デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

無価値コインの終わりの始まり:中国のICO禁止

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 ICO(イニシャル・コイン・オファリング)にパリス・ヒルトンまで関心をもつようになった矢先、中国政府がICOを禁止しました。ロイターが国営の新華社から得た情報によると、オンライン上の金融活動を監視する政府組織のデータとして7月に伝えたところでは、中国では今年、65件のICOがあり、10万5000人から26億20000万元(3億9460万ドル)を調達したといいます。中国の中銀は企業はICOで得られた資金をリファンドすべきとの考えを示しています。

7月下旬には、米国証券取引委員会(SEC)がEthereumの上に生まれた分散型ファンド・組織である「The DAO」などがアメリカの1933年証券法ならびに1934年証券取引法に違反したかに関する調査し、「今回は罰則の適用を求める行動をとらない」としたものの、The DAOの行ったICO(イニシャルコインオファリング)で発行されたトークンは「有価証券の発行だった」と認定したことが発表されています。

米中という世界経済の双頭でICOに対して規制の方向性が示された形になったと思います。

それでもICOは終わらない

これでICOが死んだと考えるのは時期尚早でしょう。FTによると、海外のプラットフォームを活用すれば本土中国人はICOへの投資が可能です。海外のICO関連ウェブサイトが中国語バージョンをもつことを止める手立てはありません。 

ICO自体はスイス、シンガポール、香港などの金融のルールが「簡単」な国に法人、財団を設けて行われるのが通常です。これらを中国当局が規制することはできません。シンガポール、香港で本土中国人の存在感は増しているはずです。

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cegoh | Pixabay

中国人は海外旅行を好んでいますが、目的は観光だけではなく、シンガポールなどを活用したり、海外のネットワークを使えば、ICOへの参加は今後も可能になるでしょう。それにわれわれが想像できないループホールを開拓するのが中華系なんです。

感化できないレベルの資金流出

今回の判断の最も大きな背景は「資金流出への恐れ」です。中国では富裕層だけでなく中間層も、資金を海外に逃がすことに高い関心を示します。だからこそ、その手段になりうるビットコインに対して中国政府は厳しい態度をとり続けてきました。ICOもまた人民元をコインにして外貨でイグジットすることが可能になります。中国の企業社会はかなり腐敗しており、汚れた金をきれいなお金に変えるプロセスにも使えるでしょう。これは暗号通貨の問題ではなく、悪い人たちに問題があります。加えて資金洗浄の手段は他にもたくさんありますので暗号通貨が画期的なその手段ではありません。例えば、マカオのカジノでお金をチップに替えて、マカオダラーにしてその後、国際送金ネットワークを利用して欧州やシンガポールの口座に送金するという方法は(私が知っているくらい)有名でした。

上記記事では、中国国家外貨管理局の資料は「中国の資金流出傾向に歯止めがかかっている」と言っています。しかし、まずこれらがフォーマルな数字であることに留意しないといけません。インフォーマルはどうなっているのでしょうか…。

ICO自体は暗号通貨マニアック界隈ではすでに輝きを失ったスキームですが、新規参入者、特に既存の枠組みで資金調達を経験している金融関係者にとってはピカピカに光って見えています。ICOや暗号通貨はいわば金融機関、証券取引所監査法人などの枠組みで運用される伝統的なモデルをスキップできることが相当素晴らしい。この層が最近は「ICOコンサルティング」の提供者や顧客になろうとしており、最近のICOブームを盛り上げてきたでしょう(私もいろんなお誘いを受けました笑)。

前回の記事で指摘したように、アプリケーションにファンドレイジングの都合上、無理矢理据え付けたコインは価値が薄いはずです(ないかもしれません)。しかもこれらはアプリケーションのユーザー体験を低下するようにできています。

今後の暗号通貨の価値は、明確な価値を表現できそうなBitcoin(ゴールド)、Ethereum(分散型アプリケーション構築プラットフォーム、トークン)、Litecoin(マイクロペイメント)などに収斂していくのではないのでしょうか。いわゆるScamコインは厳しい市場環境を迎えており、宴が終わろうとしているのかもしれません。淘汰は長期的にみれば暗号通貨の信頼性を高めていくことに寄与するはずです。

あと、DIGIDAYで書いた伊藤穰一さんのお話も「長期的な視野」という点で参考になると思いますので、付記しておきます。

   参照

独自コインこそ最大の罠:日本人チーム初ICOのALISが示した教訓

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Via Pixabay

ICO(イニシャル・コイン・オファリング)の熱は留まるところを知りません。ICOで生まれる価値は株式会社という仕組みをインターネットの時代に則した形にする可能性があります。また株式会社が内包するコストをカットできる可能性もあります。しかし、ICOは始まったばかりでさまざまな課題をもっています。今回はいくつかICOの課題を指摘し、今後のICOの発展に貢献したいなと思います。

