デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

ハードディスク、ストレージ、ファイルシステム、データ構造、それから『Googleを支える技術』

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分かっているようでしっかり分かっていないことのおさらい。

https://youtu.be/KN8YgJnShPM

コンピュータは物理的に記録されているデータを、ファイルシステムという形で抽象化している。ぼくたちはファイルをドラッグして動かすみたいな操作をしているけど、それはこういう抽象化が積み重なってのことなんだね。

https://youtu.be/TQCr9RV7twk

こっちではメモリとストレージのデータ保存の性質における階層構造が学習できた。ストレージのハードウェアの変化もしていて使っているMacBookに載っているSSDについても理解が深まった。

このおさらいに行き着いたのはこの本を読んでいて、Google File Systemの説明のところで気になったから。

 

Googleを支える技術 ?巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)

Googleを支える技術 ?巨大システムの内側の世界 (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)

 

この本は数年前に一度読んだんだけど、あのときは何も理解していなかったんだなといま感じられる。この本は論文を簡単な言葉で説明してくれているが、それでも今もまだ知識が追いついていない。しかもこの本は2008年刊行なので10年のブランクがあるみたいなんだな、ふうー。

Bjgtableは既存のデータベースでは扱えないほどの巨大なテーブルを作ることができる。そこに格納するデータ構造は開発者が自分で設計し、どのようにデータを分散させるかをコントロールできるようになっている。データ構造についてどのような設計を行うかは、プログラム(アルゴリズム)の効率に大きく影響する。Googleは速くて正確な検索を行えるようなデータ構造を採用したということ。データ構造に関してはこの動画でおさらいした。

Google分散ファイルシステムの整備がビジネス面で果たした役割については、当時開発メンバーだったMohit Aronのこの記事もとても参考になる。

Yahooの場合、NetAppシステムという形で必要とされるサーバー数の猛烈な速度での増大に対処しようとした。YahooのほとんどのサービスはNetAppストレージ・デバイス上で作動するようになり、同社のサーバーの設定と追加は非常に簡単になった。これによりYahooは需要に対応することに成功し、自身としてもNetAppデバイスの最大のユーザーとなった。

しかし(たまたま近所のマウンテンビューに本社を構えた) Googleは独自開発のソフトウェアをインフラとする戦略を採用した。これはその後GFS―Google File Systemとして知られるようになったが、専用ハードウェアではなく、あらゆるサービスに対応可能な汎用性の高いソフトウェアを中心としたエコシステムを構築しようというものだった

 そして彼はこういう教訓を伝えている。

往々にして「ゼロから考える」ことは目先の成長を犠牲にする場合がある。動きの速いシリコンバレー企業にとっては、その意味で「苦い薬」だが、長期的な持続可能性を考えたとき避けては通れない。即効性はあるもののその場限りの対応は結局のところ複雑性と処理コストを加速度的に増大させるというはるかに重大なリスクを持ち込むことを意味する。Googleはあらゆるウェブ・サービスに適用可能な柔軟性と単純性を目標としてGFSを開発した。それに対してYahooの複雑なインフラは、一時的に成功を収めたものの、長期的にはYahooのビジネスに今日見られるような限界を持ち込む原因となった。

人間は似たような過ちを繰り返しているのは、歴史の教科書が教えてくれる数少ない教訓の一つだと思う。

僕はまだこれに成功していると思う。パブリッシャーというものの機能や、コンテンツ製作をゼロから考え直してきた。目に見える成果がないときに、こういう方針は、人を説得しにくい。だから私はずっと1人でAxionというプロジェクトを進めてきているけど、条件が揃ってくれば有意な遠回りを評価できるメンバーが揃ってくるはずだ。

Googleのシステムは汎用性、スケーラビリティ確保しているが、ビジネス面に視点を変えてGoogleを眺めてみても、コンテクストは違えど汎用性とスケーラビリティという性質を持っており他を圧倒している。

第1章の検索の仕組み、第2章の大規模化も楽しく読んだ。Mapreduceについてはまだうまく飲み込めていない。学習することはまだまだたくさんあるんだね。

 

【技術書】Amazon Web Servicesクラウドネイティブ・アプリケーション開発技法

 

Amazon Web Services クラウドネイティブ・アプリケーション開発技法 一番大切な知識と技術が身につく

Amazon Web Services クラウドネイティブ・アプリケーション開発技法 一番大切な知識と技術が身につく

 

アプリケーションの構築にはFirebaseを使うことにしているので、AWSの学習は全く喫緊ではないけど、基本的に行えることは似ているので、ざっと読んだ。この前ManabiyaといいうイベントのときにAWSの人の講演があったのだが、どうせ使わんからパスして結局押さえるハメに。

実行するべきコード載っていて、それを写経していけば基礎的な処理を進められる、とてもユーザフレンドリな本。Chapter4以降のアプリケーションの実装はためになった。

API GatewayとLambdaによるサーバ連携するモバイルアプリケーション

  • 静的データ(JSON)はS3に配置する。
  • 動的データ(JSON)はAPI Gateway経由DynamoDBとLambdaから取得
  • アプリケーションから呼び出すAPIAPI Gatewayを利用して作成する

Androidアプリ。JSONがうまく理解できていない感じなので復習。JavaScriptのオブジェクト表記構文のサブセット。下位体系の表記法か。すでに主要なプログラミング言語にはJSONの生成や読み込みを行うライブラリが存在するため、JavaScriptに限らず言語をこえたデータ交換のためのデータフォーマットとしてJSONを利用することができる。

これがわかりやすかった。

Authentication, AuthorizationもAPI Gateway, Cognito, Lambdaの組み合わせで実現できる(Firebaseのがもっと簡単やね)。IoTデバイスからデータを収集するアプリの構築方法も説明されていて、今後はこういうの増えてきそうで、恐らく取得されたデータに対して即時的なアクションをとる機械学習モデルをAPIを叩いて用意するというのがトレンドになりそう。実際、自動運転者なんてのはその超絶最先端なわけで。こういうの作るのを代行するサービスもあってどっかが買収したなあ。マーケティング時代にはこういうのよく考えていたなあと思い出し、数々の苦々しさも一緒にやってきて、頑張る気が超絶出てきた。

まとめ

  • やっぱGCP使おう
  • やっぱFirebase使おう

【技術書】たのしいインフラの歩き方

 

たのしいインフラの歩き方

たのしいインフラの歩き方

 

サーバレスアーキテクチャのSingle Page Applicationを作っているのだが、なぜかインフラの方の本を手にとってしまった。本書はドリコムのインフラエンジニアである斉藤雄介氏がスタートアップがインフラを構築し、イベントに備えて行くべきかという視点で書いているので、スタートアップやプロジェクトマネジャーをやる人にとって、必見の書だと思う。とても平易に説明してある。

金で時間は買えても、組織の文化や技術力は買えない

で、49ページの「金で時間は買えても、組織の文化や技術力は買えない」の件はとても含蓄のある言葉だと感じる。SaaSの使い方だけに習熟しているとベンダーロックインされてしまうし、OSSで鍛え上げてきたチームからは新しいものがどんどん生まれ柔軟性を持てるけど、SaaS頼みだとこのふたつをベンダーに吸着されてしまう。SierSaaS頼みのJapanese Big Companyはここらへんが競争劣位として表出してくる場面をいつか迎えるだろうな、というか、いますでにそうか。

