デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

2010〜2015年に私がインドネシアでやっていたこと

私は2010年から2015年の約5年間、東南アジア最大経済のインドネシアの首都ジャカルタで政治経済を担当する記者を経験しました。日々の取材だけでなく、新聞編集ソフトで誌面編集をし、最終的に誌面編集をインドネシア人スタッフに移管するなどさまざまな仕事を経験しました。現地社会に深く入り、新しい思考の極を東南アジアで獲得し、いまも持ち続けています。

当時のキャリアについて、できる限り克明に記そうと思います。

要約/サマリー

  • 私は多くの在留外国人が関わりをもたないインドネシア人社会に深く入っており、そのおかげで他の外国人の記者/リサーチャーに比べて政治経済情勢のインサイトが深かった(大統領選では情勢予測で常に他社/公的機関、研究機関をリードし続けた)。

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Saya menjadi 50% orang Indonesia 50%ほどインドネシア人になっていたジャカルタ時代

  • 都市問題など多様なテーマに取り組みました。新聞記者は「問題」をあぶりだすのが好きですが、私は常に「問題解決」の考え方で原稿を書きました。会社にいた日本の新聞社出身の人には否定的な人もいましたが、ちゃんと自分で考えることで「化石」にならなくて済んだと思っています。

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インドネシア2年目の若かりしころ、北スラウェシ・マナド島にて

政治経済

政治担当記者だが、経済分野も深く関与。マクロ経済、金融は得意だった。

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国会前で開かれた、燃料値上げに反対する大規模デモ。デモ隊の乗用車に乗せてもらった。2013年1月。

ASEAN/APEC取材

2014年インドネシア大統領選

Joko Widodo、Prabowo Subiantoの両陣営に選挙戦当初から取材を続けた。初代大統領スカルノや知識層の流れを組む民主派と、第2代大統領スハルトの流れを含む開発独裁派の対決構造を早い段階からキャッチ。開発独裁派の石油輸入に絡む汚職疑惑をめぐるスクープ記事を執筆。

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主要4党でも過半にたどり着かない多党乱立のインドネシア政治(Via Jakarta Shimbun/Adam)

当時のユドヨノ政権が選挙前に行った典型的なバラマキの解説図(Via Jakarta Shimbun/Rizki)

■大統領選に絡む宗教問題

インドネシアムスリムマジョリティだが、イスラムのあり方は多様だ。大統領選挙ではムスリムの各勢力とプロテスタントカトリックなどの宗教に関して激しい中傷合戦が行われた。特に重要だったのがジョコ・ウィドド氏の出自を華人とし、キリスト教徒と虚偽の情報流すタブロイド「オボールラクヤット」だった(2016年米大統領戦の偽ニュースに似ています)。

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大統領候補(当時)のジョコ・ウィドドジャカルタ特別州知事西ジャワ州カラワンにて2014年5月

■投票とその後の長いせめぎ合い

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勝利宣言したジョコウィとカラ2014年7月22日、南ジャカルタ・クバグサンのメガワティ元大統領私邸

■メディア執筆

「石油マフィア」報道

2014.9 国家予算に莫大な負担を負わせた、低質石油の価格をシンガポールの取引所で嵩上げして国営企業に買い取らせ、最終的に補助金で嵩上げ分を補填する汚職スキームの全容を明らかにした。この汚職スキームに関する報道は海外メディアでは初めて。現地日系社会にも大きな影響を与えた。大統領選挙の背景にある利権争いのなかでも中核的なもので、ジョコウィ政権成立後これらはおおむね排除された(2017/1/7時点)。

■ガソリン補助金

ジョコウィ新大統領(2014年〜)の伝記

ジョコウィ大統領の生涯を振り返るシリーズ。ジョコウィ氏の地元に出向き、50万都市の市長、1000万都市の州知事の軌跡を再現した。

ジャカルタの都市問題

グレーゾーン居住状態の集落での火災を取材したことをきっかけに、貧困、人口流入、洪水、インフラなどの都市問題を調査し、解決策を探った。こちらのリンク→SlideShare「ジャカルタフォーカス」から紙面で見られます。

■貧困問題

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グレーゾーン居住の住民が移転への反対集会を開いた。取材しているの(奥)が地元通信社の写真に写り込んだ。アンタラ通信撮影。

■「闇市」タナアバンとプレマン(ヤクザ)

インドネシアでは政治にも公然とプレマン(ヤクザ)が関与している。ヤクザは強烈な集票マシーンであり、さらに各種のビジネスで強い影響力をもっている。そのためプレマン方面の取材を強くしていた。高校の先輩である佐藤優氏がロシア情勢を知るためにマフィアへも情報網を広げていたことに影響された(佐藤氏の著書に詳しい)。

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子どもは16人、孫は30人いる」と話すバン・ウチュ。インタビュー序盤は怒り始め、一触即発。ヤクザの子分たちがピリピリしていた。

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地元の盟主のはからいで見学。闘いはじめてから皆がベットする方式だった。

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ジャカルタのヤクザの主要な出身地であるケイ島を訪問。エメラルドグリーンの天国だった。

■洪水集落・移転

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洪水になると半身水に浸かって逃げ出さないといけない

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洪水で損壊した家屋の後で記念撮影するカンプンプロの子どもたち

