【旅行記】 iphoneから8年、深センはいま
Steve Jobs iPhone 2007 Presentation (Full HD ...
2007年、スティーブ・ジョブスはiPhoneを発表した。プレゼンの「革命的な電話(revolutionary phone)」ていうのには驚いた。「テキはこうこうこうだ。だけど、おれたちはこうだ。おれたちは圧倒的に勝っている」と徹底的な論理構成だ。
彼の手のひらの上にあった電話が歴史を変えた。彼はそれまでのキーボードをうめ込んだ端末という既成概念をぶちこわし、スクリーンが端末を覆い尽くしタッチパネル方式にかじをとる。オペレーションシステムも「他者の5年先を行っている」と自信に満ちあふれていた。
舞台裏は「アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか」に詳しい。著者はシリコンバレーを長年レポートしてきた雑誌wiredのジャーナリスト。アップルをめぐるどの著作よりも深い所に入っていると思う。このとき、ジョブスがプレゼンで聴衆に見せたiPhoneの動作が本番に間に合うか怪しかった。それがうまくいくと関係者たちは胸を撫で下ろしたらしい。ギリギリだった。
それから8年経ったいま、タッチパネルのスマホは売れまくって、とても一般的な商品になった。全世界平均価格は2014年末なんと昨年200ドル未満になった。
ぼくもアセアンの経済大国インドネシアで興味深いプロセスを見た。当地ではブラックベリーが支配的になるという面白い現象が起きた。アイフォンの波は「高すぎる」ため届かなかったが、サムスンがブラックベリーの牙城に食い込んだと思いきや、すぐさま激安スマホが飛ぶように売れ戦国時代になった。
このiPhone、激安スマホが委託生産されるのは広東省深圳市である。
▼中国の秋葉原
――ということで深圳市に行ってきた。「秋葉原」の華強北はたくさんの人でごった返していた。スマホ、カメラ、トランシーバ、周辺機器、マイクロチップ、電子機器部品、セキュリティー用品の卸売りがずらーとテナントビルを埋め尽くしていた。
シャオミ(小米)、ファーウェイの安いこと安いこと。780元(約15000円)なんて端末が並んでいる。昨年は携帯販売台数で3位にファーウェイがつけ、シャオミが4位。その後ろにも新手がひしめいている。
コピー商品の山塞を探していたんだが見つけられなかった。中国からブランドが立ち上がってもう必要ないのか。とにかくスマホを構成する部品がどんどん安くなる。
iPhoneの快進撃も深センに拠点を置く台湾企業foxconnが生産面で支えた。foxconnの工場では従業員の飛び降り自殺などが起きており、グローバル化の負の側面だとの報道もあった。現CEOのティム・クックはアップルのグローバルサプライチェーンの構築を担ったが、その下請けたたきの凄まじさは、日系アメリカ人ジャーナリストの「沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか」に詳しい。
2020年には成人人口の八割がスマホを持つと見込まれる。2020年には値段も一気に下がっていてスマホ保有者の75%が100ドル以下の商品を保有しているとの予測もある。
スマホの拡散はテクノロジーで人間の力を拡張していくという考え方を押し進めている。拡張がいくとこまで行くとサイボーグ化だ。
グーグルのエリック・シュミットらによる「第五の権力」はイラク、アフガンなどの戦場でもモバイルが普及している事実に巨大な可能性を見いだしている(この本はNSAスキャンダルに反論するタイミングで出された)。
- 作者: エリック・シュミット,ジャレッド・コーエン,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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スマホは開かれた知識へのアクセス経路になりうる。それは長い間開発に苦労をしたクニを市民から一気に力強くし、ムズカしさを抱えているクニでも何らかの答えを探し当てられる可能性を開いている。本当にすごいことだ。
このモバイル環境の変化により、新しいメディアの勃興が始まっている。米国発のバイラルメディアの興隆は今後、より高質な情報を生むメディアへの流れへと変わっていくだろう。そういうものを日本とアジアでつくりたいと思っている(結論はだいたい一緒です)。