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Building a connected, biological, and distributed Publishing

ビジネスとして成立しなければいけない―—私が新興国援助の現場で感じたこと

アジア ビジネス

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この村は池の上に浮かんでいます。 周りにある水草の下は水深数メートルの池になっています。水草は強固で上に立てるらしいのですが、村への唯一の入り口は、真ん中のコンクリの道です。

遠くから撮った写真がわかりやすいでしょうか。写真中心部が集落です。

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一応貯まった水を排水するポンプ車がいますが、長らく稼働を止めていました。現地に住んだ人ならわかると思いますが、よくあることです。

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不幸なことに、この池の下には墓がありました。墓は地盤沈下の後に周囲の排水やあるいは海水が流れ込んで出来上がりました。住民たちへの取材によると、周囲の建物はかさ上げを繰り返しそれは数メートルのレベルに達しています。 墓であるその土地はかさ上げが事実上不可能です。 しかもイスラム教徒の墓なので土葬です。

集落は海から数百メートルの近さで、海抜よりも土地が低い。 ジャカルタ地盤沈下は極めて深刻であり、特に沿岸部は数年後に海の下に沈んでしまう可能性が指摘されています。

なかにはむしろ攻めに出て、沖合に巨大防潮堤と埋立地を作ろうというチャレンジングな「グレートガルーダ案」まで出ていました。

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建築事務所「クーパー・コンパグノン」が作成した「グレートガルーダ」のイラスト

墓が水の下に沈んだ後、人々が移り住みました。地方からの移住者。インドネシアは2億5000万人の人口をもつ大国ですが、経済は4000万人程度のジャカルタ都市圏に集中しています。毎年あふれんばかりの移住者が退去して押し寄せますが、お金やコネがない人々が住むスペースは残っていないのです。だから墓の上の池にも人が移り住みます。

こういう移住者は法的に規定されない「インフォーマルセクター労働」(開発途上国にみられる経済活動において公式に記録されない経済部門)に依存しており、収入は最低賃金を大きく下回ります。

下のおじさんは、たくましいことに村の回りの水草を切って、キロ約3000ルピア(約25円)で販売しています。弾力のある食材になるそうです。毎日10キロ売っても250円の程度の収入。物価の高いジャカルタでは話にならないので、ほかの日雇い仕事もやっていると語っていました。

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しかも、ジャカルタ都市圏はインフラが整備される前に、経済ブームが来て地価の高騰が始まっています。都市のさまざまな集落が地上げの対象になっていまして、興味深い火事が頻発します。

時価のデータを参照しようと思ったのですが、統計局のデータを四半期ごとにめくって折れ線グラフをつくらないといけません。ここは端折りましょう。

それから安全な水を手に入れるのが大変です。ジャカルタは上下水ともに整備されていません。そのため多くの家庭、産業が地下水の汲み上げに頼っています。特に郊外の工業団地での水の汲み上げ量は相当なものだと言われています。

案内してくれた隣組長(インドネシアは日本が占領時に設定した行政区分を採用している)は池の底に管を通して、水を汲み上げていると話していました(下)。池の底は土葬の墓なので、ぞっとします。

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さらにその水を煮沸して瓶に保存し、飲料水にしているといいました。

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このおじさんのような方法をとらない浄水の入手方法がいくつかあります。ひとつは簡易な濾過装置による洗浄です。あとは山間部からタンクローリーで運ばれてくる水を買うことで、これが以外に一般的です。この水もタンクローリー直で買えるのはちょいアッパーミドルな人たちです。タンクローリーで運ばれた水が、分割されてボトル売りされるのです。1つのボトルあたり5000ルピア(約43円)程度だったと記憶しています。マイクロエコノミーはいたるところに存在するのです。興味深いですね。

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このような「インフォーマル集落」では登記されていない場所に家屋を建てて、それを貸す人たちがいます。この人たちはプレマン(チンピラ、ヤクザ)と呼ばれています。インドネシアは日本の70年代くらいの時代感でしょうか。プレマンのような組織は政治にも開発にも関与します。まだ政府と政府ではないものの境目があいまいな世界なのです。

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別件の土地紛争でとあるいわくつき財団を代表して土地占拠をするプレマン。極めてフレンドリーだった。

プレマンは賃料を得る代わりに地方政府や治安当局を牽制して、 収入源である住宅を守ります。住民とプレマンは安価な住居と賃料を互いに補い合う、抜き差しならぬ関係になりやすいです。ただ概ねプレマンは次第に様々な利権を生み出し、人々から搾り取る存在になることが往々にしてあります。ココらへんを上手くやるプレマンは慕われますし、なかには企業家や政治家になる人もいます。ただし、場合によっては危険な薬物の取引を始めたり、売春を持ち込んだりするプレマンもいます。