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よく首都ジャカルタは冠水した。2013年1月の首都大洪水。

以上、こんな感じですが、手元の資料をあたると、もっとたくさんのことをやっています。あと当時オフレコだったもので、時効が来ているものもたくさんありますが、ニーズがあれば出そうと思います。

当時は岩波から本を出している、とある関西の大学のインドネシア研究者から大統領選のインサイトを出典なしで丸パクリされたり、あるコンサルタントのプレゼン聞いたら、全部ぼくが書いた内容をそのままなぞっていたり、とこういう知的産業で横行するインモラルに驚きました。引用元を出してほしいです。とにかく、いまさらですが、こういう形にまとめて一段落つけました。

最近もインドネシア関連でこういう記事書いてますので、ぜひご一読をお願いします。

*文中の写真の撮影はアンアラ通信表記以外のものは吉田拓史による。

 

 

 

大学時代のソロの楽曲をまとめました。

前回は大学生時代のバンドの音楽をまとめた。

taxi-yoshida.hatenablog.com

今度はソロでつくった音楽をまとめておこうと思う。サウンドクラウドMyspaceにまとめた。Myspaceの音楽もサウンドクラウドに移したかったが、元のファイルはなくなっており無理だった。

2008~2010 Takushi Yoshida

ストーリー

「仮想現実のなかに作られた都市に移住した人々が、現実世界に住んでいたときの記憶を持ちより、生み出した音楽」というストーリー。仮想現実の入り口は新宿歌舞伎町の「矢畑共栄ビル」の4.5階の、天井が異様に低い部屋の本棚で隠された穴、という立て付け。

コンセプト

活動内容

Songs

2007 Moon

一番最初につくった曲。2,3時間でできた(Myspaceかなり遅延する。リンクから本サイトで聞いてください)。

Moon from Takushi Yoshida on Myspace

2009 Summer

2009年の夏に作曲(はず)。Warpが好きやBoards of Canadaの影響があるかな。夢中になってやっていたらできた。

2009 Zero Gravity Dream

一番好きな曲。夢の中ですべてが無重力になる。インセプションみたいに。序盤は少し退屈かもですが、途中からよくなります。編曲してもっとよく出来ると思うMyspaceかなり遅延する。リンクから本サイトで聞いてください)

Zero Gravity Dream from Takushi Yoshida on Myspace.

 2009 Memories

人の心にやどり続け、アイデンティティを規定し続ける思い出について考えを巡らせてつくった。

2009 The Begining of Everything

ビッグバン以前の「無」の状態をイメージしてみた。仮想現実の都市が、強烈な生命力により始まるときを描いてみました。

2010 Wave

優しい気持ちになりたい時に。波の自然音を加工して使っていますMyspaceかなり遅延する)。

Wave from Takushi Yoshida on Myspace.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大学時代のバンドの楽曲をまとめました。

大学生時代に組んだバンドの音楽をサウンドクラウドMyspace にまとめた。Myspace の音楽もサウンドクラウドに移したかったが 元のファイルは 亡くなっており無理だった。ユニットと曲の紹介をしようと思う。

Alcoholic Vivi 2006~2010

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活動内容

  • 2006年、吉田(Ba)、予備校の友人Usuda(Gt & Vocal)、中学の同級生Kanai(Dr)の大学生3人で結成。新宿歌舞伎町のライブハウスで練習中、ライブハウスMotionの店長から話がかかり、ライブデビュー。パンク・オルタナティブロックで活動。月3〜4回ライブと頻繁に活動したが、チケットノルマのせいで困窮する。
  • 2006年のKanaiの脱退から、ドラマーの数回のチェンジを経て、2007.4に最終的にドラムマシンを採用。吉田とUsudaの二人体制に。次第に宅録主体のElectoronicに音楽性を変えた。2010年に吉田がインドネシア渡航以降、活動休止。
  • ドラムマシン採用したころの音源がAudio Leafに残っていた。サービス停止しないことを祈るが、消えてもいいかも。初期のModern City Nightがある。
  • バンド名をAlcoholicにしたことをいいことに、当初はかなり酔っ払ってステージに上がっていた。リズム隊が泥酔していて、どうしようもなかった。
  • 2006年、大学の友人が集まり新宿JAMに100人集まった。そこがピークでその後は客が少なすぎて新宿JAMのおっさんにキレられ、モメる。
  • ライブハウス:新宿JAM吉祥寺Warp、新宿Motion、三軒茶屋Heaven's Doorなど多数
  • 当時作成したホームページは崩壊。作りかけの曲が勝手にかかる。
  • 友人のデザイン専門学校生が作ったデモの表紙f:id:taxi-yoshida:20170103111158j:plain

Songs

2007. Modern city night

2006年に最初にできて、やっといいの作れた曲。最初はMTR録音だったが、ableton live 7で再録した。UsudaはKorgのデジタルシンセを使い始めた。

2008. Sunday Dreaming

2008年、もうちょっとポップでエレクトロっぽくしたいということでできた。

2008. White Penguin

2005年結成当初からある曲。ableton live 7環境になってかなり音が厚くなった。

2010 夢見がちなヒッピー

Takushi YoshidaがつくったAmbient調の曲をさらに2人でギタギタに編曲。バンド結成当時からあった曲をはめ込むこんだら出来栄えは意外に良かった。

 

