デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

人工知能とゲームの幸せな関係:三宅陽一郎氏講演の感想

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via SquareEnix

先々週、MIT Technology Reviewの日本版創刊イベントで、三宅陽一郎氏の講演を聞いた。三宅氏は人工知能研究をした後、スクウェアエニックスに入社、「FINAL FANTASY XVファイナルファンタジー15)」のAIに携わった。ゲーム内でのAI実装の権威で、本を何冊も書いている。

三宅氏の話を聞いていると、ゲームがやりたくなってきた。聴きながら感じた感想を3点にまとめる。

1.生物は知覚する世界をすべてだと思い込む

環世界 - Wikipedia

すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考え。ユクスキュルによれば、普遍的な時間や空間(Umgebung、「環境」)も、動物主体にとってはそれぞれ独自の時間・空間として知覚されている。

それをゲームの中でシミュレートしているわけだ。三宅氏はFF XVにはメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの3つのAIを活用していると語っている。 

ゲーム内のキャラクターは確かに「生物は知覚する世界をすべてだと思い込」んでいる。DeepMindのCEOデモス・ハサビス氏が携わった「テーマパーク」にもそういう来場客が出て来る。同じところを行ったり来たり…。

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Via Download Theme Park | Abandonia

[感想]シミュレーションゲームはこういうプレイヤーを多数作って、ゲームが設定した条件の中で動くようにすることで、世界を表現している。小中高生のときに「信長の野望」に夢中になったが、これらも数十の大名たちが領土を拡大するために、「戦争」「外交」「裏切りの約束」「暗殺」「国家経営」「武将・参謀を鍛える」などを行う。セーブして進めると、数ターン先の結果がかなり異なる。ゲーム内プレイヤーをプログラムし、それがプレイする人間にとって不自然に感じないようにつくるのは、とても困難な作業だと思う。

2.意思決定するゲームキャラクター

ゲームキャラクターは意思決定をする。認識(Sensor)と行動(effector)の区分が存在する。意思決定には4つのアプローチがある。

  • ルールベース AI(Rule-based AI)
  • ステートベース AI(State-based AI)
  • ビヘイビアベース AI(Behavior-based AI)
  • ゴールベース AI(Goal-based AI)

[感想]ゲームキャラクターをうまく動かすだけでも相当な苦労だ。昔のRPGみたいな単純な行動を指示するのなら簡単だけど。今のキャラクターは複雑な動きを表現している。

現実世界で意思決定に迷ったとき、ビヘイビアツリーを作ってみると、まあまあそれでうまくいくこともある気がしている。将棋の読みのような感じだ。2014年のインドネシア大統領選挙の情勢分析として将棋をモデルに、ビヘイビアツリーを活用してみた。かなりワークした。ビヘイビアツリーを使うと自分の判断、予測がかなり感情やバイアスに左右されていることがわかる。

3.フレーム問題

機械は与えられた問題だけしか解決できない。

フレーム問題 - Wikipedia

フレーム問題フレームもんだい)とは、人工知能における重要な難問の一つで、有限の情報処理能力しかないロボットには、現実に起こりうる問題全てに対処することができないことを示すものである。 1969年、ジョン・マッカーシーとパトリック・ヘイズの論文の中で述べられたのが最初で、現在では、数多くの定式化がある。

機械がもっていない、汎用的で柔軟な知性活用能力を付けていくと、オートーメーションを生かして働くことができると思った。

(参考)