村は毎年沈下を続けているそうで、沈んだ家屋の上に新しい家屋を立てている。かなり汚い水の上に住居があり、住民の健康状態に悪い影響を及ぼす可能性があります。

この村に必要なのは移住だ。

援助の難しさ

この村は多量の援助を受けていましたが、その援助のほとんどがあまり役に立っていない印象です。このような援助を行うNGO / NPO などは、現地の状況をあまり真剣に調べないケースがインドネシアでは多いように感じられました。しかし、貧困世帯の生活扶助、教育無料化などが約立たないとは思いません。支援された側が必ずしも状況を活かせるわけではないが、マスでは効果は出ているというリサーチ内容もあります。

NGO / NPOモノによってはポリティカルリレイティッドです。私の取材相手だったプレマンは警備会社、右翼団体、環境保護団体の名刺を使い分けていました。彼は戦後上野のような街の有名なプレマン組織に所属しているのにもかかわらず、有名環境保護団体の幹部としてテレビに出ていて、それを観たときは顎が外れそうになりました。ガソリン価格を値上げする法案を国会が審議しているときは、ガソリン消費の拡大が環境破壊するというデモを起こしました。彼は2007年に当選した都知事と、都知事を担いだ政党の熱心な支持者でした。彼の同僚は警察官かつ警備会社幹部であり、富裕層を相手にした売春の斡旋にも関わっているようでした。

もちろんこれは極端な例かもしれませんが、上述の環境団体は日系企業を含む他国製企業の環境系CSRにも関与する例はたくさんあったと感じています。

とにかく、援助では企業や国際機関→NPO / NGOという「商流」が決まっています。富裕国から来たエスタブリッシュメントは予算を消化することを重視してます。援助案件を最後までトラックしたりインプリメントすることは面倒でかなわないのです。なかには予算の大半の所在が分からなくなることもあります。

援助を決定する統計、リサーチの危うさ

私のジャカルタ時代のオフィスの隣は発展途上国の開発推し進める国際組織だったが、彼らは毎日スターバックスを飲み、ホテルでのディナーを好んでいます。地元社会には興味が薄い方が多い印象です。この人たちはインドネシアには清潔な水が必要だというレポートをまとめ、いくつかの集落でその設備を渡す式典をやりますが、全て現地スタッフ任せで、現場は知りません。

新興国では情報が偏在しているので、公式統計が余り信用できません。中国のGDPをめぐってかわされた議論を思い浮かべてください。なので彼らがまとめた統計を基にしたアナリティクスは、バックグラウンドを読める玄人から見ると生ぬるいのです。ただ、とても説得力のある国際機関なので、私は自分の調べた内容を裏付けたいときは、ばんばんその統計やレポートを利用していました。

興味深いことに、これが日本の金融機関や商社系の研究所の資料になっている頃にはフィクションになっています。一度日本の大手出版社の人に、日本の研究機関のリサーチが基にしているイ国家予算の解釈が誤っていると伝える(研究員はインドネシア財務省を取材していた)と、相手はかなり機嫌を損ねていました。ペーペーだと思っている若者が自分たちが信じる世界観に疑問を呈しているからでしょう。

ぼくは馬鹿にしたいのではなく、情報は偏在しているということを伝えたいのです。統計はザラザラで粒度は合っていません。その数字が作られるに至る要因たちを推測し、重み付けするアルゴリズムを鍛えないといけないのです。これは分析というよりはハスラーの世界であり、ハスラーの才能と素晴らしいビジョンが重なったときに面白いものができると思うのです。

 溶けた援助

このまちに必要なのは移転です。しかし、多額の援助が注ぎ込まれ、住民に留まる理由を与えています。

1.電気と電灯

まず援助はこの村に電気と電灯を与えました。

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2.ウナギ養殖施設

英系銀行はウナギの養殖施設を与えました。輸出食材のウナギから得られる住民の生活費の糧になるとのことですが、隣組長は、うなぎの養殖に失敗を繰り返しているうちに、住民が興味をなくしてしまった、と話しています。取材当時設備は使われていませんでした。

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3.コンクリート歩道

村々の住宅は木橋でつながれていました。大雨が降ると壊れてしまうそうです。

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これを大量のコンクリートを、墓のある底まで埋めて、舗装道路にしました。冒頭のむらに続くコンクリートの道もこの供与によってされました。