大学入学したのが2005年4月、バンド結成が2006年とそれまで与太っていたことを思い出した。大学時代はまあまあ与太っていた時期があり、それがなくて1つに集中していたら大きな成果を出せたなーと思った。

正月にableton live 9のことを調べてとても買いたくなった 今は休みが週に2日あるので 二塚の休みを生かしてやるのもいいと思った。無駄なことに時間を使うなら、音楽ができた方がいい。

インドネシアから帰ってきた時、実家の部屋 に置かれていた ベースを ハードオフに 二束三文で売ってしまった。 なんてもったいないことをしてしまったんだろう。

芸術=起業

大学時代は 村上隆の「芸術起業論」にはまり、 芸術をやることはつまり起業するということだ と考えていた。

芸術起業論

芸術起業論

 

バンドをやることは単なる自己実現ではなくマネジメントだと思っていた。 大変なことも多かったが 何人かで一つのことにチャレンジすると、一人では出せない大きな成果を出せる。僕は大学時代に一度起業したと考えている。

 

評判をうまく活かすためウェブサイトをつくっている。

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最近レピテーションシステム(評判システム)についてちらほら書いてきた。

自分がこの仕組みの中でどう評価されるか考えてみた。インドネシアから帰国した際はこの点に関してとても無知だった(大変なことになった)。今はウェブサイトを作り自分の やってきたことをわかりやすくまとめようとしている。そうすればいろんな人が僕について 簡単に理解ができる。

かなりたくさんのことに取り組んできたので これを言葉で同時に説明するとなんかとても怪しい人のように思われる。それを分かりやすい形にすれば、レピュテーションシステムをうまく行かせると思う。

年末いろんなところに飲み会に行ったが 、業界の外の人に自分を説明する難しさに気づいた。自分は日本の企業社会の大外に暮らしており、彼らの価値観から遠く離れている。 彼らのロジックは簡単に外の人をやばい人扱いできる。彼らはセールスフォース、アドビの時価総額三菱商事のそれを上回っていることを知らないのだ。昨今の出来事を見ていると、それも今年ぶっ壊れる気がするけど。

あとは自分のやってきたことを整理して、自分のとるべきアクションを再度明確化したいと思った。

資本主義社会をエンジョイする方法は株式会社を作ることだ。 仲間と資本を集め自分がやっていることをスケールする。これらを集めるためにも自分を説明できることと自分がやろうとしていることを説明できることが大事だと思った。

photo via pixabay

 

労働集約性からメディア産業を解放する


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記事をたくさん書くのは大変だ。このいわゆるメディア広告業界の仕事の労働集約性はちょっとしんどい。この仕事は現状、スケーラビリティ(拡張性)が脆弱だ。組織によって異なるのは重々承知だが、以下のような問題点を認めている。

  1. タスクのオーバーラップ
  2. 過剰な業務の細分化
  3. 業務プロセスの多重階層化
  4. 目標設定なきデスマーチ

日本の農業と類似点がある。それは狭い農地 に対して多くの労働力を注ぎ込んで、とても高価な商品を作っていることだ。 昨今のバイラルメディアやまとめサイトにおける最悪の労働環境はこの高い労働集約性に対して人件費を絞り上げるというブラックな手法によって対応したことで生まれた。クリエイティブな業界のはずだが、こういうオペレーションに関してクリエイティビティは認められないケースが多いはずだ。

これはトラディショナルメディア にも共通する。テレビの制作会社は常に自転車操業であり 、「局員」と比べ明らかに少ない給料で過酷な長時間労働をしている。

いい労働集約性 vs 悪い労働集約性

もちろん、いい労働集約性と悪い労働集約性がある。クリエイティビティは人同士のごちゃごちゃから生まれる側面もあるだろう。ビルを建てるのと、面白いものをつくるのは異なる。第一案が死んで、第二案が死んで、第三案でうまくいく、というのはある。クリエイティビティという正体不明なものに切り込む方法を確立しようと頑張ってきた。ただ過剰になりすぎたのは否めない。

悪い労働集約性に関しては早いうちに手を切りたい。メディア業界は情報産業で、定式化した仕事は機械がやるようになるだろう。でも人は人がつくったクリエイティブに感動する傾向が強いので、完全なテイクオーバーにはならない。機械で強化されたクリエイターがより高度なメタ情報を扱うようになったり、レコード、カセットテープのように伝統芸能的に残ったりするはずだ。

ここで注目したいのはクリエイティブはその成果において大きな差が出ることだ。 素晴らしいクリエイティビティを増幅し、その与えられる影響を拡大できたらいい。

レーティングor Auther Rankの導入

スケーラビリティとは別に、評価の仕組みを確立することも大事だ。一つ一つの仕事に競争と付加価値を付けていくべきだ。

ジャーナリスト/媒体ブランドにレーティングを与えるのはいかがだろうか。レーティングはできるだけ客観的な基準で構成員をジャッジしてあげようということや、暴れん坊に柔らかい制裁を与えられる。とんでもない仕事をするとガクッとレーティングが落ちて難しくなるからしっかりとした仕事が必要になる。

レイティング、レーティング (rating) は、対象となる物事に対して、ある基準に基づき、等級分けや数値化をおこなったものである。語源の rate には、見積もる・評価するという意味がある。(Wikipedia)

