デジタルエコノミー研究所

”経済紙のNetflix”を作っている起業家の日記

デジタル経済Newsまとめ_6/27朝

f:id:taxi-yoshida:20170627091119j:image

  • Ethereumネットワークはすでに小国の総消費電力をしのいでいる
  • Spotifyの「スポンサード音楽」がヒット。ミュージシャンの収益化に寄与しそう。
  • Ethereumのビタリック・ブテリン死亡のうわさ、本人が否定◁価格暴落でアンチがデマを流している模様
  • 欧米金融機関のブロックチェーン連合Digital Trade Chain ConsortiumがIBMブロックチェーンテクノロジーを採用◁とても伝統的な両者。かなり怪しい予感。
  • IMFが金融機関に暗号通貨への投資を急ぐよう訴える◁水と油のはずだが。
  • AIでクラッカー対策が可能。

子どもには最初に英語を学習させてあげよう

サイエンス、テクノロジー周辺を紹介してくれるアメリカのパブリッシャの動画を見つけました。10代前半〜後半をターゲットにしているせいか、難しい言葉は余り出てこないのでついていけています。

工夫が凝らされているので面白く、集中力が持つ数分で終わるのですが、数珠つなぎで見ていくとかなりの量を学習できます。視聴数やサブスクリプション数を見ている限りこれは持続可能なビジネスになっているでしょう。C Channelやデリッシュキッチンに代表される、いわゆる流行りの動画制作スタジオ。流通はプラットフォームに任せ、流通経路に最適化したデジタル動画を制作するノウハウに長けています。

www.youtube.com

私の学生時代を通じた特徴は、講義のときに脳みそが死んでいたということです。日本の学習はなぜか暗記能力に力強くフォーカスしていますので、どうも眠くなるのです。

これで思ったのは、子どもたちの学習のコツは、どれだけ早く英語を入れて、スピードレーンやさまざまな学習機会に触れることではないかと思い始めました。日本語だけの世界ではなく、他の世界をも取り込むことができます。

日本が草だという非難ではなく、英語圏の市場がでかいため、発達しやすく、しかも日本は広範な分野でガラパゴス気味なので、ディズアドバンテージが広がっているかもしれない、そういう推測をしています。

英語さえ手にすれば子どもの機会が広がります。彼/彼女が保育園に落ちても日本死ね、とならずYou Tubeでむしろいい学習ができるかもしれません。


f:id:taxi-yoshida:20170626194318j:image

私の世代でも平均的な日本人には余り英語が備わっていません(私も超暗い大学生時代の途中で拙い英語を手に入れました)。英語や欧米圏の環境を得た日本人は、日本社会に余り馴染めないという悲劇があります。社会や学校や人々がさまざまな言語・文化・考え方を許容する多様性があってほしいと思います。

非英語・非ラテン語圏の言語をオススメします。あなたの考え方はより深く、広くなるでしょう。時間の感覚が独特で、超柔軟に変化させられるインドネシア語なんていかがでしょうか。

 

 

 

 

 

デジタル経済Newsまとめ_6/26朝

f:id:taxi-yoshida:20170626102050j:plain

 *Amazonは経済インフラを征服しようとしている[MotherBoard]

*世界中の人々にとってデジタルIDが必要[VentureBeat]

*Adam BackとEmin Gun Sirerが論争

*欧米金融機関も中華系金融商品無視できないThe Economist

SpaceX、ロケット2台発射成功[BusinessInsider]

Uber厄年[BusinessInsider]

 

 

デジタル経済Newsまとめ_6/24朝

f:id:taxi-yoshida:20170623194608p:plain

*テスラが音楽ストリーミング提供のため、音楽レーベルと交渉中[Recode]

Uber従業員が取締役会にカラニック氏復活を請願[Recode]

*【図解】Bitcoin Scalabilityに関する議論のタイムライン ~Bitcoin XTからUnlimited、Segwit2xまで〜[ビットコインニュース]◁◁ビットコインの状況を極めてわかりやすくまとめてあります。

