デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

アリババの破壊的な「芝麻信用」:信用や評判のスコアリングは社会を変える

2015年に中国・重慶を旅行していてドルを中国元に両替しようと思って国有銀行にむかった。国有銀行のATMに向かうとおもむろに警備員が声をかけてきた。

「キミ、両替したいんだな?」。中国語だったがなぜかわかった。彼はぼくが両替しようとしているドルを見て、レートを提示してきた。麻雀のおかげで中国語の数字はわかる。レートはATMが提示するものよりよかった。

面白いことにもう一人の警備員のおじさんが現れ、彼はもっと良いレート提示してきた。2人が競争を始めたところで、異変を感じた職員が近づいてきた。このおじさんたちは一瞬で消えた。

この一件からも中国人の金融リテラシーの高さを感じられる。おじさんたちはもっといい両替ルートを知っているんだろう。それで差額を稼ごうというのだ。日本の警備員にはこういうアニマルスピリットを見出すことはできないだろう。

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高層アパートメントが乱立する重慶。開発のカオスさにSF感を感じてしまった。吉田拓史撮影(2015年)

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中心のないマンションの林。薄煕来氏が行った猛開発の結果。吉田拓史撮影(2015年)

中国は本当に面白い

今週は自分が書いてきた記事のおかげで議論や質問がまあまああったので、アリババの金融の仕組みを再び調べ直してみた。

中国人は本当にモバイルで金融を触っている。さまざまなことがモバイル上のUIの上に表現され、そこですべてを実行できる気にさせてくれる。国有銀行の警備員たちもモバイルを利用し、ものすごい速度でコネクションを発見し、ぼくのドルを人民元にする方法に行き当たるのだろう。微信/WeChatのタイムラインにドルを晒せばすぐさまドルの買い手は見つかるのではないだろうか。

東南アジアでもさまざまな華人の人と楽しく過ごさせてもらったけど、彼らの金融リテラシーには勉強させてもらうばかりだった。

芝麻信用という破壊的なクレジットスコア

アリババはコマースや金融取引履歴・ネット行動履歴、公共料金の支払履歴、デモグラフィック、社会的人脈などから、その人の「信頼」を独自にスコアリングしている。「芝麻信用」だ。

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アリババはサービスを拡大させることによりデータソースを拡大し、得られたデータ・セットにより素晴らしいモデルを生み出して、クレジットスコアを極めてわかりやすくしている。下の図を見てほしい。

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ぼくはこのシンプルさにほれぼれとしてしまう。彼らはある意味、信用を貨幣にすることに成功した。スコアをつくる後ろ側のシステムはとても複雑にもかかわらず、本当にわかりやすく表現されている。クレジットスコアはずっと金融機関の特権だったが、アリババは異なる方法でそれを実現した。アリババはクレジットスコアを活かして中小企業向けのローンや損保などに参入している。

保険会社のアクチュアリが触っているようなデータが皆に開かれたらもっと世の中良くなるんじゃないか、とよく考える。案件に対し、適正な保険商品を組成するモデルができてしまえば、社会は駅前にあるようなビルとか、そこに詰まっている人々をもっと異なる目的に活用できる。

「インターネットでつながることでさまざまな信用・評判をスコアリングするチャンスがある」と思う。レーティングの歴史は古くないが、スコアは付けられた後、秘匿されている場合が多い。皆が見れるようになると、人はそのスコアに影響された行動を取りやすい。

AirbnbのJoe GebbiaもTEDで「信用」を築くことに関して話している。Airbnbは家主と宿泊者の間に信用が生まれるかが非常に大事だろう。ブロックチェーン/ ビットコイン企業を買収した。ブロックチェーンに記載された情報は理論上は改ざんができない。しかも自動的に執行される契約などもシェアリングエコノミーに向いている。ブロックチェーンベースのレピュテーションシステムには多くの挑戦者がいる。

 繰り返しになるが、こういうスコアが存在すれば、もっとインドネシアから日本に来て、何かを始めるのが簡単だったのにと考えてしまう。なにしろ、東京に来た関西芸人の80倍くらい大変な目に合わされたからね。

繰り返しになるが、こういうスコアがあればインドネシアから日本に帰ってきて、何かを行うのに苦しい思いをしないで済んだのに、と思う。なにしろ、東京に出てきた関西芸人の80倍大変な目に合わされたからね。