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このコンクリ道路を供与した鉱山開発会社の慈善団体の残したボード。鉱山会社はパプアにある世界最大級の銅鉱山を採掘しています。

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4.貯水タンクとポンプ

住宅の近くに貯水タンクとそれを各住居に送るポンプをつくりました。水は先述した通りタンクローリーから購入します。写真はありませんが、村はシャワー場も供与されており、ここの水が利用されていました。村では清潔な水でシャワーや水浴びができないからです。しかし、ポンプが故障しておりこの設備は死んでいました。水の来ないシャワー設備も同様です。

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焼け焦げたあとのあるポンプ。かなり長期間の間動いていない様子だ。

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繰り返しますが、この援助は、移住が必要なアプン村に対し、要らない供与をして住民が留まる理由をつくってしまいました。序盤に登場した隣組長は援助にハマっているらしく「次は学校を建ててもらおう」と話していました。取材はまる2日行い、ほかの住民ともたくさん話しましたが「いい場所があって、いい条件があるなら移りたい」と行っていましたが、強制撤去を恐れていて、そうなるならグレーなままでもとどまり続けたいと語っていました。

この一例をとって「途上国援助はダメだ」という気はもちろんありません。意義のある援助はあるし、効果が目に見えづらい援助もあります。援助の効果の判定は、計量的に行わないといけません。ただし、援助を行う側のノウハウ不足を感じざるを得ない面は多々ありました。予算があったり、そういうアクティビティが義務付けられているからやるという側面が強いように感じられました。

結論:ビジネスとして成立していないといけない

この経験を通じてぼくが強い実感を覚えたのが、「ビジネスとして成立していないといけない」ということでした。援助は援助側の論理だけで行われても、それがそこにいる人間とそれを囲む環境の中に入り、ビジネスとして動かない限り、長期的に役に立たないのです。つまり、「援助」ではなく「投資」が必要なんだと思いました。

例えば、アプン村の中から有望そうな子どもを見つけて、その子どもを留学させて、雇用を作れる人間にしていくことは有用だと思います。あるいは、コネクティビティ(ネット接続)を村にも到達させ、スマートフォンと無料のデータ通信を渡す。特に学習や問題解決に使われる利用法を促していけば、住民が賢くなり、やがて村をでるためのさまざまな方策をとれるようになるかもしれません。

私は自分自身に対して投資をしていくことを続けていますし、ビジョンの面白い、スキルを高めていく人間に投資していきたいと思っています。「ビジネスとして成立」させるのは人間のソフト資産であり、それは学習や教育によって培われるものです。だから、人の学習に資するメディアに関わっているわけで、近い将来には学習や教育の分野でも面白いことをしたいと思っています。

アジアやアフリカの低所得者層の住処から、あっと驚く天才を輩出してみたいと思います。そうすれば、いまある援助はそのまま投資に変わるはずだからです。

参考文献

【ジャカルタ・フォーカス】墓は沈み、村が浮かんだ 西ジャカルタ・カプック 地盤沈下の波[上] | じゃかるた新聞 インドネシアの日刊邦字新聞

 

クラウドベースのアドテクが「デジタル広告の罠」をぶっ壊せる?

マーケティング ビジネス デジタル

DIGIDAY USはRoss Benes記者を得て、かなりアドテク界隈のカバーが強力になりました。下記の記事は春頃導入が噂されるGoogleのExchange Biddingを前に米業界は変化のなかにあることに触れています。業界人の予測が集められた、とても有用な記事です。

現状のディスプレイ広告取引においては、ダブルクリックはGoogleにのみすべてのインプレッションの確認と入札を許可し、ほかのすべてのエクスチェンジの競合を排除しています。アドサーバーの独占により極めてGoogleにとって有利な取引形態が築かれているといっていいでしょう。オークションに関しても広告主、媒体から見えない地点がたくさんあり、不透明と言っていいでしょう。しかし、Google支配力はかなりのものがあります。

これをハックするのが「ヘッダー入札」でした。昨年春に書いた記事を引用しましょう。

ヘッダー入札は「ウォーターフォール」の代替策として浮上した。ウォーターフォールとは、パブリッシャーが在庫を優先順位を付けて振り分けていく広告販売手法のことだ。媒体社はまず優先する純広告用の広告在庫を確保する。その後、それぞれのSSP/エクスチェンジが支払える広告単価(CPM)を算定し、ランク付けし、在庫を振り分ける。最初のエクスチェンジには、高価格/低数量で在庫をリリースし、次のエクスチェンジ以降は滝(ウォーターフォール)のように少しずつ価格を落とし、数量を増やして入札を繰り返す。媒体社にとっては「純広告で売れなかった在庫」を、できるだけ高価格で売り、広告収益の最大化を目指す手法だった。

