デジタルエコノミー研究所

デジタルが生み出す新しい経済を知りたいビジネスパーソンのためのブログ

物質は、いらない。経験が脳へのエクスタシーを与える

1. アートは脳のエクスタシー

猪子寿之のインタビューを読んで楽しくなってきた。「感動と物質は本質的には関係ない。だから、物質から人類を解放したい」。このセリフはとても好きだ。

そして今、情報社会になった。これは、デジタルによって脳が拡張される世界です。スマートフォンでつながる、すぐ検索できる、記録もされる。そうなってくると、遊園地にはないような、脳に対するエクスタシーが求められる。アートはその象徴的なものだよね。アートはエンターテインメントというか、ある種、脳に対するエクスタシーになるから。

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via Youtube

2.皆が物質的欲求をクリアする時代

ダニエル・カーネマンは2010年に発表した有名な論文で、世帯年収と精神状態には相関があるが、年収75,000ドル(約750万円)を超えると精神への影響は見られなくなると、記している。下のポストで検討したように、AIとロボットがもたらす爆発的な生産性向上が、やがてわれわれの生産に関するあり方を一気に変えるタイミングが訪れるとぼくは予測する(アメリカの西海岸の多数派もそう予測している)。

安定的な収入が行き渡った社会のなかで、われわれの快楽は物質所有ではなく、エクスペリエンス(体験)に集中するんじゃないだろうか。つまり物質から解放された人類が現れる時代はそんな遠くないはずだ。岡田斗司夫はかなり大技だけど評価経済社会に移行すると予測している。彼のことをなじるのは簡単だが、面白いことを言った人は評価されるべきだとぼくは思っている。

3.所有から利用へ:経験

そこで重要なのは私的所有権という、欧州の啓蒙主義のなかで確立し、世界中に拡散した思想の再定義が必要になると思っている。私的所有権は資本主義の発達の大きなドライバーだった。自分の「財産」が王侯貴族や武装集団に脅かされる可能性がある状況では、経済主体が頑張るインセンティブが生じない。

株式会社を支える法規部分がしっかりしているからこそ、設立、ファンディング、株式上場までの仕組みが整い、いまや創業間もない間で企業が世界中に広がることができるようになった。資本主義はかなりわれわれの世界を豊かにした面がある。

しかし、いまやさまざまな矛盾の部分が気になってきた。おそらく造りが大雑把なのだ。「複雑なものに対し複雑な仕組みを与える」というのが21世紀の社会の向かう先だと思う。だから、投票率がなんたら、戦後民主主義がなんたら、ナショナリズムがなんたらはやめて、新しい仕組みを作るのがナチュラルだ。

資本主義が豊かにした社会の次を考えるとき、私的所有権を柔らかくすることはとても重要な選択肢だ。つまりいろいろシェアし合うことで、われわれの世界はかなり効率的で暮らしやすくなる可能性がある。所有と共有の境界線は曖昧でいい。経験経済とシェアリングエコノミーはたぶん密接な関係がある。特にAirbnbのようなビジネスはそうだと思う。DIGIDAYに書いた記事を引用する。

今日、我々の家、乗用車、もろもろのモノはもはや社会ステータスを明示するものではなくなった。もはや我々は隣人に追いつこうと思わない。その代わりに「エクスペリエンス・エコノミー(経験経済)」に向かっている。休暇の写真や自分で作曲した音楽をシェアし、昨晩のディナーについてツイートしたり、新しい任天堂のゲームを友達に見せたりする。ポケモンGOを紹介したその日、私のステータスは友人の間で、急上昇した。

「所有から利用へ」というトレンドはもう2、3年語られている。クラウド、シェアエコノミー、動画・音楽配信とさまざまなサービスがそういう形をしている。でも、社会や都市のあり方がそんなに変わらないのはどうしてだろう。固定観念があるからだ。世界の変化に対して人間のマインドが追いつけないということだ。日本に関しては高齢化社会+固い保守的な価値観=マインドセットの岩盤があって少しキツい。

まだモダーンなものが完璧に入ってないアフリカには、スゴいチャンスがあると思う。モダーンはひとつの選択肢にすぎないのに、世界の全てのような顔をしている。

4.固定観念を溶かすためには

どうやって固定観念を溶かすか、ということに関してはアートだったりエンタテイメントが大きな役割を果たせると思う。こんな未来があるんだ、と興奮させるようなエンタテイメントがつくられることをやまない。

人は感動したいだけなんだよね。その感動を所有したくて、絵画を買ったり彫刻を買ったりする。デジタルの前というのは、絵画が銀箔や絵の具に付着しないと存在できなかったから、物質そのものに価値があるかのように人類は勘違いしちゃった。

ぼくもそう思う。感動したいだけだ。ぼくは物質では感動しない。だから、ことあるごとにマンション所有をなじっている。自分の根底を覆す、強烈な体験に感動する。そんな感動をいろんな人と共有したいと思っている。だからメディアラボがつくるような体験が人の固定観念を変えることが素晴らしいと感じている。