オフィスの構築はデータセンター構築よりも慎重に

オフィスの「脆弱性」あるあるとして、ブロードキャストストーム電源ケーブルの露出などがあげられています。インドネシア時代はこのような初歩的なトラブルがたくさん起きたのを覚えています。社内ネットワークも新聞記者の人がまあまあ適当にやっていたし、経営者が余り予算使いたがらなかったせいでハードウェアや設定上のボトルネックがたくさんあったのを思い出しました。インドネシアのカルチャーは「ダマシダマシやっていく」で、解決をみたのはオフィス移転後だったなあと。ただこの問題は現代的なオフィスやコワーキングスペースに行けば解決されるかなと。企業規模が拡大するときは素早い基盤整備が必要だと思う。インフラは丹念に育てないとボトルネックになるし、問題が問題を呼ぶことが繰り返されて疲弊する。それにクラッキングの標的になり信頼を失うことになる。

 クラウドを使え

スタートアップ時期はクラウドを使うべきとのこと。説明不要だろう。NetflixAWSの上にマイクロサービスを構築しているところからわかるとおり、相当事業拡大しても、特殊な理由がない限りはオンプレ活用は限定的になるはず。本書ではデータセンタ構築等に触れられていて、インフラエンジニアは本当にハードウェアからソフトウェアまでたくさんの知識を持たないと成り立たないみたいだ。

 インフラの大規模化

ここはこの記事とほぼかぶるので割愛する。

で、仮想化(Virtualise)についてはとても気になるのでもっと掘り下げよう。

まとめ

インフラに関してはスタートアップ初期はクラウドに頼ることになるだろう。可用性が高く、事業拡大、縮小に伴うコスト面の調整もつきやすくて言うことない。けど、インフラエンジニアがいらないかというとそういうことは全然なくて、Netflixのマイクロサービスを編み出し運用し様々な手法を作り出す、あのチーム(名前忘れた)みたいなのが作れるといい。その前にサービスが成功しないとなんだけど。

 

 

【技術書】サーバ/インフラを支える技術

 

[24時間365日] サーバ/インフラを支える技術 ?スケーラビリティ、ハイパフォーマンス、省力運用 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

[24時間365日] サーバ/インフラを支える技術 ?スケーラビリティ、ハイパフォーマンス、省力運用 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

 

さっと読んだ。冗長化、負荷分散の章は楽しく、他で読んだGoogleのDatacenterに関する文章が思い出され、記憶が整理、強化された気がする。動的コンテンツと静的コンテンツをWebサーバを分けて対応する手法が説明されている。

ワンランク上のサーバインフラの章では、MySQLデータベースのレプリケーションについて説明してあるが、MySQL使う機会はあるのだろうか。ストレージサーバは単一障害点になりやすいだけでなくボトルネックにもなりやすい。ストレージサーバの冗長化ではRAIDだけでなく、DBRDのミラーイングに触れられている。

OSI参照モデルでの、より低位なレイヤに関する話、物理的なネットワークやEthernetレベルはかなり深めの話だが、ハードウェアが想像しやすく抽象性はむしろ低いのでわかりやすいように感じられた。Linuxについては現状サッパリ手も足も出ない感じだが、Apacheの知識はフロントエンドとの絡みでMyProjectにおいて即効性を感じた。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/OSI%E5%8F%82%E7%85%A7%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB

Apacheのマルチプロセッシングモジュール(MPM)は二つの種類がある。preforkはクライアントからリクエストが届く前にプロセス/スレッドを先に分けておく。workerはマルチスレッドとマルチプロセスのハイブリッド。詳しくはこのブログわかりやすかった。

 http://norikone.hatenablog.com/entry/2016/01/21/Apache2.4%E3%81%AEMPM%E5%91%A8%E3%82%8A

省力運用の方法についても説明されている。サーバ保守は当たり前だと思われているものを作り上げる仕事だがそれを低いコストで確実に行うことが重要なのだろうと思った。

まとめ

本書で触れられていることは今やクラウドで気にしないでWebサービスを構築できるようになっている。ただしサービスが成長を開始した時点から次第に放っておけない問題になってくるし、Webやネイティブのアプリケーションの設計もこの基層の知識の有る無しは聞いてくるのでは、と思う。

ただ本書2008年の刊行でかなり古いのを考慮しないと。

アラン・チューリング(Alan Turing)について

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この記事で話したように、Webアプリを作りながら、基礎的なコンピュータサイエンスのお勉強をしていますが、アラン・チューリングAlan Turing)の足跡の大きさには感じ入るところがあります。この学習と『斉木楠雄のψ難』と『ワールドトリガー』が楽しすぎて、主たる目的がおろそかになっているかもしれません。

文字を追うだけではなく、映像を差し挟むとやっぱ脳みその吸収効率が上がる気がします。英語圏には素晴らしい科学ドキュメンタリが揃っていて、特にチューリングはこすられて最適化されています。

もちろん日本の国営放送が制作する番組にも本当にいいのがあってありがたいです(『神の数式』は最高です)。ただし、将棋の藤井くんのドキュメンタリでかなり疑問を覚える盤面の解説をしていたり、AIと言う体で40代独身男性をディスったりするものもあり、プロの方から取材したものを捻じ曲げてしまう傾向のものがあるのではないかと、考えを巡らせるのです(いいものはいい。悪いものは悪い)。

Alan Turing - Celebrating the life of a genius

アラン・チューリングは論文「COMPUTING MACHINERY AND INTELLIGENCE」の冒頭で「機械は(人間的な)思考をするか?」という”問い”を検討しています。この問いの設定がすでに常人離れしています。

I propose to consider the question, "Can machines think?" This should begin with definitions of the meaning of the terms "machine" and "think." The definitions might be framed so as to reflect so far as possible the normal use of the words, but this attitude is dangerous, If the meaning of the words "machine" and "think" are to be found by examining how they are commonly used it is difficult to escape the conclusion that the
meaning and the answer to the question, "Can machines think?" is to be sought in a statistical survey such as a Gallup poll. But this is absurd. Instead of attempting such a definition I shall replace the question by another, which is closely related to it and is expressed in relatively unambiguous words.


Alan Turing - Celebrating the life of a genius

イギリス人の発音はチューリングではなくターリングなんですね。日本語に訳されたのは古いっぽいんで、チューリングって日本での独り歩き系かもしれません。

チューリングマシン

”決定問題”を解くために考案。計算機を数学的に議論するための単純化・理想化されたバーチャルマシン。長さは無制限で記号を読み書きできるテープ、書くか書き換えるかができるヘッド、マシンの内部状態ステートなどで構成され、ヘッドは移動してステートを更新していく。この機械は十分な時間さえあればどんな計算も可能にすると証明したといいます。全て原則的にはチューリングマシンによって計算することができ、逆にチューリングマシンで解けない問題にはアルゴリズムは存在しません。

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画像Source: Wikipedia

Enigmaの解読

Enigmaの解読。暗号学に関しては暗号通貨、ブロックチェーンのお陰で虫食い的な知識ができているので、今度、がっちり学習して固めて置こうと思います。Enigmaという

 

チューリングはBombesというマシンでEnigmaを解読しています。英国が集めた暗号解読チームには文学的なグループも含まれていた、チューリングがそこに紛れ込んでいたのは幸運意外の何者でもないだろう。この映画ではそのときの情景が描かれています。チューリングの趣味はランニングで走りながら抽象的思考を行ったと言われていますが、作中でカンバーバッジが走る感じほど爽やかだったとは思えませんけど、引っ越してから20キロの週末ランニングをしなくなっているのはやばい気がするので、そろそろ復活させようと思います。


映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』予告編

チューリングテスト

チューリングは人間か機会かを判別する”チューリングテスト”を提唱しています。もし人間が機械を人間と判別するようなら、それは”人工知能(AI)と呼ぶことができます。ただし、このときにそもそも知能(Intelligence)とは何かという疑問が出てきます(参考)。人間が人間だと認識するから、それは機械ではなく、Intelligenceだと呼べるのかどうか。この先は哲学的な議論に結びついていきます。