ぼくは男子テニスのATPランキングにはずっと親しんできた。ATPは年末にファイナルがあって、その大会の後のポイントで年間ランキングが確定する。


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これを真似て年末、今年のジャーナリストアワードみたいなのをやったらいい。「今年活躍したのは誰々です」と。競争とともに、いい仕事した人には確かな報酬を渡す。日本のメディア業界にはいい仕事に報いるというシステムが確立していない。現場で少ない賃金で働いていたりする。

GoogleのAuther RankやAmazonのRaputation Systemなど、評判を基にスコアリングする仕組みはネットにはかなり前からあった。しかし、偽ニュースやグレーな医療情報、コピペ記事がGoogleを欺いたし、Amazonはこの前怪しげなレビューを一斉処分しなくちゃならなかった。だけど、いずれいいものができるはずだ。ジャーナリストのレーティングは爆発するインターネット上の情報のランク付けに比べれば簡単だろう。

Photo via Pixabay

 

 

 

2016年反省会、来年はコンピュータと友達になる

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実家で紅白を見ていてとても退屈なので、2016年をまとめてみたい。

1.インタビューかなりたくさんやった

アメリカ人多かった。テクニカルな内容もまあまあ英語で行けるようになったが、もっといけるようになりたいし、もっとディスカッション色を強くして、Podcastでみんなに広めたい。

2.注目を集める記事を書き、業界の変化に貢献した

コンサル、SaaSベンダー、広告会社のマーケティング業界のオーバーラップとGoogleFacebookによるデジタル広告のデュオポリーはかなり注目を浴びたテーマ。いい情報流通に貢献した。

3.広範な分野をカバー

デジタルマーケティング、Fintech、ブロックチェーン/Bitcoin、ニュースパブリッシング、AI、とかなんとか。かなり勉強不足なので、頑張ってキャッチアップしたい。

4.DIGIDAYパブリッシングサミット成功

DIGIDAYブランドを定着させることの大きな要因になったイベントの成功に貢献できたはず。2017年2月に第二回があるので、いい会になればいいと思う。

5.ふくらはぎを負傷

フットサルの大会でふくらはぎを蹴られ、強烈な筋損傷を起こした。完治に一カ月がかかり、運動不足になるやらハロウィンでバテるやら大変だ。ワイルドな老若男女の標的になりやすいので、常に厳しい注意を払おう。

6.台湾とタイ、ラスベガスに行った

以前はインドネシア生活だったので、近くの国に頻繁に行けたが、2016年は旅行は控えめだった。2017年は再びアグレッシブになりたい。

2017年の目標

  1. 英語で専門的なディスカッションができるようにする。もちろん優れたアイデア付き
  2. コンピュータについてもっともっと詳しくなる
  3. コンピュータとパブリッシングのより濃密な融合、メディアという労働集約型産業のイノベーション
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  4. たくさんのスマートに会い、教えてもらい自分の力を引き上げる
  5. 行動力、決断力をもち、シャイにならない
  6. 財務の知識を増やす

 Photo by Pixabay

 

 

世界は情報でできている、だから書き換えられる


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帰りの電車で電車の中を眺めていた。とても興味深い。電車のなかから見えるのは物質だ。情報を意味する記号はあるが、すべて物理的なものだ。

だけどぼくたちの社会では情報が大事だ。ルイヴィトンのバッグを買うとき、買うのは記号だ。ルイヴィトンが与えてくれるベネフィットは他のバッグと比べて大して違わない。恐ろしいことにルイヴィトンを所有しているという事実に、価値が見出されている。

バブルのまっ最中、記号の消費はピークを迎えた。そして「欲しいものが欲しいわ」(糸井重里)となった。でも、私たちの消費する情報の殆どは生存には関わらないどうでもいいこと、なのは確かだ。

情報で生まれた価値の代表例は、お金だ。お金はほとんど情報だけでできている。もし仮にぼくが宇宙人で、世界中の人々から、お金に関する記憶・迷信を消す魔法が使えるとするなら、魔法が唱えられた瞬間にお金は紙くずか、コンピュータに記録された数字になってしまう。

政府の多くの部分も情報でできているだろう。政府という妄想を消す魔法を唱えれるなら、政府はたくさんの人間の詰まった箱になる。

多様性と自由にこだわっていたい

ぼくはテレビ、新聞、ニュースサイトのゴシップ記事というメインストリームの情報をほとんど摂取していない。そこで流通している情報が想定する人間には「多様性」がない気がするからだ。テレビ番組や新聞記事をつくっている人々の世界観はあまり複雑じゃない。だからそこで使われている価値尺度の過度なシンプルさが余りにも理解できない。あれは水槽のなかの熱帯魚をつくろうとするものだ。


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最近、クイズ番組をみて、おかしいと思った。なぜこの国では四角の中に言葉を入れることをもてはやしているんだろう。検索したら出てくるし、クイズ問題作成だって検索を使っているだろう。

あれだと課題解決能力は身につかない。失われた20年の間、エリート層は余り課題を解決できなかった。いまも20年前に起きた変化の実相をうまくつかめないでいる。そろそろ、失われた30年になる。