Amazonは食品スーパーの「データ収集装置」を買った:今週のデジタルサマリー[DIGIDAY]

www.businessinsider.jp

*中国IT最大手テンセントのUX Managerジョナサンのキャリアに迫る!【前編】[グッドパッチブログ]◁◁色々なキャリアの築き方がある。

Photo Via CC

情報は自由になりたがり、自由になった情報は人間を自由にする

分散型アプリケーション構築プラットフォームであるEthereumのマイニングに利用できるグラボが品薄になっているようです。BitcoinのマイニングはASICがないとお話にならず、マイニングプールの開業・出資が絶対です。Ethereumのマイニングはまだそこまでえげつなくなっておらず、グラボでも日本の電気代でもペイするとのことです。

この出来事は特に新しさはないですが、興味深い味わいを感じました。「誰もがパワフルなコンピューティングパワーをもてる」ということです。

akiba-pc.watch.impress.co.jp

f:id:taxi-yoshida:20170623170218j:plain

YouTubeの将棋棋譜並べも面白いです。プロの手をハイスペックコンピューターに載せたelmoやPonanzaなどで検証していきます。プロとアマの間にあった情報格差が解消しており、プロがソフトを使わなければ、アマのほうが9×9の宇宙への理解が深くなってしまいます。

そう、elmoのおかげで素人の記譜解説を皆で見るスタイルも確立しつつあります。これは将棋知識の著しい民主化です。若手棋士は同じようにハイスペックコンピューターと将棋ソフトにより対局を検証しています。藤井聡太四段はおそらくその若さと才能に加えて将棋ソフトによる研究により、バイアスレスな探索を実現させています。ここでもコンピュータティングパワーへのアクセスが効いてきていますね。

余談ですがここに冷水を浴びせているのが一部棋戦のスポンサーである朝日新聞社です。 

www.bengo4.com

こういう権威主義は機能的ではありません。将棋の発展、賑わいを阻害しています。将棋連盟はクラウドファンディングを採用すればいいのではないでしょうか。そして棋譜はネット全公開にして、印刷する人からはフィーを徴収するという方が、ビジネス的にぴったりだと思います。

情報はフリー(自由・無料)になりたがります。

On the one hand information wants to be expensive, because it's so valuable. The right information in the right place just changes your life. On the other hand, information wants to be free, because the cost of getting it out is getting lower and lower all the time. So you have these two fighting against each other. 

コンピューティングパワーの拡大は私たちの能力の拡張を意味しています。私は必要性の失われた権威主義を目の当たりにすることがあります。人間をあらゆる制約から解き放ちたいです。もちろん人間の悪い部分を抑制しながら。

PS: 私にもハイスペックコンピュータを利用したメディア取材高度化のアイデアがあります。この「SmartNode」というプロジェクトに沿っています。将棋の棋譜の検証もしてみたいです。誰か使っていないハイスペックコンピュータがあったら届けてください(図々しい)。

 

デジタル経済Newsまとめ_6/23朝

 

f:id:taxi-yoshida:20170623082353j:plain

*広告最大手WPPAmazonのホールフーズ買収は広告事業を加速」[WSJ]。消費者の購買データの蓄積がますます進む。消費者との接点やリアルな流通拠点を増やすAmazon

*スナップが2億5000万ドルで地図・位置情報アプリ買収。ジオターゲティングの強化により喫緊の課題である広告収益拡大目指すとみられる。[Recode]。

*CNNが動画スタートアップを買収
CNNはグレートビックストーリー(Great Big Story)を買収ネクストViceと呼ばれる若者向け動画制作で知られる[Bloomberg]。

Facebookサブスクリプション機能提供を米メディアと交渉中[DIGIDAY]

*メルカリは、ジョン・ラーゲリンが執行役員Chief Business Officer(CBO)に就任すると共にマネジメントチームに参画することを発表[メルカリ]

Amazon、日本で独自の配送網を整備。個人事業者1万人囲い込み[日経]

昨夜ブログ執筆しました。

taxi-yoshida.hatenablog.com

あなたは「デジタルエコノミー」の世界でどう生き残るか

今回はなぜブログ名を「デジタルエコノミー研究所」にしたかについて、自分の考えを話そうと思いました。

私は2007~2008年の世界金融危機とその後の量的緩和で、従来型の経済学の多くが難しくなったと憶測していました。金融政策と財政政策のミックスは確かに世界をどん底に落とさないのには寄与したかもしれません。

しかし、世界経済の根幹にある金融システムの脆弱性が露わになりましたし、彼らがとてもセルフィッシュな設計を施されていることを、世界中の人たちは知ることになりました(日本人には分かっていない人が多いかもしれません。あんなおかしい投資信託を買うんですから)。