東 晃慈(@Coin_and_Peace)の記事では、ICOプロジェクトでは特にプロダクト開発面での進捗が通常のスタートアップのプロジェクトに比べ遅くとも許容され、最初に何十億円も調達できてしまうので、MVPに達するインセンティブがなくなることが指摘されています。

48のプロジェクトのうち、Working productをリリース出来ているのは3つのみ。27(56.25%)は何もプロダクトを一般リリースできていない。またWorking productをローンチできたプロジェクトも実際にまだ大きな成果を出しているとは言い難い。アルファとベータプロダクトのクオリティーにはプロジェクトごとに大きな差異があり、アルファ状態から進捗が数年見られないようなプロジェクトも見受けられた。

さらにプロジェクトの進捗と資金調達額にはあまり相関性がないことも指摘されています。投資家と開発者の間の情報の非対称性は凄まじく、投資家は何がいいかを判断できないまま投資を決断している状況が指摘されています。つまり、ICOは壮大なレモン市場と化しているわけです。

瓜二つのALISとSteemit

現在、ALISが日本人で固めたチームによる初めてのIPOを行っています。日本に法人があるのではなく香港法人によるICOです。

ALISはホワイトペーパーにもある通り「Steemit」から着想を得ていますし、その仕組みはコピーキャットの域を出ていない印象です。このためSteemitのモデルを検討すれば、ALISがある程度わかると思います。実際にはALISはSteemitの複雑化して煙に向いている部分を取り外し、煙に巻いていないだけの形をしている、というのが私の印象です。

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ゼロから価値を創造し配りまくる「魔術」

Steemit自体が独自コインを発行し、それをユーザーに分けていく仕組みを採用しています。Steemは毎年ほぼ倍増する非常に高いインフレ供給モデルです(途中でユーザーの要望によりコインの増加量を限定しました)。

  • 基本的に外部からの価値供給がない。そもそもの価値がどこから生じたのかが明確ではありません。なぜSteemが価値があるのか。理論上は価値がどんどん落ちていく通貨を、コンテンツ提供者やコンテンツ発掘者に報酬として渡しても、インセンティブがうまれません
  • 先行者に優位。SteemitはSTEEM, Steem Dollars, Steem Powerとプラットフォーム内を流通する通貨に奇妙な分類を付けていますが、これに対し利子が生じます。初期参入者は複利を楽しめますし、コンテンツへの投票などで発言権がおおきくなるようです。
  • Steemitの価値は暗号通貨バブルで確保。取引所でのSTEEMの価格により、なんとなくSTEEMに価値があるということになっています。

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おそらくALISでも同様のできごとが想定できます。クリエイターへの報酬を保証し、信頼性を確保する仕組みを提供するという役割がALISトークンに期待されていますが、どちらかというとトークンを集める競争を誘発すると想定されます。 信頼を保証する通貨が増え続けることは、その信頼を保証する効果も薄れていきます。信頼や評価のようなもの(この場合はトークン)を囲い込むプレイヤーが優位に立てるゲームであり、先行者利益がおおきいのです。私はこの部分はより厳しいレーティングを当てるべきだと考えております。

トークン自体の金銭的価値も減少を続けていきます。しかも、交換相手として想定されるEthereumの価格は上昇を続けています。減価するトークンでユーザーをインセンティバイズすることは難しいでしょう。下記のように図になっているとインセンティブ設計がうまく言っているように感じられますが、基本的には資金調達上生み出さざるを得なくなったトークンに信頼の保証を依存しており、その信頼は無尽蔵に価値のバックがなく生み出され続けていきます。

しかしICOバブルはうますぎる

しかし、ICOをするプレイヤーとしてはファンドレイズの簡易さが大きいです。通常のシードラウンドで1000万円程度の調達と考えられる案件が、2億超に膨れ上がるわけです。そしてその際のコストはかなり低く抑えられているわけです。トークンが怪しいものであろうと運が良ければ、取引所で価格が上がりステークホルダーが喜びます。

不要なトークンを正当化して歪むプロダクト

私はここらへんにICOには罠があると思います。つまりプロダクトを歪めてしまう可能性が高いのです。資金調達のために独自トークンを設定する必要が生じ、プロダクト開発から観た際に、不要なトークンが組み込まれます。そのトークンを正当化するため他の部分にも手を入れざるを得なくなります。

トークンに「煩わしさ」を排除した株式の機能をもたせるのが最善策に思えるが、「有価証券」と認定されるやいなや規制の網の中に入ります。率直に言えば、日本では規制にコントロールされると、あらゆるイノベーションがうまくいかなくなる傾向があります。中国はICO禁止しましたが、日本はこれを機会と捉えて、もっと積極的な法制をとるべきではないかと考えます。

同じICOでも面白いのはタイのOmiseGoだと思います。OmiseGoにはアジアに暗号通貨ベースの安価で高パフォーマンスな決済を提供するというビジョンを持っており、すでにコインの時価総額は10億ドルです。ICO以前の2013年からプロダクトを開発してきた経緯があり、ICO後も必要な買収をしたり、提携先を確保しようとしたりと真面目です。お金集めておしまいとせず、どんどん事業を進めていく点が、日本人CEOの良いところなのではないでしょうか。OmiseGoは面白いです。

参照


 

核融合の発達、超時代遅れな日本の原発議論:デジタルビジネスの野蛮な一週間

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C-2U device. Courtesy of Tri Alpha Energy Inc.

