デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

量子コンピューティングの足音: デジタル経済Newsletter_7/20


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今日は米有名VC「a16z」のポッドキャストから量子コンピューティングの話。

最近は人工知能開発でGPUはスタンダードになりつつある。「謎の半導体メーカー」で有名になったNVIDIAはAI特化型チップに多大な投資をしていて、この領域の独占を試みている。NVIDIAディープラーニングのライブラリを整備しており自動運転者や医療に急速な成長を見込んでいる。GoogleはTPUという人工知能の学習にフォーカスしたチップを開発し、同社の人工知能ライブラリとクラウド人工知能を水や電気のように人々に提供するビジョンをもっている。

GPUは画像処理向けで発達し機械学習への利用可能性で世界が広がった。TPUは当初から機械学習向けに開発されている。しかし、量子コンピューティングは次元が全く異なるという。

従来の高性能コンピューターの1億倍のスピードが確認されたことで、世界に衝撃を与えた。演算能力は「組み合わせ最適化問題」という膨大なデータ処理で、大きな威力を発揮する。そしてこの「組み合わせ最適化問題」を解く力は、現代のさまざまな科学に応用可能であり、数百年解けないと言われる問題を解けるようになるかもしれない。

クラウドの形で量子コンピューティングを利用できるようになるかもしれない。アプリケーションが生まれて「キラーアップは何だろう」と議論されることになるだろう。量子コンピューティングのマシンの内部は冷凍庫で超電導状態になっている。これはマイクロプロセッサ中心で発展してきたコンピューティングとは別物。

これはラスボス的な存在だ。あらゆる事象を一気に進展させる劇薬のようなものだ。世界がスマートなところに変わっていくことに使われればいいと思う。

Listen to a16z Podcast: The Cloud Atlas to Real Quantum Computing by a16z #np on #SoundCloud
https://soundcloud.com/a16z/engineering-quantum-computing-today

 

自分で自分に教える人工知能: デジタル経済Newsletter_7/14

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最も気になるニュースはDeepMindの研究者らが「自分で自分を教える人工知能」に関する論文を発表したことだ。DeepMindの人工知能が歩き方を教えている。

深層強化学習の応用で、A地点からB地点に動くことに報酬が設定されている。失敗を繰り返すが、それが学習の助けになる。

仮想のセンサーを搭載されたモデルが「前に進め」という命令を受けて動く。モデルは仮想空間上に表現された障害物や、与えられる妨害を交わして前に進んでいく。

何らかの状況が存在し、その解くべき方向がわかれば、あとはAIに投げると学習を繰り返して、その問題をクリアする、こういう未来を想像してしまう。人間のとっているアプローチとは異なる方法でたどり着いていると思われるので、われわれが知らない何かをニューラルネットワークは知っているのかもしれない。

この論文はかなりヘビーなのであとで読もう。

Emergence of Locomotion Behaviours
in Rich Environments

https://arxiv.org/pdf/1707.02286.pdf

 

www.youtube.com

DeepMindはカナダ・エドモントンに最初の海外AIオフィスを開設した。DeepMindはエドモントンにあるアルベルタ大学ともともと交流があるという。Googleのマウンテンビュー本社にもDeepMindの社員が常駐している。

Google’s AI powerhouse DeepMind is opening its first international lab in Canada - The Verge

 

MicroSoftiOSフォンでユーザがかんたんにObject Recognitionを利用できるSeeing AIをリリースした。女性を認識させると「28歳のハッピーそうに笑っている女性です」と認識。キャンベルスープの缶を見せると「これはキャンベルスープです」という。動画を観ると早いです。

www.youtube.com

Googleも開発者会議でGoogle Lenzを発表している。Amazon Goも物体 / 画像認識で、誰が何を持っていったかを認識しようという試みだろう。

本当に進歩が早くて愉しい。

 

 

インドもアリペイ型決済が主流に: デジタル経済Newsletter_7/12

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WhatsAppがインドでUPIの認可を取得しました。Wechatのようなコード型決済事業を行えるようになりました。数ヶ月前にFacebookがインドで決済事業に乗り出す噂されていました。同社のMessaging部門のトップは元PayPal幹部なので合点がいきます。

http://m.timesofindia.com/business/india-business/whatsapp-gets-nod-for-upi-payments/articleshow/59537161.cms

