デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

ブロックチェーンが株式会社を必要なくする

株式会社は世紀の大発明でした。リスクを分散しながら、大きな資本のスケールをつくることができます。リスキーな貿易船の航海とそのネットワークの構築を可能にしたことから始まり、あらゆる事業を人々は株式会社のスキームで達成してきました。

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ベンチャーキャピタルの出資から短期間のうちにIPOをすることで、可能性のあるビジネスを素早く伸ばすことが可能になりました。

しかし、ブロックチェーンとトークンのおかげでこの仕組みは進化しています。あなたはプロジェクトを立ち上げます。そのプロジェクトの株式のようなものをブロックチェーンと紐付いたトークンとして発給すればいいのです。

法的な確かさと認知が進めば、株式をトークンで表現する方がより便利なはずです。法律や証券取引所には既得権が存在しており、彼らを養うためのコストが高いのです。もしこれがなければ社会はもっとイノベーションを許容できます。こういうときだけ、人間が合理的だという仮定を尊重して、株式会社は必要なくなる社会を想像します。

デジタルマネー、デジタルバンキングのビットコインと、サービスプラットフォームのEthereumの2つだけでブロックチェーン/暗号通貨のかなり部分を占領するのではないか、と私は考えています。いま百花繚乱のコインたちの殆どは目を凝らすと、素人目にもどうも設計おかしいな、というものが多いですし、いろんな人たちにこれみよがしに罵倒されてます。ピアツーピアの非中央集権型のカレンシーにもネットワーク効果が働くでしょう。

とにかく、トークンは本当に面白いです。この記事でデロイトの方々と議論したように、様々なものがマーケットプレイスに乗る可能性があり、シェアリングエコノミーの可能性を開きます。

今日ふっと自分のプロジェクトのトークンを作りたいなと思いました。それでプロジェクトが進んでいって、会社という面倒なものを作らないで済む。役所と銀行に行かないで済むんだからそっちのが全然いいです。僕は分散型の社会の方がうまく働くと考えています。

 

 

 

アドテクは音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない

ヘッダー入札、ユーザーデータに関わる問題が明らかに:深刻なセキュリティ上の懸念 | DIGIDAY[日本版]

本記事筆者のRoss Benesは凄い。売り買いされたり、漏洩されたユーザーに関するデータが、あまりかっこよくないロジックで活用されるので、アドテク不信が起きる面はあるでしょう。データをそのままではスケールと質がないはずなので、他サイトでリタゲなどするなどの換金方法をとっているのでしょうか。

「多くのアドエクスチェンジはDSPに入札参加を認めているので、事実上、資金を使わずともデータを『盗聴』できてしまう」と、フリーのアドテクコンサルタント、ブラッド・ホルセンバーグ氏は指摘する。「したがって、入札パートナーが多いほど、データが顧客の手に渡り、そこからさらにリークする可能性が高くなる」。

情報源の一部がヘッダー入札で劣勢気味のアドテク企業というのも、Ross Benesの情報収集能力の凄さを物語ります。

あと日本では余り語られませんがヘッダー入札は、SSP/エクスチェンジ数社を競わせることに妙味があります。この競争を引き出すためにいくつかのヘッダータグをまとめるサービスなどもあります。1社だけだと「競争が薄い」のでディマンドは余り膨れません。

はてのない嘘つき探しの旅へようこそ

しかし、需要を増やすのを助けてくれるこのラッパーにも落とし穴があります。このラッパーを提供するベンダーに特権らしきものを渡してしまうからです(これはあくまで可能性です)。同時にこういう情報をリグできるポイントがほかにもままあるため、ステークホルダー同士が「人狼ゲーム」に陥ります。

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人狼~嘘つきは誰だ?

本文で指摘されるように透明性が極めて低い部分があるため、ステークホルダーが偽情報を出しているか、正しい情報を出しているかを判別することができません。関係者が常に不信を抱き合うように設計されており、次々に現れるソリューションもこの複雑な多者間の情報の非対称性を自分に優位に導くような形のものが多いように見受けられます。

合意できない人たち:ビザンチン将軍問題

人狼もいい例ですが、「ビザンチン将軍問題」もこのアドテクエコシステムを考えるいい問題です。

ビザンチン将軍問題 - Wikipedia

ビットコインはこの問題を、マイナーにインセンティブを渡すことで、悪意を実行する利益を小さくすることで、上手くやっています。

じゃあ、それがアドテクにできるでしょうか。

クラウドベースのアドテクが「デジタル広告の罠」をぶっ壊せる? - Smart Node

私はそうは思いません。この記事で指摘した通り、ステークホルダーには情報の非対称性をついて、嘘を混ぜるインセンティブが強烈に働くのです。一部のステークホルダーは合理的なので、このインセンティブへの反応がよろしいです。GoogleFacebook、ヤフージャパンなどのプレイヤーが寡占する市場に残されたお金をこういう形で分配しているのが現状です。

低手数料・高流動性の世界へ

ウォール街流がアドテクを効率的にする:低手数料・高流動性の取引へ | DIGIDAY[日本版]

私は解決策のひとつが、この記事で紹介した予約在庫を証券取引所的なマーケットに入れて、売買記録をセキュアに管理し、明確な手数料ビジネスに変えることだと思っています。ディスプレイ広告在庫の先物取引です。これはナスダックのブロックチェーン技術の応用を目指します。

理論上は約定額が分散型台帳に記載され、高度な暗号化により改ざん不能。約定額のような情報をA→B→Cといった「伝言ゲーム」で伝えず、改ざんできない連なった売買データが、並列にプレイヤーに示されるため、透明性が高まる。エクスチェンジの収益化はトランザクションに対する手数料でされるため、この点でも透明性が高まるだろう。

利点は理論上は(1)セントラルサーバーのない効率的な分散型トランザクション処理、(2)改ざん不能な記帳による「トラストレス」な取引―です。

現行のアドテクが下図の左の部分のように、RTBやアドネットワークの手数料が広告主が投じた最初の予算の半数に上っている。この数値はもちろん上下するが、パブリッシャーが情報劣位に立たされている場合、取り分が20〜30%まで減じるケースもあるらしい。WELQなどではこの少ない取り分から利益を弾き出すために、リライト専門ライターを極めて厳しい労働条件で活用するなどの実践をとったとみられた。収益性がコンテンツ制作を歪めることは業界の大きな問題だ。
これを下図の右のように9割以上をパブリッシャーの収益にし、取引所が数%手数料をとる方が理にかなう可能性は高い(金融業界では1%未満のレベルに圧縮されている商品がある。高頻度取引が可能なのは取引コストが極めて小さいからだ)。

ブロックチェーンも使い方次第では、全く役に立たなくなります。取引履歴をブロックチェーンに記載したとしても、その取引の前にあらゆることができるからです。誤った情報を正しくブックキーピングすると、誤った情報の連なりができます。あと、日本の業界で耳にする、一部のブロックチェーンを活用したと唄われる商品には、私はそれが「本物」かどうか自信がもてません。

エコシステムの設計自体に課題山積みですが「音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない」というのが、言い当て妙でしょうか。これはサブプライムローン危機時にシティグループCEOのチャック・プリンスがFTに語った言葉です。