言いたいことは、簡単。情報が大事な時代になった。情報でできたものは、書き換えられる。 情報はとても 相対的 であり ダイナミック である。情報が情報として認識されるのは 人間が存在することがとても大きな要因になっている。ぼくたちは、ぼくたちのためにならない情報を書き換えることができる。だから積極的に書き換えていこう。それだけ。

WELQのくそハックはコンテンツ流通に季節の変わり目が来たしるし

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WELQの件はコンピュータが意味的(セマンティック)な部分を理解できるか、という部分が問われている気がします。現状はそのコンテンツが正しいかどうかを読めない。Googleは騙されました。

少し前にGoogle翻訳ニューラルネットワークが、英日、英韓の相互翻訳をマスターしたら、ひとりでに日韓の相互翻訳もできるようになり、もしかして、セマンティックな部分まで理解し始めたんかいな、と話題になりました。

だから、意味の理解が進むとGoogleが「この記事クソだな」と「考えて」、マズいものの検索結果を下方に落とすことができるかもしれません。もしかしたら、悪い記事が排除され、いい記事だけに出会えるようになるかもしれません。

何を持って良いとするか

しかし、ここで問題があります。記事の質の評価をどう下せばいいのでしょうか。世界には多様な考えがあり、どれが一番優れているかを判別する方法はありません。多様性と確実性がトレードオフなっています。

ちょっとSFじみてますが、数十年後にすごい機械知能が現れて、いまの司法が担っている役割をテイクオーバーできたらいいかもしれません。エヴァンゲリオンに出てくるマギコンピュータみたいな感じでしょうか。コンテンツディストリビューション専用のそれがあって、情報爆発の面倒を見て、いい情報に会いやすくする。Embed Intelligenceやパーソナルアシスタントがそういう役割を担うことになるかもしれません。

情報は偏在している

ただし、現状の機械知能は「考える」という部分に達していないことに留意したいです。人間が設定した課題、問に対して答えを出す存在でして、不確実性が増えると効果的ではなくなります。

社会がWELQが悪質だと判断できたのは「肩こりが霊の仕業」というような異常値を優れたライターたちが検知したところが発端です。そこから、コピペなどの著作権の問題や富岡製糸場のような製作体制などのインモラル性が分かってきて、これは問題だ、となっています。いわゆる倫理を持って、WELQに厳しいジャッジを下したわけです。

これはGoogleが手を下さない部分です。人間社会では情報は驚くほど偏在しています。隠されたり、埋もれたりしているそれを見つけるのは、伝統的かつ効果的な情報産業の手法だと思います。週刊文春です。

それでも、少しずつ、機械知能がセマンティックな部分を理解するときに備えないといけません。機械知能が情報を拾い出して、組み合わせてわれわれに提供するときはそんな遠くありません。


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機械はメディア産業のマニュアルレイバーの一部を自動化できます。そこで働く人の能力を拡張できます。人によっては成果を数倍、数十倍に拡張できます。

これはメディア人の仕事を高度化させていくことになります。情報の収集だったり選定の部分を機械化し、その上でメタの情報を生み出すことにニーズが生じると思います。やっぱりぼくたちも機械知能を操れないといけない。

Googleは評判に基づくオーサーランクを導入し、被リンクを外すと2014年に言っていたようです。その方針が貫かれていたとしたら、今回のは抜け穴を作られたと言うことでしょう。

インターネットはロングテールを許容します。それは古い世界では起き得ないことで画期的です。ただし、概してロングテールは玉石混交の度合いが大きいです。今回のWELQは石の部分が玉を完全に圧倒した例だと思います。いわゆる「悪貨が良貨」を駆逐するということです。

くそハックから新しいハックを

しかし、WELQのGoogleくそハックはかなり学ぶことが多いです。WELQのような労働集約性とクリエイティビティのない記事製作方法がメインストリームをとっていたら、人々はどんどん賢くなくなっていくと思います。なぜ、こういう記事が人気を集めるに至ったのかは、いわゆる鶏と卵です。でも、メディアと教育を現代化できれば、現状の問題は解決できるのではないかと思うのです。

先の記事で、オーサーランクはレピュテーションに基づいてつくられると説明されています。大きすぎず小さすぎないニッチな空間では、レピュテーションはワークすると信じています。現状のシステムをいい方向にハックすればいいだけです。生まれるものは、たぶんもうメディアと呼ぶべきものではないだろうなと思いますが。

新しいコンテンツ流通に沿う新しいメーカーが生まれる季節が来たかもしれません。

photo by pixabay

 

 

 

キャズムを越えるためにもっとハイプしよう

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Hype energy drink / via Wikkimedia commons

Recodeのこの記事は、偽ニュースならぬ偽テックがあると主張している。謎に満ちたVR/ARスタートアップのMagic Leapは14億ドルを調達しているが、The Informationによると「オーバーマーケティング」だと言う話であり、どうやらニュージランドの特殊映像企業がデモを作成していて、本当はプロダクト製作は思わしくないといううわさがある。

記事は過剰なレベルのハイプに注意を促していて、ごもっともだ。ただ日本はもっとハイプした方がいいと思う。

米国のハイプ・サイクル(Hype Cycle)は以下のような形(だと言われている)。

 

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Hype cycle(via Gartner/Wikkimediacommons)