FacebookだけではなくGoogleUberも認可を受ける最終段階まで来ているそうです。モディ首相は昨年終わり頃に高額紙幣の流通を禁止して、キャッシュレス社会を目指すと宣言しています。この禁止がマクロ経済に響いているのが2017Q1の経済状況から明らかになりました。しかし、モディさんには曲げないでほしいですね。

インドでも中国型のペイメントの状況が生まれそうです。アジアで起きているイノベーションは本当に興味深いですね。

ビットコインマイナーの深い闇: デジタル経済Newsletter_7/12

日曜日から月曜日にかけて暗号通貨が暴落しました。引き金と見られているのは日本人投機家が投げ売ったことです。

https://twitter.com/ETHxCC/status/884588903180640256

取引額の最上位をビットフライヤーが占めてたようです。同社が昨年から広告を打って集めてきた、FXや株から流れてきたり、投機の初心者だったりする層が投げ売ったのでは、と推測されます。

主要なコインのファンダメンタルズはあまり動いていません。土日にかけて、Adam BackやYoursのRyanなどの間でスケーラビリティ問題をめぐる議論がTwitterで交わされていましたが、特に際立った進展を感じ取れませんでした。

Litecoin創設者のCharlieらは、BitcoinのMemory Pool(ブロックチェーンに格納される前のtxを貯めておくプール)が満杯だとされていたが、実際には誰かがスパムtxを仕込んでいるのではないかと暗に指摘しました。指摘時にはMemory Poolは空っぽで再び安い手数料とスピーディな取引を楽しめる状態でしたが、その後怪しい感じで再び溢れんばかりになりました。

https://twitter.com/SatoshiLite/status/884011944708931588

満杯状態で得をするのは、その見返りに高額の手数料を請求でき、ブロックサイズの拡大でより自身の立場を強化できるマイニングプールでしょう。マイニングプールは一枚岩ではないのですが、この件には何らかの協定があったと推測されます。

これらを踏まえますと、Segwit 2xはとても政治的な落としどころなのですが、短期的なビジョンに拘泥しています。Bitcoinをスケールさせた後から様々な収益ソースを拡大した方が長期的利益に適うのは傍観者からわかるのですが、利害関係者になるやいなや冷静な判断を下せなません。

これを踏まえると合理的な投機家はBitcoinを売って、有望そうなアルトコインを買うでしょう。したがって今回の暴落は極めて不合理行動が起きたと推測されます。情報が偏在していることに加えて、興味のないことに脳の回路を遮断する「バカの壁」効果が組み合わさり、不確実性の塊のような市場になっているのでしょう。とても興味深いです。

 注目記事

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モバイルペイメント VS 暗号通貨:デジタル経済Newsletter_7/10

最も気になるのは、ファーウェイCEOがGDPの50%に達したケニアのモバイルペイメント「M-Pesa」などに触れたプレゼンレポート記事です。Bitcoinが足踏み状態が続いているが、新興国ではアリペイ、微信包銭形のモバイルペイメントの普及が進んでいます。モバイルも銀行口座も持っていない低〜中所得者に対してモバイルとプリチャージ・コード読み取り型の、資本蓄積、支払手段を渡せば、ネットワーク効果が生まれそうなのは自明です。

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これらは暗号通貨と合流するのか、並列するのか、それとも暗号通貨よりも大きなパイをしめるのか。富裕国でこれを行う課題は、モバイルペイメントが既存金融機関・クレカ会社との提携が必要で、レガシーインフラの利用と、マージンの切り分けが必要になるので、ユーザーセントリックさを一部欠くことになります。だから富裕国には暗号通貨からの金融革命の方が簡単にもたらせるはずだと私は考えています。

ファーウェイはデバイスメーカーとして、新興国で勃興するこの決済ビジネスに絡もうとしているはずです(だからプレゼンで紹介するわけです)。モバイル製造は山あり谷ありでしょうし、発展途上国ではBATと競争しないでモバイルを基点に他のビジネスに食い込めるので、チャンスと考えているでしょう。

注目記事

円Yes銀行No! 画期的な暗号通貨Zen : デジタル経済Newsletter_7/7

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もっとも気になるニュースは一日遅れだが、仮想通貨のZen。これは「『日本円』みたいなものを銀行なしで使いたい」という仕組みですね。銀行口座に入るとそこから非効率的な仕組みを経由してタックスを取られます。つまり銀行は個人や法人の経済活動のコストになっています。「今までは応じていたけど、暗号通貨を使えば、もっと効率性が増すな、やってみよう」となったのです。

