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デジタルエコノミー研究所

デジタルが生み出す新しい経済を知りたいビジネスパーソンのためのブログ

人間とコンピュータの肩の上で天才棋士藤井四段が躍動する

将棋でコンピュータの方が強いのは明確です。佐藤名人も練習段階から「ほとんど」Ponanzaに勝てなかったと認めました。でも最近藤井聡太四段という天才が現れました。将棋ファンは大興奮しています。彼は14歳で本当に新しい世代です。

このYouTubeの解説チャンネルは本当に勉強になりますが、仕事の後だと重いです(笑)。

元奨励会員アユムの棋譜並べ39 藤井聡太 VS 羽生善治 炎の七番勝負第七局 - YouTube

「 角換わり」という戦型が採用され、途中から藤井が急戦を仕掛ける局面があります。仕掛けた段階で、ソフトの評価値は藤井氏が優位になっています。仕掛けの先の変化では、駒の総量で藤井氏が(人間にとって)不利に見える変化があります。しかし、ソフトはその場面で藤井氏の方が優位だと判定しています。これは従来の人間による判定が余り正しくなかったらしいのです(8分20秒頃)。

だから人間が築き上げてきた将棋の叡智をもとに、コンピュータが強くなり、今度はコンピュータによる探索により人間の叡智が前進をはじめている、と言えます。藤井は今後、コンピュータの力も借りて、人間のバイアスを超えた将棋の新しい世界を発明していくでしょう。藤井自体も14歳と若くバイアスが余りなく、巨人の肩の上で躍動できるのではないでしょうか。

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特化型人工知能=弱い人工知能の未来

私が取材したこの記事で人工知能学会 会長の山田誠二氏は弱い人工知能について触れています。

「AIを人間に近づけるのはなかなか難しい。人間は極めて複雑な生物だ。生物は何十万年かけて莫大な並列計算を行い、世代交代を繰り返し、それである種の条件に合うような機能を身に着けた。20〜30年で限られた演算しか行わないコンピュータで同じことをするのは直感的にも難しいと感じられる」

人工知能をめぐる、マスコミの報道はミスリード続きかもしれません。「AI開発ガイドライン(仮称)」の素案を策定するため総務省が設置した産官学会議から、AIスタートアップのPreferred Networks(PFN)が離脱していた件もありました。おそらくマスコミだけじゃなくてその周辺のあの界隈が難しい状況かもしれません。

人工知能技術の健全な発展のために | Preferred Research

このPFNのCSOである丸山氏の文章は本当にわかりやすくて素晴らしいと感じました。おそらく研究者にとっては汎用人工知能を生み出すことは、イーロン・マスクが火星に移住を考えるような夢ではないかな、とぼくは考えています。何かを作る人に重要なのは「絶対にできる」というマインドセットであり、だから取り組むわけですね。

DeepMindのDemis Hassabisは汎用人工知能の創出をビジョンに据えています。でも、医療方面やデータセンターの省電力化など特化型人工知能の開発を実際に進めてもいるのです。ここからも汎用人工知能が「究極のゴール」であることがわかります。

私はこのような変化をメディア産業に起こしたいと考えています。Googleが情報を整理する人工知能をつくって、あらゆることを面白くしましたが、私は人間が情報を生成する部分をサイボーグ化したらもっと面白いことになるよねと思っています。個人的なプロジェクトですが、ぜひ手伝ってくれる人を探しています。

Smart Node Project

 

 

 

 

 

 

2010年から進めている「メディア再発明プロジェクト」のウェブサイトを作ったという報告

スマートノードプロジェクト(Smart Node Project)のウェブサイトを作りました。2010年頃からメディア企業で働いて「何かがおかしい」「こう変えたらうまくいく」とずっと考えてきました。旧態依然の世界の中で「こうすれば良くなる」という提案は常に厳しい、時にあまりにも辛い反応にさらされてきましたが、最近は時代が変わり、私の考え方に興味を持って貰える機会も多くなりました。よく診てもらうとわかりますが、別に目新しくありません。しかし、大事なアイデアでして、実現できると価値が高いでしょう。

Smart Node Project

小難しい名前ですが、構えないでください。格好をつけているだけです(笑)。スマートノードとは「賢い節」と捉えてもらえば結構です。ノードについてはNTT PCコミュニケーションズがこう解説しています。

コンピュータ・ネットワークの世界で使われている言葉で、基本的にはネットワークの接合点とか中継点、分岐点などのこと。(中略)コンピュータ・ネットワークを木に例えると、幹にあたる幹線ケーブルがあって、そこから枝葉のようにパソコンやプリンタなどが接続されている。そして、幹から枝に分岐している部分がノードということになる。