Google Researchがアメリカの主要な核融合技術開発企業「Tri Alpha Energy」の進めるプロジェクトに参画し、核融合発電の実現に向けて共同で研究を進めていることが発表した。両者は核融合時に発生する、超高エネルギーを有するプラズマを制御するための新しいアルゴリズム「Optometrist(検眼)」の開発を進めています。Microsoft共同設立者Paul Allenが出資するTri Alpha Energyは、5億ドル以上の資金を調達。米国ではアカデミア層がインダストリー側に移る動きがあり、投資家が巨額の研究費を融通する形で生まれたTriもその例のひとつです。そこにこの枠組みの最大のバッカーとも言えるGoogleがかんだこの取り組みは象徴的です。卓越した科学者にいいビジョンがあるとお金は集まる時代になりました。

Tri Alpha Energyが開発してきた「C-2U」という核融合実験マシンの中で、水素を太陽に存在するものと類似した超高温のガスである「プラズマ」になるまで加熱します。この高温下で非常に複雑な反応が起きます。それを制御するのは困難を極めます。今回開発されたOptometristアルゴリズムは、「C-2U」のなかで、プラズマがその発生から時間の経過とともに総量を減少させることを最小限に抑えることに役立っているようです(下図)。Googleと共同で開発したアルゴリズムにより、エネルギー損失が50%も少なくなり、プラズマエネルギーの総量を増加させることに成功したといいます。

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プラズマの「行動」は小さな変化が大きな結果の変化を生む非線形現象を含んでいます。TriとGoogleはC-2Uで8分ごとに実験を行いましたが、それは水素原子のビームをプラズマに吹きつけて、磁場中で最大10ミリ秒回転させ続けることを含みます。その目的はプラズマが理論が予測しているように動作するかどうかを調べることであり、消費するエネルギーよりも多くのエネルギーを生成する核融合炉を確立する有効な手段だと考えられています。

Optometristアルゴリズムは人間による実験とモンテカルロ法の双方に基づくもの。モンテカルロ法は「AlphaGo」などに応用されています。「乱数に依る試行を繰り返し、結果を統計的に読み解くことで、求めるものらしきものに近づく」手段です。カジノがあるモンテカルロの名前が付されていることからも分かる通り、ギャンブルなどの「ゲーム」の解法を得るために発達しました。

機械学習の知見によりハイパーパラメータの探索空間を広大にすることで、オペレーションに関わる人間の能力を拡張することができ、複雑で多面的なシステムを解明することが可能になったといいます。

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Toshiki Tajima and Michl Binderbauer. Courtesy of Tri Alpha Energy Inc. 

核融合発電が必要とする資源は地球上のいたる場所にあります。資源を巡って人間が争う問題を避ける大きな一手になりえます。核融合発電の理論上のコストパフォーマンスは既存の何よりも優れているはずですし、木星に宇宙基地を作る際も核融合技術はとても役に立つはずです。

核融合発電が社会にもたらす変化もまたカオスで予測不能だと思います。都市の形を大きく変えてしまうはずですし、石油価格が急落し、石油などと結びつきの強い王政やクローニーキャピタリズムが崩壊するかもしれません。インフラ整備が格段に楽になるため、発展途上国は物凄い勢いで発展し、発展国よりも優れたスマートシティに住むようになる可能性もあります。

日本の原発議論は超時代遅れ

日本で交わされている独特な原発議論は、完全に時代に置いて行かれていますし、核融合太陽光発電などの他の技術進歩が、それを化石のレベルまで貶める可能性があります。東芝ウェスティングハウスというジョーカーを引いて沈みました。これらの問題のコアには、ガバメントや周辺の利益集団などで形成される意思決定者(いわゆるエリート層)たちが、科学の進展とその社会適用速度の加速や、Googleを20年で巨大企業にした資本主義の決定的な変化に、明確についてきていないことがあると思います。

総務省のAI開発ガイドラインにおける「AIに殺される問題」でPreferred Networksが離脱しました。スマートスピーカーに「AIスピーカー」と素っ頓狂な名前を付けて顰蹙を買いました。

Plasma fusionテクノロジーが結果を出してくるとこれまでの常に政治的に行われてきた原発議論は何だったのか、ということになるはずです。もっと効率的で素晴らしい発電方法があったのにもかかわらず、効果的な投資をせず、個々人の政治的利益だけを鑑みて見当違いな議論をしているということです。