最後に無駄に村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」を引用しておく。

「踊るんだよ」

「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言っていることはわかるかい?踊るんだ。踊り続けるんだ何故踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなこと考えだしたら足が停まる。一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう。あんたの繋がりはもう何もなくなってしまう。永遠になくなってしまうんだよ。そうするとあんたはこっちの世界の中でしか生きていけなくなってしまう。どんどんこっちの世界に引き込まれてしまうんだ。だから足を停めちゃいけない。どれだけ馬鹿馬鹿しく思えても、そんなこと気にしちゃいけない。きちんとステップを踏んで踊り続けるんだよ。そして固まってしまったものを少しずつでもいいからほぐしていくんだよ。まだ手遅れになっていないものもあるはずだ。使えるものは全部使うんだよ。ベストを尽くすんだよ。怖がることは何もない。あんたはたしかに疲れている。疲れて、脅えている。誰にでもそういう時がある。何もかもが間違っているように感じられるんだ。だから足が停まってしまう」

 

「ダンス・ダンス・ダンス」の名言集【村上春樹研究所】

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Image via 

「ダンス・ダンス・ダンス」: マイペース魔女の読書日記

ビジネスとして成立しなければいけない―—私が新興国援助の現場で感じたこと

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この村は池の上に浮かんでいます。 周りにある水草の下は水深数メートルの池になっています。水草は強固で上に立てるらしいのですが、村への唯一の入り口は、真ん中のコンクリの道です。

遠くから撮った写真がわかりやすいでしょうか。写真中心部が集落です。

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一応貯まった水を排水するポンプ車がいますが、長らく稼働を止めていました。現地に住んだ人ならわかると思いますが、よくあることです。

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不幸なことに、この池の下には墓がありました。墓は地盤沈下の後に周囲の排水やあるいは海水が流れ込んで出来上がりました。住民たちへの取材によると、周囲の建物はかさ上げを繰り返しそれは数メートルのレベルに達しています。 墓であるその土地はかさ上げが事実上不可能です。 しかもイスラム教徒の墓なので土葬です。

集落は海から数百メートルの近さで、海抜よりも土地が低い。 ジャカルタ地盤沈下は極めて深刻であり、特に沿岸部は数年後に海の下に沈んでしまう可能性が指摘されています。

なかにはむしろ攻めに出て、沖合に巨大防潮堤と埋立地を作ろうというチャレンジングな「グレートガルーダ案」まで出ていました。

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建築事務所「クーパー・コンパグノン」が作成した「グレートガルーダ」のイラスト

墓が水の下に沈んだ後、人々が移り住みました。地方からの移住者。インドネシアは2億5000万人の人口をもつ大国ですが、経済は4000万人程度のジャカルタ都市圏に集中しています。毎年あふれんばかりの移住者が退去して押し寄せますが、お金やコネがない人々が住むスペースは残っていないのです。だから墓の上の池にも人が移り住みます。

こういう移住者は法的に規定されない「インフォーマルセクター労働」(開発途上国にみられる経済活動において公式に記録されない経済部門)に依存しており、収入は最低賃金を大きく下回ります。

下のおじさんは、たくましいことに村の回りの水草を切って、キロ約3000ルピア(約25円)で販売しています。弾力のある食材になるそうです。毎日10キロ売っても250円の程度の収入。物価の高いジャカルタでは話にならないので、ほかの日雇い仕事もやっていると語っていました。

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しかも、ジャカルタ都市圏はインフラが整備される前に、経済ブームが来て地価の高騰が始まっています。都市のさまざまな集落が地上げの対象になっていまして、興味深い火事が頻発します。

時価のデータを参照しようと思ったのですが、統計局のデータを四半期ごとにめくって折れ線グラフをつくらないといけません。ここは端折りましょう。

それから安全な水を手に入れるのが大変です。ジャカルタは上下水ともに整備されていません。そのため多くの家庭、産業が地下水の汲み上げに頼っています。特に郊外の工業団地での水の汲み上げ量は相当なものだと言われています。

案内してくれた隣組長(インドネシアは日本が占領時に設定した行政区分を採用している)は池の底に管を通して、水を汲み上げていると話していました(下)。池の底は土葬の墓なので、ぞっとします。

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さらにその水を煮沸して瓶に保存し、飲料水にしているといいました。

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このおじさんのような方法をとらない浄水の入手方法がいくつかあります。ひとつは簡易な濾過装置による洗浄です。あとは山間部からタンクローリーで運ばれてくる水を買うことで、これが以外に一般的です。この水もタンクローリー直で買えるのはちょいアッパーミドルな人たちです。タンクローリーで運ばれた水が、分割されてボトル売りされるのです。1つのボトルあたり5000ルピア(約43円)程度だったと記憶しています。マイクロエコノミーはいたるところに存在するのです。興味深いですね。

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このような「インフォーマル集落」では登記されていない場所に家屋を建てて、それを貸す人たちがいます。この人たちはプレマン(チンピラ、ヤクザ)と呼ばれています。インドネシアは日本の70年代くらいの時代感でしょうか。プレマンのような組織は政治にも開発にも関与します。まだ政府と政府ではないものの境目があいまいな世界なのです。

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別件の土地紛争でとあるいわくつき財団を代表して土地占拠をするプレマン。極めてフレンドリーだった。

プレマンは賃料を得る代わりに地方政府や治安当局を牽制して、 収入源である住宅を守ります。住民とプレマンは安価な住居と賃料を互いに補い合う、抜き差しならぬ関係になりやすいです。ただ概ねプレマンは次第に様々な利権を生み出し、人々から搾り取る存在になることが往々にしてあります。ココらへんを上手くやるプレマンは慕われますし、なかには企業家や政治家になる人もいます。ただし、場合によっては危険な薬物の取引を始めたり、売春を持ち込んだりするプレマンもいます。

村は毎年沈下を続けているそうで、沈んだ家屋の上に新しい家屋を立てている。かなり汚い水の上に住居があり、住民の健康状態に悪い影響を及ぼす可能性があります。

この村に必要なのは移住だ。

援助の難しさ

この村は多量の援助を受けていましたが、その援助のほとんどがあまり役に立っていない印象です。このような援助を行うNGO / NPO などは、現地の状況をあまり真剣に調べないケースがインドネシアでは多いように感じられました。しかし、貧困世帯の生活扶助、教育無料化などが約立たないとは思いません。支援された側が必ずしも状況を活かせるわけではないが、マスでは効果は出ているというリサーチ内容もあります。

NGO / NPOモノによってはポリティカルリレイティッドです。私の取材相手だったプレマンは警備会社、右翼団体、環境保護団体の名刺を使い分けていました。彼は戦後上野のような街の有名なプレマン組織に所属しているのにもかかわらず、有名環境保護団体の幹部としてテレビに出ていて、それを観たときは顎が外れそうになりました。ガソリン価格を値上げする法案を国会が審議しているときは、ガソリン消費の拡大が環境破壊するというデモを起こしました。彼は2007年に当選した都知事と、都知事を担いだ政党の熱心な支持者でした。彼の同僚は警察官かつ警備会社幹部であり、富裕層を相手にした売春の斡旋にも関わっているようでした。

もちろんこれは極端な例かもしれませんが、上述の環境団体は日系企業を含む他国製企業の環境系CSRにも関与する例はたくさんあったと感じています。

とにかく、援助では企業や国際機関→NPO / NGOという「商流」が決まっています。富裕国から来たエスタブリッシュメントは予算を消化することを重視してます。援助案件を最後までトラックしたりインプリメントすることは面倒でかなわないのです。なかには予算の大半の所在が分からなくなることもあります。

援助を決定する統計、リサーチの危うさ

私のジャカルタ時代のオフィスの隣は発展途上国の開発推し進める国際組織だったが、彼らは毎日スターバックスを飲み、ホテルでのディナーを好んでいます。地元社会には興味が薄い方が多い印象です。この人たちはインドネシアには清潔な水が必要だというレポートをまとめ、いくつかの集落でその設備を渡す式典をやりますが、全て現地スタッフ任せで、現場は知りません。