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例えば、某銀行のシステム統合、4000億円程度かかる見込みらしい。高すぎるんじゃないか? これ誰が負担するか? 某銀行のユーザーです。こんな話があっていいのだろうか。 しかも内実がこのブログのような感じらしいのです。100年古い話ですね。

https://anond.hatelabo.jp/20160707182245

ATMから現金を引き出したり、送金したりして手数料を上納しないといけない仕組みはおかしい。銀行のデータベース上で数字を移動させるだけの話なのですが、全銀ネットや銀行の勘定系と呼ばれるレガシーは80年代に完成した仕組みでビフォアインターネットの世界のものだ。 

他にも税理士・会計士、国税庁などの役割も暗号通貨の活用により簡略化が可能だと考えられます。エストニアは暗号通貨は利用していませんが電子政府とキャッシュレス化のおかげで税理士・会計士の役割が大きく縮小したと言われています。

税理士が消滅する日 エストニアの現状から考えたこと – 谷口孔陛税理士事務所

日本のように「法律的にはこうなってるので、このやり方だとこのようなリスクがあります」「御社の状況だとこんな節税が効果的です」というようなサービスは必要ない、ということになります。 

(中略)

同業の方ならわかっていただけるでしょうが、「税理士」という仕事が成り立つのは結局のところ日本の税制が複雑だからです。

この税制が変わるかどうかは、日本の官僚組織がどう動くのか・政治的にどのような流れになるのか、という部分が大きいので、講師の方もおっしゃってましたがこればかりは予測ができません。

税理、会計の管理に人的資源を割くのが大変になるほど、日本の人口は減っていくはずです。人的資源をより生産性の高い仕事に振り向けていくことが重要になっていくでしょう。

クラウドが描く未来。東欧の小国エストニアから税理士が消えたわけ|MFクラウド 公式ブログ

注目記事

  1. ブロックチェーンスタートアップOmise Go、タイのオンライン決済企業を買収。シンガポール本拠、日本人CEO。先月のICOの資金で買収。怪しいICOが多い中真面目な印象で、応援したい
  2. Omise acquires online payment business Paysbuy from Thai operator Dtac | TechCrunch
  3. メルカリがライブコマースに参入――まずは芸能人やタレントが登場、順次対象ユーザーを拡大予定 
  4. Amazonがワイン開発をしている。Amazon is now developing its own wines - Recode
  5. Deepmindの北米ブランチはカナダ・アルベルタ大学。Why Google’s newest AI team is setting up in Canada - Recode
  6. 中国が自動運転者開発で猛追走を開始。The Chinese Plan to Take Over All Self-Driving Cars - MIT Technology Review
  7. Accenture Interactiveの広告業界進出が半端ない。Accenture Interactive Is Taking Over The World, But It Won’t Be The Next Holding Company | AdExchanger

 

追記:時間があれば週末これを観よう

d.hatena.ne.jp

 

 

日系退職→起業、外資系がブーム:デジタル経済Newsletter_7/6

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注目記事

  1. 「私が国内最大手からインド系に転じた理由」。NTTデータの子会社で社長だった大西氏が全世界売上約1兆1495億円(2016年度)のインフォシスに移籍した経緯
  2. NECを退職し、新会社を立ち上げました。 - KaiGaiの俺メモ

  3.  SamsungもAI搭載ホームスピーカーをローンチ

  4. Bill Gates 15 predictions in 1999 come true and it's scary how accurate he was

  5. IBMのWatsonはマーケティングで盛り過ぎだが、大手企業管理職クラスの年代からの信頼や医療関係のデータをがっちり抑えているので、医療関係では有利

    A Reality Check for IBM’s AI Ambitions - MIT Technology Review

  6. 電灯型のAR投影機を使えば、オフィス作業は全部終わる

    Augmented Reality on Your Desk—All You Need Is a Lightbulb Socket - MIT Technology Review

1へのコメント:受託のIT人月産業、本格的な終わり

インドのインフォシスがこんな大きな企業だったとは。大西氏に限らず「日本村」から抜け出すと不満を言いやすくなるかもしれない。

これまで、ITを使った業務改革は、マッキンゼーやBCGといった「戦略コンサル」がトップにあり、その下がPwCやデロイトなどの「総合系コンサル」、その下にNTTデータなどの「ITコンサル」があるというピラミッド構造だった。起点はつねに戦略コンサルであり、いわば「文系」の考え方でできていた。