こんにちは、不確実の世界

現行の民主主義が選ぶリーダーはロビーイングに対して余りにも脆弱です。証券会社が銀行業を同時に行えるようにする(投資銀行と名乗れるようにする)法制を整えたのはビル・クリントンです。オバマは金融業界に鉄槌を下すと意気込みましたが、骨抜きにされました。トランプを大統領に選んだことを非難する論調はたくさんありますが、ヒラリーのバックグラウンドを考えると、彼女はビフォア2008年の世界に忠実な古いリーダーでしょう。変化は起こせなかったと僕は思います。

f:id:taxi-yoshida:20170529175056j:plain

トランプは分かりづらくて誰のコントロールも受け付けない不確実性の塊のような男です。彼が奇妙なナショナリズムなどに拘泥せず、カンフー映画の主人公のように古いものをぶっ壊すことを私は静かに望んでいます。

アフター金融危機の世界では行動経済学がその地位を高めました。より小さな粒が見えはじめました。その粒たちはそれぞれ多様で、頭痛がするほど複雑で、今のところ予測不可能な存在です。

破壊的な暗号通貨 / ブロックチェーン

金融危機以降の金融業界の変化は政府や大企業の中から出てきませんでした。起業家やベンチャーキャピタリスト、開発者と人々(People)の間から生まれたのです。それがフィンテックというバズワードや暗号通貨 / ブロックチェーンに代表されるものです。

フィンテックは既存の金融をアンバンドルしています。フィンテックスタートアップの存在は私たちに大きな気づきを与えてくれます。既存の金融機関や政府がとても非効率的な手段に固執していること、ユーザーを無視して設計をされていること、非効率性に寄生したビジネスが存在していることを教えてくれます。

天才サトシ・ナカモトがビットコインという新しい貨幣を創造する論文を出したのが2008年。ビットコインのネットワークが動きはじめたのが2009年です。もちろん金融危機と無関係ではありません。

ビットコイン、暗号通貨の歩みはフィアット(法定通貨)やそこに吸着している金融システムの代替物を求めるムーブメントの側面があると私は考えています。金融危機後の世界ではバンキング(金融機能)を個人の手に戻すことを目的としています。いま暗号通貨 / ブロックチェーン界隈で起きているさまざまな挑戦の中には、10年後20年後も生き残り、やがて巨大なプラットフォームになるものが含まれているでしょう。

暗号通貨の世界では新しい経済学が生まれています。それはCripto Economics(暗号経済学)です。従来の経済学のなかで有用な理論とプログラマーたちの独自の経済学の理解がとても興味深い形で融合しています。そこには金融政策や財政政策を行う政府のような存在はなく、より分散型のガバナンスを志向する人たちが寄り添っています。暗号通貨やスマートコントラクトを活用することで、いまの世界で私たちを苦しめる非効率性や中間者を排除できます。

f:id:taxi-yoshida:20170615175146j:plain

 コンピューティングと経済

高齢化する日本にいると見えづらい事実ですが、経済のあり方を加速的に変えているのはコンピューティングです。先に言及したピア・ツー・ピアのデジタルマネーであるビットコインも、それからフィンテックもコンピューティングにより金融という経済の血液のディストリビューションの仕方が改善されようとしています。

インターネットでさまざまなものがつながる中で、コンピューティングの力を、どんな人でもあらゆる場所で活用できるようになりました。モバイルは世界中を覆い尽くそうとしています。インドでは毎年1億人のペースでインターネット人口が増えています。長期的にはデバイスが消失していくはずです。デバイスが私たちの意識に上らず、ARやVRのようなもので我々はさまざまなアプリケーションを動かし、物事を実現していきます。

タクシー産業にネットとコンピューティングの力をもたらしたのがUberです(最近評判悪いですね)。宿泊産業にネットとコンピューティングの力をもたらしたのがAirbnbです。時価総額ランクの上位はもうそういう企業ばかりですし、今後もテイクオーバーは終わらないでしょう。

