第2の時価総額を誇るブロックチェーンであるEthereumで「Byzantium」と名付けられたハードフォークが昨日行われました。ByzantiumはEthereumアップデート「Metoropolis」の第一弾ハードフォーク。この後にConstantinopleのフォークにより、Ethereumは現行のHomestedからMetoropolisに完全移行します。今回のフォークは遠大な金融引締め策の第一弾であり、マイナーの影響力を抑制する劇薬を投下したという意味合いがあります。
Hard fork celebration! pic.twitter.com/mL1ZyJOYeA
— Vitalik Buterin (@VitalikButerin) October 16, 2017
EthereumはDifficulty Bombというアルゴリズムを実装しています。このアルゴリズムのもとでは段階的にブロック生成時間が伸び、マイニングブロック数、マイニング報酬が縮小していきます。ETHの価格が上昇するか、ガスのプライスを釣り上げられない限りは、マイナーのETHマイニングのインセンティブが徐々に低下していきます。
今後はETHの流通量の無尽蔵な増大が抑制されていくことを意味します。いわゆるデフレ政策です。デフレ政策の向こうには、Metoropolis移行とともに現行のコンセンサスアルゴリズムであるPoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)の実装が待っています。開発者コミュニティはこのPoS実装の際にはステークホルダーが新しいチェーンに移行することを要求しているので、ある意味「ふりだしに戻る」が起きるということです。
PoSはコインを株式を保持する資本コストに置き換えます。コンピューティングパワーに関係なく、コインに基づいた利益を得るので、PoWで生じているような強者への集権化を防ぐことができると説明されています。そう、PoSは本質的にはマイナーというステークホルダーの力を劇的に抑制します。
皆で同じ問題を解くPoWは非効率的であり、PoSの説明が正しければ素晴らしい限りですが、さまざまな検証が必要だと考えられます。PoWはマイナーを分け隔てて報酬を設定し、マイナー間に競争と抑制をもたらしています。これによりある程度の非中央集権化に成功しています。PoSはこれより質の高い非中央集権化を目指しています。
他方、PoSは一部のコイン保有者連合が独占を成功させる恐れがあります。PoSがEthereumのような取引所での取引額がある通貨で試された例はありません。載っているお金が大きかったり、コインの特性が異なれば、ステークホルダーの行動は異なるものになる公算は高いです。ブロックチェーンの開発は引き返しづらいため、トライエラーを繰り返す手法が効かないのは少し苦しい。
Zcashの秘匿トランザクションを取り込む
今回のハードフォークではここが最も大きなアップデートは、Ethereumでも秘匿トランザクションが活用できるようになったことです。Ethereum上にZcashに使用されているゼロ知識証明を利用したzk-SNARKsを導入しました。ブロックチェーンはそれまでのトランザクションが連なっており、ノードであればそのすべてが開示されているという透明性を誇ります。スマートコントラクトは秘匿された方が好ましいものも含むことができます。