デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

学習メモ#1 コンピュータサイエンスとインターネットの基礎知識

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いままでWebエンジニアの最下層とも呼ぶべき腕前だったけど、Axion Projectが進展してきて、もっと前に進まないとまずい事態になってきました。自分のスキルは他にもたくさんあるので、専業で努力を重ねている人たちと同じ土俵に立って、プログラミングをがっつり勉強するのが馬鹿馬鹿しいとは感じていたんだけど、最近はそういう一見合理的な思考が壁になっているだけではないのかと思い直しました。

多分自分は、過学習(オーバーフィット)の状態なんだろうと思います。羽生竜王も30代のときには7冠を達成した昔ほど勝てなくなった時期を経験しています。なまじ、先が読めるせいで若い頃に比べて踏み込めなくなった、と語っているのが印象的です。過学習は下の図の緑色の線のように最適化が行き過ぎた状態のことを指しますが、おそらくそういう状態にあったのではないでしょうか。ただ羽生竜王はその壁を超えていって、47歳のいまも強いんです。すごいですよね。

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自分と羽生竜王を重ねるほどおこがましいわけではありませんが、自分もこれまでやってきたことにオーバーフィットしていて、このままガチガチになっちゃうと「進化を終えたオッサン」の始まりです。でも、いまは起業家という無職者で、無駄なことはできる限り省いているので学習の時間は十分あります(岩盤浴にハマっていてこれは例外的に無駄なことかも)。ということでやってみましょう。

ぼくはとても頭でっかちで、自分がやっていることがなんだがガッチリ理解できていないと没頭できないところがあるので、インターネットの歴史やオープンソースプロジェクトが何であるかについて学習し直すことにしました。

角川インターネット講座 (2) ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化

角川インターネット講座 (2) ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化

 

この本を読んで思ったのは、Axionプロジェクトには「ハッカー倫理」を全面的に取り入れることを決心しました。スティーブン・レヴィの『ハッカーズ』では、こう書かれています。

  • コンピュータへのアクセス、加えて、何であれ、世界の機能の仕方について教えてくれるものへのアクセスは無制限かつ全面的でなければならない。実地体験の要求を決っして拒んではならない。
  • すべての情報は自由に利用できなければならない。
  • 権威を信用するな。反中央集権を進めよう。
  • ハッカーは、学歴、年齢、人種、地位のような、まやかしの基準ではなく、そのハッキングによって判断されなければならない。
  • 芸術や美をコンピュータで作り出すことは可能である。
  • コンピュータは人生をよいほうに変えうる。

『ハッカーになろう (How To Become A Hacker)』もとてもおもしろい文章です。

ブラウザ戦争と終戦

『ネットを支えるオープンソース』では、瀧田 佐登子氏の章を楽しく読みました。ネットスケープマイクロソフトのブラウザ戦争が面白いです。紹介されている『Project Code Rush - The Beginnings of Netscape / Mozilla Documentary』も観ました。山の用に積もったコードや急速に肥大化していく企業規模、そして数年の没頭の末に他の道に進んでいくエンジニアたち。


Project Code Rush - The Beginnings of Netscape / Mozilla Documentary

伽藍とバザール』はネットスケープの経営陣に大きな影響を与えたエッセイです。インターネットエクスプローラにモメンタムを握られたネットスケープはブラウザのコードを公開する策に出ます(実際には重要な部分が抜けている”歯抜け”だった)。それがやがてビジネスから切り離され、Mozillaとなり、Googleを標準搭載したブラウザとしてシェアを拡大し、Googleアフィリエイトからもたらされる収益が、貢献したエンジニアへの報酬をまかないました。『伽藍とバザール』とさっき話した『ハッカーになろう (How To Become A Hacker)』は訳者が山形浩生氏で、山形さんは経済学関連の翻訳も多くて大いに世話になった翻訳者です。山形氏はかなり翻訳を遊ぶ人で、賛否両論ですが、そのおかげで読みやすくて楽しいと思います。本当は大聖堂が妥当だと思われるものを『伽藍』と訳したのは、少し違和感がありますが、伽藍とあるからこそ興味を惹いているのは間違いないですね。

伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト

伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト

 

それから、村井純氏がほぼほぼ執筆した『インターネットの基礎』も読了しました。ARPANET(アーパネット、Advanced Research Projects Agency NETwork、高等研究計画局ネットワーク)がやがて世界中を結ぶネットワークへと進化するさまが、ある程度技術面にふれてあるのだけれども平易に書かれていて、内閣で政治家や官僚にアドバイスしたいた村井教授の懐の深さがうかがい知れます。

角川インターネット講座 (1) インターネットの基礎情報革命を支えるインフラストラクチャー
 

村井氏の講演を初めて聴いたのが2016年の「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2016 TOKYO」で、感動して以下のようなブログを書いていたのを思い出しました。そしてそれから1年半以上経つというのに自分の勉強不足が不甲斐ないです。当時は制約だらけの職場で意気消沈していたのですが、もっとたくさん勉強していて、その外での活動を広げて色々とモノを作っていれば、いまだってもっと手早く面白いサービスがリリースできたのに、と後悔しまくってます💢

他にも以下の本も読んでみました。結局、コンピュータ・サイエンス、インターネット、ワールドワイドウェブをめぐる自分の知識が基礎の段階から脆弱なのがわかったのが大きな収穫です。いまは技術ブログやYouTubeポッドキャスト等で事足りる感じではありますが、書籍を買うのは大事かもしれません。お金を使って、物体を部屋に置くということが、自分にとっては意味があるのです。

「プロになるためのWeb技術入門」 ――なぜ、あなたはWebシステムを開発できないのか

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入門 コンピュータ科学 ITを支える技術と理論の基礎知識

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