よりスマートなレギュレーター、よりスマートなガバナンスの開発こそ日本の課題であることは間違いないです。

 参照

 

 

AmazonとGoogleのコア事業が衝突:デジタルビジネスの野蛮な一週間

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今週はGoogleWalmartの提携が最も大きなニュースだった。Google ExpressでWalmartの商品を注文し、発送されるようになった。デバイスはラップトップ、モバイルだけではなく、Google Homeを通じた音声での注文も可能になったという。

AmazonがWhole Foodsを買収しリアル小売に参入しており、敵の敵は味方の論理で、今回の協働に至ったと考えられている。Google ExpressはすでにCostcoなどを取り込んでいるが、GMV(総流通額)で大きなインパクトを出せていない。Walmartも自らのECを展開するものの、ECに関してはAmazonの支配力は本物だ。

Googleはコマーシャルハードウェアは余り得意ではない、というのが定説だが、物流などのとても泥臭い部分には知見はなく苦手そうな気がする。だからこそGoogle Expressに既存小売業者を載せる形態を採用しているだろう。

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収益規模ではWalmartAmazonを大きく突き放しているが、金融市場の評価ベースではAmazon時価総額4700億ドル)はウォルマート(同2400億ドル)の約2倍で、立場が逆転する。

購買行動の変化

今回の提携の興味深い点はGoogle Homeを利用してWalmartの商品を購買することが可能になることだ。音声デバイスを利用した購買がどの程度拡大するかは今後の状況を追うしかないが、音声での購買ではユーザーは少ない情報量で、購買の決断に至る可能性がある。特に日用品に関しては同じものを買い足していく可能性があり、スマートホームとの連携が高度化すれば、冷蔵庫の中のある製品が足りなくなってきたから購入するかと、パーソナルアシスタントが尋ねてきて、購買が終わる可能性もある。将来的には自動的に日用品の不足を補うスマートホームも考えられ、月定額で日用品を補充するサービスも検討されるだろう。

Voice Enable vs Serch

Googleはパーソナルアシスタントが普及した後の世界でどう収益源を探すのだろうか。検索広告はGoogleの収益の4割程度を占めていると推測される。

仮に購買行動が「すべてを音声で済ませる」方向に向かえば、検索後にスクリーン上で広告を見るプロセスは省略される。ボイスイネーブルとスマートホームや各種プロダクト / アプリケーションの連携はその方向性を帯びている。この流れはGoogleの主要な収益源の不安要因になりかねない。

一方でAmazonはコマースのバリューチェーンをがっちり握っておりユーザーは広告を見ようが見まいが関係がない。買ってもらえばそれでいい。音声認識によるコマースはAmazonに有利に働く可能性もある。

AmazonWhole Foods Marketのプライシングを28日から下げると明らかにしている。Whole Foodsの価格は高いと言われていた。Amazonがもつオンライン購買データやダイナミックプライシングなどのノウハウとミックスすることで、価格戦略を改善できるだろうか。ダイナミックプライシングは需給状況に応じて価格を変動させることによって需要の調整を図る手法であり、繁忙期の飛行機の値段などが上がるなどの例が最も有名だ。Amazonは、今後Amazon Prime会員のベネフィットを積みましていくと考えられる。

各地で狼煙が上がっている

GoogleAmazonの攻防はかなり熾烈になっている。Amazonは独自のモバイル、タブレット、OSを開発したが、市場は歓迎しなかった。Amazonが人々が高頻度で接触するデバイスやアプリケーションを持ちたいという欲求を叶えたのが、Amazon EchoでありAlexaだ。これらがスマートホームの時代にどれだけの価値を囲い込めるか。

また、今回のGoogleWalmart提携で小売での競争も激化し始めたが、AmazonGoogleの重要な収益源であるデジタル広告に厳しい攻勢をかけ始めている。AmazonのQ2のアーニングコールでは広告セールス部門の拡大が明言されていた。

Googleの巨大なデジタル広告の牙城の中で最も重要なのは検索広告で、ここは依然として競争相手を吹き飛ばしている状態が続くと考えられる。

ただし、ディスプレイ広告に関してはGoogleが買収したダブルクリックのエコシステムを育てた部分にAmazonがにじり寄っていると迫っていると考えていいだろう。もちろん、Googleはディスプレイ広告の重要な要素をがっちり固めていて、良い広告在庫は概ね自分らで扱える(他者はあんまり扱えない)状況を築いている。

ディスプレイ広告の景色を変えるか?

