デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

ビジネスパーソンが3分で復習できるビットコインメモ

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Via Pixabay

最近ビットコインの価格が上がっており、ビジネスパーソンの話題になることが増えています。ビットコイン時価総額は958億ドルに達しており、NTTドコモ(915億ドル)やMUFG(920億ドル)を凌いでおりソフトバンクに迫る勢いです(10/16時点)。

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by Takushi Yoshida

ビットコインとその根幹技術であるブロックチェーンはすでに巨大なお金を載せており、 影響力を高めています。ビットコインは少しずつ、しかし確実に世界を変えています。

ところが、ビットコインは説明がかなり難しいのです。でも、ここでは簡単にビットコインとそれがいまどんな意味を持つかを説明してみます。

発行者のいない非中央集権通貨

ビットコインには中央銀行のような発行者がいません。え、発行者がいない通貨なんて可能なんでしょうか? それを可能にしたことこそ、ビットコインのすごいところです。

ビットコインでは、取引の記録は世界中のコンピュータにおかれています。分散型台帳と表現されます。いままで銀行たちが行ってきたことを、ネットワークによって置き換えてしまったのです。すごいですよね、革命的でしょう。

この分散型台帳の正当性と新たに加わった取引を検証し、そのかわりに報酬を得る人のことをマイナー(採掘者)と呼びます。しかしこのような感じではありません。

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Via Pixabay

むしろ、彼らの多くは中国の山奥にいて、このような自分らで組み上げた特殊なコンピュータを使って(中には太陽光発電を同時に行うものもいます)「マイニング」をしているのです。

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Via Wikimedia commons

マイナーはコンピュータを使ってパズルを解く競争をします。最初にパズルを解いたマイナーは取引を入れたブロックを他の人たちに見せ、その妥当性が検証されます。検証が終わると、ブロックは世界中のつながり合うコンピュータたちに配られます。最初にパズルを解いたマイナーには一定量ビットコインが報酬として渡されます。この新しいブロックの生成は10分毎におこなわれています。

ブロックは鎖で繋がれたように最初から最後まで連なっており、ブロックとブロックを暗号でつなぎ留めてあるのです。これがブロックチェーンと呼ばれるゆえんです。

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仮に悪意の攻撃者がいたとします。仮に一カ所のデータを改ざんすることに成功しても他の場所にあるデータは変わらず、ブロックチェーンは常に多数派の取引データを優先する仕組みをとっているため、改ざんされたブロックを含むチェーンは消滅します。悪意の攻撃者がネットワークの力の過半数を握らない限りは、ブロックチェーンをめちゃくちゃにすることができないのです。

しかも、善意の人たちを圧倒する攻撃には莫大なコンピュータリソースを必要とするので、そもそもそれだけリソースがあるなら、ビットコインを攻撃するより、マイニングする方がするほうが確実にもうかるので、ますます攻撃する理由がなくなります。ここでゲーム理論上の極めて難解な問題を解決したと主張されているわけです。すごいですね。

トラストレス、中間者なし

このやり方は中央銀行のような集権的なプレイヤーを生まない、画期的ものです。既存の金融システムは、二者間で交わされた取引を保証する善意の第三者を必要としています。この第三者のコストを負担するのはあなたなのです。

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しかし、ビットコインの仕組みはこの「信用」を必要としないのです。トラストレスというこの概念は破壊的であり、多くの金融機関の必要性に疑問を投げかけてしまうかもしれません。

ネットワーク上で交わされた取引の記録は、誰もが改ざんできない台帳に書き込まれ、それは世界中のコンピュータに妥当性の検証を繰り返しながら保存されることにより、あなたが個人間で行う取引は安全になります。銀行という中間者を経由しないで、個人だけで金融機能を使うことができます。

鍵管理と自由のトレードオフ

あなたは自分のお金の管理権を金融機関に委ねる代わりに、渡された「鍵」を安全に保管することで、自分のものにできるのです。鍵の管理はあなたの自己責任です。この鍵の管理には細心の注意を払わなければいけません。この鍵はあなたが取り返した、自由や独立性を表現していると言って良いのです。

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ビットコインは既存の技術のコンビネーションによって生まれました。考案したのはサトシ・ナカモトという日本人らしき人です。

ビットコインの3つの背景

最後にビットコインの重要な3つの背景を指摘しましょう。

1. 世界金融危機

サトシ・ナカモト論文が発表された2008年は世界金融危機に世界が苦しんでいたときでした。危機は既存金融機関の状況を克明に明らかにしました。世界は新しいお金のあり方を求めていたのでしょう。

2. 国家 vs プライバシー

サイファーパンクと呼ばれる暗号学者たちはNSAなどに代表される、国家による市民監視をよしとせず、市民のプライバシーを守るため暗号学を発展させ、政府が独占しようとしていた暗号技術を民間の人々が利用できる激しい活動をしました。サトシ・ナカモトが最初に論文を投稿したのが、このサイファーパンクのメーリングリストなのです。

3.インターネット

ビットコインの利用はインターネット接続を前提にしており、ネットが現在のレベルまで発展をしたことが、ビットコインの成立要件をみたしました。インターネットがさまざまな領域で起こしている変化と同様、ビットコインにも個人をエンパワーする影響力があるのです。インターネットにまだつながっていない人は世界中にいます。彼らはデフォルトから暗号通貨に触れる機会を持っているかもしれません。変化はまだ始まったばかりです。