Ex Machina | 'The Turing Test' Clip | Film4

Unorganized Machine

チューリングの探究は、ニューラル・ネットワークの最初の形をも生み出していたとも言われています。1948年の論文で、”Unorganized Machine”という概念を提唱していて、最初のうちはとてもカオティックなのだが、訓練を続けているうちに形作られる機械であり、幼児が脳や神経系を短期間で発達させるところを、電気の働きで再現できるか検討しています。

チューリングとマシンミュージック

ニュージーランドの研究者たちはチューリングが巨大な工作機械で作ったコンピュータで作成された音楽の最初の録音を復元しています。 大学生のときはコンピュータ音楽を作っていたので、”この分野の始祖もチューリングなのかい!”という感じです。当時は「現実世界が表現する複雑性を”音楽”という仮想・抽象空間で、コンピュータを利用して再現する」というテーマを持っていました。間隔でこの「複雑なテーマ」に到達していたのですが、チューリングのような問の立て方、あるいは”問題の見つけ方をすれば、もっともっと進化できる気がします。どこかで時間を見つけてまた音楽を作ってみよう。 これはソロプジェクトからの一曲。

つくってからすでに10年ほど経っています。チューリングということで久しぶりに聞くと味わいが深いです。「ああだ、こうだ」言って評論家然としているのではなく、自分は”創る人間”だったよな、と思い出してきているので、うん、速くサービスリリースしなくてはいけないよな。

こっちはバンド時代の音楽ですね。またチームで音楽作りたい。Ableton Live 10が出たので

まとめ 

アラン・チューリングの話が途中から音楽の話になっているじゃないか、なんだけど、でも書いていてこっちは考えが整理できて嬉しかったので良しとしよう。

参考

www.theguardian.com

Webの新標準PWAが余りにも衝撃的なんですけど


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Progressive Web App(PWA)があまりにも衝撃的なんですけど。"今からネイティブアプリ構築方法を学習するのは流石にバカバカしいぜー"とずっと思ってた(だって僕は記者だしBizdevだしマーケターだしアナリストだしコンサルだしYouTuberだし駆け出しのブロックチェイナーだしなんちゃってウェブエンジニアだしね)。でも、そんなことも言えんよねということでAndroidのお勉強を開始していたのだが、普通にムズい。

そんなところに、PWAが降って湧いてきた。PWAは前職のときに2016年頃Googleワシントン・ポストのテストケースが発表されたときから知っていて当時も凄いと思ったけど、ネイティブアプリエコノミーがとても頑強なせいで、電車道の変化にはならなかったんだよね。加えて日本人はiPhoneが好きだから当時はあんまり多くの人を振り向かせるのに成功はしていなかったと思う。

だけど、サファリがService Workerに対応を進めてていて、今春のWWDCで進展が公表されるのではーとなっている。

開発コストの圧縮

僕が持っているプロパティは試作品のニュースサイトとYouTubeチャンネルくらいなので、この変化は最高だ。開発コストを大きく圧縮することができるからだ。もはやSafariがどう対応しようとも関係ない。Androidに対してはネイティブアプリを構築せず、PWAにユーザーを誘導するようにすればいい。これでデスクトップとAndroidを一つのプロパティで対応できるようになる。

ただし、iOSに関してはネイティブアプリを作り続けないといけない。AppleはAppstoreで相当儲けているはずだし、プロプライエタリ(専売的)が好きな会社だから、GoogleがイニシアティブをとりマイクロソフトMozillaも推進するPWAをすっと受け入れることは考えづらい(ブラウザ戦争が嘘のようだ)。iPhoneの販売台数もピークアウトの兆候を示していて、勢いを保つためにはインド人やアフリカ人がiPhoneをドカ買いする必要があるけど、そんなの現実的じゃないよね。企業は自分の収益源を削るような進歩にはとても消極的になるものだ。公平を期すと、GoogleGoogleで検索広告やディスプレイ広告を優先したエコシステムを作っているのでどっちもどっちだけど、今回はAppleの分が悪い。

高くつくネイティブアプリ

そもそもネイティブアプリは本当に高くつくようになっている。二つのプラットフォームの分離は、開発コストを引き上げ、開発者獲得可能性を低下させる。超レッドオーシャンでユーザー獲得コストの高騰はどうしようもなく、アプリストアのランキングは大資本の殴り合いの様相で、儲けはウイナーテイクオールの傾向が色濃い。

だからビジネスの観点から考えると、この戦争には基本的に足を踏み入れるのは大間違いで、そうならないようなサービス設計が必要になる。だけど、多くのプレイヤーは車輪の再発明が大好きだから他人と同じことをしたがるわけで、その時点で死路を辿ることになる。この傾向は日本市場においてより顕著だと思う。海外で成功したモデルを日本で数年遅れで導入し、ある程度金で殴れば成功するよねの方程式。。。。優れたソフトウェア開発能力とビジネス開発能力を備えたプレイヤーは本当に希少なわけだ。

まとめ

開発とビジネスの論理だけで物事を進めていると、顧客に提供する価値を最大化するという目標から、遠ざかってしまう。常に顧客の価値に立ち返ることが大事で、PWAは顧客の求める価値を満たしながら、コストを落とす素晴らしい手段だと思う。やっぱり開かれたWebがぼくは好きなんだなあとも思う。

Image via Google Developers

 

学習メモ#1 コンピュータサイエンスとインターネットの基礎知識

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いままでWebエンジニアの最下層とも呼ぶべき腕前だったけど、Axion Projectが進展してきて、もっと前に進まないとまずい事態になってきました。自分のスキルは他にもたくさんあるので、専業で努力を重ねている人たちと同じ土俵に立って、プログラミングをがっつり勉強するのが馬鹿馬鹿しいとは感じていたんだけど、最近はそういう一見合理的な思考が壁になっているだけではないのかと思い直しました。

多分自分は、過学習(オーバーフィット)の状態なんだろうと思います。羽生竜王も30代のときには7冠を達成した昔ほど勝てなくなった時期を経験しています。なまじ、先が読めるせいで若い頃に比べて踏み込めなくなった、と語っているのが印象的です。過学習は下の図の緑色の線のように最適化が行き過ぎた状態のことを指しますが、おそらくそういう状態にあったのではないでしょうか。ただ羽生竜王はその壁を超えていって、47歳のいまも強いんです。すごいですよね。

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自分と羽生竜王を重ねるほどおこがましいわけではありませんが、自分もこれまでやってきたことにオーバーフィットしていて、このままガチガチになっちゃうと「進化を終えたオッサン」の始まりです。でも、いまは起業家という無職者で、無駄なことはできる限り省いているので学習の時間は十分あります(岩盤浴にハマっていてこれは例外的に無駄なことかも)。ということでやってみましょう。

ぼくはとても頭でっかちで、自分がやっていることがなんだがガッチリ理解できていないと没頭できないところがあるので、インターネットの歴史やオープンソースプロジェクトが何であるかについて学習し直すことにしました。

角川インターネット講座 (2) ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化

角川インターネット講座 (2) ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化

 

この本を読んで思ったのは、Axionプロジェクトには「ハッカー倫理」を全面的に取り入れることを決心しました。スティーブン・レヴィの『ハッカーズ』では、こう書かれています。

  • コンピュータへのアクセス、加えて、何であれ、世界の機能の仕方について教えてくれるものへのアクセスは無制限かつ全面的でなければならない。実地体験の要求を決っして拒んではならない。
  • すべての情報は自由に利用できなければならない。
  • 権威を信用するな。反中央集権を進めよう。
  • ハッカーは、学歴、年齢、人種、地位のような、まやかしの基準ではなく、そのハッキングによって判断されなければならない。
  • 芸術や美をコンピュータで作り出すことは可能である。
  • コンピュータは人生をよいほうに変えうる。