ここにAmazonはヘッダー入札という技術にテコを掛ける形で、広告在庫の流通を変えにかかっているのだ。ステークホルダーの多くがGoogleの支配力に不満を持っていると考えられるなか、Amazonが他者にどの程度のベネフィットをもたらすかが気になる。バイサイドのテクノロジーはすでに素晴らしく、ECに誘導する商品開発も興味深い。

しかし、Amazonは取引形態を変えていく欲望をもっていて、その結晶が「Transparent Ad Marketplace (TAM) 」だ。Googleが現行主導している取引形態とは以下が異なる。

  1. サーバーサイドでのソリューション提供によりクッキーのマッチングを改善できる、レイテンシの克服
  2. エクスチェンジが提示する「本当」の最高価格をとれる(?)
  3. ソフトウェアアズアサービス的な手数料形態の導入

Amazonの主張だけを聞いていると、かなりダブルクリックに優位な気がしてくるが、知らないことがたくさん潜んでいるのがアドテクの世界だ。

小売、広告とAmazonGoogleは両者のコアを攻めあっている。

 

 

 

 

 

 参照

 

https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-08-25/amazon-primes-whole-foods-for-more-visitors

ビットコイン衛星の誕生:デジタル経済デイリー

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ビットコインコア開発者を多数抱える、技術者集団ブロックストリームはビットコイン衛星を発表した。衛生からビットコインのネットワークとの接続性を地球上の様々な土地に飛ばせるという。受信にかかるコストは100ドル程度で、これはインターネットインフラがなく自国通貨の信頼性が低い開発国(Developing Country)にはもってこいだ。GoogleFacebookがインドやアフリカで行うコネクティビティプロジェクトや、ソフトバンクが買収した、衛星からインターネットを世界中に供給しようとするOneWebとアナロジーを感じる。

大石哲之氏がブロックストリームCSOのSamsonのコメントをゲット。そのブログから引用する。

砂漠の真ん中にパネルを立ててソーラーマイニングも可能になるよ。パネルを地上に設置し、マイニング機材は地中に置く。そして、ビットコインネットワークに接続できるんだ。ソーラーパワーや、地熱・水力などの自然エネルギーを利用し、砂漠や極北といった地でのマイニングが可能になれば、分散化という意味で、大きな意義があると思います。ビットコイン衛星でマイニングの分散化を図る、壮大なビジョンはすでに実現可能なテクノロジーとして動いています。面白いです。

 後は堀江貴文が、「宇宙太陽光発電でマイニングしたら採算取れるかも笑 」とツイートしていて、宇宙太陽光発電とマイニング用のコンピュータを積んだ衛星を飛ばして、ネットワークとの接続が噛み合うならば、宇宙でマイニングする未来があるかもと思った。このマイニング衛星に高度な独立性を渡せたら、Proof of Workはより美しくなるのではないか。

ただゲーム理論的な疑問として、ステークホルダーにその高度な独立性を認めさせるにはどうすればいいのだろうか、がある。合意できるだろうか。

 

ひとつはGoogleのようなスーパーパワーが他者を圧する形でそれを成し遂げてしまうことだ。ブロックストリームもアナーキスト然としてこっそりそれをやろうとしているかもしれない。

もうひとつは、その難解な問題を誰かが説いてしまうことだ。そういう天才を讃えたいという気持ちになってしまう。あるいは量子コンピュータが出てきたら難解だった問題が超楽勝になるかもしれない。

とりあえず、楽しみなプロジェクト。

参考

ブロックチェーン研究所

http://doublehash.me/bitcoin-satellite-mining-decentralization/

単純な世界の終わり: デジタル経済Newsletter_8/8

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先週末はマーケティングについて少し考える機会がありました。マーケティングはあまり科学的ではない発展の仕方をしてきたと断言していいでしょう。かなり都合のいい想定を皆で信じることで、業界が機能しています。丁度「想像の共同体」である国民国家が、皆が信じていることで機能しているのと同じようにです。従来型のマーケティング国民国家も同様に同じ課題を持っていると思います。それは、どうせ架空のものを使うならもっと良い物を使ったほうがいい、ということです。

下にリンクのある記事では、線形から非線形の世界へと移行することについて触れられています。私達の世界は(人間から見ると)どんどんカオスになっていきます。でもそれがあらゆるものの基からあるありかたですね。複雑なものを人間だけで動かすのは大変なので、機械の力を借りましょう。機械の力を借りた結果、機械が真似出来ない人間のクリエイティビティを発揮する機会に恵まれることになります。マーケティング国民国家ももちろんそうです。

http://digiday.jp/platforms/ai-change-society-business-data-harvest/

ソフトバンクがフリップカートに投資のうわさ: デジタル経済Newsletter_8/2

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ソフトバンクの孫さんがインド地場最大ECのフリップカートに、ビジョンファンド経由で投資とのうわさ。スナップディールへの投資が焼け付きそうなところで、両者を合併させようとしており、さらにフリップカートにナンピン買いをするところが、粘り強い。