文系主導が大間違いだったことはよく分かる。MBAをこねくり回す人はそんなたくさんいらない。

大手銀行のシステム統合のような「何万人月規模」のプロジェクトはいまが最後で、受託請負開発だけの会社はもう生き残れない。そうした変化は2020年までに起きるはずだ。その時、先端的なスタートアップ企業や、インフォシスのようなアバンギャルド外資系のIT企業が、市場シェアを大きく伸ばすことになるだろう。 

裏を返すと、2020年の東京オリンピックまで東芝のような伝統的な日本企業の退場がまた起きる可能性は濃厚だ。

2へのコメント:伝統的な大企業ではできないことなのだろう

今後は、前職では実現できなかった、GPUSSDなどヘテロジニアスな計算機資源を活用する事で、高性能、低価格、使いやすさを両立するデータベース製品の事業化を目指していく事になります。

で、あれば、5年前に自分が作り出したソフトウェアが飼い殺しのような状況のまま、後発の競合が次々に先を行くのを指を咥えてただ眺めているという選択肢はあり得ない。そう考え、NECを出て自らPG-Stromを事業化するための新会社を立ち上げる事を決意した。

プロジェクトのガバナンスを現場から離れた人が握る事への不安はどうしても拭えなかった。

最近退職ブログ流行っていますね。提示される問題があまりにも似通っているのは、日本の企業社会の過激なる単一性のせいではないでしょうか。

 

追記:素晴らしい公共事業だ! 

メディアを民主主義から解放する

マスメディアは多数の人間に一方的に情報を与えて、アタシの言うこと聞きなさいという形に設計されている。社会学かあるいはポエムのようなものを基に作られた情報が多くを占めるだろう。

もちろん、人には真剣に受け取るべきメディア情報だけではなくて、何というか時間つぶしみたいな情報収集のフェーズがあるのはわかっている。戦略とかゲームとかお金とかそういう話を四六時中やっていても飽きない退屈なおじさんになりつつある僕には偏見が生じていて、それがうまく理解できなくなっているくらい中央値から外れていることはじゅうじゅう承知している。

だけど、そういうスナッカブルコンテンツで世の中の人間の行動に影響を与えるのはいかがなものかと先週末、銭湯で都議選の中継を見ていて感じた。マスメディアにいる人はこういう選挙のコンテンツを作るときに、公職選挙法がなんちゃらかんちゃらを気にされているみたいだった。彼らが大学までに受けた平均点教育の馬鹿馬鹿しさを大爆発させているんだなと感じた。我々が受けた教育の多くは無意味で、ときに変なバイアスを生むんで害もあるだろう。

平均値は平均値に過ぎなくて、エレガントさや妥当性とは全く無関係だよ、ということを示して、その結果平均値を宗教的に愛している人たちを無駄に怒らせて足を引っ張られるということを繰り返してきたのが、僕の30年ちょいの人生なんだけど、最近はついにそういう攻撃に対してかなり高い守備力とやんわりとした反撃力を身につけて来たなと感じている。

民主主義はすごい大切なものだという教育がされているが、多数の人間によるグループの意思決定方法としては余りスマートではないのが現実だ。ポンコツと言ってもいい。マスコミは民主主義が自分らの価値を大きく支援するものと心得ているので「民主主義がなんちゃらかんちゃら」という話を延々とやるし、選挙が何か大事なものを決しているかのように人々に信じさせようと必死にすらなる。でももちろん選挙は茶番だ。
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議会制民主主義は草であり機能性に乏しく時間を無駄にする。ロビーイングに対して脆弱で、都議会のドンのようなスマートではないインフルエンサーを作り、テニスコートの誓いで排除したはずの権威者を再発明してしまう。しかも官僚はそれを骨抜きにしようとしていて、政治家といつでも水面下の闘いをやっている。最近の安倍政権のゴタゴタはわかりやすく言うと「政治家 VS 官僚Vol89」であり、官僚の逆襲が成功するか、が最大の関心事。最近の政権周りが常軌を逸する感じなので、官僚さんガンバッテになっているけど、制度がそもそもポンコツなんですね(制度の改良自体は多分簡単。でも既得権益者が多すぎてその人たちが大変)。