最も尖ったトレンドはもちろん、機械知能(MI)です。今回は人工知能と呼ばないようにしたいと思います。特徴量の抽出などを自ずから行うインテリジェンスは私たちの暮らしをそっくりそのまま変えてしまう可能性があります。世界が放出するデータをその場で処理し、すぐさまアクションを起こすというビジョン。「データのつくられるところ、学習されるところ、それが利用されるところを同じにする」という挑戦であり、人間から見ればいつでもどこでもコンピュータの力を簡単に利用できるということです。

f:id:taxi-yoshida:20170615181632j:plain

2008年は「古い経済」が死んだ年

将来の歴史の教科書をみれば、2008年は古い経済が破綻した年として記録されるでしょう。そしてその後のデジタルエコノミー、あるいはコンピューティングエコノミーが花開いた年になり、人々は大いなる非効率性を乗り越えたと記録されるでしょう。実際、中国では先進国よりかなり進んだデジタル経済の実践がみられます。東南アジア、インド、アフリカでも先進国をリープフロッグする種がまかれ、一部は大きな木になる兆しを見せています。

日本がそれに乗り遅れているし、今後もそうなら、国家にとらわれない個人になることが重要です。私はすべての人間がそういう個人になれると自信を持っています。デジタルエコノミーの世界では、我々は後10年程度で政府をまっさらなサービス、コンピュータプログラム、機械知能、ブロックチェーンに記されたスマートコントラクトに変えることができるはずです。あらゆるコストから解き放たれた世界で、私たちは本当の幸福の意味を追求する機会を手に入れるでしょう。

テクノロジーの超高速な進化を現実世界に当てはめていくことが重要な時代になります。私もこの人類史空前の大変化を分析者ではなく、実行者という形で関与していきたいと考えています。

f:id:taxi-yoshida:20170621081935j:image

 

 

デジタル経済Newsまとめ_6/22朝

自分がその朝までにチェックしたデジタル経済ニュースのまとめを公開します。忙しくない限りは平日は毎日更新します。もともと個人的な日課にしていたのですが、なら公開して会話が生まれたらいいなと思いました。誤りの指摘や改善の提案、食事会から何から何まで受け付けています。Twitterなどでご連絡くださいませ。

f:id:taxi-yoshida:20170621185330j:plain

*ウーバーのカラニックCEO辞任。投資家の圧力により[Recode]。

*Statusのクラウドセール:開始直後から1万件のトランザクション詰まり、キャンセルの嵐[Status]

総務省有識者会議「音声アシスタント」官民挙げて開発すべきという報告書[NHKニュース]◁◁有識者音声認識プラットフォームを「音声対話システム」「AIスピーカー」と呼ぶ時点で極めて悪い予感。

高度な機能を持つ音声対話システム 官民で開発を | NHKニュース

*日銀レポート:モバイル決済利用率は日本6%、米国5.3%、中国98.3%◁◁今後は東南アジア、アフリカにも突き放される可能性あり。
http://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psrb170620.htm/

*ATHENA BITCOINがLitecoinも取扱開始[ATHENA BITCOIN

Salesforce デジタルマーケティング・ビジネスユニット常務執行役員 笹俊文氏にインタビュー[DIGIDAY 吉田拓史]。昨年のSalesforceの総額50億ドル買収、AI on CRMとは何か。

*AOLプラットフォームズ・ジャパンは、2017年6月13日付で社名を「Oath Japan株式会社」に変更した[Marketzine]。
*データサイエンティスト勢のヒーロー、藤井四段28連勝 30年ぶり歴代最多の連勝記録に並ぶNHK

 

経営者よ、バーニングマンで燃えろ!

日本の経営者は従業員を罰したり「管理」したりするのが好き。経営者は概して報酬を渡すことを渋ったり新規投資の予定のないコストカットを好むので、従業員は働いているふりや、業務内容のくり抜き、ブラックボックス化に性を出すという悪循環が起きている。これが日本の生産性の低下、ROEの低さ、幸福度の低さ、国際競争力の低下のひとつの要因と考えられるかもしれない。大雑把な推論だがあながち間違いでもないだろう。

内閣府『賃金と物価・生産性の関係(国際比較)』はこう指摘する。

  • 諸外国では賃金上昇率が物価上昇率と同水準あるいはそれを上回る傾向
  • 日本だけ賃金の下落率が、消費者物価の下落率より大きく、労働生産性の伸び率よりも一人あたり雇用者報酬の伸び率が低い

 

f:id:taxi-yoshida:20170621101650p:plain

 