新興国では情報が偏在しているので、公式統計が余り信用できません。中国のGDPをめぐってかわされた議論を思い浮かべてください。なので彼らがまとめた統計を基にしたアナリティクスは、バックグラウンドを読める玄人から見ると生ぬるいのです。ただ、とても説得力のある国際機関なので、私は自分の調べた内容を裏付けたいときは、ばんばんその統計やレポートを利用していました。

興味深いことに、これが日本の金融機関や商社系の研究所の資料になっている頃にはフィクションになっています。一度日本の大手出版社の人に、日本の研究機関のリサーチが基にしているイ国家予算の解釈が誤っていると伝える(研究員はインドネシア財務省を取材していた)と、相手はかなり機嫌を損ねていました。ペーペーだと思っている若者が自分たちが信じる世界観に疑問を呈しているからでしょう。

ぼくは馬鹿にしたいのではなく、情報は偏在しているということを伝えたいのです。統計はザラザラで粒度は合っていません。その数字が作られるに至る要因たちを推測し、重み付けするアルゴリズムを鍛えないといけないのです。これは分析というよりはハスラーの世界であり、ハスラーの才能と素晴らしいビジョンが重なったときに面白いものができると思うのです。

 溶けた援助

このまちに必要なのは移転です。しかし、多額の援助が注ぎ込まれ、住民に留まる理由を与えています。

1.電気と電灯

まず援助はこの村に電気と電灯を与えました。

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2.ウナギ養殖施設

英系銀行はウナギの養殖施設を与えました。輸出食材のウナギから得られる住民の生活費の糧になるとのことですが、隣組長は、うなぎの養殖に失敗を繰り返しているうちに、住民が興味をなくしてしまった、と話しています。取材当時設備は使われていませんでした。

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3.コンクリート歩道

村々の住宅は木橋でつながれていました。大雨が降ると壊れてしまうそうです。

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これを大量のコンクリートを、墓のある底まで埋めて、舗装道路にしました。冒頭のむらに続くコンクリートの道もこの供与によってされました。

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このコンクリ道路を供与した鉱山開発会社の慈善団体の残したボード。鉱山会社はパプアにある世界最大級の銅鉱山を採掘しています。

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4.貯水タンクとポンプ

住宅の近くに貯水タンクとそれを各住居に送るポンプをつくりました。水は先述した通りタンクローリーから購入します。写真はありませんが、村はシャワー場も供与されており、ここの水が利用されていました。村では清潔な水でシャワーや水浴びができないからです。しかし、ポンプが故障しておりこの設備は死んでいました。水の来ないシャワー設備も同様です。

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焼け焦げたあとのあるポンプ。かなり長期間の間動いていない様子だ。

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繰り返しますが、この援助は、移住が必要なアプン村に対し、要らない供与をして住民が留まる理由をつくってしまいました。序盤に登場した隣組長は援助にハマっているらしく「次は学校を建ててもらおう」と話していました。取材はまる2日行い、ほかの住民ともたくさん話しましたが「いい場所があって、いい条件があるなら移りたい」と行っていましたが、強制撤去を恐れていて、そうなるならグレーなままでもとどまり続けたいと語っていました。

この一例をとって「途上国援助はダメだ」という気はもちろんありません。意義のある援助はあるし、効果が目に見えづらい援助もあります。援助の効果の判定は、計量的に行わないといけません。ただし、援助を行う側のノウハウ不足を感じざるを得ない面は多々ありました。予算があったり、そういうアクティビティが義務付けられているからやるという側面が強いように感じられました。

結論:ビジネスとして成立していないといけない

この経験を通じてぼくが強い実感を覚えたのが、「ビジネスとして成立していないといけない」ということでした。援助は援助側の論理だけで行われても、それがそこにいる人間とそれを囲む環境の中に入り、ビジネスとして動かない限り、長期的に役に立たないのです。つまり、「援助」ではなく「投資」が必要なんだと思いました。

例えば、アプン村の中から有望そうな子どもを見つけて、その子どもを留学させて、雇用を作れる人間にしていくことは有用だと思います。あるいは、コネクティビティ(ネット接続)を村にも到達させ、スマートフォンと無料のデータ通信を渡す。特に学習や問題解決に使われる利用法を促していけば、住民が賢くなり、やがて村をでるためのさまざまな方策をとれるようになるかもしれません。

私は自分自身に対して投資をしていくことを続けていますし、ビジョンの面白い、スキルを高めていく人間に投資していきたいと思っています。「ビジネスとして成立」させるのは人間のソフト資産であり、それは学習や教育によって培われるものです。だから、人の学習に資するメディアに関わっているわけで、近い将来には学習や教育の分野でも面白いことをしたいと思っています。

アジアやアフリカの低所得者層の住処から、あっと驚く天才を輩出してみたいと思います。そうすれば、いまある援助はそのまま投資に変わるはずだからです。

参考文献

【ジャカルタ・フォーカス】墓は沈み、村が浮かんだ 西ジャカルタ・カプック 地盤沈下の波[上] | じゃかるた新聞 インドネシアの日刊邦字新聞

 

クラウドベースのアドテクが「デジタル広告の罠」をぶっ壊せる?

DIGIDAY USはRoss Benes記者を得て、かなりアドテク界隈のカバーが強力になりました。下記の記事は春頃導入が噂されるGoogleのExchange Biddingを前に米業界は変化のなかにあることに触れています。業界人の予測が集められた、とても有用な記事です。

現状のディスプレイ広告取引においては、ダブルクリックはGoogleにのみすべてのインプレッションの確認と入札を許可し、ほかのすべてのエクスチェンジの競合を排除しています。アドサーバーの独占により極めてGoogleにとって有利な取引形態が築かれているといっていいでしょう。オークションに関しても広告主、媒体から見えない地点がたくさんあり、不透明と言っていいでしょう。しかし、Google支配力はかなりのものがあります。

これをハックするのが「ヘッダー入札」でした。昨年春に書いた記事を引用しましょう。

ヘッダー入札は「ウォーターフォール」の代替策として浮上した。ウォーターフォールとは、パブリッシャーが在庫を優先順位を付けて振り分けていく広告販売手法のことだ。媒体社はまず優先する純広告用の広告在庫を確保する。その後、それぞれのSSP/エクスチェンジが支払える広告単価(CPM)を算定し、ランク付けし、在庫を振り分ける。最初のエクスチェンジには、高価格/低数量で在庫をリリースし、次のエクスチェンジ以降は滝(ウォーターフォール)のように少しずつ価格を落とし、数量を増やして入札を繰り返す。媒体社にとっては「純広告で売れなかった在庫」を、できるだけ高価格で売り、広告収益の最大化を目指す手法だった。

 

媒体社の広告在庫取引ではGoogleが大きなファクターになる。多くのパブリッシャーはDoubleClick for Publishers(DFP)に依存しており、その在庫が取引されるDoubleClick Ad Exchange(AdX)では媒体社が設定したフロアプライス(最低落札額)付近に落札が集中しがちだという。AdXは価格調整権に関して「特権的」と言われる。

 これから「ヘッダー入札」の話をしよう:メディア収益化の新星か | DIGIDAY[日本版]

Exchange WireRomany Reagan氏の記事の以下の図がとても分かりやすいので、参照しよう。

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ウォーターフォール→ヘッダー入札→S2S

いままではウォータフォールと呼ばれる手法で、順番に並列のオークションをこなしていったが、この仕組みをとるとGoogleがとても有利になるし、遅延するし、安くなったときを見計らって買い注文を入れるなどのテクニックなどで買い叩かれるのです(ウォータフォールは現状も多数派です)。