『ハッカーになろう (How To Become A Hacker)』もとてもおもしろい文章です。

ブラウザ戦争と終戦

『ネットを支えるオープンソース』では、瀧田 佐登子氏の章を楽しく読みました。ネットスケープマイクロソフトのブラウザ戦争が面白いです。紹介されている『Project Code Rush - The Beginnings of Netscape / Mozilla Documentary』も観ました。山の用に積もったコードや急速に肥大化していく企業規模、そして数年の没頭の末に他の道に進んでいくエンジニアたち。


Project Code Rush - The Beginnings of Netscape / Mozilla Documentary

伽藍とバザール』はネットスケープの経営陣に大きな影響を与えたエッセイです。インターネットエクスプローラにモメンタムを握られたネットスケープはブラウザのコードを公開する策に出ます(実際には重要な部分が抜けている”歯抜け”だった)。それがやがてビジネスから切り離され、Mozillaとなり、Googleを標準搭載したブラウザとしてシェアを拡大し、Googleアフィリエイトからもたらされる収益が、貢献したエンジニアへの報酬をまかないました。『伽藍とバザール』とさっき話した『ハッカーになろう (How To Become A Hacker)』は訳者が山形浩生氏で、山形さんは経済学関連の翻訳も多くて大いに世話になった翻訳者です。山形氏はかなり翻訳を遊ぶ人で、賛否両論ですが、そのおかげで読みやすくて楽しいと思います。本当は大聖堂が妥当だと思われるものを『伽藍』と訳したのは、少し違和感がありますが、伽藍とあるからこそ興味を惹いているのは間違いないですね。

伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト

伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト

 

それから、村井純氏がほぼほぼ執筆した『インターネットの基礎』も読了しました。ARPANET(アーパネット、Advanced Research Projects Agency NETwork、高等研究計画局ネットワーク)がやがて世界中を結ぶネットワークへと進化するさまが、ある程度技術面にふれてあるのだけれども平易に書かれていて、内閣で政治家や官僚にアドバイスしたいた村井教授の懐の深さがうかがい知れます。

角川インターネット講座 (1) インターネットの基礎情報革命を支えるインフラストラクチャー
 

村井氏の講演を初めて聴いたのが2016年の「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2016 TOKYO」で、感動して以下のようなブログを書いていたのを思い出しました。そしてそれから1年半以上経つというのに自分の勉強不足が不甲斐ないです。当時は制約だらけの職場で意気消沈していたのですが、もっとたくさん勉強していて、その外での活動を広げて色々とモノを作っていれば、いまだってもっと手早く面白いサービスがリリースできたのに、と後悔しまくってます💢

他にも以下の本も読んでみました。結局、コンピュータ・サイエンス、インターネット、ワールドワイドウェブをめぐる自分の知識が基礎の段階から脆弱なのがわかったのが大きな収穫です。いまは技術ブログやYouTubeポッドキャスト等で事足りる感じではありますが、書籍を買うのは大事かもしれません。お金を使って、物体を部屋に置くということが、自分にとっては意味があるのです。

「プロになるためのWeb技術入門」 ――なぜ、あなたはWebシステムを開発できないのか

「プロになるためのWeb技術入門」 ――なぜ、あなたはWebシステムを開発できないのか

 
入門 コンピュータ科学 ITを支える技術と理論の基礎知識

入門 コンピュータ科学 ITを支える技術と理論の基礎知識

 

 

 

 

 

 

ひょんなことからバーチャルユーチューバーに手を出しかけていた事

年初にバーチャルユーチューバーがバズりました。ボクも見た瞬間びっくりしました😇。今回はこれを観てVR製作に乗り出そうとして、ヤメた過程をメモします。ぼくは諦めていません😎
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所謂「美少女」なのでこのカルチャーを好まない人には余り好まれないのはわかっています。ボクも3次元のバーチャルな美少女にときめくまでには達していません。

驚いたのは、彼らがハイレベルな3Dモデルを構築し、髪の揺れ等のディティールを作り込んでいるところです。動画の構成・編集も本家のユーチューバーを凌いでいるのです。日本のオタクどものスキルの高さを目の当たりにしました。

フィクション vs リアル

カメラという装置は現実をシュミレートするに過ぎず、人間の脳が勝手にカメラが作り出したものを現実だ、と判断しています。

インスタグラムやスナップチャット、古くはプリクラのようにカメラがシミュレートしたものを事後的に改変しています。グーグルのPixelというスマホでは、撮影した画像を機械学習アルゴリズムが補正して高品質な画像として表現する。雑誌編集の現場では昔からフォトショップでモデルの肌トラブルを直したり、ショートスカートをロングスカートに変えたりしています。

ボクは殆どの講義をサボり倒したい大学時代と、DVD1作品50円程度、映画も400円程度で観れるインドネシア時代に膨大な映画を鑑賞しています。これが記憶の中でリアルなそれと分離されずに存在していることを感じます(特に夢を見たときは)。

ボクは仮想空間と人間の認知の相性はいいと観ています🎆

 AIは仮想現実のなかで超高度化されたシミュレーションを行う - Æx1Øn(axion)

早速VR製作に取り掛かる

というわけで年末年始に3Dモデルを採用した動画に取り掛かっていました。3Dモデルは3D空間で動作させて、仮想空間内にバーチャルカメラを置いて「撮影する」という手段を目指していました。

最高シナリオは人間の演者とバーチャルユーチューバーが絡む動画を作成することでした。途中で演者が3Dモデルに変身するとかも面白いですよね🐭

費用

幾つかのプランが想定されました。以下の2つ、あるいはミックスが望ましいのです。

時間のコストも同時にかなりのものなのがわかります。Axionプロジェクトはとても小さいチームでの運営ですので、これはリスキーだなと痛感しました😇

で、私は創業当時に40万円程度の設備投資をしてそれが宙に浮いしまったのを思い出しました。あれがあればチャレンジする金はカンタンに用意できたじゃないか…。

まとめ

それで現状は以下のような動画を製作しています。You Tubeチャンネル登録本当にお願いします😂😂😂

https://youtu.be/xlWKhFGdpGU

でも、ボクは全然諦めていません。近々ラウンド2に突入しようと思います。この世は世知辛いのじゃ!(ググってみて)。そして今度は音楽製作に着手しようとしています。次回を楽しみに。

参照

http://greety.sakura.ne.jp/redo/2018/01/how-to-vtuber.html

 

 

『ゼロ・トゥ・ワン』と『Hard Things』を読み返してみた

お正月ということで一旦いろいろリセットするということで、著名な起業家、キャピタリストの本を読み返してみました。両者ともドットコムバブルの津波のなかで生き残った数少ない成功者であり、その経験に基づく洞察と、類推できる時代背景がとても愉しかったです。起業した後に読み返すと味がぜんぜん違いました。学びをメモしておこうと思います。

『ゼロ・トゥ・ワン』

スタートアップの成功には運が大きく関与しており「宝くじを引いている」側面は否定できません。しかし、複雑な世界の中では、起業家とそのチームが他者に対して大きく差を付けるポイントが存在している気もします。ピーター・ティールの『ゼロ・トゥ・ワン』はまさにその考えに立脚しています。

『ゼロ・トゥ・ワン』のユニークな点は、明確に独占を賛美していることです。完全競争市場では利益はゼロに近くなって行きます。だけど、人々は競争が好きです。他人と同じフィールドに立ち、同じことをしていることに安心できるからでしょう。競争相手をやっつけることに思考をさくので、新しい何かを創造するよりも、むしろ「奴隷的な発想」で熱中できます。

ティールは独占を成し遂げるためにはマーケットにおいて5倍以上の競争力を持ったり、ネットワーク効果を起こしたりするのが良いと指摘しています。ニッチから初めてニッチを独占することからスタートアップの急成長は実現されると説くのです。