また、一年前のこのポストでも同様の議論をしている。「日本企業の多くは文句を言わない労働者の上にあぐらを書いて、ビジネスモデルの刷新、技術革新などをサボってきた。自動化を徹底的に行うことで格差社会自体が消失する」と私は指摘した。

taxi-yoshida.hatenablog.com

前近代農業のマインドセット

内部留保が390兆円に達したことはわかりやすいインディケーターだ。

jp.reuters.com

ギブアンドテイクが成り立たないので、経営者が持ち出す根性論に従う人はもういないだろう。仮に従業員から根性を引き出しても、自動化に簡単に追い越される。

マインドセットの変換が必要になる。しかし、日本のウォーターフォール型が長いとプログラムのようにアタマがカチカチになる。私は経営者とヒッピーと芸術家による「バーニングマン」みたいなイベントに皆で行って、砂漠で一カ月くらい物々交換しながら踊り暮らすことを提案したい。

f:id:taxi-yoshida:20170621101934j:plain

儒教権威主義に基いた「日本人」の特性が生きるのは1980年代まで。そもそも日本人だって一部の階層にとって都合のいい妄想だ。日本人と呼ばれる個人は、自分の損得に対して明確な態度をとらないといけない。それを押し殺しているからこそ経済全体や社会システムの改善を阻んでいる。

この記事で指摘される通り、人手不足にも関わらず平均賃金が上がらないのは、日本地域の謎だ。従業員を叩いて生き残る会社を存続させても余り意味がない。私たちは資本主義の世界を生きている。資本主義は時に正しい。

jp.reuters.com

テクノロジーはすでにあるし、ものすごい勢いでサイエンティストたちがそれを前に進めている。遅延しているのは人々の偏見だ。昔その偏見は評価されたかもしれないが、いまや足手まといだ。そんなガラクタをせっせと他の人や新規参入者にプログラムしようとしている仕組みには全く同意できない。

だからバーニングマンに行くのはとてもいい提案だと思います。燃えましょう。

f:id:taxi-yoshida:20170621104801j:plain

 

 

予測、群衆の叡智、ニューラルネット

先日とあるテック企業のカンファレンスに出席しました。人工知能を使って蓄積された顧客のデータから顧客の要望やコンタクトするべきタイミングなどを予測するというビジョンでした。

それを聞きながらGoogleのTGIFでのエピソードを思い出しました。Googleは検索結果を得られるまでの速度に恐ろしいほどの執着を見せていました。エンジニアがラリー・ページにこう聞いたといいます。「ねえ、ラリー、我々はどんどん検索速度を上げてきたけど、ゼロコンマ何秒(あるいはミリセカンド)で終着点なのかな?」。ラリーは「どうしてゼロコンマ何秒で終わりになるのか。マイナスを目指さないのか」と答えたと言います。つまり、ユーザーが咳き込んだら咳について検索することを前もって予測できる、というようなことです。

予測市場というものがあります。スポーツベッティングという賭けに類するものから、大統領選挙の2候補の模擬株式のようなものを発行して、選挙結果を予測するもの、会社の新商品を市場投入前にテストする場としてまで、さまざまな類例が存在します。

 

普通の人たちを予言者に変える 「予測市場」という新戦略―驚異の的中率がビジネスと社会を変革する

普通の人たちを予言者に変える 「予測市場」という新戦略―驚異の的中率がビジネスと社会を変革する

 

ギャンブルと同じ仕組みをもつ保険商品など応用分野が見込まれます。これは群衆の叡智という仮定されたメカニズムによっているのです。「みんなの意見は大体正しい」ということです。集合知とは少し違いますよ。

http://www.nature.com/news/the-power-of-prediction-markets-1.20820


f:id:taxi-yoshida:20170620183858j:image

ただ、ドナルド・トランプブレグジットはうまく予測できなかったのですが。Poll(世論調査)と予測市場のどちらが精度が高いかという議論になっています。

人工知能時代の競馬のオッズ

競馬のオッズはとても興味深く、比較的1番人気の正答率は高いと言います。オッズは支持率をひっくり返したもので、低ければ低いほど群衆による支持が高いことを意味します。18頭フルゲートでたっぷりとしたお金が注ぎ込まれる大レースのオッズの動き方は極めて興味があります。割安が指摘されていた銘柄がじわじわオッズを下げていったり、かなり確実と思われる1番人気の単勝オッズが2.0倍を目指して下降し、1.9, 1.8, 1.7...と重たそうに刻む様子も興味深いです。

