デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

あなたは「デジタルエコノミー」の世界でどう生き残るか

今回はなぜブログ名を「デジタルエコノミー研究所」にしたかについて、自分の考えを話そうと思いました。

私は2007~2008年の世界金融危機とその後の量的緩和で、従来型の経済学の多くが難しくなったと憶測していました。金融政策と財政政策のミックスは確かに世界をどん底に落とさないのには寄与したかもしれません。

しかし、世界経済の根幹にある金融システムの脆弱性が露わになりましたし、彼らがとてもセルフィッシュな設計を施されていることを、世界中の人たちは知ることになりました(日本人には分かっていない人が多いかもしれません。あんなおかしい投資信託を買うんですから)。

こんにちは、不確実の世界

現行の民主主義が選ぶリーダーはロビーイングに対して余りにも脆弱です。証券会社が銀行業を同時に行えるようにする(投資銀行と名乗れるようにする)法制を整えたのはビル・クリントンです。オバマは金融業界に鉄槌を下すと意気込みましたが、骨抜きにされました。トランプを大統領に選んだことを非難する論調はたくさんありますが、ヒラリーのバックグラウンドを考えると、彼女はビフォア2008年の世界に忠実な古いリーダーでしょう。変化は起こせなかったと僕は思います。

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トランプは分かりづらくて誰のコントロールも受け付けない不確実性の塊のような男です。彼が奇妙なナショナリズムなどに拘泥せず、カンフー映画の主人公のように古いものをぶっ壊すことを私は静かに望んでいます。

アフター金融危機の世界では行動経済学がその地位を高めました。より小さな粒が見えはじめました。その粒たちはそれぞれ多様で、頭痛がするほど複雑で、今のところ予測不可能な存在です。

破壊的な暗号通貨 / ブロックチェーン

金融危機以降の金融業界の変化は政府や大企業の中から出てきませんでした。起業家やベンチャーキャピタリスト、開発者と人々(People)の間から生まれたのです。それがフィンテックというバズワードや暗号通貨 / ブロックチェーンに代表されるものです。

フィンテックは既存の金融をアンバンドルしています。フィンテックスタートアップの存在は私たちに大きな気づきを与えてくれます。既存の金融機関や政府がとても非効率的な手段に固執していること、ユーザーを無視して設計をされていること、非効率性に寄生したビジネスが存在していることを教えてくれます。

天才サトシ・ナカモトがビットコインという新しい貨幣を創造する論文を出したのが2008年。ビットコインのネットワークが動きはじめたのが2009年です。もちろん金融危機と無関係ではありません。

ビットコイン、暗号通貨の歩みはフィアット(法定通貨)やそこに吸着している金融システムの代替物を求めるムーブメントの側面があると私は考えています。金融危機後の世界ではバンキング(金融機能)を個人の手に戻すことを目的としています。いま暗号通貨 / ブロックチェーン界隈で起きているさまざまな挑戦の中には、10年後20年後も生き残り、やがて巨大なプラットフォームになるものが含まれているでしょう。

暗号通貨の世界では新しい経済学が生まれています。それはCripto Economics(暗号経済学)です。従来の経済学のなかで有用な理論とプログラマーたちの独自の経済学の理解がとても興味深い形で融合しています。そこには金融政策や財政政策を行う政府のような存在はなく、より分散型のガバナンスを志向する人たちが寄り添っています。暗号通貨やスマートコントラクトを活用することで、いまの世界で私たちを苦しめる非効率性や中間者を排除できます。

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 コンピューティングと経済

高齢化する日本にいると見えづらい事実ですが、経済のあり方を加速的に変えているのはコンピューティングです。先に言及したピア・ツー・ピアのデジタルマネーであるビットコインも、それからフィンテックもコンピューティングにより金融という経済の血液のディストリビューションの仕方が改善されようとしています。

インターネットでさまざまなものがつながる中で、コンピューティングの力を、どんな人でもあらゆる場所で活用できるようになりました。モバイルは世界中を覆い尽くそうとしています。インドでは毎年1億人のペースでインターネット人口が増えています。長期的にはデバイスが消失していくはずです。デバイスが私たちの意識に上らず、ARやVRのようなもので我々はさまざまなアプリケーションを動かし、物事を実現していきます。

タクシー産業にネットとコンピューティングの力をもたらしたのがUberです(最近評判悪いですね)。宿泊産業にネットとコンピューティングの力をもたらしたのがAirbnbです。時価総額ランクの上位はもうそういう企業ばかりですし、今後もテイクオーバーは終わらないでしょう。

最も尖ったトレンドはもちろん、機械知能(MI)です。今回は人工知能と呼ばないようにしたいと思います。特徴量の抽出などを自ずから行うインテリジェンスは私たちの暮らしをそっくりそのまま変えてしまう可能性があります。世界が放出するデータをその場で処理し、すぐさまアクションを起こすというビジョン。「データのつくられるところ、学習されるところ、それが利用されるところを同じにする」という挑戦であり、人間から見ればいつでもどこでもコンピュータの力を簡単に利用できるということです。

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2008年は「古い経済」が死んだ年

将来の歴史の教科書をみれば、2008年は古い経済が破綻した年として記録されるでしょう。そしてその後のデジタルエコノミー、あるいはコンピューティングエコノミーが花開いた年になり、人々は大いなる非効率性を乗り越えたと記録されるでしょう。実際、中国では先進国よりかなり進んだデジタル経済の実践がみられます。東南アジア、インド、アフリカでも先進国をリープフロッグする種がまかれ、一部は大きな木になる兆しを見せています。

日本がそれに乗り遅れているし、今後もそうなら、国家にとらわれない個人になることが重要です。私はすべての人間がそういう個人になれると自信を持っています。デジタルエコノミーの世界では、我々は後10年程度で政府をまっさらなサービス、コンピュータプログラム、機械知能、ブロックチェーンに記されたスマートコントラクトに変えることができるはずです。あらゆるコストから解き放たれた世界で、私たちは本当の幸福の意味を追求する機会を手に入れるでしょう。

テクノロジーの超高速な進化を現実世界に当てはめていくことが重要な時代になります。私もこの人類史空前の大変化を分析者ではなく、実行者という形で関与していきたいと考えています。

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