プロダクト開発の観点から考えると、まさしく小さな顧客層からスタートを開始することが重要だとわかります。Twitter創業者(諸説あり)のジャック・ドーシーはプロダクト開発に関して、早稲田での講演でこう説明しました。「最初はとにかく小さく。自分が使ってみたいものを作る。次は友達に勧める。フィードバックと更新を高速化して、どんどん良くしていく」。

独占を成し遂げるには他者がしないことをして、これまで存在しなかった価値を創造することが重要だとティールは説いています。ティールのチームのプロダクトをコピーして追走してきたX.comのイーロン・マスクは馬鹿に見えることをするのが合理的だと語っています。

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

 

Hard Things

伝説のスタートアップ、ネットスケープに参画し、シリコンバレー最上級VCのアンドリーセン・ホロウィッツを率いる、ベン・ホロウィッツのこの本は素晴らしい読み物でした。クラウドというビジネスアイデアが90年代後半に会ったことに驚きます。

ホロウィッツが歩んだネットスケープ、ラウドクラウド、オプスウェアという歩みは、サーバークライアントからクラウドへの時代の変遷を見ることができます。仮想化技術の発展がオプスウェアの売却を決断させる一要因になったことが記されていますが、いまのクラウドサービスはまさしく仮想化をその成長の土台にしており、ホロウィッツの判断が正しかった。

ホロウィッツは、合理的な思考だけでは答えに到達できない決断を繰り返し、何度となく訪れた「死」を乗り越えることに至った経緯を記しています。スタートアップは常に「多腕バンディット問題」にぶつかっています。「どれを選択するれば最も効果が高いかを問われ続ける」ということです。その解答を探すのはペーパーテストとはわけが違います。奇妙なところに答えがすべて隠されていたり、まったく異なるロジックと不足した情報でプレーするプレイヤーが他の合理的なプレイヤーが獲得できる機会を大きく左右したりするのです。

そういうときにどうプレーすればいいのか、難問と困難が与えられたときに「死なない」ことが、生き残る術になるとホロウィッツは言います。スタートアップはどこまで行っても人間ドラマではあるのだな、と感じさせられました。

HARD THINGS

HARD THINGS

 

 まとめ

この二書を読みかえし、とてもやる気が出てきました。両者がオープンにしてくれた経験のおかげで、訓練すべきものが見えてきた気がします。小さなカテゴリで独占を築く力、困難な判断をする力は訓練次第で養えると考えられます。それを想定した、ロバストなチームを創るのにも、一定のいいロジックがある気がします。

誰もが「1997年のAmazon」からスタートするからやり続けるだけ

 

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1997年。投資銀行での成功を全て捨てて、Jeff BezosがAmazonを始めた時のオフィス。 投資会社のSVPで高給取りだったBezosがイケてないオフィスで一人で作業をしています。何事も始めるときはこういう時期を経験するものです。私も起業してから2ヶ月程度ですが、いままさにそういう時期にあります(笑)。Axionの運営は私とパートタイムで手伝ってくれる数人によって行われていますが、基本的には1日の大半を一人で作業しながら進めています。

起業したことによって驚くのは、既存のカイシャがもつリソースの豊かさとそのリソース活用の非効率さの両面でした。イチからやってみると「なぜこんなことをやらんとあかんのや」というタスクが無数にあり、カイシャがそれを省略してくれていたことに気づきます。他方「4、5人使っていたあの仕事って、あのライブラリ使えば一人でできちゃうやん」「あの人が勝ち誇っていた功績って、南極に豪邸を建てたようなものなのやん、周りの人を騙していたのか、あきれた」ということが多々あります。

誰も掘らない穴を掘っている

一方、1人だと見通しが正しくともなかなか船が進むのが遅いのは確かで、いつもやきもきしてしまいます。タスクをホワイトボードにまとめていると、文字の塊ができてしまってやる気が削がれてきます。本当に本当に肩の凝るお仕事です。しかも私は長期的利益を評価する傾向が極めて高いので、いまは報酬を貰わずして将来に向かって仕込んでいるフェイズにあります。武田信玄土竜攻めのようにずっと穴を掘り続けていき、最後には城の中に坑道がつながる手法に似ています。一人で穴を掘るのは大変ですし、リターンを得るまでにかかる時間のうちに状況が変化するとそれでオシマイ。これはメンタルにきいてきます。

でも、ぼくはこのゼロから何かを生み出すことを楽しんでいます。何かを創ることは初めての経験ではない。大学卒業後はインドネシアでゼロから現地の政治経済社会について学び、イ情勢に関しては大学教授や大使館、商社、コンサルが私の功績を引用なしパクるレベルに達しました(それほど情報ギャップがあったと自負しています)。帰国後はDIGIDAYの立ち上げに参画し、ここもゼロから学習し、マーケティング広告にインパクトを与え、一定のポジションをとりました。技術部隊が欧米にあり、日本には営業・マーケしかいない構成の外資と、新手法の理解・採用が牛歩の内資でできているデジタルマーケティング界隈は、宝の山でした(この段落の表現はなんかイヤな感じですね)。

もちろん、DIGIDAYのときは元々アメリカで確立したブランドでしたし、会社がある程度のリソースを提供してくれたため、立ち上げはもっと容易でした。主に金、人、評判が最初は不足していると感じさせられます。

しかし、続けていけばうまくいくのは明確です。世界は相関し合う無数の変化群に晒され続けていて、それが未来を常にぐにゃぐにゃ変えています。この環境下では、既存の組織を変革するより、ゼロから新しいものを作ったほうが速いのです。

それにこれは私の精神を若くしてくれています。未だに高校出たての18歳のマインドです。そして学習し推論するモデルとしての自分が急速に成長しているのも感じます。スキルは自分で何かをやった方が断然つくのを実感しています。

ぜひ我がオフィスに遊びに来てください。

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【報告】テックメディア「Axion」を創業していました

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最近ブログの更新が滞っています。なぜなら私が9月にDIGIDAYを辞して10月の末からテックメディア「Axion」を立ち上げたからです。

axion.zone

Axionのプロパティは現在上記のWebアプリケーション、Youtubeチャンネル、Facebookページと最低限の陣容で進めています。Axionはどんなメディアかというとビジネスパーソンが最先端テクノロジーを理解し、それが引き起こす変化への対応力を提供する」です。率直に書きますと、伝統的な日本企業は広範な範囲で、最先端テクノロジーの理解とそれがもたらす変化に余りにも鈍感です。今月ロスで開催された機械学習のトップNIPSでも日本勢の存在感は大きいものとは言えないようでした。基本的にこのテックが経済や社会を大きく変えていくというビジョンをもつメディアは日本にはありません。

日本映画はわかりやすいメタファーかなと思います。日本映画は特撮は得意ですが、SFは余り得意ではない。日本の市民社会のカルチャーはどこかで科学を軽くみています。青色発光ダイオードNAND型フラッシュメモリの発明者は日本国内では不遇でした。

Axionは権威主義社会の外側で、日本だけでなくアジアで、テックで新しいビジネス、経済、社会を作るというコミュニティを生み出すことを目的としています。そしてさまざまなレイヤー、属性の人々が学習するプラットフォームになろうというのが目標です。だから表題にテックメディアと置いてますが、とりあえずです。メディアという言葉がまあわかりやすいかなというだけなのです。

私は知識が人間をより自由にするという信念を持っています。金融や不動産の知識がないまま結婚をし子どもを作るとカップルは往々にして多量の負債に苦しむことになります。預金という余りにも不適切な資産運用方法を信じ、ATM/現金を都度利用して手数料を持って行かれます。