より正確に勝つ馬を予測できるようになるから、1番人気の倍率が1.0倍に近づいて行くことになるかもしれません。予想された、誰もが疑わないものが予測不能なものに覆される瞬間を狙うのが勝ち方になるかもしれない。

競馬は20~30%程度を胴元が持っていくため、普通にやったら勝てません。だから、この胴元がいない競馬を生み出す方が、奇跡を起こそうとするよりいいのです。運営費のための手数料だけなら遥かに少なくて済みます。Ethereumの予測市場プロジェクトであるAugerやGnosisはぶっちゃけるとそういうことです。
f:id:taxi-yoshida:20170618224811j:image

すべてをゲームにしてしまおう

パラメータが手に入り、目的を設定できるのなら、深層強化学習が応用可能になりえます。現実世界で起きていることをゲームっぽく切り出せれば、与えられた情報から予測を試み、その精度を上げていくマシンを生み出せるのはないのでしょうか。

現実世界をゲームとして切り出すテクニックが、モデルが有用かどうかを確定しそうです。何しろディープラーニングやその他の学習方法は日進月歩で発展しています。

 

▼複雑なパックマンで人間のスコア超えを達成したMaluuba

https://twitter.com/MaluubaInc/status/874977770253815809

▼DeepmindのAGIへの次の一歩

https://www.technologyreview.com/s/608108/forget-alphago-deepminds-has-a-more-interesting-step-towards-general-ai/

 

日本の若者の冒険先はアジアデジタル経済に決まり

この若者にアジアに挑戦することを訴える記事は胸熱です。アジアには完成していない、今この瞬間にできあがっているものたちがたくさんあります。加えて私は週末にインドネシア人の友人と再会しました。友人がもってきたアジアの話は本当に面白かったです。当時の風景、肌感覚、そして心の持ち用が思い出されました。

自分が高齢化し、ぬるま湯に慣れきった日本に染まってしまっているのを感じます。あの頃の爆発的なエネルギーをもう一度思い出すタイミングが来ている気がします。

www.wantedly.com

私は大学を卒業して2010~2015年にインドネシアでジャーナリストとリサーチャーを同時にやっていました。「失われた30年」の多くを日本で過ごしてきた私としては、地域で沸騰する熱気は、味わったことのない鮮烈さでした。一定数の日本の独立した若い人たちが来ていて、起業をしていました。彼らは日本にいる若者とは打って変わってハングリーでやる気に満ちていました。ゴルフとカラオケばかりの駐在のおじさんやショッピングとグルーピングの駐在のおばさんとはぜんぜん違うわけです。

起業がしたくて、自分の考えるビジネスをスタートするのに適している日本に帰ってきました。紆余曲折あり、ジャカルタからバンコクに移る選択肢もありましたが、DIGIDAY[日本版]の立ち上げとその後の拡大に関わっているのは良かったと思います。

taxi-yoshida.hatenablog.com

Bain&Companyは昨年、東南アジアのネット接続人口が50%成長し2億人を超え、デジタル経済は500億ドルに達したと算定しました。Googleとテマセクのリサーチは2025年に東南アジアのインターネット経済が2000億ドルに達すると予想しました。

www.bain.com

taxi-yoshida.hatenablog.com

今後の日本発ビジネスはすべからくアジアにどう広がるかが問われるはずです。私が大学卒業後に取ったリスクが今後の人生に生きてくるはずですし、それをむざむざ寝かしておいて、世界の巨大な変化に関与できない事態は避けたいでしょう。

日本に帰ってくる前にフィリピンと東ティモールを除いた東南アジアと、中国、インドをバックパッカーをしました。

f:id:taxi-yoshida:20170619111848j:plain

ラオスから中国国境に向かうバスの中(2015年3月)

f:id:taxi-yoshida:20170619112313j:plain

インド、ムンバイの仏教徒の集落で記念撮影(2015年4月)

新しいものを作ってやるという強い意気込みと、巡ったすべての国に今度は自分自身のビジネスを携えて戻ってくると野心を持っていました。それは今でも変わりません。やっと日本でも既存の仕組みの崩壊が始まり私のようなタイプの人間を許容する感じは見受けられます。

