デジタルエコノミー研究所

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【旅行記】香港、富豪一名様、億ションのご購入です

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 これは香港のお寺の位牌です。広東・××県などと皆さんの出身地が書かれています。もちろん広東出身の人が多数派で、海南島の人が少々いました。香港住民の多くが中華人民共和国成立前後に、共産党とたもとをわかって大陸から逃亡してきた人々です。この位牌はそういった移住の歴史を物語っています。しかし、彼らが渡ってきた時とは違い、いまや香港はまったく違う種類の移住者を受け入れる都市になっています。

 ぼくが香港を訪れる前に抱いていたイメージは、映画からくるものでした。GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊押井守監督らが香港を訪問してあの東西の文化が混ざるオリエンタルな街をつくったそうです。それからジャッキー・チェンの「ポリス・ストーリー/香港国際警察」シリーズ、最後ストリートファイター2のキャラに変身するシーンがクソ面白い「シティーハンター(原作は日本のマンガ)」。

 極めつけは「恋する惑星」(95年公開)。あか抜けていない金城武(笑)が出ています。アジアの多様な民族が混ざり合う重慶大厦(チョンキンマンション)で、夢見る女性のロマンスで、心がきゅんとなります。

 主題歌のフェイ・ウォンの「夢中人」がブリティッシュロックのムードを踏襲していて、平成生まれの人でもすがすがしい懐かしさを感じます。この時代のスネアドラムにかかっているゲートリバーブ(パーンと響かせて心地よくする効果)は大好きです。ギターリフもテンプレ感がハンパないありきたりさだけど、何かを思い出させてくれるから全然いい。曲の構成ではゆったりとした余裕のある造りの後にいきなり転調があって意外性が楽しめる。とにかく、「なんかなつかしい〜!!!」曲だ。


恋する惑星Faye Wong フェイ・ウォン夢中人- YouTube


 これらのぼくの香港に抱いていた淡いイメージは、まさしく映画のように幻影だったことが、今回の旅行で証明されてしまいました。それは最初に書いた位牌の時代からの数十年で、あるいは映画が公開された95年からの20年で、特に香港に関わりの深い金融、貿易で世界はぐんぐんグローバル化したってことです。それが香港の街の姿をかなり変えてきている、と察しております。

 で、位牌のあるお寺の近くに、映画「恋する惑星」で有名になった中環至半山自動扶梯(ヒルサイド・エスカレーター)があります。高低差135m、全長800mの世界一長いエスカレータとして知られています。


香港 世界一長いエスカレーター 中環至半山自動扶梯 World's Longest Escalator ...

 エスカレータは香港島の中心部から、骨董街、欧米的な街並のソーホー、ハリウッドロードなどを抜けてどんどん丘を登っていきます。周りの風景を見ているのはウインドウショッピングのような感覚で楽しかったです。

 で、エスカレータが辿り着いたのが、高級住宅地「半山區」(ミッドレベルズ)だったんです。香港特有のスリムでつんと突き立った高層マンションが茂っておりました。町中にあるアットホームな感じの不動産屋が分譲マンションの看板を出しているんですが、値段をみてビックリしました。1680万香港ドル、、、約2億6千万円!?億ション!ていうか、物件がどれもこれも億ションだらけじゃないか!

 で、日本の不動産業者がやっている香港の物件情報をチラーとみてみると、やはり賃貸とかでも半端ないんです。野村総研によれば、日本の富裕層は101万世帯、純金融資産総額は241兆円。こういう人たちの住処や資産がここまでやってきたりするんでしょうか。ううむう。少しわけてもらいたいなあ。

 下はその写真です。ほとんど一億超です。こんなのが香港島の町中にすっとあるんです。

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 ああ、この高級住宅地開発のためにエスカレーターがついたんだ、と納得しました。エスカレーターの出発点は中環(セントラル)と呼ばれる国際金融センターでして、世界中のマネーを集めています。しかも、大陸中国ではうなる富を得た富裕層が爆発しており、香港は勢いをましています。彼らがあこがれの香港の物件をあさっています。

 街角不動産屋なんかじゃなくて、最高のコーヒーと茶菓子とサービスで迎えてくれる富裕層向けのクロースドな不動産屋に行けば、安心なぼくらの目をむき、のたうち回らせるほどのプライスに出会えることは間違いありません。

 ちょっとネットで調べてみると、やはりすごいことになっている。香港政府統計によれば、09〜12年の4年間の伸びがすごくて、住宅価格の指数(かな?)は09年28.5%増、10年21%増、11年11.1%増、12年25.7%増とインフレ調整前ですが爆発的な伸びを記録してました。09年にある物件を買って、それが指数とまったく同じ動きをしたとすれば、117%のリターンをはじき出しています。つまり、たった4年間で値段が2.17倍にはね上がったんです。

 まじでクレイジーですね。サウスチャイナ・モーニングポスト紙は「近年は政府が開発に厳格な姿勢を示し、土地の供給を絞り、金利が低く、通貨が安定していたなどの要因から、不動産市場は急浮上を続けてきた」(Hong Kong's housing market facing a slump in 2015、south china mornig post)としています。

 低所得者向けの住宅ローンであるサブプライムローン崩壊(2007〜08年)に端を発する世界金融危機が起きていた時期に、香港の不動産市場は力強い上げ潮を経験していたようです。サウスチャイナ紙は2015年は政府の引き締めなどで一服しそうというバークレイのアナリストのコメントを掲載しています。

 なるほど、マンションは国家を越えるほどの影響力を持つ個人「グローバルエリート」のすみかなんですね。グローバルエリートについては、元フィナンシャルタイムスのクリスティア・フリーランド著、『グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代』(ハヤカワ書房)が素晴らしいです。雲の上を飛んでいるかのような超富裕層の実態がわかり、グローバリズムによるアメリカ式資本主義の伝播が、ヤバいことになるかもしれないと感じさせまして、その調査の深さ、詳細さは日本のジャーナリストもこれくらいのレベルの仕事をしないとダメだと思わせます。

 で、よくよく考えると、エスカレータが通過するソーホーとかの瀟洒な地区はマンション居住者が団らんする場所になっていました。そして、エスカレータを降りた中環の歩道橋では、フィリピン人家政婦数百人(もしかしたら千人超え)をみることになります。彼女たちはビニールシートを敷いて食事をしたりトランプをしたりして団らんしていました。彼女たちは底抜けに明るい感じで楽しそうでした。

 ただこの丘を上下でお金持ちと出稼ぎ家政婦に分かれるのは、外人としてはエグいな〜と感じる部分もあります。もちろん彼女たちは香港の方がカネになるからいるわけで、彼女たちなりの合理性が成り立っているとも言えます。

 蓄積された富は多くの人々を引き寄せる作用があるようです。その富をどう使うかが今世紀の課題になるかもしれません。マネーは元をただせばただの紙。大前研一氏によれば、ホームレスマネーは4000兆円規模でこれが世界をぐるぐる回っている。これが社会を良い方向に進めるのに役立てばいいですが、サブプライム危機を見ていると、どうも制御不能のクリーチャーの様相を呈しているかもしれません。

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 この中環は昨年末まで、民主主義を求める学生たちが占拠した場所でもあります。金融街を占拠するのは、オキュパイウォールストリート(2011年)に通じているのでしょうか。もちろん他のさまざまなファクターがあります。それが絡み合ってのデモ何だろうと考えました。長くなりました。続きは次のエントリーにしましょう。

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