デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

「起業家っぽさ」よりも製品開発の方が効果的だった

今日は雨が強く、習慣にしているジョギング(ほぼウォーキングになっている)ができないので、久しぶりに自分のスタートアップであるAxionの話をしようと思う。1〜5月の間に地道にサイトを整備してきたが、有意な結果を得られたからだ。

この記事で説明したが、僕が進めている有料購読ニュースアプリケーションの「Axion」はプロダクトユーザーフィット(Product-Market Fit)に到達した。僕は「お金を賭けるのには十分な状況が確保された」と推定している。プロダクトユーザーフィットは直訳すると、「製品とユーザーの適合性」。米ベンチャーキャピタルのa16zは「適切なユーザーのために適切な製品をどの程度構築しているか」の基準と説明している

Axionは、海外(米・中・シンガポール・マレーシア・インドネシア)の読者もおり、会社を多国籍化する予定があり、また、海外投資家とのコミュニケーションのためにも英語版(English Version)を用意した。

www.axion.zone

これからどうする?

さて、これからどうするか?

Axionのプロジェクト自体は依然1人で進めている。1人でプロダクトユーザーフィットまで到達したいま、以下の3つの選択肢があるだろう。

  1. チームビルディング
  2. 資金調達
  3. ソロプレイ続行

ここで、Axionが抱えていた制約について思い出したい。それは、チームビルディングを開始すると、外部のプレイヤーが介入をする、ということだ。具体的には、チーム候補の人を攻略することだ。起業してから2年半以上の間、様々なスキームを経験した。これはチーム候補に限らず、その周辺人物にも及び、僕の社会的ネットワークのうち100人超が、このアタックの対象となった。

これは年初のブログでも触れているが、スタートアップを開始してから、周囲の人間が変化していき、ときには僕、あるいは会社の利益を毀損しようとするため、人間関係の大幅な解消を行った。その結果、年齢を重ね、技能を積み重ねるごとに新しい人間関係を築くべきなんだな、という印象を抱いた。

taxi-yoshida.hatenablog.com

率直に話すのなら、一人二人そのような人物を抱き込んでも、会社の意思決定のプロセスから排除し、致命的な情報を渡さなければ、なんとかなる、という甘い見通しが当初存在した。が、それは余りにも甘かったことがわかった。このプロジェクトは、以前から「大金をかける準備ができている」と認識しており、チームビルディングと資金調達はとても自然なプロセスに思えた。実際には、この2つを進めようとして、僕は「藪をつついて蛇を出し」続ける形になった。あるときは、社内では2つの勢力が「狐と狸の化か合い」をし、税理士まで囲い込まれたが、2つの勢力には一時退散を願い、自分で会社の経理をやることで、事なきを得た。

ここには「プリンシパル=エージェント関係」があったと思う。プリンシパルから指示をうけたときエージェントの人はそれを鵜呑みにしているが、プリンシパルは自分が本当に意図するところを伝えていない。私はエージェントに本当のことを伝えるよう頑張ってきたが、今の所成功した試しがない。

そして、さまざまな利害関係者に囲まれている状況は、基本的には、僕はジム・キャリーの「トゥルーマン・ショー」のような感じだったと思う。僕の行動のほとんどが事前に察知されていたので、PCやスマホNSO Groupのスパイウェアが入っていると疑ってしまった。多様な介入者のなかで共通しているのは「犬を主人に対して従順にさせる」ためのテクニックを使ったり、相手の心理にプレッシャーをかけたりすることであり、彼らの間には部分的な共謀関係が見て取れる。

もちろん、善意の人もいて「自分のためにもなるし吉田のためにもなる」と動いている人もいたと思うし、本当に好ましい形でプロジェクトを助けてくれた人もたくさんいる。彼らに感謝したい。ただ、アタッカーが煙幕のようになり、それを活かすのがなかなか難しい。

他のスタートアップの状況はよくわからないが、弊社においては、1,2を進めるとこのように時間を浪費してしまうことがわかったので、年初からはソロプレイに集中するようにしたきた。

さて、これらの環境を踏まえた上で、どうする?

制約は継続しているが弱まっている。チーム形成への介入は依然として続いている印象だが、会社側に抗体ができてきた。アタック自体の分析も進んでいる。今度バックドアを突くようなら、こちらにもいろいろ考えがある。

将棋で言うと「手が広い」状況だ。基本的にはソロプレイを続行する。製品がよければ、弊社特有の状況を乗り越えることが可能だ。現在、詳細な開発の計画を作っている。どうせ変更されるロードマップではあるものの、開発者、クリエイター(記者、編集者、コンテンツクリエイター、デザイナー)などなどの「モノを作る人」にどういう製品を目指しているのか訴えたい。

同時に資金調達、チームビルディングの選択肢もどんどん広くなっている。”起業家らしい”派手なことをするよりも、製品開発をするほうが効果的だったし、そうあり続けるだろう。