 

媒体社の広告在庫取引ではGoogleが大きなファクターになる。多くのパブリッシャーはDoubleClick for Publishers(DFP)に依存しており、その在庫が取引されるDoubleClick Ad Exchange(AdX)では媒体社が設定したフロアプライス(最低落札額)付近に落札が集中しがちだという。AdXは価格調整権に関して「特権的」と言われる。

 これから「ヘッダー入札」の話をしよう:メディア収益化の新星か | DIGIDAY[日本版]

Exchange WireRomany Reagan氏の記事の以下の図がとても分かりやすいので、参照しよう。

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ウォーターフォール→ヘッダー入札→S2S

いままではウォータフォールと呼ばれる手法で、順番に並列のオークションをこなしていったが、この仕組みをとるとGoogleがとても有利になるし、遅延するし、安くなったときを見計らって買い注文を入れるなどのテクニックなどで買い叩かれるのです(ウォータフォールは現状も多数派です)。

ここで図の下部のように並列したオークションをひとまとめにしようと、ヘッダー入札が生まれました。一部のパブリッシャーは効果を享受しているようだが、前述の通り、多数のタグをヘッダーに入れるのは、ロード時間遅延というユーザーの最も嫌うものを誘発します。また幾つものアドタグをラップしたものからデマンドたちを当たるのですが、最適解を弾き出す前に広告をサーブしないといけないことがままあるそうです。

それでヘッダー入札をサーバーに持ち込んだ「サーバー・トゥ・サーバー・ソリューション (S2S)」の開発が開始されました。サーバーとサーバーが「おれは◯円で入札する」「おれは◯円だ!」などと会話して、その会話で定められた勝者が広告を挿入します。

これは特段新しい技術というわけではなく、モバイルアップのアドネットワークなどはこの方式を利用していたりするそうです。

理論上はS2Sの方が、ヘッダーにジャバスクリプトを仕込むという無茶がないので、スムーズに多数のデマンドを競合させられる=価格上昇=を引き出せるはずです。

 

What are server-to-server connections

 

The winners and losers of the server-to-server programmatic arms race - Digiday

 

 

しかし、Googleのエクスチェンジビディング以外にS2Sのベンダーが何十社も並び立ち再び分断されたオークションを作るならば、ロード時間の遅延を回避しただけで元の木阿弥です。

サーバー・トゥ・サーバーではサーバー側で「どのDemandが一番高いか」をはかりにかけて、需要の取りまとめを一社のベンダーに任せる事になりうるのですが、そのベンダーが情報の非対称性をエンジョイできる可能性は大いにあります。ベンダー間で協定が生まれれば、それこそ、建設会社の談合入札を実現する機会が生まれます。

Server-side header bidding requires teamwork in a nontransparent environment. Publishers work with one vendor to do server-to-server header bidding. Because that vendor in turn rounds up bids from all the other demand partners, they must trust the vendor to run the auctions fairly.

While code run on the browser is visible to all, what happens on the server is invisible to both the publisher and the buyers. It’s possible that auctions could be conducted in a way where one demand partner gets preference or a final look. Or data could be leaked or hidden fees be taken. And that lack of transparency makes technical glitches more difficult to fix.

 

Server-Side Header Bidding: 6 Things You Should Know

デジタル広告の罠:情報優位者は自己利益最大化を目指す

ベンダーが一部のバイヤーを優遇してリベートを受け取ったり、Double Dipというのですが、パブリッシャー(セラー)とバイヤーの双方から手数料を取ったりできます。セラーとバイヤーに異なる成約額を知らせることにより、マージンを太らせられます。これらはこのソリューションに限った話でもないですが…。

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デジタル広告売買は罠を抱えていると思います。この三角形のなかで、アドテクベンダーは売り手と買い手の双方に対して情報優位に立っているのです。合理的なプレイヤーは自己利益の最大化を目指します(他者の利益は気にかけません)。仕組みの設計は「プレイヤーがワイルドになってもうまくいく」ようにしないといけません。

最高シナリオと最悪シナリオ

昨年春にGoogleはエクスチェンジ・ビディングを発表し、「ヘッダー入札の死」を匂わせました。これに対し、ベンダー各社は類似ソリューションの開発でGoogleのエクスチェンジ・ビディングに圧力をかけています。Googleのエクスチェンジビディングが本当のオープンオークションを生み出すのが最高シナリオです。Googleが今後どんな設計を示すかが巨大なイシューになります。