ここで図の下部のように並列したオークションをひとまとめにしようと、ヘッダー入札が生まれました。一部のパブリッシャーは効果を享受しているようだが、前述の通り、多数のタグをヘッダーに入れるのは、ロード時間遅延というユーザーの最も嫌うものを誘発します。また幾つものアドタグをラップしたものからデマンドたちを当たるのですが、最適解を弾き出す前に広告をサーブしないといけないことがままあるそうです。

それでヘッダー入札をサーバーに持ち込んだ「サーバー・トゥ・サーバー・ソリューション (S2S)」の開発が開始されました。サーバーとサーバーが「おれは◯円で入札する」「おれは◯円だ!」などと会話して、その会話で定められた勝者が広告を挿入します。

これは特段新しい技術というわけではなく、モバイルアップのアドネットワークなどはこの方式を利用していたりするそうです。

理論上はS2Sの方が、ヘッダーにジャバスクリプトを仕込むという無茶がないので、スムーズに多数のデマンドを競合させられる=価格上昇=を引き出せるはずです。

 

What are server-to-server connections

 

The winners and losers of the server-to-server programmatic arms race - Digiday

 

 

しかし、Googleのエクスチェンジビディング以外にS2Sのベンダーが何十社も並び立ち再び分断されたオークションを作るならば、ロード時間の遅延を回避しただけで元の木阿弥です。

サーバー・トゥ・サーバーではサーバー側で「どのDemandが一番高いか」をはかりにかけて、需要の取りまとめを一社のベンダーに任せる事になりうるのですが、そのベンダーが情報の非対称性をエンジョイできる可能性は大いにあります。ベンダー間で協定が生まれれば、それこそ、建設会社の談合入札を実現する機会が生まれます。

Server-side header bidding requires teamwork in a nontransparent environment. Publishers work with one vendor to do server-to-server header bidding. Because that vendor in turn rounds up bids from all the other demand partners, they must trust the vendor to run the auctions fairly.

While code run on the browser is visible to all, what happens on the server is invisible to both the publisher and the buyers. It’s possible that auctions could be conducted in a way where one demand partner gets preference or a final look. Or data could be leaked or hidden fees be taken. And that lack of transparency makes technical glitches more difficult to fix.

 

Server-Side Header Bidding: 6 Things You Should Know

デジタル広告の罠:情報優位者は自己利益最大化を目指す

ベンダーが一部のバイヤーを優遇してリベートを受け取ったり、Double Dipというのですが、パブリッシャー(セラー)とバイヤーの双方から手数料を取ったりできます。セラーとバイヤーに異なる成約額を知らせることにより、マージンを太らせられます。これらはこのソリューションに限った話でもないですが…。

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デジタル広告売買は罠を抱えていると思います。この三角形のなかで、アドテクベンダーは売り手と買い手の双方に対して情報優位に立っているのです。合理的なプレイヤーは自己利益の最大化を目指します(他者の利益は気にかけません)。仕組みの設計は「プレイヤーがワイルドになってもうまくいく」ようにしないといけません。

最高シナリオと最悪シナリオ

昨年春にGoogleはエクスチェンジ・ビディングを発表し、「ヘッダー入札の死」を匂わせました。これに対し、ベンダー各社は類似ソリューションの開発でGoogleのエクスチェンジ・ビディングに圧力をかけています。Googleのエクスチェンジビディングが本当のオープンオークションを生み出すのが最高シナリオです。Googleが今後どんな設計を示すかが巨大なイシューになります。

たくさんの需要を、たっぷりとした時間をとり、一回のオークションで競わせることで、「適正に近い価格」をつけることができるはずです。一応名目上は、業界はそこを目指しているはずです。

最悪シナリオはサーバーサイドのソリューションとヘッダーのソリューションが併存する状況です。アドテクでは市場が効率性を著しく欠いているので、有り得ます(効率性が高ければ、いい物に高い値をつけたり、悪い物に安い値をつけたりするとされています)。そしてその結果、もっと効率性の低い市場(分断されまくったオークションたち)が生まれる、というか「市場」とも呼べない代物がうまれるかもしれません。

クラウドベースエコノミーを持ち込んで欲しい

ここからは妄想の話ですが、Amazon Web Serviceのようなビジネスモデルがアドテクベンダーに現れたらそれは巨大なゲームチェンジャーじゃないか、と思います。つまり、アドテクベンダーはマージンという形でデジタル広告売買のサプライチェーンで収益を上げていますが、クラウドベースでサービスを「利用した分だけ払う」方が、サービスへの報酬として適切なのは間違いありません。アドのサーブ、オークションをサービスとして提供してくれれば、かなり不確実性がなくなり、参加者の利益が一致する可能性が高まりそうです。

Amazonは現行のベンダーがベンダーの役割だけでなく中間取引者の役割も担ってしまっている「歪み」をつけます。

 

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技術の差はもちろん大きな差別化要因になりえますが、報酬形態のクリアさもまた大きな差別化要因になるでしょう。

 

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AWS的にマーケットシェアを重視して「利益を出さない」攻め方が可能ならば、競合の多くはこれまで極めて短期的な利益を重視してきたので、押し出していける可能性があります。ボリュームが出るとこのアプローチは儲かるはずです。デジタル広告市場はグローバルで20兆円を超えているのです。GoogleFacebookが手にしていない部分だけでも10兆円あります。

 

 

【アドテク勉強会】RTBは建設会社の談合入札を見習うべき?

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この記事の筆者のRoss Benesと翻訳のガリレオの見識は本当にすごい。セカンドプライスオークションは経済学上は、高値入札も2番手の価格になるため、買い手に高値をつけるインセンティブを引き出すとされている。

本文では興味深い検討がされている。

たとえば、1つ目のSSPにおける上位2件の入札額が14ドルと4ドル、2つ目のSSPにおける上位2件の入札額が25ドルと2ドルだったとしよう。この場合、決済価格を決めるのは1つ目のSSPになる。なぜなら、両者の決定価格(セカンドプライス)を比較すると、4ドルの方が高くなるからだ(このケースの決済価格は4.01ドルとなる)。だが実際、入札全体を俯瞰して見ると、2番目に高い金額は14ドルになるのだが、それは採用されない。

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情報筋は米DIGIDAYに、サーバー・トゥ・サーバー接続は、こうした力学をいくつかの方法で変える可能性があると話した。

サーバーサイドでの接続が可能になれば、より高いセカンドプライスを引き出せる可能性はある。ただし、この25ドルや14ドルのような入札は、買い手がセカンドプライスでの「戦略」を実践した結果だ。仮にすべてのプライスが採用されるとなると、6ドルとか3ドルとかの入札を試みるかもしれない。

セカンドをファーストにすれば解決するわけではない

メンデス氏は、パブリッシャーが効率を上げたいならば、セカンドプライスモデルでSSPから入札を集めるより、(もっとも高い入札額が決済価格となる)ファーストプライスモデルを活用するほうが上手く行くと指摘する。だが、ほとんどのアドエクスチェンジは依然としてセカンドプライスオークションに依存しているので、パブリッシャーがファーストプライスモデルに切り替えることは難しいかもしれない。

複数の情報筋が米DIGIDAYに語ったことによると、セカンドプライスという技術は古い遺産だが、検索やディスプレイ広告の初期の時代にデジタル広告に定着して以来、多くのベンダーが慣習的に使っているそうだ。

