような「何万人月規模」のプロジェクトはいまが最後で、受託請負開発だけの会社はもう生き残れない。そうした変化は2020年までに起きるはずだ。その時、先端的なスタートアップ企業や、インフォシスのようなアバンギャルド外資系のIT企業が、市場シェアを大きく伸ばすことになるだろう。 

裏を返すと、2020年の東京オリンピックまで東芝のような伝統的な日本企業の退場がまた起きる可能性は濃厚だ。

2へのコメント:伝統的な大企業ではできないことなのだろう

今後は、前職では実現できなかった、GPUSSDなどヘテロジニアスな計算機資源を活用する事で、高性能、低価格、使いやすさを両立するデータベース製品の事業化を目指していく事になります。

で、あれば、5年前に自分が作り出したソフトウェアが飼い殺しのような状況のまま、後発の競合が次々に先を行くのを指を咥えてただ眺めているという選択肢はあり得ない。そう考え、NECを出て自らPG-Stromを事業化するための新会社を立ち上げる事を決意した。

プロジェクトのガバナンスを現場から離れた人が握る事への不安はどうしても拭えなかった。

最近退職ブログ流行っていますね。提示される問題があまりにも似通っているのは、日本の企業社会の過激なる単一性のせいではないでしょうか。

 

追記:素晴らしい公共事業だ! 

メディアを民主主義から解放する

マスメディアは多数の人間に一方的に情報を与えて、アタシの言うこと聞きなさいという形に設計されている。社会学かあるいはポエムのようなものを基に作られた情報が多くを占めるだろう。

もちろん、人には真剣に受け取るべきメディア情報だけではなくて、何というか時間つぶしみたいな情報収集のフェーズがあるのはわかっている。戦略とかゲームとかお金とかそういう話を四六時中やっていても飽きない退屈なおじさんになりつつある僕には偏見が生じていて、それがうまく理解できなくなっているくらい中央値から外れていることはじゅうじゅう承知している。

だけど、そういうスナッカブルコンテンツで世の中の人間の行動に影響を与えるのはいかがなものかと先週末、銭湯で都議選の中継を見ていて感じた。マスメディアにいる人はこういう選挙のコンテンツを作るときに、公職選挙法がなんちゃらかんちゃらを気にされているみたいだった。彼らが大学までに受けた平均点教育の馬鹿馬鹿しさを大爆発させているんだなと感じた。我々が受けた教育の多くは無意味で、ときに変なバイアスを生むんで害もあるだろう。

平均値は平均値に過ぎなくて、エレガントさや妥当性とは全く無関係だよ、ということを示して、その結果平均値を宗教的に愛している人たちを無駄に怒らせて足を引っ張られるということを繰り返してきたのが、僕の30年ちょいの人生なんだけど、最近はついにそういう攻撃に対してかなり高い守備力とやんわりとした反撃力を身につけて来たなと感じている。

民主主義はすごい大切なものだという教育がされているが、多数の人間によるグループの意思決定方法としては余りスマートではないのが現実だ。ポンコツと言ってもいい。マスコミは民主主義が自分らの価値を大きく支援するものと心得ているので「民主主義がなんちゃらかんちゃら」という話を延々とやるし、選挙が何か大事なものを決しているかのように人々に信じさせようと必死にすらなる。でももちろん選挙は茶番だ。
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議会制民主主義は草であり機能性に乏しく時間を無駄にする。ロビーイングに対して脆弱で、都議会のドンのようなスマートではないインフルエンサーを作り、テニスコートの誓いで排除したはずの権威者を再発明してしまう。しかも官僚はそれを骨抜きにしようとしていて、政治家といつでも水面下の闘いをやっている。最近の安倍政権のゴタゴタはわかりやすく言うと「政治家 VS 官僚Vol89」であり、官僚の逆襲が成功するか、が最大の関心事。最近の政権周りが常軌を逸する感じなので、官僚さんガンバッテになっているけど、制度がそもそもポンコツなんですね(制度の改良自体は多分簡単。でも既得権益者が多すぎてその人たちが大変)。

ここでいきなりBitcoinの話を持ち出すと、Bitcoinはその機能を世界中の人々が利用可能な形にしようとするそのかなり手前で、ステークホルダーの利害関係が衝突してデッドロックになっている。そうこうしているうちに、他の暗号通貨が追いかけてきていて 、自分らの利益をどんどん小さくしている。つまり内々のゴタゴタに拘泥しているうちに、外側の世界に追い越されようとしている。

で、話をアクロバティックに戻すと、日本人の多数派は日本の中しか見えない。アジアの他の国に対して優越しているスゲー国だって日本のことを考えるように刷り込まれている。しかし、実際には日本って相当落馬しているよな、って他の国の人から見られている面はある。例えばシンガポールに行ってニュース番組を見てください。あるいは、他の国の若い大卒オーバーっぽいやつに、素朴に日本はなぜ20年間経済成長していないのかとか聞かれてみる。あるいは、日本人グループは国際的な場で他と意思疎通が苦手でときに排他的なのは、武士道と関係しているのだろうかとか尋ねられてみてください。

変なメディアの使い方で「大日本人」を外の世界から隔離して誤魔化しちゃいけなくて、一部の高齢者かつ支配層が抱く日本をめぐる時代遅れの幻想を若い人に伝染させちゃいけないよね、と思った。そう銭湯でテレビを見ていて本当に思った。こういう嘘が続くのはそんなに長くないよなと思うし、もっと人間は自由に暮らせるはずよ、変な情報を刷り込まれない限りは。