 何らかのプロダクト/領域に対し期待が注がれ、やがてそれが山と谷を超えて、普通のレベルに達する。ハイプがあるから皆がそこに殺到し、いわゆる「キャズム」を越えることができる。

日本の場合、レイトマジョリティが本当に巨大な多数派を形成しており、ハイプされないので、なかなかキャズムを越えない。日本でされるハイプの一部には、例のソフトバンクのARM買収での「垂直統合型」報道とかみたいに妙だなーと思うものが多い。

日本の社会から、以下の二つをどうにかして緩和したい。

  1. リスク回避傾向
  2. 他人の失敗を全員であげつらう傾向

で、ハイプはある程度、この傾向に挑戦できると思う。ハイプしたり高い目標を掲げたりすることで、ゆったりとしたレイトマジョリティを動かせると思う。「お前ハイプに乗っかっただろ」とパブリッシャーも責められるけど、そもそもこの世の中に正しいと証明されている情報は(たぶん)ない。

あまりに権威に従うようにプログラムされすぎているから、誤報とか偏向報道とかいう言葉を肴に一杯やれるわけだ。

情報は流動性とダイナミズムそのものだ。ハイプにはいい部分もある。

 

 

宝探しのためにアメとムチに鈍感になろう

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Carrot And Stick Incentives Lead Manage | Free to use under … | Flickr

ポール・グラハム『ハッカーと画家』をバラバラっと読んでいる。

私の知り合いには学校時代にオタク(nerd)だった人がたくさんいるが、皆同じ話をする。賢いこととオタクであることの間には極めて強い相関があり、オタクであることと人気者であることの間にはもっと強い負の相関があるというものだ。賢いとむしろ不人気者になるみたいなんだ。

これで、ふと8月に合コンに参加したことを思い出した。今後、人生で「合コン」とパッケージされたものには行かないだろうが、合コンに参加することにはまあまあ学びがあって、そのうちの1つが、この負の相関性に関することだ。

その合コンはフォーマルな業界で働く女性とされた。このブログのポストを観てもらえばわかるが、私はフォーマルな業界で働く女性たちのニーズに全くかなっていない。この合コンとは関係なく、何度となく、まあまあ「やばいやつ」と認定されたことがあり、それ以降はあんま入り組んだ話はしないようにしている。

相手は自分と同じお年頃の人で、結婚を真剣に考えている(ぼくは同じ年頃の女性が結婚を真剣に考えているという『常識』すら知らなかった-ヤバイ)。彼女たちは結婚相手の条件をつくっていて、男たちがそれに合致しているかを測っているようだった。

男は常に女性にモテたいと思っているので、合コンを繰り返していくと、モテるために、女性のつくる条件に対して自分なりの最適化を試みるだろう。心理学の「強化」のプロセスを経ることになる。

強化 - Wikipedia

心理学用語において強化とは条件づけの学習の際に、刺激と反応を結びつける手段または、それによって結びつきが強まる働きの事である。広義には報酬、罰などの強化子の事もさす。

向かう方向が正しければ、強化は相当いいプロセスだ。自分に与えられる刺激(報酬or罰)に従っていれば、どんどん研鑽を積み、実力をつけていくことだろう。

ただし、アメとムチが良い目標に対して設定されていないとマズいことになる。殺人に報酬が与えられたら、殺人鬼が育ってしまう感じになる。

大きな目標を立てて、それを実現したいと思うなら、小さな報酬にこだわる必要はない。 たとえそれが短期的にとても美味しい果実のように見えても。 どんなに 厳しい状況 例えば 砂漠やジャングルや宇宙空間を横切るようなことも 自分が 実現したいことのためなら 厭わない。

必ずしも合コンでモテる必要はない。恋愛は考えようによっては「35億人から1人を見つければいいゲーム」だから。

(参考)

燃焼率改 「インセンティブ 自分と世界をうまく動かす」要約

不完全情報ゲームに強いヤツは天才芸術家だ

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Via Dacian Dorca / Creative Commons

人工知能が完全情報ゲームで人間を凌駕している。この分野では人間が盛り返せることはないが、最強の棋士リ・セドルが試合後に「柔軟性」や「新しいアイデア」を得られたと語っている。将棋ソフトと対戦した屋敷伸之九段も気風が変わったことで知られる。

将棋の研究会でも、積みがあるかないかはソフトに調べさせるらしい。

ただし、ぼくらが生きているこの世界は超不完全情報ゲームだ。ぼくはこの世界は不完全情報ゲームの塊だと思っている。そういう世界でうまくやる方法をまとめてみた。

1) モデル化

現実世界のできごとをモデル化することで、比較的有効な手段を講じることができると思う。含まれる不確実性の量が少なかったり、複雑性が少なければ、モデルは役に立つだろう。

特にリスクマネジメントが大事だ。リスクを嗅ぎ分けるのは、たぶん、直球の脳みそだけじゃない。右脳的なものも重要だ。後はリスクの類例をたくさんもっていると、不確実性をリスクに変えることができる。これらを直感的に速い判断でやり遂げたい。基本的にはプラスをもたらすたくさんのことをしていて、谷底に落ちなければ、プラスが積み上がっていく