セカンドをファーストに直せば、パブリッシャーが一位の入札額をそのまま楽しめるという考えは甘い気がする。今度は買い手が弱気になる可能性がある。

それから、基本的にRTBは経済理論上のいわゆるマーケットが成立しているとは言い難い場であることも重要だ。並列して市場が存在し、不透明性のレベルが高い。他にも価格の決定要因にが存在しているようにも見受けられる。解けないパズルかもしれない。

こうなってくると、日本の建設業界の談合入札にも一定の合理性を認めることができる気がしてくる。

Photo via Pixabay

2010〜2015年に私がインドネシアでやっていたこと

私は2010年から2015年の約5年間、東南アジア最大経済のインドネシアの首都ジャカルタで政治経済を担当する記者を経験しました。日々の取材だけでなく、新聞編集ソフトで誌面編集をし、最終的に誌面編集をインドネシア人スタッフに移管するなどさまざまな仕事を経験しました。現地社会に深く入り、新しい思考の極を東南アジアで獲得し、いまも持ち続けています。

当時のキャリアについて、できる限り克明に記そうと思います。

要約/サマリー

  • 私は多くの在留外国人が関わりをもたないインドネシア人社会に深く入っており、そのおかげで他の外国人の記者/リサーチャーに比べて政治経済情勢のインサイトが深かった(大統領選では情勢予測で常に他社/公的機関、研究機関をリードし続けた)。

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Saya menjadi 50% orang Indonesia 50%ほどインドネシア人になっていたジャカルタ時代

  • 都市問題など多様なテーマに取り組みました。新聞記者は「問題」をあぶりだすのが好きですが、私は常に「問題解決」の考え方で原稿を書きました。会社にいた日本の新聞社出身の人には否定的な人もいましたが、ちゃんと自分で考えることで「化石」にならなくて済んだと思っています。

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インドネシア2年目の若かりしころ、北スラウェシ・マナド島にて

政治経済

政治担当記者だが、経済分野も深く関与。マクロ経済、金融は得意だった。

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国会前で開かれた、燃料値上げに反対する大規模デモ。デモ隊の乗用車に乗せてもらった。2013年1月。

ASEAN/APEC取材

2014年インドネシア大統領選

Joko Widodo、Prabowo Subiantoの両陣営に選挙戦当初から取材を続けた。初代大統領スカルノや知識層の流れを組む民主派と、第2代大統領スハルトの流れを含む開発独裁派の対決構造を早い段階からキャッチ。開発独裁派の石油輸入に絡む汚職疑惑をめぐるスクープ記事を執筆。

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主要4党でも過半にたどり着かない多党乱立のインドネシア政治(Via Jakarta Shimbun/Adam)

当時のユドヨノ政権が選挙前に行った典型的なバラマキの解説図(Via Jakarta Shimbun/Rizki)

■大統領選に絡む宗教問題

インドネシアムスリムマジョリティだが、イスラムのあり方は多様だ。大統領選挙ではムスリムの各勢力とプロテスタントカトリックなどの宗教に関して激しい中傷合戦が行われた。特に重要だったのがジョコ・ウィドド氏の出自を華人とし、キリスト教徒と虚偽の情報流すタブロイド「オボールラクヤット」だった(2016年米大統領戦の偽ニュースに似ています)。

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大統領候補(当時)のジョコ・ウィドドジャカルタ特別州知事西ジャワ州カラワンにて2014年5月

■投票とその後の長いせめぎ合い

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勝利宣言したジョコウィとカラ2014年7月22日、南ジャカルタ・クバグサンのメガワティ元大統領私邸

■メディア執筆

「石油マフィア」報道

2014.9 国家予算に莫大な負担を負わせた、低質石油の価格をシンガポールの取引所で嵩上げして国営企業に買い取らせ、最終的に補助金で嵩上げ分を補填する汚職スキームの全容を明らかにした。この汚職スキームに関する報道は海外メディアでは初めて。現地日系社会にも大きな影響を与えた。大統領選挙の背景にある利権争いのなかでも中核的なもので、ジョコウィ政権成立後これらはおおむね排除された(2017/1/7時点)。

■ガソリン補助金

ジョコウィ新大統領(2014年〜)の伝記

ジョコウィ大統領の生涯を振り返るシリーズ。ジョコウィ氏の地元に出向き、50万都市の市長、1000万都市の州知事の軌跡を再現した。

ジャカルタの都市問題

グレーゾーン居住状態の集落での火災を取材したことをきっかけに、貧困、人口流入、洪水、インフラなどの都市問題を調査し、解決策を探った。こちらのリンク→SlideShare「ジャカルタフォーカス」から紙面で見られます。

■貧困問題

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グレーゾーン居住の住民が移転への反対集会を開いた。取材しているの(奥)が地元通信社の写真に写り込んだ。アンタラ通信撮影。

■「闇市」タナアバンとプレマン(ヤクザ)

インドネシアでは政治にも公然とプレマン(ヤクザ)が関与している。ヤクザは強烈な集票マシーンであり、さらに各種のビジネスで強い影響力をもっている。そのためプレマン方面の取材を強くしていた。高校の先輩である佐藤優氏がロシア情勢を知るためにマフィアへも情報網を広げていたことに影響された(佐藤氏の著書に詳しい)。

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子どもは16人、孫は30人いる」と話すバン・ウチュ。インタビュー序盤は怒り始め、一触即発。ヤクザの子分たちがピリピリしていた。

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地元の盟主のはからいで見学。闘いはじめてから皆がベットする方式だった。

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ジャカルタのヤクザの主要な出身地であるケイ島を訪問。エメラルドグリーンの天国だった。

■洪水集落・移転

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洪水になると半身水に浸かって逃げ出さないといけない

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洪水で損壊した家屋の後で記念撮影するカンプンプロの子どもたち

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よく首都ジャカルタは冠水した。2013年1月の首都大洪水。

以上、こんな感じですが、手元の資料をあたると、もっとたくさんのことをやっています。あと当時オフレコだったもので、時効が来ているものもたくさんありますが、ニーズがあれば出そうと思います。

当時は岩波から本を出している、とある関西の大学のインドネシア研究者から大統領選のインサイトを出典なしで丸パクリされたり、あるコンサルタントのプレゼン聞いたら、全部ぼくが書いた内容をそのままなぞっていたり、とこういう知的産業で横行するインモラルに驚きました。引用元を出してほしいです。とにかく、いまさらですが、こういう形にまとめて一段落つけました。

最近もインドネシア関連でこういう記事書いてますので、ぜひご一読をお願いします。

*文中の写真の撮影はアンアラ通信表記以外のものは吉田拓史による。

 

 

 

大学時代のソロの楽曲をまとめました。

前回は大学生時代のバンドの音楽をまとめた。

taxi-yoshida.hatenablog.com

今度はソロでつくった音楽をまとめておこうと思う。サウンドクラウドMyspaceにまとめた。Myspaceの音楽もサウンドクラウドに移したかったが、元のファイルはなくなっており無理だった。

2008~2010 Takushi Yoshida

ストーリー

「仮想現実のなかに作られた都市に移住した人々が、現実世界に住んでいたときの記憶を持ちより、生み出した音楽」というストーリー。仮想現実の入り口は新宿歌舞伎町の「矢畑共栄ビル」の4.5階の、天井が異様に低い部屋の本棚で隠された穴、という立て付け。

コンセプト

活動内容

Songs

2007 Moon

一番最初につくった曲。2,3時間でできた(Myspaceかなり遅延する。リンクから本サイトで聞いてください)。

Moon from Takushi Yoshida on Myspace

2009 Summer

2009年の夏に作曲(はず)。Warpが好きやBoards of Canadaの影響があるかな。夢中になってやっていたらできた。

2009 Zero Gravity Dream

一番好きな曲。夢の中ですべてが無重力になる。インセプションみたいに。序盤は少し退屈かもですが、途中からよくなります。編曲してもっとよく出来ると思うMyspaceかなり遅延する。リンクから本サイトで聞いてください)

Zero Gravity Dream from Takushi Yoshida on Myspace.

