デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

【旅行記】くそくらえ、スラムドックミリオネア(1)

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*チャクラスパ

 商売は人間を予期せぬモノに駆り立てる。

 宿泊中のホステルの主、パンカジさんはホステルの自宅一階スパにしたことがある。恐ろしいことに庭を受付にして、庭を増築して奥に施術室をつくった。

 スパの名前は「チャクラを解放するスパ」。

 スパはしくじった。庭を覆う木々にスパは覆われている。「国破れて山河あり」(杜甫)状態だ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%AF%E3%83%A9

 朝はパンカジさんからヨガを習う。パンカジ氏の4階の部屋の前にあるベランダで太陽を浴びながらやる。ぼくの体はガチガチで、パンカジさんが示す姿勢をぜんぜん表現できなかった。苦笑い。だが、ヨガの効果は確かにある。体のどこかで放置されていたエネルギーが沸き立ち、いい汗がじっと出る。

 ただし、ヨガが終わるとセールストークが始まる。ヨガ本2冊を買うハメになった。計5米ドルくらいだが、インドではこれでまあまあ楽しめるカネである。

 エコロジストとビジネスマンが同居するマインドだ。

*ホステルの大名

 パンカジさんは会社でマネージメントに入っているようで、午前10時半ごろ出発する。入居者がニコニコしながら彼を見送る(ぼくもニコニコしながら見送る)。大殿の出陣だ。帰るのも早く午後6〜7時頃。独身のパンカジさんは帰宅後の話相手としての役割をぼくに期待している。だが、ぼくはムンバイが面白すぎて午後10時〜11時ごろに戻る。

 パンカジさんはこの点に不満があるようだ。

 映画「ウォールストリート」の冒頭、マイケルダグラスが駆け出しの若者をスカッシュやサウナに連れて行き鍛える。若者はどんどん金融業に染まっていく。そんな関係にわれわれはなっているが、はるばるインドでパンカジさんと付き合っているだけではまずい。

 執事の壮年男性はパンカジさんが出発すると「ああ、パンカジさんだなあ。パンカジー、パンカジー」とか含みがある感じで言う。洗濯物を干していると「おい、ここがパンカジさんの部屋だぜ」と言って見せてくれる。「いい暮らしをしているだろう、へっへっへ」といってけたけた笑う。

 カーストとか人間間の好き嫌いとかいろいろあるんだろう。


WALL STREET - Trailer ( 1987 ) - YouTube

*スラムドックミリオネア論争

 さらにパンカジさんとはスラムドックミリオネア論争(ムンバイに貧困層はいるか、いないか論争)が続いている。彼はこの論争を楽しんでいる。パンカジさんは玄関の蛇口を周囲の貧しい人々に解放している。水を組みに来た人をことごとくインタビューしてぼくの論拠をやっつけようとしている。例を出そう。

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◇酒浸りの夫を亡くした女性(50代)
・北部の地元の畑を売って、ムンバイに出てきた
・廃品回収で日収5.4ドル
・最近まで最終処理場で拾っていたが、あまりに汚いので町中で拾うスタイルに変えた
・女手ひとつで娘二人を学校に通わせている
・借家住まい

 世銀の基準では1日1.25米ドル未満を貧困と定めている。インドは人口の20〜40%が貧困層にあたる。この女性は5ドル以上だからそれに当たらない。農村部に入ると多分1.25ドルなんだ。

http://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty

 この数字はざっくりと知るには便利。だけど、それぞれの人生とは重なってこないことがおおい。

 地方で子どもを作りすぎたり、トラブルに家計が耐えきれなくなると、それがよりカネになる都会に吸着されて、たくさん集まるとスラムになる。これが典型的な仕組みだ。

「彼らは貧しいんじゃない、いくつかの必要なモノにアクセスできないだけだ」と彼は説明する。

 ううむう。人間いろいろ、人生いろいろ、貧しさいろいろって感じかな。

 とにかくスラムツアーに行くことにした。(続く)