デジタルエコノミー研究所

デジタルが生み出す新しい経済を知りたいビジネスパーソンのためのブログ

IMFが予見する「銀行の終わり」:仮想通貨とデジタル金融のテイクオーバー

f:id:taxi-yoshida:20171015204547j:plain

Via Wikimedia commons

IMFのChristine Lagardeは9月29日に行われたイングランド中央銀行におけるディスカッションで、Bankingの終わりと暗号通貨の勝利を予見したことが話題になりました。半月前の話題ですが掘り下げてみたいです。

今のところ、Bitcoinのような仮想通貨は、法定通貨フィアットカレンシー)と中央銀行による既存の秩序に挑戦しているとはいえません。

仮想通貨はあまりにもボラティリティが高く、リスキーすぎたり、(ステイクホルダーの)エネルギーに頼りすぎており、基礎となる技術はまだスケーラブルではないためです。多くは規制者にとってはあまりにも不透明で、なかにはクラッキングされたものもあります。

一部の専門家はパーソナルコンピュータは決して採用されないと主張し、タブレットは高価なコーヒートレイとしてのみ使用されると主張したのはそうそう前のことではありません。だから私は無下に仮想通貨を退けることは賢明ではないかもしれないと思います。 

Lagardeは、国内金融機関と通貨が脆弱な国が、自国通貨の代わりに米ドルを利用する代わりに、仮想通貨の利用を拡大する可能性があると指摘します。アフリカのセーシェル共和国ではドルの利用率が2006年の20%から2008年の60%に急増したが、新しい通貨の採用にはティッピングポイントがあることをIMFの経験は示しているとLagardeは語っています。

なぜ市民は物理的なドル、ユーロなどではなく、仮想通貨を保有しているのでしょうか? (社会の治安が完全に確保されていない開発国の)地方では仮想通貨の方が、紙幣を手に入れるよりも、ずっと簡単で安全になるかもしれないからです。仮想通貨は実際により安定したものになりえます。

暗号通貨の決済はまだ先か

Lagardeは、仮想通貨がフィアットとその上に築かれた種々の決済手段より、優れたペイメントサービスになる可能性に触れています。ただし、ビットコインがスケーラブルな優れた決済手段になるかどうかはレイヤー2の開発次第であり(あるいは2xなどのブロックサイズの拡大)、まだまだ時間がかかる気がします。

それとは別に、金融にアクセスできない一般のケニア市民は安全性の観点から紙幣を貯めることよりM-Pesaに貯蓄することを選んでいますが、お金をデジタル上で扱おうとする最初の一歩をまたいでおり、最終的にはフィアットをデジタル上で表現するよりはデジタルネイティブなお金(暗号通貨)をやり取りしたほうがいいのではないかとなる可能性を秘めています。

スマートフォンとインターネット接続が金融機関へのアクセスより先に広まっている国は、ロジカルに考えると金融機関を構築するコストより、モバイルバンキングやインターネットカレンシーを採用するコストの方が遥かに安く、かつ利便性・効率性も高いという結果になります。

システムの観点によると、先進国のレガシーな金融システムは、中国や開発国で採用されているデジタル金融の採用するアーキテクチャに対して、パフォーマンスが激烈に劣ります。その仕組はいちいち「ビフォアインターネット」なのです。

f:id:taxi-yoshida:20171015205125j:plain

Via Kevin Dooley

インドや東南アジアでもモバイルペイメントのアプリケーションが瞬く間に広まり、最終的には金融機関の役割を果たそうとしているといます。仮想通貨はこれらのデジタルペイメントと強調する形を取ることもできますし、開発者の考え方によってはプロプライエタリな仕組みになっていくこともできます。

アフリカの野心な国は最初から仮想通貨・デジタルバンキングの採用に取り組めば、発展国に対してアドバンテージをとれるのです。リープフロッグです。

トラストレスの衝撃

Lagardeは仮想通貨やデジタル金融などを金融仲介機能における新しいモデルだと評価しているようです。レガシー金融は常にクリアリングハウスなどの善意の第三者を必要とします。ブロックチェーンの特徴はトラストレスな価値の移転を可能にすることで、中間者を排除できることであり、善意の第三者いらず。これにより、取引を行うピアたちを「中間者の支配」から解放することができるともいえます。

ひとつの可能性は銀行サービスのアンバンドルです。将来的には、電子ウォレットにおける決済サービスを利用するための残高を最小限に抑え続けることが可能かもしれません。残りの残高は、自動的なクレジットスコアに基づいた、人工知能やネットワーク上のエッジに蓄積されたビッグデータを伴うP2Pのレンディングサービスに投資されてもいいでしょう。

この一部はアリペイがウォレットとモバイル上で簡単に投資ができるマネー・マーケット・ファンドMMF)である「余額宝」ですでに実現しています。JPモルガンの米連邦政府MMFを超えて世界最大規模に発展しました。

これは、ソフトウェアを中心とした6カ月間の製品開発サイクルが絶えず更新された世界であり、シンプルなユーザーインターフェイスと信頼できるセキュリティに対する大きなプレミアムを備えています。データが王様な世界。ブランチオフィスを必要としない「多くの新しいプレーヤーによる世界」です。

銀行預金が少なくなり、新しいチャネルを通じてお金が経済に流入するようになると、これが現行の銀行モデルに疑問を投げかけていると主張する人が現れ始めるだろう。

おそらく近い将来に銀行に預金するという無駄な行為を行う人達は世界からいなくなるはずです。金融は暴力的な速度で民主化されています。金融を人々のためのソフトウェアに作り変える運動、それこそ近年の金融変革の重要な側面なのです。

結論

  • IMFは長い間、国際基軸通貨を米ドルの代わりにIMFが管理する特別引出権 (SDR) と呼ばれる国際準備資産に取り替えようとしていました。しかし、世界金融危機の後でもドル覇権は崩れていません。したがって、脆弱な経済の開発国がドルを通貨として採用したり、自国通貨をドルペッグにする代わりに仮想通貨を活用するというアイデアIMFにとっても理にかなうのではないでしょうか。
  • Lagardeは日本の中央銀行当局より先端領域の学習が深い気がしますし、世界各国で起きている金融上の革命を理解している印象を抱きます。日銀の中の人や周辺産業の「レガシーエリート」も「書を捨てよ、街に出よ」、というかバックパッカーしろ、ということで知見を広めてほしいなと思います。ちゃんと目を凝らしてモノをみれるのなら、日本は暗号通貨においていいポジションを取れる可能性があります。

参考

Photo via Wikimedia Commons, Kevin Dooley