Amazonが優位にゲームを進めていると言われるが、インドECの潜在性はマッシブ。インド政府も国内EC市場がAmazonだけに占拠されるのを指を加えてみているとは思えないので、フリップカートには勝算は残っている。フリップカートはAmazonを追い出すためにディスカウント合戦などに資金をじゃんじゃん注ぎ込んだのが大失敗だったわけだが、似たような失敗をジェフ・ベゾスも繰り返しまくってきた。その失敗を織り込んでいたり基礎部分のノウハウを持ち込んだりできるのが、Amazonの優位性。フリップカートも今後も失敗をたくさん犯すだろうが、巨大な国でECを立ち上げるのは並大抵ではなく、失敗のコストをどれだけ落とせるかが勝負所だろう。

 

http://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/softbank-may-invest-in-flipkart-through-fund-sources/articleshow/59860387.cms

ビットコインのトレードオフ: デジタル経済Newsletter_8/1

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※このブログは8/1 8:00AMに書きました。ビットコインに関する情報は流動的なので個人の責任での運用を宜しくお願いします。

 

今夜HFでBitcoin Cashが生まれる公算が高い。コア開発者と対立しているマイナーのJihan WuらがBitcoin Cashとして外に出る。JihanはAsic BoostやAnt Bleedなどの不品行を働いていたみたいなので、彼のアウトはビットコインにとってはかなり調子がいいだろう。SegWit実装以降のレイヤー2の開発、実装に望みを託せそうだ。

先週のデジガレのNCCでもビットコインコア開発者はレイヤー2への期待と、安全性を最重視した開発・実装プロセスをすすめることを主張していた。

ただしスケーラビリティ論争が終わったわけではない。スケールとセキュリティ、非中央集権型のデジタルマネーとしての独立性などは複雑なトレードオフの関係になっているようだ。世界通貨的なポジション、VISAを超える処理能力などを思い描くグループ(金融業界出身者、ビジネスに多い)がいる一方で、セキュリティと独立性を重んじるグループ(開発者や熱狂的なユーザに多い)もいる。また同様の対立は起こりうるだろう。

新しいコインを作るよりも、ビットコインからハードフォークする経済合理性が勝るので、今後も似たようなことが起きるはずだ。何しろステークホルダーの熱量は高いのだ。

モバイル動画がデスクトップ動画を超える: デジタル経済Newsletter_7/28

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来年米国ではモバイル動画広告費がデスクトップ動画広告費を超えるとZenithが予測した。様々な動画配信プラットフォームでモバイル利用がマジョリティであると言われていて、予算計上の都合、統計を見てからの意思決定などで広告費の上昇が遅れて追いかけてきていると見るのが妥当だろう。

  • 家の中でのWi-Fi利用は定着している。デスクトップ・ラップトップではなくタブレットスマートフォンを利用するケースが増えている
  • 高容量のデータ通信パッケージが発達しつつある

ネットフリックスのQ2発表があり1億サブスクライバを超えたとある。予想以上にユーザはスマホのスクリーンでネットフリックスを利用しているとQ2資料は言っている。

動画が商業インターネットのトラフィックに占める割合は拡大の一途。今朝DIGIDAYの記事にもしたが、動画とコマースの組み合わせなど動画を視聴して「消費」するというやり方の外に拡大・融合する傾向が強い。

https://ir.netflix.com/events.cfm

https://www.recode.net/platform/amp/2017/7/17/15981376/mobile-video-consumption-25-percent-in-2018-online-video-peaks

ソフトバンクのIoT戦略はどの程度成功するか: デジタル経済Newsletter_7/24

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先週末、ソフトバンクの年次イベントで孫正義が講演している。この記事で説明しているように孫のAI / IoT投資は半端がない。孫氏はデータこそが21世紀の石油と語っている。それで The Economist  のこの記事を思い出した。おそらく巨大企業のエグゼクティブ層にデータが最も価値の高い資源だと伝えることに成功したのがこの記事なのだろう。

www.economist.com

私の知っているシニアも喜々としてこの記事を上げていたが、少し意地悪を言えば、この記事はThe Economistの特集記事のかなり前のページに置かれている要約版であり、本編ではないのである。本編も読んだがまあ当たり前の内容がかかれている(当たり前の内容を書くことも大事だ!)。

以下の部分は失敗を恐れてはいけないことを教えてくれる。日本社会で育ち暮らしていると、どうしても失敗を恐れる心が生まれてしまう。失敗を恐れることが最も大きな失敗だ。

実はスプリントに投資して、すでにソフトバンク複利でですよ、複利で毎年48パーセントのリターンを得ているのが実績なのであります。スーパーセルも97パーセントの複利でのリターン。投資した資本に対してリターンを得ている。 つまり、これは我々が単に1回打席に立って1回ヒットを打ったというのではなくて、意図して、考えて、戦略的に何回も打席に立った。空振りもしました。たくさん失敗もしましたけれども、ヒットのほうが大きかったことを意味しているわけです。

