デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

#6 会社設立から雇用までの流れ スタートアップ起業家が資金調達前に調べてみた

今回は株式会社の設立から雇用などの創業の初期についてまとめます。Yコンビネータが提案するガイドラインを日本でも適応する手法をとります。

この記事によると、Y combinatorは会社設立していない企業に資金提供を決断することがあるそうです。日本の慣行はどうなのか知りませんが、資金の調達が確定するまでは会社を設立しなくていいかな、と僕は思います。投資家にとって好ましい会社設立のやり方だったり、株式の発行数があるはずで、その採用で将来的な費用を減らせるのなら好ましいと思います。

medium.com

まだ会社設立していない人たちに資金を提供することを YC が決めたとき、私たちは Clerky を使って会社設立するように言っています。

とのことですが、会社設立、給与計算には日本にも似た仕組みのプロダクトが存在しています。マネーフォワードのほうが税理士さんの採用率が高いため、マネフォにベンダーロックインされるのが好ましい気がします。

標準化されたインセンティブ付与

付与する生株の量まで言及されているのは本当に最高だと思います。「会社の10%を最初の10人の従業員に与える」とのことです。共同創業者間で分ける創業者株式にはベスティングという仕組みを導入します。

経験則として、会社の10%を最初の10人の従業員に与えることを考えてください。おちろん、規模は徐々にスライドさせてください。1人目の従業員は2人目の従業員よりも多く貰い、2番目の従業員は3番目の従業員よりも多くもあります。これがギャンブルではない理由は、これらすべてにべスティングが設けられていることです。従業員全員が株式に対してべスティングを持っています。 

以下のブログに書きましたが、生株に関してはベスティングを採用します。ベスティングに加えて退職時には、創業者に株を売るしくみを採用します。

同時にストックオプションについても同様のベスティングを活用します。税制適格無償ストックオプションについては、日本の税法上2年以上10年未満に行使するとのが決まってしまっています。2年がクリフ(崖)になり、2年で50パーセント。3年で75パーセント。4年で100パーセントという構造にするのが一般的です。

僕の場合は単独創業者なので、カスタマイズができるかなと践んでいます。最初の十数人20%、その後は税制適格無償SO、その後は有償SOを配るのが単独創業者の僕にとってのベストプラクティスである、と僕は考えています。

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Via YC

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採用、マネジメントにおける「透明性」

役職員に対する「透明性」が重要とも言います。上記のYコンの記事から参照します。

オーディエンス:あなたが本当に成功していると思う特定の会社はありますか? 会社名は言わなくてもいいですが、会社にとって本当にうまくいったと思う特定のモットーはあると思いますか?

Kristy Nathoo:すばらしい質問ですね。私はうまくやっている企業には透明性があると思います。従業員と一緒に座って、これらのことが何を意味し、どのようなオプションがあり、べスティングの仕組みを話したりする会社です。会社のシナリオとしてこういうものがあって、会社がこの金額で Exit すると、あなたにとってどういう意味があるのかとか、一方この金額で会社が Exit するとどのようになるか、などです。そうした企業はこれらの計算をすべて完了し、従業員の理解を確実にするようにしています。私はそれが本当に良い習慣だと思います。

創業者がそれを深く理解している必要性も言及されています。クリアに理解しクリアに説明することが重要です。

最初に必要とされるのは、創業者がこれを理解する必要があることです。これは実際には驚くほど一般的に理解されていません。私は創始者と多くの会話をしていますが、彼らはこの種のことを理解していません。だから彼らは自分の従業員にそれを説明することができません。だから、それを自分で理解し、従業員に対して非常にクリアになっていること、それが良い組織だと思います。

採用とマネジメント

以下の記事を参照します。Sam Altmanと翻訳したFound Xに感謝します。 プレイブックは必読だと思います。リンクからどうぞみてください。

https://review.foundx.jp/entry/startupplaybooksamaltmany_combinator

採用について、私が一番最初に伝えたいアドバイスは、採用するな、ということです。私たちがYCで関わってきた最も成功している会社では、採用を始めるまでかなりの長い時間をかけています。従業員には非常にお金がかかります。従業員を雇うことにより、組織に複雑性とコミュニケーションのオーバーヘッドが加わります。共同創業者に言いたくても、従業員のいる前では言えないこともでてきます。従業員により、物事に慣性が加わります —チームに人が増えるにつれて、方向転換をするのが指数関数的に難しくなります。従業員数に会社の価値を求めたくなる衝動をこらえてください。

会社が採用をする体制に入ってから (すなわち、Product/Market Fit が時間を無限大に伸ばしても成立するようになってから)、あなたの時間の25%ほどを割くようにしてください。少なくとも創業者のひとり、通常はCEOが、採用に関して得意にならなければいけません。それは、ほとんどのCEOの、時間を最も使う活動になります。皆がCEOは採用に時間をかけるべきだと言いますが、実際は、素晴らしいCEO以外はそうしていません。そこには恐らく何かがあるのでしょう。

僕の少ないスタートアップの経験を通じて、採用はコストとリターンを同時に引き受ける行為だと思いました。言い換えれば制約と報酬のセットのものなのです。とても慎重に行わないといけません。

