デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

東京にだって移民とイノベーターがクロスするイノベーション地域はある説を検証する

このブログを読んでいて、再び引っ越しについて考え始めた。紹介されている『年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学』は都市間の経済格差を様々な観点から比較しているという。

アメリカにおける都市間の経済格差、特にイノベーション産業のメッカとなっている都市(例:シリコンバレー)と衰退した都市(例:デトロイト)の比較を様々な観点から行っており、結論としては高付加価値産業は特定地域に留まる性質があり、それは計画的に達成されるのではなく偶然発生するだけ、ということだった。シリコンバレーであればショックレー電子、シアトルであればマイクロソフトがそこに居着いたのがいま栄えている理由の根本であって、周辺産業含めた収入の地域格差はそのように突出した地域が生まれる上で必要悪とも見なされるそうだ。

都市経済学の様々な論者が似たような説を出している。リチャード・フロリダもまた広義の「クリエイティブ階層」を定義して、資本主義のなかで差別化された価値を生み出す人たちは特定の場所に集住する傾向を指摘した。

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著書の内容をしっかり覚えていないところで、いい書評があったので引用しよう。

とは学 『クリエイティブ都市経済論-地域活性化の条件』リチャード・フロリダ

・「移入者(移民)」の多さは、「ハイテク産業」と関係している。外国生まれ人口の割合とハイテク成功との間の相関は極めて高い

ボヘミアン(作家、デザイナー、ミュージシャン、俳優、ディレクター、画家、彫刻家、写真家、ダンサーなど)指数が高い都市は、「ハイテク」基盤だけでなく、人口成長、雇用成長も高い都市

・クリエイティブ経済では、環境の質は、才能を引き付ける前提条件として重要。環境は、経済的競争力、生活の質(QOL)、才能の吸引力を高める

・オールド経済では、企業の立地決定こそが地域経済の原動力であり、人間の立地決定は、企業の立地決定に従うものであった。クリエイティブ経済の到来は、この立地を劇的に転換する

・若いクリエイティブ・ワーカーは、地下鉄やLRTといった大量公共交通機関を、より広い範囲の地域へ行く移動交通手段として好んでいる。それらがあるところを居住・就業地を選ぶ上で重要と見ている

・水辺は、高アメニティ地域にとって共通の重要要素。もっとも成功しているハイテク都市のうち、いくつかは水系の近くに立地し、水系の資源をうまく戦略的に利用し、環境の質を高め、レクリエーションや交通の機会を増やしている

・大学は、クリエイティブ経済を構成するインフラ。才能を生みだし、生かすメカニズムを提供する母体。イノベーションを生み出すだけでなく、創造の力によって、経済を増幅させる

・日本の社会は、ブルーカラーのクリエイティビティを引き出すシステムは最高だが、ホワイトカラーのクリエイティビティを引き出せない 

サンフランシスコ>東京

この記事は5月24日にbtraxが開催した「DESIGN for Innovation 2017-デザインが経営を加速させる」の講演をもとに執筆したんですが、主催者のbtraxのブランドンさんのお話を聞いていると、上に挙げられたクリエイティブ都市の条件がbtraxがオフィスを置くサンフランシスコにはあるが、東京には「今のところ」ない、というニュアンスがまあまあよく出てくる。

digiday.jp

ブランドンさんが日本からサンフランシスコに移住して起業につながるまでのストーリーは本当に好きだ。

私は高校生になったあたりから、その向こうに見える公官庁・大企業中心社会に全くなじめないことを確信し、大学時代は音楽を作ったりなんだりし、卒業後はインドネシアに渡った。インドネシアで5年過ごした後に起業したくなり、日本に帰ってきた。帰ってきたときは謎のナショナリズムの最潮期で、困難はかなり大きかった。なまじ比較対象をもっているために感じる日本の硬直的な慣行への強烈な違和感なども、ブランドンさんのブログを読んでいるとちらほらあり、そうだよなーと共感してしまう。

blog.btrax.com

東京にだって好ましい例外があると信じたい

社会システムが80年代の製造業の成功体験を基盤にしたものであり、昔を忘れられないオジサン・オバサンたちが必死にこの仕組みを維持している、悲しい日本。それを増強するための偽情報が流通させられている日本。自分のなかに内在する枯れたプログラムに支配され、新しい世代にも枯れたプログラムをせっせと教え込む人々であふれる日本。高齢化し活力が失われているように描かれる日本。ヤル気のある人を集団でイジメる日本。

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だけど私は楽観的だ。東京のなかには移民と若者のミックスにより多様性とアニマルスピリッツのパワーが噴き出す場所があるのではないか、という仮説をもっている。東京は依然として世界有数の大都市であり、経済基盤は大きい。偏見さえなくなれば途端にうまくいくかもしれない。

これはもう何も調べていなくて社会学という最も役立たずな学問的な肌感覚だが、新大久保、百人町、高田馬場らへんや東京東部の若いカップルの子供と移民たちが交差するらへんにチャンスがあるのではないか……。そういう、盲点になっている場所を付けば、創造性を生み出し続けられるのかなと思います。

これを検証するために引っ越しをしようかなーと考えています。いまは神奈川県の家族がマンションを買う街に住んでいて、ぼくのメンタリティと街が噛み合っていません。

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私はこういうプロジェクトに取り組んでいます。

taxi-yoshida.hatenablog.com