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情報を数学的に定式化したことで、通信が成長してきた経緯があります。ネットはその最たるものです。情報をデータとして定量化して移動させる技術の進化がもたらしたのが、この世界の有様です。人間の視点から見たとき、その情報の中身が「ゴミだらけじゃないか」というのが言われています(いいものもありますが)。データ量が拡大しており、データが発生した場所や、そのデータから得られる洞察がとても必要とされる場所でいち早く、解析されることが必要じゃないかという話になっています。

その解析を生み出すのがスマートノードだと認識しています。デジタルデバイスからあふれる多量の情報に沈没しそうな私たちにとって、そういう情報生成・解析装置が近くにあれば、頼もしいはずです。

コンピュータネットワークの言葉を、とても伝統的な「メディアの世界」に持ち込んだせいで少し混乱が生じているのはご容赦ください。その代わりビジョンは明確です。私は従来「マスメディア」が担っていた役割を、アフターインターネットの世界に合わせて、人々の細やかなニーズに応えるものにしたいと考えています。情報が伝達するネットワークの接合点で、情報を確かめ、必要とされないものや洞察に関与できなさそうなものを切り捨て、インテリジェンスを生み出したいのです。

従来的なメディア、つまりブロードキャストの情報は以下のような構造をしています。一方的です。発信者の流す情報の真偽や質に関して、チェックする方法があまりなかったのです。そうすると発信者が情報を好きに操る可能性をゼロにできない。

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Via Wikimedia Commons

 

これをもっと双方向的に、それぞれが絡み合う複雑な形、それこそ生物の世界が採用している形に変えていこうということです。以下はTwitterの情報拡散の構造をスタンフォード大学の研究室がビジュアライゼーションしたものです。情報を受け取り伝達するローカルサブセットがあります。

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Via Stanford Univ Library

 

インターネットが行き渡った時代には、さまざまなものが分散され、それぞれが自律して思考するように成り立つ方が自然ですよね。私たちの人間関係のネットワークも図示をしたら上のようになるはずです。「つながっている」のです。

この部分集合に対して「いいか、おれはエラいぞ。これはこういうことなんだ。鵜呑みにしなよ、わかったな!」というのが20世紀までのいわゆる「メディア」でしょう。正しく作られ、変動性、可変性がある柔らかい権威はいい仕事ができます。しかし、人間社会は必ずしもそういう権威を作ってきませんでした。あるいはいい権威もあるときから悪い権威に変わったりします。

「Medium」という言葉は「媒介するもの」という意味です。「媒介するもの」が自分勝手な権威を帯びていて、その上でふんぞり返り、自分に都合のいい情報をつくりがちなのが現代の「メディア」とその周辺のサークルのあり方です。私はこれではマズい気がします。

あと最後に言い訳をします。スマートノードは「情報伝達のなかで効果的な役割を果たす多様性ある節・接合点をつくろう」というプロジェクトですが、それがGoogleの標準化されたサーバーに載っていることはツッコまないでください。よろしくおねがいします。クラウドで提供されるリソースの方が使いやすいケースはありますし、私は「正しい利便性」には逆らわないのです。

https://sites.google.com/view/smartnode-project/

大手報道機関とその周辺の情報生成に疑問

私は現在のニュース・情報のつくられ方に疑問をもっています。レガシーメディアでは長い間権威的な立場に安住し過ぎたせいか、人々のためになる情報というよりは、自分の周りのサークルのための情報をつくる機械になっています。

私はとても素朴に「人を自由にできる、優れた情報」をつくりたいと考えます。人間が消費する情報の発生源として人間は依然として有力です。となると、情報生成の場で人間がクリエイティビティを発揮する機会は残ります。これはGoogleFacebookが達成していないことだと思います(フェイクニュースが最たる例ですね)。

近年のテクノロジーの変化、そして予測される変化は想像を絶しています。既得権益を守るためにテクノロジーやサイエンスに関する情報を歪んだ形に変えて「下々」に伝える装置は、「人工知能に殺される」という形の情報を流布させたり、反知性的な奇妙で興味深いナショナリズムを煽ったりと、かなり危険です。

情報生成は今後サイボーグ化していきます。それこそ攻殻機動隊草薙素子みたいに、脳味噌とネットが接続されていて、たくさんの情報の中から、有意なインテリジェンスを導きます。イーロン・マスクは脳とコンピュータをつなぐビジョンを明らかにしました。「Neuralink」ですね。