 

 

 

 

Litecoinの中国詣でが上々な感じの件:デジタル経済Newsletter_7/5

 

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  • Charlie LeeがLitecoinのマイナーや地元起業家らをめぐる中国・武漢詣でを敢行している。一部のミートアップには女性がかなりいる様子でギークなこの界隈では驚きを隠せない。

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コメント: 中華系の送金需要とれれば

  • Bitcoinの機先を制してSegwitのアクティベートを認めたマイナーたちとCharlieら開発者の関係は良好のようだ。@SatoshiLite 、@TheRealXinxi、@shaolinfry を含めたLitecoin開発者は在外中華系で占められている様子。本土中国人と関係が深くなりやすくはある。世界中に散らばる中華系の送金需要は世界最大だろう。
  • Bitcoinがごたごたで導入できないアップデートをいち早く取り入れていくことで、ステークホルダーのインセンティブは一致している。Bitcoinの混沌とは一線を隠している感じだが、ハッシュレートシェア2位のトラブルメイカーJihan Wuの影響力をどれだけ削げるかで、Bitcoinと同じ困難を回避できるかが決まりそう。

 

分散と集権のミックスがビットコインの最高のガバナンス:デジタル経済Newsletter_7/4

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    • ビットコインのコア開発者である、Luke Dashjrは、Jihan Wuが「『Segwit 2x』を提唱する目的はSegwit実装を遅らせること」と指摘。8割によるラフコンセンスを規定するBIP91が、20%以上のハッシュパワーをもつマイナーによる拒否権を認めている点などを批判。UASFが最善策という考えを示した。

    • ビットコインのネットワーク混雑が解消、手数料再び安く。10円程度。投機的な資金がEthereumに移行したという説。一時的なネットワーク混雑の緩和か。トランザクションスピードの問題は残している
    • ライトコインの創設者チャーリー・リーが中国を訪問。マイナー巡り。今日はBitmainのJihan Wuと会う
    • Jihanはマイナーによるイカサマアルゴリズムである、Asic boostを使っていない、あるいは皆が使えばフェアになると主張
    • イーサリアムマイニングに適したグラボの需要が沸騰

コメント

BitcoinのSegwitを巡る議論は視界不良だ。UASFはトランプの大貧民の「革命」を制度化することになる。同じ数字のカードが4枚揃ったら、みんなが「革命」を行うとなると、ガバナンスに不安を残すかもしれない。一方、Segwit 2xの方向性で進むと、非中央集権を志向する開発者が意欲を失うかもしれない。

課題だらけの中央集権に依らない金融・貨幣を生み出すことが、Bitcoinの重要な思想だったはずだが、非中央集権・分散型のガバナンスにも伝統的な課題があることを思い出させてくれる。中央集権と分散が不可分なくらいに溶け合わせることが、素晴らしいガバナンスを築くための重要なカギだというのが直感的に感じられる。

追記:ビックブラウザーがあなたを見ている

デジタル経済Newsletter_7/3

こんにちは。

このニュースまとめですが、今後はできるかぎりニュースレター形式をとろうと思います。毎朝更新でデジタルエコノミーに関する有用なサマリーをお渡ししたいと考えています。ある程度のレベルに達したらニュースレターも検討しますので、ご要望などお伝えくださいませ。

▼注目のニュース/ブログ

*CASHを「らくちん買い取りアプリ」だと思ってる君のために、おっさんたちがこんなにも騒いでいる理由をお教えしよう

hajipion.com
Kanye WestJay-Zの音楽ストリーミングサービスであるTidalから離脱

*The Boring Companyが来週にもトンネルを掘り始める見通し

*ドローンにIDを付与することが検討。飛ばしている主体を確認できるようにする

AppleiPhoneの死に準備を開始

コメント:CASHのようなアイデアを罰さない国に

ブログポストはCASHがとる貸金業ではなく質屋というポジショニングが高利のマイクロファイナンスを可能にしていると主張しています。「グレーゾーンだとか闇金2.0だとか色々な意見がある中で、AirbnbUberが『ほらそうは言ってもみんなめっちゃ使ってるよ』と保守派を黙らせたように、BtoCレンディング領域における革命をカッコよく決めてほしい」はまったくもって同感です。Hajipon氏はUXデザイナーということですが、レギュレーションに精通しているようです。

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日本政府は明確に「規制の罠」に陥っていますし、伝統的な大企業の中でも同様の状況があります。東芝メモリの件で舛岡富士雄氏の注目が高まっていますが、何に対しても規則を適用して、クリエイティビティを削いでしまう慣行が崩れることを祈っています。

他にも同じブログで取り上げられた、日本の資金決済法などのレギュレーションとその下での決済スタートアップの市場参入方法を説明した「ユーザー体験から紐解く「個人間送金」アプリの仕組みと歴史(日本編)」も分かりやすいです。

ユーザー体験から紐解く「個人間送金」アプリの仕組みと歴史(日本編) | hajipion.com

私も「デジタル決済革命はアジアで起きている:先進国凌ぐ中印」(DIGIDAY[日本版])で、事業者の立場から一歩引いて、市場環境の考察を行っています。

コメント:iPhoneの死は必然

Appleプロプライエタリプラットフォームの優位性はほぼなく、消費者が合理的なスペック評価とコスパを考慮すると購買の対象じゃなくなります。音声アシスタントなどのインターフェースの多様化が、スマホというフォーマットの絶対性を奪うはずです。