デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

メディア再発明する「Smartnode Project」をライフワークにしています

スマートノードプロジェクト(Smart Node Project)のウェブサイトを作りました。2010年頃からメディア企業で働いて「何かがおかしい」「こう変えたらうまくいく」とずっと考えてきました。旧態依然の世界の中で「こうすれば良くなる」という提案は常に厳しい、時にあまりにも辛い反応にさらされてきましたが、最近は時代が変わり、私の考え方に興味を持って貰える機会も多くなりました。よく診てもらうとわかりますが、別に目新しくありません。しかし、大事なアイデアでして、実現できると価値が高いでしょう。

Smart Node Project

小難しい名前ですが、構えないでください。格好をつけているだけです(笑)。スマートノードとは「賢い節」と捉えてもらえば結構です。ノードについてはNTT PCコミュニケーションズがこう解説しています。

コンピュータ・ネットワークの世界で使われている言葉で、基本的にはネットワークの接合点とか中継点、分岐点などのこと。(中略)コンピュータ・ネットワークを木に例えると、幹にあたる幹線ケーブルがあって、そこから枝葉のようにパソコンやプリンタなどが接続されている。そして、幹から枝に分岐している部分がノードということになる。

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情報を数学的に定式化したことで、通信が成長してきた経緯があります。ネットはその最たるものです。情報をデータとして定量化して移動させる技術の進化がもたらしたのが、この世界の有様です。人間の視点から見たとき、その情報の中身が「ゴミだらけじゃないか」というのが言われています(いいものもありますが)。データ量が拡大しており、データが発生した場所や、そのデータから得られる洞察がとても必要とされる場所でいち早く、解析されることが必要じゃないかという話になっています。

その解析を生み出すのがスマートノードだと認識しています。デジタルデバイスからあふれる多量の情報に沈没しそうな私たちにとって、そういう情報生成・解析装置が近くにあれば、頼もしいはずです。

コンピュータネットワークの言葉を、とても伝統的な「メディアの世界」に持ち込んだせいで少し混乱が生じているのはご容赦ください。その代わりビジョンは明確です。私は従来「マスメディア」が担っていた役割を、アフターインターネットの世界に合わせて、人々の細やかなニーズに応えるものにしたいと考えています。情報が伝達するネットワークの接合点で、情報を確かめ、必要とされないものや洞察に関与できなさそうなものを切り捨て、インテリジェンスを生み出したいのです。

従来的なメディア、つまりブロードキャストの情報は以下のような構造をしています。一方的です。発信者の流す情報の真偽や質に関して、チェックする方法があまりなかったのです。そうすると発信者が情報を好きに操る可能性をゼロにできない。

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Via Wikimedia Commons

 

これをもっと双方向的に、それぞれが絡み合う複雑な形、それこそ生物の世界が採用している形に変えていこうということです。以下はTwitterの情報拡散の構造をスタンフォード大学の研究室がビジュアライゼーションしたものです。情報を受け取り伝達するローカルサブセットがあります。

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Via Stanford Univ Library

 

インターネットが行き渡った時代には、さまざまなものが分散され、それぞれが自律して思考するように成り立つ方が自然ですよね。私たちの人間関係のネットワークも図示をしたら上のようになるはずです。「つながっている」のです。

この部分集合に対して「いいか、おれはエラいぞ。これはこういうことなんだ。鵜呑みにしなよ、わかったな!」というのが20世紀までのいわゆる「メディア」でしょう。正しく作られ、変動性、可変性がある柔らかい権威はいい仕事ができます。しかし、人間社会は必ずしもそういう権威を作ってきませんでした。あるいはいい権威もあるときから悪い権威に変わったりします。

「Medium」という言葉は「媒介するもの」という意味です。「媒介するもの」が自分勝手な権威を帯びていて、その上でふんぞり返り、自分に都合のいい情報をつくりがちなのが現代の「メディア」とその周辺のサークルのあり方です。私はこれではマズい気がします。

あと最後に言い訳をします。スマートノードは「情報伝達のなかで効果的な役割を果たす多様性ある節・接合点をつくろう」というプロジェクトですが、それがGoogleの標準化されたサーバーに載っていることはツッコまないでください。よろしくおねがいします。クラウドで提供されるリソースの方が使いやすいケースはありますし、私は「正しい利便性」には逆らわないのです。

https://sites.google.com/view/smartnode-project/

大手報道機関とその周辺の情報生成に疑問

私は現在のニュース・情報のつくられ方に疑問をもっています。レガシーメディアでは長い間権威的な立場に安住し過ぎたせいか、人々のためになる情報というよりは、自分の周りのサークルのための情報をつくる機械になっています。

私はとても素朴に「人を自由にできる、優れた情報」をつくりたいと考えます。人間が消費する情報の発生源として人間は依然として有力です。となると、情報生成の場で人間がクリエイティビティを発揮する機会は残ります。これはGoogleFacebookが達成していないことだと思います(フェイクニュースが最たる例ですね)。

近年のテクノロジーの変化、そして予測される変化は想像を絶しています。既得権益を守るためにテクノロジーやサイエンスに関する情報を歪んだ形に変えて「下々」に伝える装置は、「人工知能に殺される」という形の情報を流布させたり、反知性的な奇妙で興味深いナショナリズムを煽ったりと、かなり危険です。

情報生成は今後サイボーグ化していきます。それこそ攻殻機動隊草薙素子みたいに、脳味噌とネットが接続されていて、たくさんの情報の中から、有意なインテリジェンスを導きます。イーロン・マスクは脳とコンピュータをつなぐビジョンを明らかにしました。「Neuralink」ですね。

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これらの例は極端ですが、比喩としてわかりやすいと思い、採用しました。言いたいのは、コンピュータと協働してマニュアルレイバーから解放された人間たちのチーム、つまり、スマートノードがより高度な情報を、正しくメタ化された情報を人々に与えることにより、下の図のような分散・自律の世界がよりうまく動くようになるのではないか、と考えています。

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Via Stanford Univ Library

最後になりますが、以前公演で使ったスライドを添付します。