正しい知識を効率的に摂取する手段があれば、人間は権威的なサードパーティから搾り取られることを回避できるようになり、未来に投資できます。

私たちのプロジェクトは20世紀型の「メディア」ではなく、人間が認知するMediumの生成を科学することです。動画は一つの手段に過ぎません。

われわれは人が学習をするための媒介のあり方を検討しています。ひとつは動画であり、素人仕事ですが、こんなものを作っています(YouTubeチャンネル登録お願いします)。

https://www.youtube.com/watch?v=h3rTj1YhyX4&t=134s

動画製作に学習していると、画像生成にまつわるサイエンスの理解が深まってきまして、将来的にはAxionを深層学習、コンピュータビジョン、仮想現実、複合現実などの領域と融合していきたいと考えるようになりました。

今起こっていることは「アナログからデジタル」「テキストから動画」というシンプルな線形の変化ではなく、コンピューティングの進化と適応領域の拡大が、さまざまなものごとをゼロから設計できるようになり、しかもそれはさまざまな領域で同時多発的におこる技術的進歩に常に影響されている、ということです。

この波に乗って新しいことをやってみたいと思います。3年目の東京ですが最近はやっと楽しくなってきました。

 

 

 

ビジネスパーソンが3分で分かるスマートスピーカー

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スマートスピーカーが日本にも上陸して注目を集めています。スピーカーに搭載されたエージェントが、あなたがしようとする仕事を助けてくれます。北米ではAmazon EchoとGoogle Homeの2強の様相です。マーケットシェアはAmazon Echoが70%、Google Homeは30%です。

円筒形のスタイルに囚われてはいけません。重要なのはその中身です。Amazon Alexa、Google Assistantと音声認識を採用するアプリケーションが載っています。アプリを介して、ピザを頼んだり、Uberを読んだりすることができますし、スマートTVをつけたり、チャンネルを変えたりできます。

Amazonは2年前に市場に参入しています。「音声で物事を実現する」ことに焦点を絞りパートナシップを広げています。電機、自動車メーカーとの協業でも大きくGoogle Assistantに先行しています。2017年1月の世界最大級のエレクトロニクス展示会では、数多くのメーカーの商品がAlexaを搭載したことで話題を呼びました。

Google Assistantは検索をロジカルに進化させたものです。言葉の意味体系やものごとの関係性に関してはGoogleは知識体系を築いており、これがアドバンテージになるかもしれません。人間の質問やその意図の「理解」に関してはGoogle Assistantが優れていると言われています。

Amazonか築いたリードが大きいか、Googleが検索で培ったアドバンテージでひっくり返すか、興味深いところです。

してこのスマートスピーカーの普及が意味することとはいったいなんでしょうか?

コンピューターとの触れ合い方の変化

かつてはコンピュータへの指示はキーボードからの入力のみで行われていました。

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それをアイコンなどの画像やマウス操作で、スティーブ・ジョブスがこの形の採用を推し進めてきました。これをグラフィカル・ユーザー・インターフェイスGUI)と言います。

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いまや、モバイルもこの形を取り入れるのが当たり前になりました。 人々は画面を直接タップして、コンピュータに要望を出すようになったのです。

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Via apple dev

これを音声で行おうというのが、コンピュータの時代の大きな変化と呼べるでしょう。音声認識はインターフェースとして新しい可能性を持っています。音声認識の精度は近年、ディープラーニングの活用により格段に向上し、人間の精度を超えるレベルに達しました。

人間にとっても音声を使うことは望ましいかもしれない。タイピングやペンで字を書いたりするよりも話すということはよりスムーズにストレスなく行えます。コンピュータへの入力が簡単ということです。人の頭脳への出力に対しても、近年はビジュアライゼーションなど、ヒトの頭脳に届きやすい方法が模索されてきました。 

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もしこれでコンピューターを動かせれば、もっと快適になります。あなたがコンピュータを使うことに関して持っている固定観念を破壊するでしょう。

いままではスマートフォンという形であなたの手元にあったコンピュータが、将来的にはあなたの目から隠蔽されます。あなたはアシスタントと直接触れ合っている感覚を覚えるかもしれません。

AI Everywhere

今あらゆるものがインターネットに接続されようとしています。北米ではスマートホームという形で家そのものを完全に接続された状態にすることが目指されています。

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Via Pixabay

あらゆるデバイスからデータが溢れ出てくるようになると、そのデータを遠くのクラウドに送るのは効率が悪くなってきます。賢いAIとそれを動かすコンピューターの力があなたの近くにあるならば、AIはその場でデータを処理し、あなたのためのアクションをとれるでしょう。

あなたはいつでもどこでもコンピュータの力を簡単に引き出し、問題解決ができます。そしてこれは中央集権の仕組みが分散型に移行することを意味してもいるのです。

AIをあなたの家に招き入れる、最初の一歩がスマートホームであり、まさしく「トロイの木馬」です。行き着く先は、コネクティッドになった家たちが都市を形成することです。都市・社会が新しいフェイズに向かいます。あなたも「トロイの木馬」を家に招き入れてはいかがでしょうか。

接続されソフトウェア化する都市

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Via Brade Runner / Youtube

予測

  • 家、交通、都市と私たちの生活をめぐるあらゆるものがコネクティッド(ネット接続された)になる。都市開発の仕方がシリコンバレー流のプロダクト開発の方法に変化する。人々は「ハードウェア」「アプリ」という形で都市に触れるようになる

論拠

主にAmazon EchoとGoogle Homeの間で繰り広げられているスマートスピーカー競争にはスマートアシスタントの競争という側面がある。このアシスタントはIoT時代の支配的な課題解決手段に成長する可能性があるため、極めて重要性が高い領域だ。スマートスピーカーは「家」という人々(People)がとても長くプライベートな時間を過ごす場所で、今までとは異なる形で人々と接点を作る機会がある。もともとはスマートスピーカーはモバイル、モバイルOSなど、ひっそりとデバイスに強い関心示していたAmazonの数多あるデバイス参入戦略の一つだったかもしれない。

しかし、2014年後半のAmazon Echoリリースから2016年、2017年と人々がついにこの奇妙な形をしたデバイスに慣れ始めたようだ。AmazonはEchoをとっかかりにAmazon Alexaのパートナーシップをスマートホームや自動車(ゆくゆくは自動運転車になるだろう)に広げた。今年1月のCESはそれを強く印象づけており、AmazonがEchoをテコにしてインターフェイスとデータを握り、AIプラットフォームを築いてしまうのではないか、と想像するのが難しくなかったのだ。

AI開発で優勢と考えられるGoogleはスマートホーム、自動運転車、エッジにいるアシスタント、そしてクラウドにいる強力なAIケイパビリティなどを組み合わせて、より高次なスマートシティを生み出そうとしていると考えられる。Googleは有り余るキャッシュでそういう「買い物」をしてきた。

例えば、Googleは昨年9月にUrban Engines買収を発表している。Urban Enginesは2014年にGoogleのマネジメント層だったエンジニア2人が創業。都市交通情報のリアルタイム分析を基に、最適な経路を割り出せるサービスを開発。リアルタイムで交通システムの状況を把握し、個々人に対しユニークな最適経路を提示することを目指していた。Urban Enginesがこれを実現するには世界のモバイルの8割に載るAndroidGoogle Mapをもち、欧州以外の政府とは交渉能力の高いGoogleとの合流が合理的な判断に違いない。

東京、上海、サンパウロ、ムンバイなどの超巨大グローバルシティの中を走る大量の自動車の動きを最適化するだけでも量子コンピューティングが提供する超膨大な演算能力が必要になるはずだ。加えて、個々に合理的な判断を下せるエッジのAIが、総体としての都市交通システムとユーザーの移動時間の最適化をはじき出すとは限らない。

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Via Urban Engines / Youtube

Googleのように世界を網羅するデータセンターを抱え、AIケイパビリティへの投資を誰よりもしているプレイヤーの力が必要だと考えられる。例えばGoogleの自動運転者Waymoが成功すれば、都市内を走る自動車の数は少なくでき、最適化問題をかなり簡単にする、はずである。あるいは、Googleが取得しているユーザーの位置情報・行動データなどを組み合わせていくと、素晴らしい解決策への手がかりがあるかもしれない。