 2009 Memories

人の心にやどり続け、アイデンティティを規定し続ける思い出について考えを巡らせてつくった。

2009 The Begining of Everything

ビッグバン以前の「無」の状態をイメージしてみた。仮想現実の都市が、強烈な生命力により始まるときを描いてみました。

2010 Wave

優しい気持ちになりたい時に。波の自然音を加工して使っていますMyspaceかなり遅延する)。

Wave from Takushi Yoshida on Myspace.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大学時代のバンドの楽曲をまとめました。

大学生時代に組んだバンドの音楽をサウンドクラウドMyspace にまとめた。Myspace の音楽もサウンドクラウドに移したかったが 元のファイルは 亡くなっており無理だった。ユニットと曲の紹介をしようと思う。

Alcoholic Vivi 2006~2010

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活動内容

  • 2006年、吉田(Ba)、予備校の友人Usuda(Gt & Vocal)、中学の同級生Kanai(Dr)の大学生3人で結成。新宿歌舞伎町のライブハウスで練習中、ライブハウスMotionの店長から話がかかり、ライブデビュー。パンク・オルタナティブロックで活動。月3〜4回ライブと頻繁に活動したが、チケットノルマのせいで困窮する。
  • 2006年のKanaiの脱退から、ドラマーの数回のチェンジを経て、2007.4に最終的にドラムマシンを採用。吉田とUsudaの二人体制に。次第に宅録主体のElectoronicに音楽性を変えた。2010年に吉田がインドネシア渡航以降、活動休止。
  • ドラムマシン採用したころの音源がAudio Leafに残っていた。サービス停止しないことを祈るが、消えてもいいかも。初期のModern City Nightがある。
  • バンド名をAlcoholicにしたことをいいことに、当初はかなり酔っ払ってステージに上がっていた。リズム隊が泥酔していて、どうしようもなかった。
  • 2006年、大学の友人が集まり新宿JAMに100人集まった。そこがピークでその後は客が少なすぎて新宿JAMのおっさんにキレられ、モメる。
  • ライブハウス:新宿JAM吉祥寺Warp、新宿Motion、三軒茶屋Heaven's Doorなど多数
  • 当時作成したホームページは崩壊。作りかけの曲が勝手にかかる。
  • 友人のデザイン専門学校生が作ったデモの表紙f:id:taxi-yoshida:20170103111158j:plain

Songs

2007. Modern city night

2006年に最初にできて、やっといいの作れた曲。最初はMTR録音だったが、ableton live 7で再録した。UsudaはKorgのデジタルシンセを使い始めた。

2008. Sunday Dreaming

2008年、もうちょっとポップでエレクトロっぽくしたいということでできた。

2008. White Penguin

2005年結成当初からある曲。ableton live 7環境になってかなり音が厚くなった。

2010 夢見がちなヒッピー

Takushi YoshidaがつくったAmbient調の曲をさらに2人でギタギタに編曲。バンド結成当時からあった曲をはめ込むこんだら出来栄えは意外に良かった。

 

大学入学したのが2005年4月、バンド結成が2006年とそれまで与太っていたことを思い出した。大学時代はまあまあ与太っていた時期があり、それがなくて1つに集中していたら大きな成果を出せたなーと思った。

正月にableton live 9のことを調べてとても買いたくなった 今は休みが週に2日あるので 二塚の休みを生かしてやるのもいいと思った。無駄なことに時間を使うなら、音楽ができた方がいい。

インドネシアから帰ってきた時、実家の部屋 に置かれていた ベースを ハードオフに 二束三文で売ってしまった。 なんてもったいないことをしてしまったんだろう。

芸術=起業

大学時代は 村上隆の「芸術起業論」にはまり、 芸術をやることはつまり起業するということだ と考えていた。

芸術起業論

芸術起業論

 

バンドをやることは単なる自己実現ではなくマネジメントだと思っていた。 大変なことも多かったが 何人かで一つのことにチャレンジすると、一人では出せない大きな成果を出せる。僕は大学時代に一度起業したと考えている。

 

評判をうまく活かすためウェブサイトをつくっている。

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最近レピテーションシステム(評判システム)についてちらほら書いてきた。

自分がこの仕組みの中でどう評価されるか考えてみた。インドネシアから帰国した際はこの点に関してとても無知だった(大変なことになった)。今はウェブサイトを作り自分の やってきたことをわかりやすくまとめようとしている。そうすればいろんな人が僕について 簡単に理解ができる。

かなりたくさんのことに取り組んできたので これを言葉で同時に説明するとなんかとても怪しい人のように思われる。それを分かりやすい形にすれば、レピュテーションシステムをうまく行かせると思う。

年末いろんなところに飲み会に行ったが 、業界の外の人に自分を説明する難しさに気づいた。自分は日本の企業社会の大外に暮らしており、彼らの価値観から遠く離れている。 彼らのロジックは簡単に外の人をやばい人扱いできる。彼らはセールスフォース、アドビの時価総額三菱商事のそれを上回っていることを知らないのだ。昨今の出来事を見ていると、それも今年ぶっ壊れる気がするけど。

あとは自分のやってきたことを整理して、自分のとるべきアクションを再度明確化したいと思った。

資本主義社会をエンジョイする方法は株式会社を作ることだ。 仲間と資本を集め自分がやっていることをスケールする。これらを集めるためにも自分を説明できることと自分がやろうとしていることを説明できることが大事だと思った。

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労働集約性からメディア産業を解放する


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記事をたくさん書くのは大変だ。このいわゆるメディア広告業界の仕事の労働集約性はちょっとしんどい。この仕事は現状、スケーラビリティ(拡張性)が脆弱だ。組織によって異なるのは重々承知だが、以下のような問題点を認めている。

  1. タスクのオーバーラップ
  2. 過剰な業務の細分化
  3. 業務プロセスの多重階層化
  4. 目標設定なきデスマーチ

日本の農業と類似点がある。それは狭い農地 に対して多くの労働力を注ぎ込んで、とても高価な商品を作っていることだ。 昨今のバイラルメディアやまとめサイトにおける最悪の労働環境はこの高い労働集約性に対して人件費を絞り上げるというブラックな手法によって対応したことで生まれた。クリエイティブな業界のはずだが、こういうオペレーションに関してクリエイティビティは認められないケースが多いはずだ。

これはトラディショナルメディア にも共通する。テレビの制作会社は常に自転車操業であり 、「局員」と比べ明らかに少ない給料で過酷な長時間労働をしている。

いい労働集約性 vs 悪い労働集約性

もちろん、いい労働集約性と悪い労働集約性がある。クリエイティビティは人同士のごちゃごちゃから生まれる側面もあるだろう。ビルを建てるのと、面白いものをつくるのは異なる。第一案が死んで、第二案が死んで、第三案でうまくいく、というのはある。クリエイティビティという正体不明なものに切り込む方法を確立しようと頑張ってきた。ただ過剰になりすぎたのは否めない。

悪い労働集約性に関しては早いうちに手を切りたい。メディア業界は情報産業で、定式化した仕事は機械がやるようになるだろう。でも人は人がつくったクリエイティブに感動する傾向が強いので、完全なテイクオーバーにはならない。機械で強化されたクリエイターがより高度なメタ情報を扱うようになったり、レコード、カセットテープのように伝統芸能的に残ったりするはずだ。