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これらの例は極端ですが、比喩としてわかりやすいと思い、採用しました。言いたいのは、コンピュータと協働してマニュアルレイバーから解放された人間たちのチーム、つまり、スマートノードがより高度な情報を、正しくメタ化された情報を人々に与えることにより、下の図のような分散・自律の世界がよりうまく動くようになるのではないか、と考えています。

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Via Stanford Univ Library

最後になりますが、以前公演で使ったスライドを添付します。

 

 

 

アリババの破壊的な「芝麻信用」:信用や評判のスコアリングは社会を変える

2015年に中国・重慶を旅行していてドルを中国元に両替しようと思って国有銀行にむかった。国有銀行のATMに向かうとおもむろに警備員が声をかけてきた。

「キミ、両替したいんだな?」。中国語だったがなぜかわかった。彼はぼくが両替しようとしているドルを見て、レートを提示してきた。麻雀のおかげで中国語の数字はわかる。レートはATMが提示するものよりよかった。

面白いことにもう一人の警備員のおじさんが現れ、彼はもっと良いレート提示してきた。2人が競争を始めたところで、異変を感じた職員が近づいてきた。このおじさんたちは一瞬で消えた。

この一件からも中国人の金融リテラシーの高さを感じられる。おじさんたちはもっといい両替ルートを知っているんだろう。それで差額を稼ごうというのだ。日本の警備員にはこういうアニマルスピリットを見出すことはできないだろう。

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高層アパートメントが乱立する重慶。開発のカオスさにSF感を感じてしまった。吉田拓史撮影(2015年)

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中心のないマンションの林。薄煕来氏が行った猛開発の結果。吉田拓史撮影(2015年)

中国は本当に面白い

今週は自分が書いてきた記事のおかげで議論や質問がまあまああったので、アリババの金融の仕組みを再び調べ直してみた。

中国人は本当にモバイルで金融を触っている。さまざまなことがモバイル上のUIの上に表現され、そこですべてを実行できる気にさせてくれる。国有銀行の警備員たちもモバイルを利用し、ものすごい速度でコネクションを発見し、ぼくのドルを人民元にする方法に行き当たるのだろう。微信/WeChatのタイムラインにドルを晒せばすぐさまドルの買い手は見つかるのではないだろうか。

東南アジアでもさまざまな華人の人と楽しく過ごさせてもらったけど、彼らの金融リテラシーには勉強させてもらうばかりだった。

芝麻信用という破壊的なクレジットスコア

アリババはコマースや金融取引履歴・ネット行動履歴、公共料金の支払履歴、デモグラフィック、社会的人脈などから、その人の「信頼」を独自にスコアリングしている。「芝麻信用」だ。

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アリババはサービスを拡大させることによりデータソースを拡大し、得られたデータ・セットにより素晴らしいモデルを生み出して、クレジットスコアを極めてわかりやすくしている。下の図を見てほしい。

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ぼくはこのシンプルさにほれぼれとしてしまう。彼らはある意味、信用を貨幣にすることに成功した。スコアをつくる後ろ側のシステムはとても複雑にもかかわらず、本当にわかりやすく表現されている。クレジットスコアはずっと金融機関の特権だったが、アリババは異なる方法でそれを実現した。アリババはクレジットスコアを活かして中小企業向けのローンや損保などに参入している。

保険会社のアクチュアリが触っているようなデータが皆に開かれたらもっと世の中良くなるんじゃないか、とよく考える。案件に対し、適正な保険商品を組成するモデルができてしまえば、社会は駅前にあるようなビルとか、そこに詰まっている人々をもっと異なる目的に活用できる。

「インターネットでつながることでさまざまな信用・評判をスコアリングするチャンスがある」と思う。レーティングの歴史は古くないが、スコアは付けられた後、秘匿されている場合が多い。皆が見れるようになると、人はそのスコアに影響された行動を取りやすい。

AirbnbのJoe GebbiaもTEDで「信用」を築くことに関して話している。Airbnbは家主と宿泊者の間に信用が生まれるかが非常に大事だろう。ブロックチェーン/ ビットコイン企業を買収した。ブロックチェーンに記載された情報は理論上は改ざんができない。しかも自動的に執行される契約などもシェアリングエコノミーに向いている。ブロックチェーンベースのレピュテーションシステムには多くの挑戦者がいる。

 繰り返しになるが、こういうスコアが存在すれば、もっとインドネシアから日本に来て、何かを始めるのが簡単だったのにと考えてしまう。なにしろ、東京に来た関西芸人の80倍くらい大変な目に合わされたからね。

繰り返しになるが、こういうスコアがあればインドネシアから日本に帰ってきて、何かを行うのに苦しい思いをしないで済んだのに、と思う。なにしろ、東京に出てきた関西芸人の80倍大変な目に合わされたからね。