住宅と都市というハードウェア

住宅と都市というハードウェア間の関係はまだ鮮明なビジョンが見えていない。GoogleサーモスタットのNestを2014年に32億ドルで買収している。鳴り物入りのNestはGoogleの企業文化になじまなかったと噂され、思ったほどの発展を遂げず、創業者のTony Fadellは昨年Nestを離れている。Google Homeは現状Nestとインテグレートされていない。AmazonはNestの競合であるEcobeeと協業しており、EcobeeはAlexaを組み込んだサーモスタットと監視カメラのシステムの製造を開始しており、この分野でも追走の手を緩めていない。

Alphabet傘下のSidewalk Labsは今年5月、トロント市政府からリクエストを受けて市中心部12エーカーの開発計画の提案をしたと言われる[Bloomberg]トロントは急速都市開発が進んでおり、米国からの投資を必要としている。米大統領Donald Trumpが移民に厳しい態度を敷いているため、ソフトウェアエンジニアなどがカナダに向かうケースも出ている。テクノロジーの中心地になる潜在性もある。異端研究の少人数グループを率いて、スーパーコンピューターでの実行に対応したアルゴリズムの並列化に成功したニューラルネットワークを開発し、今のAIブームの火を点けたGeoffrey Hintonはトロント大学に籍を置いていた(現Google)。

そして今回、トロント市東部のウォーターフロントを市の事業会社とSidewalk Labsが行うことを発表した。

創業当初のビジョンを変えていなければ、Nestは家に取り付けられたセンサー群から家主の特性を「理解」し、家主の生活を豊かにする家を提供することを狙っている。Nestはセキュリティカメラを製造するDropcamを5億5000万ドルで買収し、米国の郊外に在住する中間層以上の住宅に必須のサーモスタットとセキュリティカメラというパーツを同社のスマートホームの陣容に加えている。

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Via Nest

仮に人々がNestのセキュリティカメラを利用するとすれば、GoogleはAIケイパビリティを活かして動画から得られる情報からより家のパフォーマンスを上げることができるだろう。Googleは動画内に登場したものをディスクリプト、タグ付けする動画認識技術を今年のGoogle Cloud Nextで発表している。今後は動画の中にいる人間のコンテクストがさまざまなセンサーデータを混ぜ合わすことでわかるかもしれない。活用の仕方として例えば、複数のベッドルームで別々に家主が眠っているとしたら、熟睡に適した室内温度を調整する。あるいは家主が普段よりも頻繁に家の中を動き回り、Google Homeとのやりとりから怒りが感じ取れるときには、リラックスを促す背景音楽を流すというようなことだ。

世界的に都市居住者の割合が拡大しており、都市を発達させることは急務だ。世界的に、都市部の人口が農村部に比べて増加しており、2014年現在、世界人口の54%が都市部に居住している。1950年にはその割合は30%であり、2050年には66%まで増加すると予測されている。世界最大の都市は東京(人口3,800万人)。東京の次に、デリー、上海、メキシコシティ、ムンバイ、サンパウロが続く。2030年、東京は人口3700万人で世界一を維持するとされているが、それまでにデリーの人口も3600万人まで増加することが予測される。※UN "World Urbanization Prospects 2014"

Google共同創業者のLarry Pageは早い段階からスマートシティ構想に関心を抱いていたと言われている。昨年からSidewalk Labは、シリコンバレーのテクノロジー企業を急激に成長させた手法を利用し、インターネット起点の都市を開発することを公に語り始めた。CEOのDan DoctoroffはPageの関心はゾーニングの抜本改善やハウジングコストを削減することだと語っている。Sidewalk Labはマイクロシティや大規模街区開発に興味があり、それにより同社のアイデアを示したい考えという。Sidewalk Labはすでにニューヨークでは市政府との事業で街中にキオスクを設置しフリーの超高速WiFiを提供している。

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Via Link NY

ニューヨーク住民の36%は自宅でのコネクティビティがない。コネクティビティは人権だという考えに立脚している。※How tech innovations make life in cities easier | Eric Baczuk, SideWalk Labs

ソフトウェアとして都市を考える

Anand BabuとCraig Nevill-Manningは「デジタルプラットフォームシティ」というコンセプトを提示したことがある(Google Tech Talk, 2016年2月)。都市の物質的な側面をハードウェア(Hardware)ととらえ、交通、大気状況、位置などを入力(Input)、アプリ、信号機、ドアロックなどを出力とする。仕組みの中心(Kernel)にコネクティビティ、許認可、交通コントロールを据える。4Dマップ、分析・シミュレーション、需要マネジメントなどをサービスとし、交通や住民サービス、市行政などをアプリケーション(Apps)と捉えている。都市をアプリケーション、サービス、ハードウェアとして捉えて、人々を中心に据えた構築を行うことを提唱している。これは都市開発において極めて新しいマインドセットだ。

 

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Via YouTube/ GoogleTechTalks

これは都市を「プロダクト」としてとらえようとする試みだ。都市開発はつまりプロダクト開発という形に変化する。シリコンバレーが成功したイノベーションの方法を都市開発にも活用する。人々から見た場合、都市はハードウェアとアプリという形でとても触りやすく、エンゲージしやすいものになる。ハードウェアやアプリはユーザー中心の哲学のもとリアルタイムで設計・改善されていく。

アシスタントは人と都市の関係をより円滑にできるかもしれない。人々はアプリを直接使うのではなくアシスタントに要望を伝えると、アシスタントが煩雑な作業を代替してくれるはずだ。アシスタントが裏でアプリと連携して自動運転車を呼んでくれたり、さまざまな煩雑な行政上の手続きをアシスタントとの会話だけで済ませたり、最適な経路をリアルタイムで教えてくれたりするだろう。

結論

筆者はインドネシアの首都ジャカルタで5年間過ごした。周囲の地域を含めたジャカルタ都市圏は4000万人規模の人口がいると言われていた。そこには行政府に届け出を行わない低所得者層は含まれていなかった。都市は世界最悪レベルと呼ばれる交通渋滞を抱え、各種の都市インフラの整備が急速な経済成長にまったく追いついていなかった。中央・地方政府の腐敗はこの状況に拍車をかけていたのは明白であり、シンガポールに別宅を構える富裕層があふれる中、都市が生み出すさまざまな要因と相関性のある貧困に、かなりの割合の住民が苦しんでいた。

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2008年にアメリカのデトロイトを訪れたときも、強烈なドーナツ化・探りゲーションと市中心部の治安状況の極めて悪い状況を知った。都市に人が集まる

もしこのマインドセットで都市開発を行えたら、アメリカの都市だけでなく、東京、そしてジャカルタ、ムンバイ、サンパウロのような新興国メトロポリスの課題を解決できると期待している。

 

トロントで未来都市を建設するGoogle

Alphabet子会社のSidewalk Labsはトロントの東部ウォータフロント地区の開発をめぐり、カナダ連邦政府オンタリオ州政府、トロント市が共同で構成しているWaterfront Trontと契約を交わしました。Sidewalk Labsは12エーカー(約4ヘクタール)のウォーターフロント地域の開発を開始します。この4ヘクタールはパイロットであり、プロジェクトは下の写真で示される地域を含む、最大約324ヘクタールに上ると言います。開発対象区域は北米最大規模の未開発地域にあたります。

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Via Sidewalk Toronto

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Via Sidewalk Toronto

1.ビジョン

Sidewalk Torontoが掲げるビジョンを意訳します。

東部ウォーターフロントはエネルギー利用、ハウジング、交通を含む都市が直面する大きな課題をデジタルテクノロジーと都市デザインを組み合わせることで解決を図ろうとする新しいタイプの場所になるでしょう。