中国、インド、東南アジアの急成長するデジタルエコノミーは楽しいとしか言いようがありません。ずっと変わらない志を抱き続けたいです。若い人が活躍する場はアジアという大きなフィールドなのです。

f:id:taxi-yoshida:20170619114431p:plain

 

 

長期的な利益を生むアクションは感情と知性のミックスによりもたらされる

私たちの感情は思考においてさまざまなバイアスを生み出します。感情は誤った意思決定を下す主要な要因です。金融市場が乱高下するとそのたびに私たちは一喜一憂します。感情が優先され、感情を基に論理が形作られ、それが群衆を伝うとそれは根拠なき神話になります。

長期的に見ると感情的な判断が素晴らしい結果をもたらさなくとも、人間はsystem1(感情的クイックな思考)に拘泥してsystem2(合理的なより足の長い思考)に移行することに失敗します。

 

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
 

 

私は重要な意思決定の場においては、感情を出来るだけ取り除くように自分を訓練してきました。なぜなら自分がとても感情的な人間だと知っていて、そのせいで長期的な利益を失うことを繰り返して来たためです。

感情によるアクションの利点

感情はときに速い意思決定を促してくれます。ぼくは将棋や麻雀が好きなので、モンテカルロ木探索のような推論を無意識に繰り返して意思決定する傾向があります。条件が狭まる、つまり完全情報ゲームに近づいて来ると、このやり方の勝率は高まってきます。

 

しかし、世界は目眩がするほど複雑です。とにかく試行回数を増やすことが求められる状況、あるいは何をしてもプラスばかりに転ぶ「ボーナスゲーム」的な状況においては、感情に委ねて意思決定を速くしてムーブファストになることは一理あります。つまり、感情の取捨はゲームの特性に依存します。
f:id:taxi-yoshida:20170618190400j:image

一方で長期的なビジョンを研ぎすませるだけでかなり優位性を発揮できることが往々にしてあります。たとえば、長期的で破壊的なトレンドに投資することは利益が大きいでしょう。私はAI / IoTが長期的なトレンドとして世界を変えると確信しています。そのトレンドに対して学習なりポジションづくりなりで自分なりの投資をしています。

大半のプレイヤーがこの分野への注力が少なすぎるか、生半可で消え去っていくでしょう。何故かわかりませんが、長期的なトレンドを確信でき、アクションするプレイヤーとそうでないプレイヤーに別れるのです。常に淘汰されるグループを生み出すというのは、人間のDNAの知恵なのでしょうか(私はネオダーウィニズムではないです)。

ここでモチベーションといファクターが浮かび上がります。感情に基づく意思決定にはモチベーションが付随しやすいです。自分の心のステートやそのステートが生み出したストーリーがモチベーションを焚き付けてくれます。しかし、合理的な判断を繰り返したり、キープしたりするのは、モチベーションを保つのが大変です。意図的に心のダイナミクスと決断を分離することで、燃えなくしているので、何かを生み出そうというエネルギーがわかなくなります。

ファストアンドスロー

速い思考と遅い思考を組み合わせることに一理あります。

私たちは常に感情による意思決定と合理的な意思決定をする2つのモデルを動かし続けなくていけません。しかも直面する状況は常に変化し続けますから、実際には2つ以上細やかなモデルを無意識ながらに活用していくことになります。これは相当苦しいですが、正しいビジョンに対して汗をかいていると何処かで、ブレークスルーが起きるはずです。子供らしさと老獪さを合わせ持つモデルになりたいところですね。

 

自分の常識の外にある新しい世界を常に獲得する:映画『メッセンジャー』感想

映画『メッセンジャー(原題Arrival)』を観賞しました。本筋とは異なりますが「異なる言語を習得することは、新しい世界を獲得すること」に類するセリフがあり感動しました。拙い英語と冗長なインドネシア語を話すぼくは、そのふたつの習得の過程で自分が変わるのを感じたからです。

f:id:taxi-yoshida:20170616191425j:plain

知識量により人間は見える風景が変わっていくと思います。それは単純にいい点だけがあるかというと、そうでもなく悪い点もあるはずです。

羽生善治三冠は七冠王になった後にスランプに陥りました。知識量が増えすぎたせいで踏み込めなくなったと語っていたと思います。知識をヤフー検索のようにディレクトリ型で溜め込んでいくのは望ましくないはずです。暗記マシンの価値は急落しています。だから知識が増えていくことで現れる悪さをいい感じに和らげながら生涯学習を続けて行けばいいと思います。ガラクタモデルでストップしている大人にはなりたくないのです。