ここでいきなりBitcoinの話を持ち出すと、Bitcoinはその機能を世界中の人々が利用可能な形にしようとするそのかなり手前で、ステークホルダーの利害関係が衝突してデッドロックになっている。そうこうしているうちに、他の暗号通貨が追いかけてきていて 、自分らの利益をどんどん小さくしている。つまり内々のゴタゴタに拘泥しているうちに、外側の世界に追い越されようとしている。

で、話をアクロバティックに戻すと、日本人の多数派は日本の中しか見えない。アジアの他の国に対して優越しているスゲー国だって日本のことを考えるように刷り込まれている。しかし、実際には日本って相当落馬しているよな、って他の国の人から見られている面はある。例えばシンガポールに行ってニュース番組を見てください。あるいは、他の国の若い大卒オーバーっぽいやつに、素朴に日本はなぜ20年間経済成長していないのかとか聞かれてみる。あるいは、日本人グループは国際的な場で他と意思疎通が苦手でときに排他的なのは、武士道と関係しているのだろうかとか尋ねられてみてください。

変なメディアの使い方で「大日本人」を外の世界から隔離して誤魔化しちゃいけなくて、一部の高齢者かつ支配層が抱く日本をめぐる時代遅れの幻想を若い人に伝染させちゃいけないよね、と思った。そう銭湯でテレビを見ていて本当に思った。こういう嘘が続くのはそんなに長くないよなと思うし、もっと人間は自由に暮らせるはずよ、変な情報を刷り込まれない限りは。

 

 

 

 

Litecoinの中国詣でが上々な感じの件:デジタル経済Newsletter_7/5

 

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  • Charlie LeeがLitecoinのマイナーや地元起業家らをめぐる中国・武漢詣でを敢行している。一部のミートアップには女性がかなりいる様子でギークなこの界隈では驚きを隠せない。

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コメント: 中華系の送金需要とれれば

  • Bitcoinの機先を制してSegwitのアクティベートを認めたマイナーたちとCharlieら開発者の関係は良好のようだ。@SatoshiLite 、@TheRealXinxi、@shaolinfry を含めたLitecoin開発者は在外中華系で占められている様子。本土中国人と関係が深くなりやすくはある。世界中に散らばる中華系の送金需要は世界最大だろう。
  • Bitcoinがごたごたで導入できないアップデートをいち早く取り入れていくことで、ステークホルダーのインセンティブは一致している。Bitcoinの混沌とは一線を隠している感じだが、ハッシュレートシェア2位のトラブルメイカーJihan Wuの影響力をどれだけ削げるかで、Bitcoinと同じ困難を回避できるかが決まりそう。

 

分散と集権のミックスがビットコインの最高のガバナンス:デジタル経済Newsletter_7/4

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    • ビットコインのコア開発者である、Luke Dashjrは、Jihan Wuが「『Segwit 2x』を提唱する目的はSegwit実装を遅らせること」と指摘。8割によるラフコンセンスを規定するBIP91が、20%以上のハッシュパワーをもつマイナーによる拒否権を認めている点などを批判。UASFが最善策という考えを示した。

    • ビットコインのネットワーク混雑が解消、手数料再び安く。10円程度。投機的な資金がEthereumに移行したという説。一時的なネットワーク混雑の緩和か。トランザクションスピードの問題は残している
    • ライトコインの創設者チャーリー・リーが中国を訪問。マイナー巡り。今日はBitmainのJihan Wuと会う
    • Jihanはマイナーによるイカサマアルゴリズムである、Asic boostを使っていない、あるいは皆が使えばフェアになると主張
    • イーサリアムマイニングに適したグラボの需要が沸騰

コメント

BitcoinのSegwitを巡る議論は視界不良だ。UASFはトランプの大貧民の「革命」を制度化することになる。同じ数字のカードが4枚揃ったら、みんなが「革命」を行うとなると、ガバナンスに不安を残すかもしれない。一方、Segwit 2xの方向性で進むと、非中央集権を志向する開発者が意欲を失うかもしれない。

課題だらけの中央集権に依らない金融・貨幣を生み出すことが、Bitcoinの重要な思想だったはずだが、非中央集権・分散型のガバナンスにも伝統的な課題があることを思い出させてくれる。中央集権と分散が不可分なくらいに溶け合わせることが、素晴らしいガバナンスを築くための重要なカギだというのが直感的に感じられる。