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決して妥協をするな、とSam Altmanは指摘しています。

あなたが採用する人材について、決して妥協しないでください。皆それを知っているにも関わらず、必要に迫られて、皆ある程度は妥協してしまいます。皆、それを後悔し続け、そして時には、それは会社の危機をもたらします。良い人物も悪い人物もどちらも影響力があり、そしてもし会社の採用を平凡な人々から始めれば、平均は普通上昇することはありえません。早期に平凡な従業員から始めた会社は、ほぼ常に回復することはできません。あなたの人に対する直観を信じてください。もし疑念があるなら、答えはノーです。

この辺は日本人の特徴を勘案する必要がありそうですが真実でしょう。

Sam Altmanは解雇についても明確な意見を書いています。

最後に、解雇するときは速やかに行いましょう。理屈としては皆がこの事を知っていますが、実際、誰もそうはしません。しかし何れにせよ、私は伝えておくべきだと考えました。さらに、たとえどんなに仕事ができようとも企業文化の毒となるような人は解雇してください。企業文化は、あなたがどんな人物を雇うか、解雇するか、昇進させるかによって決まります。

日本には厳しい解雇規制が存在します。これはスタートアップで採用をするときに大きな足かせになっていると思います。ストックオプションの行使においては、「行使は上場以降」というのが日本の慣行なんですが、ぼくとしてはより公正に「ベスティング条項」を盛り込みたいと考えています。しかし、日本の解雇規制のもとでは抜け穴があります。それは「入社したら仕事はむちゃくちゃにして、オプションがベスティングされるまで何もしないまま待つ」というモラルハザードの可能性があります。この穴を塞ぐ手段のひとつが「行使は上場以降」の条件であり、もうひとつが「後出しジャンケン」の信託型ストックオプションです。以下の記事で言及したとおり僕は信託型は採用しません。

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ということで、SOにはすべからく「行使は上場以降」の条件を盛り込まざるをえないかもしれません。仮にこれが著しく悪いことをしたときは解雇される、それでちゃんと成果を出して勤めていけばオプションを獲得できる、というふうにできればなんといいことでしょう。

解雇規制はスタートアップの採用のコストも引き上げており、日本のビジネス界隈を著しく硬直化しています。無数のブラック企業や実習生搾取がうまれる遠因のひとつでもあると僕は考えます。厚生労働省は経済学Ph.Dを採用し、その人達が政策立案すべきであり、立法の人間は解雇規制に関するロビーイングを抑え込むことと同時に日本型の長時間働かせて賃金を下げるという日本企業に一般的な慣行には厳しい態度をみせることを期待したいです。すでに優秀人材の海外逃避は始まっており、日本には悪いモチベーションを胸のうちに秘めた平凡な人が集うブラック企業がどんどん増えています。寄り道しすぎました。そろそろ本題に戻りましょう。

ソフトウェアエンジニアの獲得

最近は日本でもソフトウェアエンジニアの獲得競争が激化しています。スタートアップが一定の水準を超えたエンジニアの獲得をすることはかなり難しくなりつつあります。以下の記事はその状況を詳細に伝えています。

https://review.foundx.jp/entry/convincingengineerstojoinyour_team

https://review.foundx.jp/entry/howtohireyourfirst_engineer

構造化面接

Google re:Workによると、構造化された面接は以下のような要件を満たすものです。

構造化された面接とは、簡単に言えば、同じ職務に応募している応募者に同じ面接手法を使って評価するということです。構造化面接を行うと、応募した職務自体が構造化されていない場合でも、応募者のパフォーマンスを予測できるという調査結果があります。Google では構造化面接を採用しています。つまり、すべての応募者に同じ質問をして、同じ尺度で回答を採点し、事前に決められた一貫した採用要件に基づいて採用を決定しています。

rework.withgoogle.com

正式なオファーレターのテンプレート

人を雇用するにはそのための制度を整えないといけません。いかの制度を整え、それを説明する文書を作ります。

  • 給与と諸給付
  • 健康保険の詳細
  • 休暇

エクイティ

  • 提供される株式/ストック・オプションの総数
  • 発行済株式の総数
  • 株式保有割合
  • オプションの権利行使価格
  • ベスティング・スケジュールの詳細

コメント

  • 会社設立は最初の投資を受けるときまで引き伸ばすことにしよう
  • ずっと採用を先送りした自分の判断は悪くない
  • 資金調達で「信用力」を増幅してから採用をした方が「平凡」を採用する可能性を最小化できそうだよな?→資金調達から先にやるか
  • スタートアップにはするべきことが山程ある。そのため「標準化された手法」が好ましい。”スタートアップゲーム”には僕が勝手に「不可逆性の罠」と読んでいる、一度落ちたら戻れない落とし穴が存在します。それに落ちないようにするのに標準化された手法はとても効率的です。ファイナンス、会計、法務、税務などはその理解のために深い専門性を必要とします。そこをブリッジするのが標準化された手法です。会社にとって重要な差別化要因になる点については標準化されたライブラリをカスタマイズしようと思う