ここで注目したいのはクリエイティブはその成果において大きな差が出ることだ。 素晴らしいクリエイティビティを増幅し、その与えられる影響を拡大できたらいい。

レーティングor Auther Rankの導入

スケーラビリティとは別に、評価の仕組みを確立することも大事だ。一つ一つの仕事に競争と付加価値を付けていくべきだ。

ジャーナリスト/媒体ブランドにレーティングを与えるのはいかがだろうか。レーティングはできるだけ客観的な基準で構成員をジャッジしてあげようということや、暴れん坊に柔らかい制裁を与えられる。とんでもない仕事をするとガクッとレーティングが落ちて難しくなるからしっかりとした仕事が必要になる。

レイティング、レーティング (rating) は、対象となる物事に対して、ある基準に基づき、等級分けや数値化をおこなったものである。語源の rate には、見積もる・評価するという意味がある。(Wikipedia)

ぼくは男子テニスのATPランキングにはずっと親しんできた。ATPは年末にファイナルがあって、その大会の後のポイントで年間ランキングが確定する。


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これを真似て年末、今年のジャーナリストアワードみたいなのをやったらいい。「今年活躍したのは誰々です」と。競争とともに、いい仕事した人には確かな報酬を渡す。日本のメディア業界にはいい仕事に報いるというシステムが確立していない。現場で少ない賃金で働いていたりする。

GoogleのAuther RankやAmazonのRaputation Systemなど、評判を基にスコアリングする仕組みはネットにはかなり前からあった。しかし、偽ニュースやグレーな医療情報、コピペ記事がGoogleを欺いたし、Amazonはこの前怪しげなレビューを一斉処分しなくちゃならなかった。だけど、いずれいいものができるはずだ。ジャーナリストのレーティングは爆発するインターネット上の情報のランク付けに比べれば簡単だろう。

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2016年反省会、来年はコンピュータと友達になる

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実家で紅白を見ていてとても退屈なので、2016年をまとめてみたい。

1.インタビューかなりたくさんやった

アメリカ人多かった。テクニカルな内容もまあまあ英語で行けるようになったが、もっといけるようになりたいし、もっとディスカッション色を強くして、Podcastでみんなに広めたい。

2.注目を集める記事を書き、業界の変化に貢献した

コンサル、SaaSベンダー、広告会社のマーケティング業界のオーバーラップとGoogleFacebookによるデジタル広告のデュオポリーはかなり注目を浴びたテーマ。いい情報流通に貢献した。

3.広範な分野をカバー

デジタルマーケティング、Fintech、ブロックチェーン/Bitcoin、ニュースパブリッシング、AI、とかなんとか。かなり勉強不足なので、頑張ってキャッチアップしたい。

4.DIGIDAYパブリッシングサミット成功

DIGIDAYブランドを定着させることの大きな要因になったイベントの成功に貢献できたはず。2017年2月に第二回があるので、いい会になればいいと思う。

5.ふくらはぎを負傷

フットサルの大会でふくらはぎを蹴られ、強烈な筋損傷を起こした。完治に一カ月がかかり、運動不足になるやらハロウィンでバテるやら大変だ。ワイルドな老若男女の標的になりやすいので、常に厳しい注意を払おう。

6.台湾とタイ、ラスベガスに行った

以前はインドネシア生活だったので、近くの国に頻繁に行けたが、2016年は旅行は控えめだった。2017年は再びアグレッシブになりたい。

2017年の目標

  1. 英語で専門的なディスカッションができるようにする。もちろん優れたアイデア付き
  2. コンピュータについてもっともっと詳しくなる
  3. コンピュータとパブリッシングのより濃密な融合、メディアという労働集約型産業のイノベーション
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  4. たくさんのスマートに会い、教えてもらい自分の力を引き上げる
  5. 行動力、決断力をもち、シャイにならない
  6. 財務の知識を増やす

 Photo by Pixabay

 

 

世界は情報でできている、だから書き換えられる


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帰りの電車で電車の中を眺めていた。とても興味深い。電車のなかから見えるのは物質だ。情報を意味する記号はあるが、すべて物理的なものだ。

だけどぼくたちの社会では情報が大事だ。ルイヴィトンのバッグを買うとき、買うのは記号だ。ルイヴィトンが与えてくれるベネフィットは他のバッグと比べて大して違わない。恐ろしいことにルイヴィトンを所有しているという事実に、価値が見出されている。

バブルのまっ最中、記号の消費はピークを迎えた。そして「欲しいものが欲しいわ」(糸井重里)となった。でも、私たちの消費する情報の殆どは生存には関わらないどうでもいいこと、なのは確かだ。

情報で生まれた価値の代表例は、お金だ。お金はほとんど情報だけでできている。もし仮にぼくが宇宙人で、世界中の人々から、お金に関する記憶・迷信を消す魔法が使えるとするなら、魔法が唱えられた瞬間にお金は紙くずか、コンピュータに記録された数字になってしまう。

政府の多くの部分も情報でできているだろう。政府という妄想を消す魔法を唱えれるなら、政府はたくさんの人間の詰まった箱になる。

多様性と自由にこだわっていたい

ぼくはテレビ、新聞、ニュースサイトのゴシップ記事というメインストリームの情報をほとんど摂取していない。そこで流通している情報が想定する人間には「多様性」がない気がするからだ。テレビ番組や新聞記事をつくっている人々の世界観はあまり複雑じゃない。だからそこで使われている価値尺度の過度なシンプルさが余りにも理解できない。あれは水槽のなかの熱帯魚をつくろうとするものだ。


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最近、クイズ番組をみて、おかしいと思った。なぜこの国では四角の中に言葉を入れることをもてはやしているんだろう。検索したら出てくるし、クイズ問題作成だって検索を使っているだろう。

あれだと課題解決能力は身につかない。失われた20年の間、エリート層は余り課題を解決できなかった。いまも20年前に起きた変化の実相をうまくつかめないでいる。そろそろ、失われた30年になる。

言いたいことは、簡単。情報が大事な時代になった。情報でできたものは、書き換えられる。 情報はとても 相対的 であり ダイナミック である。情報が情報として認識されるのは 人間が存在することがとても大きな要因になっている。ぼくたちは、ぼくたちのためにならない情報を書き換えることができる。だから積極的に書き換えていこう。それだけ。

WELQのくそハックはコンテンツ流通に季節の変わり目が来たしるし

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WELQの件はコンピュータが意味的(セマンティック)な部分を理解できるか、という部分が問われている気がします。現状はそのコンテンツが正しいかどうかを読めない。Googleは騙されました。

少し前にGoogle翻訳ニューラルネットワークが、英日、英韓の相互翻訳をマスターしたら、ひとりでに日韓の相互翻訳もできるようになり、もしかして、セマンティックな部分まで理解し始めたんかいな、と話題になりました。

だから、意味の理解が進むとGoogleが「この記事クソだな」と「考えて」、マズいものの検索結果を下方に落とすことができるかもしれません。もしかしたら、悪い記事が排除され、いい記事だけに出会えるようになるかもしれません。

何を持って良いとするか

しかし、ここで問題があります。記事の質の評価をどう下せばいいのでしょうか。世界には多様な考えがあり、どれが一番優れているかを判別する方法はありません。多様性と確実性がトレードオフなっています。