追記:ビックブラウザーがあなたを見ている

デジタル経済Newsletter_7/3

こんにちは。

このニュースまとめですが、今後はできるかぎりニュースレター形式をとろうと思います。毎朝更新でデジタルエコノミーに関する有用なサマリーをお渡ししたいと考えています。ある程度のレベルに達したらニュースレターも検討しますので、ご要望などお伝えくださいませ。

▼注目のニュース/ブログ

*CASHを「らくちん買い取りアプリ」だと思ってる君のために、おっさんたちがこんなにも騒いでいる理由をお教えしよう

hajipion.com
Kanye WestJay-Zの音楽ストリーミングサービスであるTidalから離脱

*The Boring Companyが来週にもトンネルを掘り始める見通し

*ドローンにIDを付与することが検討。飛ばしている主体を確認できるようにする

AppleiPhoneの死に準備を開始

コメント:CASHのようなアイデアを罰さない国に

ブログポストはCASHがとる貸金業ではなく質屋というポジショニングが高利のマイクロファイナンスを可能にしていると主張しています。「グレーゾーンだとか闇金2.0だとか色々な意見がある中で、AirbnbUberが『ほらそうは言ってもみんなめっちゃ使ってるよ』と保守派を黙らせたように、BtoCレンディング領域における革命をカッコよく決めてほしい」はまったくもって同感です。Hajipon氏はUXデザイナーということですが、レギュレーションに精通しているようです。

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日本政府は明確に「規制の罠」に陥っていますし、伝統的な大企業の中でも同様の状況があります。東芝メモリの件で舛岡富士雄氏の注目が高まっていますが、何に対しても規則を適用して、クリエイティビティを削いでしまう慣行が崩れることを祈っています。

他にも同じブログで取り上げられた、日本の資金決済法などのレギュレーションとその下での決済スタートアップの市場参入方法を説明した「ユーザー体験から紐解く「個人間送金」アプリの仕組みと歴史(日本編)」も分かりやすいです。

ユーザー体験から紐解く「個人間送金」アプリの仕組みと歴史(日本編) | hajipion.com

私も「デジタル決済革命はアジアで起きている:先進国凌ぐ中印」(DIGIDAY[日本版])で、事業者の立場から一歩引いて、市場環境の考察を行っています。

コメント:iPhoneの死は必然

Appleプロプライエタリプラットフォームの優位性はほぼなく、消費者が合理的なスペック評価とコスパを考慮すると購買の対象じゃなくなります。音声アシスタントなどのインターフェースの多様化が、スマホというフォーマットの絶対性を奪うはずです。

 

 

 

デジタル経済Newsまとめ_6/30朝

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デジタル経済Newsまとめ_6/29朝

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  1. アリババがシンガポールECのラザダにプラス10億ドル注入。東南アジアは絶対アマゾンに渡さないと宣言している感じ
  2. NBCUがプレミアリーグをライブストリーム開始
  3. 世銀がブロックチェーンラボ開設
  4. 日本マクドナルド、「UberEATS」を導入
  5. NutanixとGoogle Cloudが提携発表。ハイブリッドクラウドを構成し、アプリの相互運用、Kubernetes対応、ディザスタリカバリなど実現へ 。
  6. Facebook、MAU20億人超え

コメント

  • 勢いを失い気味のラザダを買ったアリババ。インドはAmazonにとられそうなので、東南アジアは渡さないというムード。Amazonはホールフーズ買収でキャッシュを減らしたので、アリババは先に資金を注入しておいてテキの本格参入を牽制しているかもしれない。

デジタル経済Newsまとめ_6/28朝

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  • EU、Googleに24億EUROの罰金。欧州委は検索での独占的地位を利用して自社のショッピングサービスに有意な運営をしていると認定した。◁EUが巨人に対して再びむき出しの敵意を示した。忘れられる権利や租税回避、そして今回も俎上に上げられた独禁法。確かにGoogleは独占的だ。しかし、EUはイノベーションとも決別しようとしているふうに見受けられる。Googleを押し出してGoogleのコピーを生み出す中国流は欧州には当てはまらない。日本と欧州は前進を拒否してやがて忘れ去られる存在になるだろうか。余談だが私は欧州が嫌で飛び出した欧州人と仲良くなりやすい。
  • 他の小売業者が出し渋るなか、広告費を膨張させるAmazon◁お金は貯めるものではないとAmazonは言っている。日本企業はどうだろうか?
  • ネット社会で取り残されるアメリカの田舎WSJ]◁ドローンや気球によるコネクティビティが急がれる
  • イーサリアムに浴びせられるエゲツないショート。最高値の50%台の水準まで価格が下降。
  • ソニーがAIで自前主義から外部連携に転換◁なにをいまさら。時間が止まったかのような遅い決断。ソニーのAI技術は、現代のものではないだろう。日経の記者・デスクは「取材したのにプレスリリース原稿」を改めるべきだ。これで月4000円は羨ましい。
  • AIは米中、GoogleIBMMicrosoft。日本も割と食らいついている。

高成績・低ランクな人を作らない評価体系とは?