孫正義「人間の知能はもっと拡張される」情報革命がもたらすパラダイムシフトとは? - ログミー

しかし我々は、同じ志を持っている起業家たちと、テクノロジー、そこに資金を集めて、同志的結合、志をともにする仲間たちと一緒に革命を起こそうと考えているわけです。

孫正義「革命は力を持たない人々が成せるもの」10兆円ファンドで“情報革命のジェントレ”を目指す - ログミー

ARM、Didi Chuxing、NVIDIA、OneWebなど同社のIoTアームがどういう未来を描くか興味深い。日本自体はこのアグレッシブな投資を高い通信費、端末費を払いながら支えるだけなのは少し悲しいが。

想像し計画する人工知能: : デジタル経済Newsletter_7/21


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Deepmindが2本の論文を発表して、その内容をブログに完結にまとめてくれている。「想像し、計画するエージェント」を紹介している。汎用人工知能(AGI)の創造をビジョンにする同社らしい研究だ。

ブログを抄訳する。

  • エージェントは自らの中で行ったシミュレーションを解釈することを学習する。これはエージェントに環境のダイナミクスを把握するモデルを使うことを許容する。把握されたダイナミクスは必ずしも正しくないが。彼らは想像を効率的に使う。
  • 想像されたいくつもの道筋、問題を解くためにその事象と適合させる。効率性はエンコーダによって強化される。エンコーダは報酬を無視して想像から追加情報を算定する。道筋(報酬)が高い報酬をもたらさなくとも、有用な情報を含むだろう。エージェントは計画を構築するための様々な戦略を学習できる。
  • あるいはエージェントは、正確性とコンピューティングコストの異なるモデルを同時に学習できる。
  • これは広範な種類の効果的な戦略策定を提供する。一つのものをすべてに適用するアプローチに制約を受け、不完全な環境への適応性が限定されかねないということではなく。

メッシがミリセカンドで相手DFの動きを見て、シミュレーションを繰り返し、DFを抜くというようなことを実現しようとしている。報酬に必ずしも引っ張られないのが、強化学習の進化を伺える。

これをビデオゲームで試行していい結果を得たという。もちろん生物が置かれている環境はもっともっと複雑だ。スポーツをしていていいプレイをするとアドレナリンがどっと出る。それはやはり解いている問題が難しいことと関係している気もする。そういうアドレナリンという報酬が設定されていることこそ、今後人間が重点的に注力するべきところだと思う。

デミス・ハサビスCEOはより脳神経学における人間の脳のメカニズムの解明が人工知能開発の要諦だと話している。

https://deepmind.com/blog/agents-imagine-and-plan/

https://www.theverge.com/2017/7/19/15998610/ai-neuroscience-machine-learning-deepmind-demis-hassabis-interview

 

 

量子コンピューティングの足音: デジタル経済Newsletter_7/20


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今日は米有名VC「a16z」のポッドキャストから量子コンピューティングの話。

最近は人工知能開発でGPUはスタンダードになりつつある。「謎の半導体メーカー」で有名になったNVIDIAはAI特化型チップに多大な投資をしていて、この領域の独占を試みている。NVIDIAディープラーニングのライブラリを整備しており自動運転者や医療に急速な成長を見込んでいる。GoogleはTPUという人工知能の学習にフォーカスしたチップを開発し、同社の人工知能ライブラリとクラウド人工知能を水や電気のように人々に提供するビジョンをもっている。

GPUは画像処理向けで発達し機械学習への利用可能性で世界が広がった。TPUは当初から機械学習向けに開発されている。しかし、量子コンピューティングは次元が全く異なるという。

従来の高性能コンピューターの1億倍のスピードが確認されたことで、世界に衝撃を与えた。演算能力は「組み合わせ最適化問題」という膨大なデータ処理で、大きな威力を発揮する。そしてこの「組み合わせ最適化問題」を解く力は、現代のさまざまな科学に応用可能であり、数百年解けないと言われる問題を解けるようになるかもしれない。

クラウドの形で量子コンピューティングを利用できるようになるかもしれない。アプリケーションが生まれて「キラーアップは何だろう」と議論されることになるだろう。量子コンピューティングのマシンの内部は冷凍庫で超電導状態になっている。これはマイクロプロセッサ中心で発展してきたコンピューティングとは別物。

これはラスボス的な存在だ。あらゆる事象を一気に進展させる劇薬のようなものだ。世界がスマートなところに変わっていくことに使われればいいと思う。

Listen to a16z Podcast: The Cloud Atlas to Real Quantum Computing by a16z #np on #SoundCloud
https://soundcloud.com/a16z/engineering-quantum-computing-today

 

自分で自分に教える人工知能: デジタル経済Newsletter_7/14

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最も気になるニュースはDeepMindの研究者らが「自分で自分を教える人工知能」に関する論文を発表したことだ。DeepMindの人工知能が歩き方を教えている。