ちょっとSFじみてますが、数十年後にすごい機械知能が現れて、いまの司法が担っている役割をテイクオーバーできたらいいかもしれません。エヴァンゲリオンに出てくるマギコンピュータみたいな感じでしょうか。コンテンツディストリビューション専用のそれがあって、情報爆発の面倒を見て、いい情報に会いやすくする。Embed Intelligenceやパーソナルアシスタントがそういう役割を担うことになるかもしれません。

情報は偏在している

ただし、現状の機械知能は「考える」という部分に達していないことに留意したいです。人間が設定した課題、問に対して答えを出す存在でして、不確実性が増えると効果的ではなくなります。

社会がWELQが悪質だと判断できたのは「肩こりが霊の仕業」というような異常値を優れたライターたちが検知したところが発端です。そこから、コピペなどの著作権の問題や富岡製糸場のような製作体制などのインモラル性が分かってきて、これは問題だ、となっています。いわゆる倫理を持って、WELQに厳しいジャッジを下したわけです。

これはGoogleが手を下さない部分です。人間社会では情報は驚くほど偏在しています。隠されたり、埋もれたりしているそれを見つけるのは、伝統的かつ効果的な情報産業の手法だと思います。週刊文春です。

それでも、少しずつ、機械知能がセマンティックな部分を理解するときに備えないといけません。機械知能が情報を拾い出して、組み合わせてわれわれに提供するときはそんな遠くありません。


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機械はメディア産業のマニュアルレイバーの一部を自動化できます。そこで働く人の能力を拡張できます。人によっては成果を数倍、数十倍に拡張できます。

これはメディア人の仕事を高度化させていくことになります。情報の収集だったり選定の部分を機械化し、その上でメタの情報を生み出すことにニーズが生じると思います。やっぱりぼくたちも機械知能を操れないといけない。

Googleは評判に基づくオーサーランクを導入し、被リンクを外すと2014年に言っていたようです。その方針が貫かれていたとしたら、今回のは抜け穴を作られたと言うことでしょう。

インターネットはロングテールを許容します。それは古い世界では起き得ないことで画期的です。ただし、概してロングテールは玉石混交の度合いが大きいです。今回のWELQは石の部分が玉を完全に圧倒した例だと思います。いわゆる「悪貨が良貨」を駆逐するということです。

くそハックから新しいハックを

しかし、WELQのGoogleくそハックはかなり学ぶことが多いです。WELQのような労働集約性とクリエイティビティのない記事製作方法がメインストリームをとっていたら、人々はどんどん賢くなくなっていくと思います。なぜ、こういう記事が人気を集めるに至ったのかは、いわゆる鶏と卵です。でも、メディアと教育を現代化できれば、現状の問題は解決できるのではないかと思うのです。

先の記事で、オーサーランクはレピュテーションに基づいてつくられると説明されています。大きすぎず小さすぎないニッチな空間では、レピュテーションはワークすると信じています。現状のシステムをいい方向にハックすればいいだけです。生まれるものは、たぶんもうメディアと呼ぶべきものではないだろうなと思いますが。

新しいコンテンツ流通に沿う新しいメーカーが生まれる季節が来たかもしれません。

photo by pixabay

 

 

 

キャズムを越えるためにもっとハイプしよう

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Hype energy drink / via Wikkimedia commons

Recodeのこの記事は、偽ニュースならぬ偽テックがあると主張している。謎に満ちたVR/ARスタートアップのMagic Leapは14億ドルを調達しているが、The Informationによると「オーバーマーケティング」だと言う話であり、どうやらニュージランドの特殊映像企業がデモを作成していて、本当はプロダクト製作は思わしくないといううわさがある。

記事は過剰なレベルのハイプに注意を促していて、ごもっともだ。ただ日本はもっとハイプした方がいいと思う。

米国のハイプ・サイクル(Hype Cycle)は以下のような形(だと言われている)。

 

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Hype cycle(via Gartner/Wikkimediacommons)

 何らかのプロダクト/領域に対し期待が注がれ、やがてそれが山と谷を超えて、普通のレベルに達する。ハイプがあるから皆がそこに殺到し、いわゆる「キャズム」を越えることができる。

日本の場合、レイトマジョリティが本当に巨大な多数派を形成しており、ハイプされないので、なかなかキャズムを越えない。日本でされるハイプの一部には、例のソフトバンクのARM買収での「垂直統合型」報道とかみたいに妙だなーと思うものが多い。

日本の社会から、以下の二つをどうにかして緩和したい。

  1. リスク回避傾向
  2. 他人の失敗を全員であげつらう傾向

で、ハイプはある程度、この傾向に挑戦できると思う。ハイプしたり高い目標を掲げたりすることで、ゆったりとしたレイトマジョリティを動かせると思う。「お前ハイプに乗っかっただろ」とパブリッシャーも責められるけど、そもそもこの世の中に正しいと証明されている情報は(たぶん)ない。

あまりに権威に従うようにプログラムされすぎているから、誤報とか偏向報道とかいう言葉を肴に一杯やれるわけだ。

情報は流動性とダイナミズムそのものだ。ハイプにはいい部分もある。

 

 

宝探しのためにアメとムチに鈍感になろう

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Carrot And Stick Incentives Lead Manage | Free to use under … | Flickr

ポール・グラハム『ハッカーと画家』をバラバラっと読んでいる。

私の知り合いには学校時代にオタク(nerd)だった人がたくさんいるが、皆同じ話をする。賢いこととオタクであることの間には極めて強い相関があり、オタクであることと人気者であることの間にはもっと強い負の相関があるというものだ。賢いとむしろ不人気者になるみたいなんだ。

これで、ふと8月に合コンに参加したことを思い出した。今後、人生で「合コン」とパッケージされたものには行かないだろうが、合コンに参加することにはまあまあ学びがあって、そのうちの1つが、この負の相関性に関することだ。

その合コンはフォーマルな業界で働く女性とされた。このブログのポストを観てもらえばわかるが、私はフォーマルな業界で働く女性たちのニーズに全くかなっていない。この合コンとは関係なく、何度となく、まあまあ「やばいやつ」と認定されたことがあり、それ以降はあんま入り組んだ話はしないようにしている。

相手は自分と同じお年頃の人で、結婚を真剣に考えている(ぼくは同じ年頃の女性が結婚を真剣に考えているという『常識』すら知らなかった-ヤバイ)。彼女たちは結婚相手の条件をつくっていて、男たちがそれに合致しているかを測っているようだった。

男は常に女性にモテたいと思っているので、合コンを繰り返していくと、モテるために、女性のつくる条件に対して自分なりの最適化を試みるだろう。心理学の「強化」のプロセスを経ることになる。

強化 - Wikipedia

心理学用語において強化とは条件づけの学習の際に、刺激と反応を結びつける手段または、それによって結びつきが強まる働きの事である。広義には報酬、罰などの強化子の事もさす。

向かう方向が正しければ、強化は相当いいプロセスだ。自分に与えられる刺激(報酬or罰)に従っていれば、どんどん研鑽を積み、実力をつけていくことだろう。

ただし、アメとムチが良い目標に対して設定されていないとマズいことになる。殺人に報酬が与えられたら、殺人鬼が育ってしまう感じになる。

大きな目標を立てて、それを実現したいと思うなら、小さな報酬にこだわる必要はない。 たとえそれが短期的にとても美味しい果実のように見えても。 どんなに 厳しい状況 例えば 砂漠やジャングルや宇宙空間を横切るようなことも 自分が 実現したいことのためなら 厭わない。

必ずしも合コンでモテる必要はない。恋愛は考えようによっては「35億人から1人を見つければいいゲーム」だから。

(参考)

燃焼率改 「インセンティブ 自分と世界をうまく動かす」要約