たくさんの需要を、たっぷりとした時間をとり、一回のオークションで競わせることで、「適正に近い価格」をつけることができるはずです。一応名目上は、業界はそこを目指しているはずです。

最悪シナリオはサーバーサイドのソリューションとヘッダーのソリューションが併存する状況です。アドテクでは市場が効率性を著しく欠いているので、有り得ます(効率性が高ければ、いい物に高い値をつけたり、悪い物に安い値をつけたりするとされています)。そしてその結果、もっと効率性の低い市場(分断されまくったオークションたち)が生まれる、というか「市場」とも呼べない代物がうまれるかもしれません。

クラウドベースエコノミーを持ち込んで欲しい

ここからは妄想の話ですが、Amazon Web Serviceのようなビジネスモデルがアドテクベンダーに現れたらそれは巨大なゲームチェンジャーじゃないか、と思います。つまり、アドテクベンダーはマージンという形でデジタル広告売買のサプライチェーンで収益を上げていますが、クラウドベースでサービスを「利用した分だけ払う」方が、サービスへの報酬として適切なのは間違いありません。アドのサーブ、オークションをサービスとして提供してくれれば、かなり不確実性がなくなり、参加者の利益が一致する可能性が高まりそうです。

Amazonは現行のベンダーがベンダーの役割だけでなく中間取引者の役割も担ってしまっている「歪み」をつけます。

 

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技術の差はもちろん大きな差別化要因になりえますが、報酬形態のクリアさもまた大きな差別化要因になるでしょう。

 

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AWS的にマーケットシェアを重視して「利益を出さない」攻め方が可能ならば、競合の多くはこれまで極めて短期的な利益を重視してきたので、押し出していける可能性があります。ボリュームが出るとこのアプローチは儲かるはずです。デジタル広告市場はグローバルで20兆円を超えているのです。GoogleFacebookが手にしていない部分だけでも10兆円あります。

 

 

【アドテク勉強会】RTBは建設会社の談合入札を見習うべき?

マーケティング デジタル

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この記事の筆者のRoss Benesと翻訳のガリレオの見識は本当にすごい。セカンドプライスオークションは経済学上は、高値入札も2番手の価格になるため、買い手に高値をつけるインセンティブを引き出すとされている。

本文では興味深い検討がされている。

たとえば、1つ目のSSPにおける上位2件の入札額が14ドルと4ドル、2つ目のSSPにおける上位2件の入札額が25ドルと2ドルだったとしよう。この場合、決済価格を決めるのは1つ目のSSPになる。なぜなら、両者の決定価格(セカンドプライス)を比較すると、4ドルの方が高くなるからだ(このケースの決済価格は4.01ドルとなる)。だが実際、入札全体を俯瞰して見ると、2番目に高い金額は14ドルになるのだが、それは採用されない。

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情報筋は米DIGIDAYに、サーバー・トゥ・サーバー接続は、こうした力学をいくつかの方法で変える可能性があると話した。

サーバーサイドでの接続が可能になれば、より高いセカンドプライスを引き出せる可能性はある。ただし、この25ドルや14ドルのような入札は、買い手がセカンドプライスでの「戦略」を実践した結果だ。仮にすべてのプライスが採用されるとなると、6ドルとか3ドルとかの入札を試みるかもしれない。

セカンドをファーストにすれば解決するわけではない

メンデス氏は、パブリッシャーが効率を上げたいならば、セカンドプライスモデルでSSPから入札を集めるより、(もっとも高い入札額が決済価格となる)ファーストプライスモデルを活用するほうが上手く行くと指摘する。だが、ほとんどのアドエクスチェンジは依然としてセカンドプライスオークションに依存しているので、パブリッシャーがファーストプライスモデルに切り替えることは難しいかもしれない。

複数の情報筋が米DIGIDAYに語ったことによると、セカンドプライスという技術は古い遺産だが、検索やディスプレイ広告の初期の時代にデジタル広告に定着して以来、多くのベンダーが慣習的に使っているそうだ。

セカンドをファーストに直せば、パブリッシャーが一位の入札額をそのまま楽しめるという考えは甘い気がする。今度は買い手が弱気になる可能性がある。

それから、基本的にRTBは経済理論上のいわゆるマーケットが成立しているとは言い難い場であることも重要だ。並列して市場が存在し、不透明性のレベルが高い。他にも価格の決定要因にが存在しているようにも見受けられる。解けないパズルかもしれない。

こうなってくると、日本の建設業界の談合入札にも一定の合理性を認めることができる気がしてくる。

Photo via Pixabay