テニスのATPランキングは非常に「明確」な仕組みをしています。プレイヤーがどれだけトーナメントを勝ち抜いたかが重要であり、対戦相手は考慮されません。新人が組み合わせに恵まれてトーナメントでベスト4を連発すればランクはぐいぐい上がっていきます。

デル・ポトロ問題

しかし、このシンプルなレーティングは対戦相手の有利不利を全く考慮に入れません。これを「デル・ポトロ問題」と呼びましょう。アルゼンチン人テニスプレイヤーのフアン・マルティン・デル・ポトロは2017年6月27日現在、ATPランキング31位です。彼は2009年に当時世界最強だったロジャー・フェデラーを破って全米オープンを倒した実績があり、その後も上位ランカーにコンスタントに勝ち続けています。しかし、ケガが多いので参加トーナメント数が物を言う現在の仕組みでは評価は低いのです。

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Via WIkimedia Commons

これを対戦相手の強さをもとにスコアを与えるElo Ratingで測ると彼は世界5位です。このレイティングの方が彼のようなタイプを評価できます。錦織圭も6位に上がります。とても興味深い結果となりました。

では、これを一般的な日本企業に応用してみましょう。よくあるストーリーを組み立ててみました。

簡単な問題を優雅に解くA君

皆が理解できる簡単な問題を見つけて説くのが大好きなA君がいます。A君はセルフブランディングが上手です。大したことのない問題を、大げさに困難を乗り越えたふうに見せることが上手です。A君は他の人が同じような簡単な問題を格好つけて解くのを見つけると、その人にプレッシャーをかけて皆の前で失敗させます。評価は相対的なものですから、それがA君の利益にかなっています。

A君は多くの人の関与により成功した仕事において、自分の貢献が最大だったという評価をつくることにも精を出します。彼は周りの人たちに「デキる人」という評価を刷り込むために、仕事をする以上の時間を割くのです。先輩や後輩と飲みにいって静かにシグナリングを繰り返します。経験不足の一部の人はその偽情報につかまり、A君をヒーローのように崇めます。

難しい問題を静かに解くB君

一方難しい問題を解くB君がいます。B君は難しい問題を解くためにいつも四苦八苦していますが、表面上静かにそれをクリアします。難しい問題はタフなので、一喜一憂したり演技をしたりしていては全然解けません。そもそも彼が解いている問題の難しさを理解する人がまわりにはいません。彼はそれをまわりに説明する時間が惜しいとすら考えます。B君が難しい問題を解いたことが、大きな要因としてもたらした成果は、A君のようなタイプの手柄として記憶されます。B君は自分が出した成果のほとんどを報酬への還元として楽しみません。

成果と関係のないクジャクの羽

ということで、組織がレーティングを誤った形で進めていくと、皆が皆「クジャクの羽」をきれいに見せることに精を出します。クジャクの羽は生存競争そのものにおいて、獲物に狙われやすくなるというディスアドバンテージしかありません。しかし、クジャクのメスはオスの「羽」を評価しますので、クジャクのオスは本質と関係のない場所に一番リソースを割きます。馬鹿げた状況ですが、これはあらゆる組織で起きていることではないでしょうか。

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クジャクのオス・メスと人間の男女は対応しません。私は性差別主義者ではありません!Via Pixabay

こういうことが起きると組織からは難しい問題を解く人がいなくなり、A君のようなタイプやA君のような人と仕事をしていて心地いいタイプばかりになり、評価のハックに精力を注ぐモラルハザードが蔓延します。結果として組織は著しくパフォーマンスを失っていきます。

偽物をどう定義するか

B君とデル・ポトロは本当に似ています。A君のような偽物を発見し、どう低く評価するかも重要です。私たちが組織の中で下す評価はときに誤っています。誤っていても皆が納得している「説明」と、複雑だけど合理性はある数理のどちらを採用するべきでしょうか。悩ましいですが、前者でないことは確かです。