デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

起業家、クリエイターの青春物語 『田尻智 ポケモンを創った男』

前回のポストでは『Founders at Work』について起業家必読だと話した。だいたいの重要なノウハウは海の向こうにあるかもしれないが、シリコンバレーじゃなくて身近な日本でも、しかもゲーム業界に素晴らしい「冒険の書」を見つけた。『田尻智 ポケモンを創った男』である。

田尻 智 ポケモンを創った男 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

田尻 智 ポケモンを創った男 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

 

ゲーム好きの青年がゲームの同人誌を作り、やがてゲームの制作のために仲間を集う。最初は請け仕事だが、ついに独自企画のゲームを作る。それがポケモンだった。これが田尻智のインタビューで振り返られるので、くっそ面白い。この本は『CONTINUE』(太田出版)で、数回にわたり掲載されたインタビューをまとめたものだそうだ。

おまけに、日本が人口ボーナス期の恩恵を受けて、サブカルチャーが花開いた80年代後半から90年代の空気が染み付いていて最高だった。僕は85年生まれで子どものころはそういう匂いを吸うことができたなあと思うばかりである。

田尻智は昆虫採集に熱中した幼少時代、郊外での暮らしにも言及していて、自然だらけだった東京南西部の郊外の街が、開発でどんどんコンクリに覆われていき、昆虫がいなくなった様を回想している。その昆虫の変わりがモンスターたちだそうだ。これは浦和市(現さいたま市)という郊外で育ったぼくにとって、他人事のように聞こえない。

それから同人誌をつくるモラトリアムな青年期とその後の会社設立などもまあ、一浪一留でPCで音楽を作ることに没頭してから、突如としてインドネシアに行った自分としてはしみじみするものがある。

繰り返すが、田尻智は好きなことに没頭して、それをそのまま仕事にして、成功しているのが素晴らしい。いまやポケモンはとてつもないビッグビジネスに成長している。ぼくが好きな起業家はこういう人たちで、「金だ金だ!」とだけ言っていて情熱皆無の人たちじゃない。