デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

読書メモ『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』

この本は最初のうちはとても眠い感じだ。この類の本によくある著者のセルフブランディングが、重要な情報が欠けた著者の経験談に基づいて、行われる。著者はサン・マイクロシステムズの人事を経て、Netflixで長く人事に携わり、最高人事責任者を勤めていた。

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く

 

終盤でやっと僕の要望に答えてくれる箇所が見つかった。

私がコンサルティングを行う会社には、給与水準をたとえば市場水準の65パーセンタイル(上位35%)などに設定しているところが多い。これを市場の最高水準の65%の額を支払うことだと勘違いしている会社もあるが、そうではなく、「業界全体でその職務に就いている人の65%よりも多い(35%よりも少ない)給与を支払う」という意味に過ぎない。なかなかよい方法だと思うかもしれないが、仮定が疑わしい(業務はそこまで厳密に比較できない)うえに、ほしい人材を獲得できないことが多いのだ。それに、期待される成果から逆算した給与水準ともかけ離れている。市場水準に見合った報酬とは、市場レンジ内の決まった水準に固定された報酬ではない。候補者が必要な期限内に達成する仕事価値に基づくものであるべきだ。

著者はベイン・アンド・カンパニーのリサーチを引用し、ハイパフォーマンス企業は意図的に不平等を作り出し、重要な職務にスター社員を集中させている。通常企業ではスター社員を均等に振り分けるそうだ。

NetflixはCS修士のフレッシュマンに極めて高い報酬を提示していることが話題になった。社内の給与水準がとても高いことで知られている。元々はDVDをレンタルしていた企業であり、サブスクリプションにビジネスモデルを転換した際にかなり人材が流動性を示したと考えられる。いまはGoogleAmazonFacebookと人材獲得競争をするようになり、高給取りで固められた企業に変身したが、高給はたぶん人材の転換にも一役買ったのではないだろうか。

報酬は純粋なインセンティブになるか?

報酬の設定はとても興味深いテーマである。従業員側の報酬の評価は主観的なものである。報酬の評価はそれ単体でされず、職場環境、人間関係の評価と混ざり合う。人事は「自分たちが優秀と主観的に評価した人材」を獲得することに集中すると罠にはまりそうだ。人事の目標とは人材をもって会社の目標を達成することであり、”優秀な人材”のパフォーマンスと目標が完璧に噛み合うことはないと想定できる。

日本のケースでは、人々は年収をもてはやす傾向に気をつけたい。僕は所得税の累進性を考慮するべきだという立場だ。年収の増加分と手取りの増加分は明確に異なる。むしろエクイティやストックオプションの形態を活用したい。売ったときにはキャピタルゲイン税が載るが税制適格かつカイシャが成長していれば、税効率がよくこちらが好ましい。将来のチームメイトとはこの点について深く研究し、「最高の報酬のあり方」を追求していきたい。

また報酬が経済学が定義するインセンティブとしてどれだけ機能しているのか、は興味深い問いになる。長い話になりそうだし、気の利いた答えを出せる気もしない。掘り下げないことにしよう。

人事考課は必要ない

著者は人事考課をなくすべきだと主張している。賛成だ。