2) ロバストネス=強靭であること

でも世界は実際には不確実性でみちみちている。ミステリアスな出来事や恐怖に対して、混乱すれば一発アウトだ。常に最低限のパフォーマンスをキープしたい。

不確実性への対処力は大きな差をつける。

3)「見える」=想像力

不完全な部分をすごく上手に推測する技術があるといい。これはたくさんの情報を染み込ませていると、見えてくるみたい感じ。それこそ将棋の「手が見える」という感じ。

だけど、これはあるポイントから想像力の領域に入るだろう。つまり、それは現実とはまったく異なる世界を思い描いているけど、それが現実世界で有効に働いたりする、ということだ。

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[結論]やっぱ芸術でしょ

1)2)を良くするだけで現実世界でかなり上手く戦える。

でも、3)。これは芸術家のような才能じゃないだろうか。メッシがDF3人の動きを予測(想像)して、体の動きをコーディネーションし、玉を動かして、想定を修正しながら3人とも抜くような。そして人間が感動するのは、やっぱ3)だよな。こういうのはまだまだ機械はやれないだろうし。

 

−−参考

「ナイトの不確実性」: モナド日記

 

人工知能とゲームの幸せな関係:三宅陽一郎氏講演の感想

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via SquareEnix

先々週、MIT Technology Reviewの日本版創刊イベントで、三宅陽一郎氏の講演を聞いた。三宅氏は人工知能研究をした後、スクウェアエニックスに入社、「FINAL FANTASY XVファイナルファンタジー15)」のAIに携わった。ゲーム内でのAI実装の権威で、本を何冊も書いている。

三宅氏の話を聞いていると、ゲームがやりたくなってきた。聴きながら感じた感想を3点にまとめる。

1.生物は知覚する世界をすべてだと思い込む

環世界 - Wikipedia

すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考え。ユクスキュルによれば、普遍的な時間や空間(Umgebung、「環境」)も、動物主体にとってはそれぞれ独自の時間・空間として知覚されている。

それをゲームの中でシミュレートしているわけだ。三宅氏はFF XVにはメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの3つのAIを活用していると語っている。 

ゲーム内のキャラクターは確かに「生物は知覚する世界をすべてだと思い込」んでいる。DeepMindのCEOデモス・ハサビス氏が携わった「テーマパーク」にもそういう来場客が出て来る。同じところを行ったり来たり…。

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Via Download Theme Park | Abandonia

[感想]シミュレーションゲームはこういうプレイヤーを多数作って、ゲームが設定した条件の中で動くようにすることで、世界を表現している。小中高生のときに「信長の野望」に夢中になったが、これらも数十の大名たちが領土を拡大するために、「戦争」「外交」「裏切りの約束」「暗殺」「国家経営」「武将・参謀を鍛える」などを行う。セーブして進めると、数ターン先の結果がかなり異なる。ゲーム内プレイヤーをプログラムし、それがプレイする人間にとって不自然に感じないようにつくるのは、とても困難な作業だと思う。

2.意思決定するゲームキャラクター

ゲームキャラクターは意思決定をする。認識(Sensor)と行動(effector)の区分が存在する。意思決定には4つのアプローチがある。

  • ルールベース AI(Rule-based AI)
  • ステートベース AI(State-based AI)
  • ビヘイビアベース AI(Behavior-based AI)
  • ゴールベース AI(Goal-based AI)

[感想]ゲームキャラクターをうまく動かすだけでも相当な苦労だ。昔のRPGみたいな単純な行動を指示するのなら簡単だけど。今のキャラクターは複雑な動きを表現している。

現実世界で意思決定に迷ったとき、ビヘイビアツリーを作ってみると、まあまあそれでうまくいくこともある気がしている。将棋の読みのような感じだ。2014年のインドネシア大統領選挙の情勢分析として将棋をモデルに、ビヘイビアツリーを活用してみた。かなりワークした。ビヘイビアツリーを使うと自分の判断、予測がかなり感情やバイアスに左右されていることがわかる。

3.フレーム問題

機械は与えられた問題だけしか解決できない。

フレーム問題 - Wikipedia

フレーム問題フレームもんだい)とは、人工知能における重要な難問の一つで、有限の情報処理能力しかないロボットには、現実に起こりうる問題全てに対処することができないことを示すものである。 1969年、ジョン・マッカーシーとパトリック・ヘイズの論文の中で述べられたのが最初で、現在では、数多くの定式化がある。

機械がもっていない、汎用的で柔軟な知性活用能力を付けていくと、オートーメーションを生かして働くことができると思った。

(参考)

新大久保の多様性を楽しもう

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via Wikimediacommons

先々週新大久保に行った。コリアンタウンのイメージが強いけど、新大久保、百人町、大久保あたりは、うる覚えの資料だと、中華系が多数派で、その他中東からアジア、ヨーロッパの他人種が共生している。いろんな言語が聞こえる街で、みんな見た目からして異なることが、すごい楽しかった。

最近、外国人の友人二組が東京旅行をして、案内役を買って出た。彼らは東京の人はデュプリケイティッド(複製された)、と話していた。スーツを着ている人たちはみんな同じ顔をして同じ服を着ている、らしい。

生命にとって多様性はとても普通なことだ。伊藤穰一の講演で、多様性はイノベーションインキュベーターだというお話を聞いたけど、本当にそう思う。

そろそろ東京滞在期間が1年半に達しようとしている。タイ在住の日本人から「あの吉田さんも日本人になったね」と言われた。やばい、そろそろ時期がきたみたいだ。

自分のラクな環境の中ではなく、多様性やノイズをもっと吸い込もうと思う。百人町に住むのはかなりいい選択肢に思える。いまのところいい物件はないが、いろんな人達と交流し続たいと思った。

 

お金と尊敬を分けてみてはどうか?