住宅や小売スペースをより手頃なものにするため、さまざまなユースケースに柔軟に対応可能な建物や新しい建築方法を取り入れる場所になるでしょう。人を中心とした通りの設計と様々な交通手段が、プライベートカーよりも手頃で便利な場所です。同時に、地球環境を守るため、エネルギー、廃棄物、およびその他の環境問題に革新を促す場所でもあるのです。家族が一日中一晩中屋外で楽しむことができ、コミュニティの関係が強い場所。そして、誰もが受容できるプライバシーとセキュリティを諦めることなく、デジタル技術とデータによって強化された場所です。

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Via Sidewalk Toronto

2.ロスのない交通手段

交通手段には私用車は用いられないと考えられます。下図のように、

を使うことで、都市内でのロスのない人とモノの移動を達成することを目指しているようです。地下に電線や水道管などを集約し、物流ロボット用の経路を確保します。これにより地上の景観がよくなるとともに都市インフラの効率化も図れます。

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Via Sidewalk Toronto

3.多用途に適応し、低価格な住宅、小売店用不動産

米国内の一部地域では不動産価格が高騰しており、中間、低所得者層が住宅を手に入れるのには大きなハードルがあります。都市計画者が住宅のデザイン、建築方法などまで一貫して決めていくならば、より「都市ユーザ」のニーズにかなう住宅を生み出せます。 

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Via Sidewalk Toronto

4.センサーデータによる都市のソフトウェア化

Sidewalkの計画書によると、公園のベンチ、浪費されるビン、騒音、環境汚染のレベルなど都市のすべてのものにセンサーを取り付けるようです。そのほか人々は常に超高速のインターネットを利用することができます。

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Via Sidewalk Toronto

あらゆるセンサーからもたらされたデータにより、都市のリアルタイムのアップデートが可能になるかもしれません。蓄積されたデータから長期的な都市開発の画も描けるようになるはずです。計画書は「プライバシーやセキュリティをあきらめることをせず」これらを達成すると表現しています。 

5.都市内発電や医療の民主化

プロジェクトはサーマルグリッドや遠隔地ではなく都市内で行われる発電、すぐさま利用できる医療施設などの開拓者になる予定です。住人のコミュニティの結びつきが深い場所になるようです。すべて米国が抱える課題を踏まえたビジョンです。

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Via Sidewalk Toronto

 6.カナダのシリコンバレー

Alphabetのカナダ本社もこの地区に移転することが確約されているため、トロントとしても巨大企業を招き寄せることができます。ドナルド・トランプ以降、米国は技術者の移民を受けいるのが難しい状況であり、トロント大は近年の人工知能のブレークスルーの震源地のひとつで、Alphabetはトロント大のジェフリー・ヒントン氏が設立した企業を買収するなど、この地域に深い関心があるでしょう。テック企業が好む未来都市ができれば、トロントの地位は相対的に上昇するはずです。

 

Alpha Goが人の手を借りずに最強になったことが意味すること

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Via DeepMind

最近Google人工知能開発ブレーンであるDeepMindは「AlphaGo Zero」が、データなしの学習で、AlphaGoの以前のバージョンよりも高いレーティングを達成したと発表しました。AlphaGo Zeroは自己対局のみでスキルアップし、人間の手を借りていません。つまり、囲碁やそれに類する完全情報ゲームに関しては多量のトレーニングデータなしで優秀なモデルを作れることが明らかにされました。

オセロ: (探索空間の大きさ: 10の60乗)
チェス: (探索空間の大きさ:10の120乗)
将棋: (探索空間の大きさ:~10の220乗)
囲碁: (探索空間の大きさ:~10の360乗)

囲碁は完全情報ゲームでも随一の複雑さを誇ります。完全情報ゲームの中で囲碁だけが他と比較して際立って人間優勢でした。一般に探索量の多いゲームほどコンピュータにとって難しいとされていました。

この常識を破ってしまったのがアルファ碁です。アルファ碁は世界で最も強い棋士の一人、韓国の李セドル九段や柯潔九段などに勝利しました。

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Via AI Research

アルファ碁同士の対局の棋譜が公開され、機械たちが人間の常識を打ち破るような手筋を打っていたことに注目が集まりました。アルファ碁は人間の棋譜をトレーニングデータとした後は、ニューラルネット同士の対局を繰り返すことで進化したのです。

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Takushi Yoshida

でも、今回のAlpha Goは最初の人間のトレーニングデータを利用していないのです。それにもかかわらず、李セドルに勝利したバージョンを超すのに、学習に要したのは3日です。それよりも格段に強いバージョンであるマスターに勝利するのにも21日のみです。

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Via DeepMind

「有望さ」を足がかりにする探索

アルファ碁は一手指すために有望そうな手を中心に、複雑な方法をとりながら膨大なシミュレーションを進めていきます。アルファ碁の力がある地点を超えた後は、そのシミュレーションは人間が想定もしていない手を含んでおり、人間には奇妙に見えます。

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完全情報ゲームと不完全情報ゲーム

アルファ碁のとった探索方法が他の分野、あるいは現実世界にどれだけ応用可能か、はとても興味深い問いです。この応用可能性を考える際に重要なのが完全情報ゲームと不完全情報ゲームというカテゴリの違いです。

完全情報ゲームはプレイヤーはゲームの情報のすべてを得ることができます。自分がしたことの影響や周辺要因のすべてが明らかなゲームです。オセロ、将棋、チェス、囲碁などがこれに当たります。

不完全情報ゲームはゲームの情報の一部分がプレイヤーから見えないようになっているものを指します。麻雀やポーカー、バカラのようなカードゲームがこれに類します。

 

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不完全情報ゲームでは、実力だけでなく運も勝敗を左右します。プレイヤーが取得できる情報は限られており、限られた情報からリスクや成功可能性などを推測しないといけません。さまざまな不確実性に覆われています。プレイヤーは戦略の立て方がとてもむずかしいのです。

今後はAIが不完全情報ゲームでどれだけ人間にキャッチアップできるかが重要になるでしょう。極めて条件の限られたポーカーのゲームでは、AIが人間に勝つという事象が出てきています。この限定的なルールのもとでは、AIは人間よりもリスク算定に優れているようでした。ポーカーは投資のゲームと言われますが、AIは自分の優位を確信すると容赦なく他のプレイヤーにプレッシャーをかけます。今後はAIが人間に迫る時期が来るかもしれません。

Alpha Goの登場は何を意味しているのか?

・完全情報ゲームではAIは人間の知見を頼らずして人間を超えてしまう
・条件が限られたタスクに関しては機械が人間に勝るという未来は近い

AIが得意な仕事は、AIに取って代わられる日が来るでしょう。AIが得意な領域も拡大していくかもしれません。でも、それでいいのです。社会は生産性を劇的に向上させることができます。私たちは働かずして稼ぐことができるでしょう。

でも、人間社会の仕組みがそのままなら、大量の失業者が生まれ、所得格差が異常なレベルに達します。スラム街から英雄が現れ、コンピュータを破壊する宗教をはじめるかもしれません。

私たちの社会や考え方が、急激な生産性の向上や、さまざまなサービスに安価にアクセスできるというAI時代の利点を受け入れられるようにしないといけません。それはこの社会がどんなものであるべきかということを根本から考え直すことでしょう。

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Via Wikimedia commons

Alpah Go Zeroが人間のトレーニングデータを必要としなかったように、今後私たちは、バイアスにさらされる人間の頭脳ではたどり着かない手法や解決策を手に入れられるようになります。そのときに混乱せずに、新しいコンピューティングのちからを活かせる社会こそ、最も必要なものなのです。脳みその外側で考えましょう。