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ジョージ・アカロフのレモン市場のことはよく考えている。デジタルマーケティングのアナリストをやるってことは、与えられた情報がレモン(ダメな中古車)かどうか見抜く闘いだ。ぼくのアルゴリズムは常に正しい情報の選り分け方の最適化をめざしている。
アカロフ(イエレンの旦那ね)が指摘するように中古車を買う側はかなり不利なんだ。この不利さがもたらすタフさにぼくは魅了されている。でも、最近は退屈をし始めた。なぜなら、いいときは相手のカードを全部暴けるかもしれないが、実際は相手に嫌な思いをさせるのはよくないのだ。
2
ドンキホーテってすごい興味深い。これもレモンを見抜く最高の訓練の場だと思う。あそこは安そうに見えて、実際には安いものは一部だけだ。ポップや狭くてぎゅうぎゅうの陳列はバイヤーの判断大いに誤らせるだろう。なんか買いたくなっちゃう、はずだ。
3
ぼくの最寄り駅の電鉄系スーパーは不当に高い。ぼくは一人でこっそり「タックススーパー(税金スーパー)」と呼んでいる。どうせこういう冗談はあんまウケないから誰にも話していないのだが。
ここは新婚の中間層が格好をつけてマンションを割高で買う街だけど、日用品でも電鉄系コングロマリットに絞り取られるのはかなりエグいと思う。しかし、抜け穴があるらしい。皆さん車を10分ほど走らせて街道沿いの業務用スーパーに行っているようだ。そこは目玉が飛び出るくらい安いらしい。
ぼくの職場の近くのイオンの小型店舗は何でもかんでもかなり安い。渋谷という地理条件はあのマンション街より遥かに価値が高い。そこからもう少し行くと日本でも有数の富裕な街になるというのに、そのスーパーのが断然安い。
情報(価格もそうだよね)は常に偏在している。
4
20世紀型の組織は、組織内に情報の非対称性をもっている。ランクが上がっていくごとに情報優位になっていくものだ。分かりやすいのは国民国家で、国民の多くは本当の情報は与えられず、レモンをもとに多くの義務やタックスを課せられる。
5
おそらくこの構造は、組織の機能を損なうし、人間のちからを十二分に発揮させない。
こんな感じの弊害がある。「倍返しだ」ドラマを観ると一目瞭然だろう(観たことないけど)。
なので新しい組織の形が必要だと思う。既存のものを変えるより、新しいものを作ったほうが早い。政府というタテとヨコに情報の非対称性が広がる組織を取材していた身としては、構成員(特に男性だよね)が正当性のない権力を得ようと情報のせき止めをしようするところには、容赦なくマシーンに働いてもらうべきだと思う(若かろうが老いていようが人は老害になれる)。
人間は人間のいい部分を活かす場で活躍するべきだ。だからぼくは文系だけどAIとかブロックチェーンに興奮してしまう。これらは「個人」にとって多くの課題解決の可能性であり、「既存の組織」が陥る循環的矛盾から解脱する方法だ。僕は自分が個人であることを最も重視しているから、そう信じたい。