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Tax Credits / CreativeCommons

ソフトやソリューション、クリエイティビティを提供する業界では、成果に大きな差がつくことが多い。成果に報酬で報いないと、誰も努力しなくなる。旧ソ連の工場やゾンビ企業のような状況に陥ってしまう。

ただし、報酬差をつけると、構成員がその仕組みに相当納得していない限り、協力を阻害する要因になりかねない。足の引っ張り合いだ。自分の成果をいい感じに見せたり、人を押しのけたり、人の手柄を奪ったり、派閥を作って戦ったり、仲間はずれをしたりとまあ楽しくないことが起きそう。

協力によりパフォーマンスを跳ね上がらせることができるのにもかかわらず。

スタートアップは設立メンバーに株式を渡す。これによりインセンティブが一致したチームを組める(はずだ)。ただし、パイがでかくなると、もっとよこせと利害関係が一致しなくなる例には事欠かない。

そこで考えた。お金の数ある機能から、尊敬・評判をアンバンドルできないかと。

お金から尊敬・評判をアンバンドルするメリット

機械により超豊かな20☓☓年を想定してみよう。生産の豊かさは、お金を単なる交換の媒介に変えることができるはずだ。そのタイミングで金から完全に尊敬を切り離して、もともと社会的に存在する評判と合算して「尊敬ポイント」にしてしまうのはどうか。尊敬ポイントをたくさんもっていると、人々はあなたに講演を依頼したり、食事をごちそうしたり、フットサルに誘ったり、BBQに呼んだりする。

尊敬ポイント導入のメリットは以下のようだ。

  • 嫉妬しなくなる。人はとかく格差に敏感、というか嫉妬深かったり、これみよがしに金を使ったりする。でも、物質が溢れかえり、金と尊敬が完全に分離されるなら、金に対する執着心は馬鹿馬鹿しい
  • 金が人間に対し影響力をもたない。単なる交換の媒介である。価値を貯蔵しているが、金や物品はもうあんま価値をもたなくなっている。

で、「尊敬ポイント」は、このポストで触れた評判システムに組み入れておこう。

taxi-yoshida.hatenablog.com

課題はこんな感じか

  • 尊敬ポイントをめぐる馬鹿馬鹿しい争いが始まる。
  • 尊敬ポイントの基準はどうなるか
  • 尊敬ポイント至上主義みたいな感じになり、結局、尊敬ポイントがお金のいやーな感じを引き継ぐ。高い尊敬ポイントを得そうな人をとことん邪魔したりとか。

マイクロペイメントは次世代のFacebookをつくる?

The World's First Micropayments Web Walletである「Yours」。このウォレット間で交わされるマイクロペイメントの手数料はゼロらしい。

CEOのRyanXはReddit暗号エンジニア。CTOはオックスフォードでPh.D取得。

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このウォレットがバンドルされたコンテンツディストリビューションプラットフォーム(FacebookTwitterのようなもの)をつくると、よりパブリッシャー(媒体社)が収益を確保しやすいものになる、という話のようだ。次世代のFacebookYouTubeTwitterReddit、Mediumになるのだろうか。

digiday.jp

上の記事で検討したようにマイクロペイメントはデジタル媒体社にとって大きなチャンスになる。技術はYoursの他にもさまざまなアプローチがある。ライトニングネットワークなどなど。

digiday.jp

上の記事などでは、デジタル広告費におけるGoogleFacebookのデュオポリー(2社による独占)に触れている。検索広告を除くデジタル広告費は、多数のスモールプレイヤーが製作したコンテンツで、ビッグプレイヤーが大儲けする構造だ。広告はスケールに大きく依存する。コンテンツ製作者は儲かりづらい。ただ、ここでもうけた金でGoogleFacebookは他の分野で面白い試みを行ってもいる。何とも言えない。

パブマティックがeマーケター(eMarketer)とモルガンスタンレーのリサーチを独自に分析したところによると、GoogleFacebookはデジタル広告費の46%に当たる890億ドル(約8兆9000億円)を握り、54%に当たる1060億ドル(約10兆6000億円)を残りのパブリッシャーが分け合っている。しかも、2社でデジタル広告費の伸びの85%を占めている。

マイクロペイメントでどうなる?

じゃあマイクロペイメントが実現すると、どうなるのか。勝手に想像しよう。

1. 提供者側でコンテンツをプロモーションするデマンドが高まり、プラットフォームはその広告費で儲かる。

2. 広告なし。その代わり媒体社はその販売額のほんの一部をプラットフォームに渡す。

3. 広告モデル時代とは別の消費性向がでてきそう。お金を払うなら、こういうもの。タダで読めるのとは違うという感じで

こういうプラットフォームに載る、他者を大きく差別化したコンテンツとはなんだろう? そういうコンテンツを作れる足の速いチームをどう作れるのだろうか。まだ先の話だけどワクワクする。

www.youtube.com

Yours Engineering

http://doublehash.me/yours-worlds-first-micropayments-web-wallet/