デジタルエコノミー研究所

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中央銀行デジタル通貨 (CBDC) は商業銀行を殺す?

来週以降のAxionの記事は、暗号通貨(俗称:仮想通貨)について掘り下げようかな、と考えている。暗号通貨は2017年のブームから状況を変えており、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が現れたいま、再び実用化の可能性が高まっている。

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国家が CBDC を開発するとき最も重要なのは「商業銀行のリテール部門を存続させるか?」だ。電子マネーベースの CBDC では商業銀行のリテール部門は存続するものの、暗号通貨ベースの CBDC では、仕様によっては、商業銀行のリテール機能の大半が、暗号通貨ウォレットに移行する。

CDBD には流通の仕方が二種類ある。国際決済銀行(BIS)が「general purpose CBDC(汎用CDBC)」と言っている、一般の人が現金の代わりに使える CBDC。もう一つは「wholesale CBDC(卸売CBDC)」で、元々デジタル化されている中央銀行当座預金に、ブロックチェーンなどの新しい技術を応用する大口決済専用の CBDC だ。

現行の金融システムのコストは低くない。調査によると、G7諸国の中央銀行が証券の決済や決済にかかるコストは年間500億ドルを超えると推定されているが、これは資産の移動や口座の照合に必要なリソースが大きく影響している。

これに対し、CBDC は、実質的にコストのかからない交換媒体、価値の安全な貯蔵庫、安定した口座単位として機能しうるため、これを採用しないという結論はない。

他にも CBDC のメリットはたくさんある。

第1に、より効率的な決済システムである。国によっては、地理的な理由から現金管理のコストが非常に高く、銀行のない、農村部や貧困層の人々が決済システムにアクセスできない場合がある。CBDC はコストを削減し、効率性を高めることができる。

第2に、金融包摂の強化である。CBDCは、個人が銀行口座を持つことを必要とせずに、公的なデジタル決済手段を提供する可能性がある。

第3に、決済システムの安定性の向上と新規企業の参入障壁の低下である。一部の国(スウェーデンや中国など)では、決済システムが少数の超大企業の手に集中する傾向が強まっている。このような状況の中で、一部の中央銀行は、独自のデジタル通貨を持つことは、決済システムの回復力を高め、決済システムにおける競争を強化するための手段であると考えている。

第4に、金融政策の強化。一部の学者は、金融包摂を促進することで、CBDC は金融政策の伝達を強化することもできると示唆している。さらに、現金の利用がコスト高になる程度によっては、CBDCを利用してマイナス金利を課すことで、「実効下限制約」(ELB)という金融政策の伝達の制約を緩和することも可能である。

第5に、新たなデジタル通貨への対抗手段である。信頼される政府に裏付けされた国内発行のデジタル通貨を国内単位で発行することで、規制が難しく、金融の安定性や金融政策の伝達にリスクをもたらす可能性のある私設通貨(例:ステーブルコインリブラ)の採用を抑制することができるかもしれない。

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