デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

MR. ROBOT / ミスターロボットの次シーズンのテーマはデジタルカレンシーにしてほしい

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トランプ当選で『ミスター・ロボット(Mr.Robot)』というアメリカのドラマを思い出した。このドラマはスポンサーを付けないで制作されたもので、大企業・金融業界とワシントンの癒着により超強烈な格差が生まれたアメリカ社会を描いている。「ファイトクラブ」的に錯乱した主人公が率いるハッカー集団が、Evil Corpという超巨大金融コングロマリットをハッキングし、クレジットカードとかローン会社のデータを全部消すという話だ。シリーズは米国で大人気でゴールデングローブ賞をとっている。日本でも流行ってほしい。

このドラマを楽しく見る若年層は、ウォールストリートでワシントンなヒラリー・クリントンではなく、バーニー・サンダースを支持していたんだろうと思う。CNNのクロス集計によると白人、45歳以上がトランプの背中を押していた。44歳以下とマイノリティではクリントンが優勢だ。仮説だが、サンダース支持の若年層はクリントン支持の可能性が高いが、サンダースが予備選で負ける経緯に失望し、投票しなかったかもしれない。

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私は2008年のリーマンショック前後に3カ月アメリカに滞在した。当時学生だったので、20代の人に会う機会が多かったけど、学位取得後に職を見つけられない人はたくさんいて、その最中に金融危機が拡大した。

多くの中流家庭の学生は、大学卒業後に多額の学生ローンを抱えていて、綱渡りになる。さらに結婚して住宅ローンも抱えることになる。2007〜2008までは住宅価格が上がり続けていたので、買って売って、また買って売ってを繰り返す人もいるという。つまり、一般的なアメリカ人は生まれてから死ぬまで債務を抱えていることになる。

金融は富裕層に有利に働く。金融の仕組みを理解し、そのインフラへのクローズドなアクセス権をもっている人が有利になる。それを含めて資本家が有利に運べるルールはたぶん確立されている。トマ・ピケティの「r(資本収益率)>g(経済成長率)」というわけだ。

デジタルカレンシーは新しい社会形成

フィンテック、デジタルカレンシーの話題の記事はまあまあ書いていて、勉強不足だけどこの分野に入れ込むのは、これらの新しいテクノロジードリブンなビジネスが金融分野の不透明な談合を解いて、さまざまな権利を個人の側に渡すことができる可能性があるからだ。

分配がうまくいっていないから、税金でどんととって分けようということをぼくは疑っている。日本は税金と国民からの借金をかなり低いパフォーマンスで運用している。官僚と政治家はおおむね自分のことだけ考えているだろう。だからネトウヨは国家にロマンチシズムを感じているけど、その国家のエリートクラブはネトウヨのことが見えていない、という噛み合わない関係になっている。

財政にも四半期決算の緊張感は重要な気がする。

我々の想像力は本当に限られていて、そこにあるもので発想する。冷蔵庫にあるものでインスタントラーメンをつくるようなことだ。政治経済メディアで交わされるあらゆる意見に関して、ぼくは全然説得されないでいるのも、そういうことだ。既存の政治・社会・経済システムを基盤にした議論はどうもうまくいかない。ぼくには壊れた土台の上に塔を築こうとしているように感じられる。

社会形成をスタートアップの手法で鍛えられないか

政治・社会・経済システムの構築に関しても、スタートアップのようにつくれないのだろうか。1万くらいシステムだかエコシステムをつくって、輝くものに投資が注がれる。その中からネットスケープが出て、ヤフーが出て、Googleが出て、Facebookが出てくればいいという感じだ。

Mr.Robotはファイトクラブにオマージュを示している。(1)ファイトクラブはクレジットカード会社ビルの爆破(2)Mr.Robotはクレジットカードの債務データを全部消す、だった。

次はクレジットカードなんか全く必要ない、デジタルカレンシーベースの社会をつくるハッカー集団の映画がいいんじゃないかなーと思う。やっぱSF映画は未来を語ってほしい。Mr.Robotは3シーズン目に突入するようなので期待。

 Photo by USA Networks