深層強化学習の応用で、A地点からB地点に動くことに報酬が設定されている。失敗を繰り返すが、それが学習の助けになる。

仮想のセンサーを搭載されたモデルが「前に進め」という命令を受けて動く。モデルは仮想空間上に表現された障害物や、与えられる妨害を交わして前に進んでいく。

何らかの状況が存在し、その解くべき方向がわかれば、あとはAIに投げると学習を繰り返して、その問題をクリアする、こういう未来を想像してしまう。人間のとっているアプローチとは異なる方法でたどり着いていると思われるので、われわれが知らない何かをニューラルネットワークは知っているのかもしれない。

この論文はかなりヘビーなのであとで読もう。

Emergence of Locomotion Behaviours
in Rich Environments

https://arxiv.org/pdf/1707.02286.pdf

 

www.youtube.com

DeepMindはカナダ・エドモントンに最初の海外AIオフィスを開設した。DeepMindはエドモントンにあるアルベルタ大学ともともと交流があるという。Googleのマウンテンビュー本社にもDeepMindの社員が常駐している。

Google’s AI powerhouse DeepMind is opening its first international lab in Canada - The Verge

 

MicroSoftiOSフォンでユーザがかんたんにObject Recognitionを利用できるSeeing AIをリリースした。女性を認識させると「28歳のハッピーそうに笑っている女性です」と認識。キャンベルスープの缶を見せると「これはキャンベルスープです」という。動画を観ると早いです。

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Googleも開発者会議でGoogle Lenzを発表している。Amazon Goも物体 / 画像認識で、誰が何を持っていったかを認識しようという試みだろう。

本当に進歩が早くて愉しい。

 

 

インドもアリペイ型決済が主流に: デジタル経済Newsletter_7/12

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WhatsAppがインドでUPIの認可を取得しました。Wechatのようなコード型決済事業を行えるようになりました。数ヶ月前にFacebookがインドで決済事業に乗り出す噂されていました。同社のMessaging部門のトップは元PayPal幹部なので合点がいきます。

http://m.timesofindia.com/business/india-business/whatsapp-gets-nod-for-upi-payments/articleshow/59537161.cms

FacebookだけではなくGoogleUberも認可を受ける最終段階まで来ているそうです。モディ首相は昨年終わり頃に高額紙幣の流通を禁止して、キャッシュレス社会を目指すと宣言しています。この禁止がマクロ経済に響いているのが2017Q1の経済状況から明らかになりました。しかし、モディさんには曲げないでほしいですね。

インドでも中国型のペイメントの状況が生まれそうです。アジアで起きているイノベーションは本当に興味深いですね。

ビットコインマイナーの深い闇: デジタル経済Newsletter_7/12

日曜日から月曜日にかけて暗号通貨が暴落しました。引き金と見られているのは日本人投機家が投げ売ったことです。

https://twitter.com/ETHxCC/status/884588903180640256

取引額の最上位をビットフライヤーが占めてたようです。同社が昨年から広告を打って集めてきた、FXや株から流れてきたり、投機の初心者だったりする層が投げ売ったのでは、と推測されます。

主要なコインのファンダメンタルズはあまり動いていません。土日にかけて、Adam BackやYoursのRyanなどの間でスケーラビリティ問題をめぐる議論がTwitterで交わされていましたが、特に際立った進展を感じ取れませんでした。

Litecoin創設者のCharlieらは、BitcoinのMemory Pool(ブロックチェーンに格納される前のtxを貯めておくプール)が満杯だとされていたが、実際には誰かがスパムtxを仕込んでいるのではないかと暗に指摘しました。指摘時にはMemory Poolは空っぽで再び安い手数料とスピーディな取引を楽しめる状態でしたが、その後怪しい感じで再び溢れんばかりになりました。

https://twitter.com/SatoshiLite/status/884011944708931588

満杯状態で得をするのは、その見返りに高額の手数料を請求でき、ブロックサイズの拡大でより自身の立場を強化できるマイニングプールでしょう。マイニングプールは一枚岩ではないのですが、この件には何らかの協定があったと推測されます。

これらを踏まえますと、Segwit 2xはとても政治的な落としどころなのですが、短期的なビジョンに拘泥しています。Bitcoinをスケールさせた後から様々な収益ソースを拡大した方が長期的利益に適うのは傍観者からわかるのですが、利害関係者になるやいなや冷静な判断を下せなません。

これを踏まえると合理的な投機家はBitcoinを売って、有望そうなアルトコインを買うでしょう。したがって今回の暴落は極めて不合理行動が起きたと推測されます。情報が偏在していることに加えて、興味のないことに脳の回路を遮断する「バカの壁」効果が組み合わさり、不確実性の塊のような市場になっているのでしょう。とても興味深いです。

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