デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

「ネットの父」村井純氏に学ぶ、新しいものの作り方

7月に開かれたTHE NEW CONTEXT CONFERENCE 2016 TOKYOを取材できたのは、本当にDIGIDAYの編集者をやっていてよかったと思うできごとだった。

正直、世界がひっくり返るくらいスゴい人たちが集まっていて、二日間フルで出席した後、帰りはわくわくが止まらず、脳みそがぎゅるぎゅる震えていたのを覚えている。

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「インターネットの父」の村井純先生の話を聞けたのは嬉しかった。村井先生はこんな感じだ。

インターネットは氷山のようなものだ。いまや水上の一角で、AIだ、ブロックチェーンだと騒ぎ始めたが、基層の氷の部分がすべてを支えている。

インターネットを構築する当初から、自律・分散・協調のネットワークをつくることが目標とされてきた。技術的な観点からクライアントサーバーの仕組みを採り入れたが、それでインターネットがスケールすることになった。インターネットをめぐる様々な課題は、ネット自体の普及と拡大により課題がばんばん解決した。ネットワークの冗長化も達成できている。

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DIGIDAYにも書いている。村井氏は「ネットの次」として、ブロックチェーンをポジティブに利用したいと考えているようだ。

「インターネットはタテのものをヨコにつなぐということで動いてきました。人が壁を越えて分野を越えて国境を越えて新しいイノベーションを生み出せるでしょうか。こういうことにブロックチェーンが応えられるでしょうか。インターネットの上に、ブラックチェーンが信頼のプラットフォームとして働くでしょうか」

アナログのテクノロジーは、タテの構造をしている。テレビは使用する電波帯域、テレビシステムの仕様、サービスの内容、ビジネス、ルール、文化が縦割りに、垂直に決められていくものだ。

しかし、デジタルのテクノロジーは、水平に展開する。インターネットプロトコルは、共通の基盤として「薄いフロシキ」のような役割を果たし、その上にさまざまなサービスが実現される。

いまわれわれが享受しているさまざまなサービスは氷山の水上部分だ。それを支えるテクノロジーを先人の方々が築いてくれたのだ。われわれは余りに自分たちが今いる場所を知らなすぎるのかもしれない。

村井先生はWinny開発者の天才プログラマ金子勇の公判で金子氏とネットの技術を強く弁護したことで知られる。佐々木俊尚氏の記事から引用する。

「インターネットの共有メカニズムでは、規模が大きくなって情報量が増えるとネットが負荷に耐えられなくなり、新しい技術が必要になってきます。そうした中でP2Pはきわめて注目されており、その中でもWinnyは性能を高める洗練された機能を持ったソフトでした」 P2PソフトウェアとしてWinnyは非常に高性能で、インターネットの技術としては最先端を走っている。そしてその技術は、ネットのテクノロジそのものをドライブさせる役割を担っている――村井教授の証言は、おおむねそのようなトーンに貫かれていた(中略)

「利用は様々です。利用の仕方はいろいろあるが、それは電話をどのように使うのかということと同じです。要するに、さまざまな目的で使われるようにすることがインフラの目的なのです。私はWinnyの利用者から、その利用目的について聞いたことはないのでわかりません」

村井先生は周辺状況が難しい中で日本のネットワークを構築し、スケールするまで携わっている。金子氏の一件もそうだが、感情的に叩かれても曲がらず、冷静な主張を続けた。ナップスターショーン・パーカーはFacebookの初期にジョインし、億万長者になった。金子氏とは雲泥の差だ。

こういう「日米の報酬の差」を埋められるよう努力したいし、インターネットという「非常識」を「常識」に変えた村井先生の姿勢に尊敬し、新しいものを築けるようになりたい。