戦略性と対話

映画では突如来訪した異星人に敵対的なアプローチをとる軍人と、相手を知ろうとする言語学者の主人公が対比的に描かれています。

f:id:taxi-yoshida:20170616192548j:plain

中国の軍人が麻雀牌でコミュニケーションを取ろうとしていることを知った彼女は、麻雀の敵対する四者間のゼロサムゲームという特性から、異星人と中国の関係が敵対、妥協だけの関係に落とし込まれると指摘します。主人公は異星人とゆっくりとお互いの言語を交換し、コミュニケーションを築いて彼らの意図を知ることになります。これも心を打たれました。

DIGIDAYの私の記事を読めばわかりますが、ビジネス上の戦略をテーマにしたものやプレイヤー間の戦略をめぐるインサイトなどがテーマです。記事だけでなくあらゆる局面で私は戦略性に絡まれています。人間は不必要なほどに戦略性をもった関係を築きます。そして遺伝子が生まれもった利己的な特性や、その利己的な特性を増長する組織やシステムのあり方のせいで、ときに不快な存在です。だからこそ彼女の対話のアプローチが素晴らしいと思いました。

f:id:taxi-yoshida:20170616192730j:plain

定期的に当然を覆す

彼女は異星人たちが持つ、人間とは完璧に異なる時間の感覚を手に入れます。彼女はつながっている時間として、人間が未来と考えている光景を体感することができます。異星人という人間ではない存在を置くことで、私たちが当然と思っていることが覆りそうになる、そういう体験こそ知識量の増加をポジティブに活かすためのコツではないでしょうか。

 

 

 

VALU試してみた。評価経済のテストも、偽装者の楽園をどう直す?

f:id:taxi-yoshida:20170614101618j:plain

話題になっているVALUを早速始めてみて、自分のVALU株式を発行しました。めちゃくちゃ安いので、冗談半分に買ってくれたらうれしいです。ぼくは自社株買いはしません。

valu.is

で、つかっている感想を話したいと思います。個人のインターネット上の評価を貨幣的に扱う試みは「最初の一歩」として面白いと思いました。しかし、評価を貨幣化するロジックが単純すぎであり、自身の評判(Reptation)を実力以上に見せることに成功しているタイプの人たちのパラダイスになっている気もします。

ネット上の身元証明の勝利

まず肯定的な部分について話しましょう。いまやFacebook認証などを使うと、サイトやアプリごとの個人情報登録を省くことができて、かなり便利です。個々人がIdentification(身分証明)の管理をプラットフォームに委託している形です。これを友だちという形でネットワークにしておくことで、お互いにその人だと確認し合っていることになり、身元証明の確実性を高めています。

役所に置いてある身元証明が余り融通が効かないため、ネット上の身元証明は今後リアル世界の認証をテイクオーバーしていくでしょう。重要なのは身元証明を他人に乗っ取られないようセキュアにすることです。生体認証のプロトコルの策定が進んでいたり、デバイスの使い方の傾向などから本人かどうか確かめる手段を提供するAPIが作られています。

オープンな個人データの有用性

最近はFacebookで友だち申請した後、私の目の前ですぐさま調べて「ああ、あなたはこういう仕事しているのね」「この人と友だちなんですね」と確かめる人がいます(余りいい気がしません)。そもそも会う前からFacebookやブログやなんやら調べ上げられているのも常態化していると感じています。私はかなりユニークなタイプなので、こっちの方が手っ取り早くていいなと考えています。平均点をとる気のない人を許容できる人と会いたいです。

Facebookは自身のサービスを通じてユーザのデータを収集しており、同時にIdentifier(識別子)を通じてあらゆるデバイスをまたいだユーザ行動をも手中に収めています。

だから身元証明とそれにまつわるデータを広告という形でマネタイズできるのです。彼らの広告事業はとても成功しています。ただ、最近のAI / IoTの発達を見ていると、今後のコンシューマーインターネットのビジネスモデルの着地点は広告ではないかもしれないと感じます。

誰がIDを握るのが一番いい?

誰が身元証明を握り、運用すればいいか。GoogleFacebookが100%善意のプレイヤーであればまあそれでいいでしょう。でも、その仮定が働かないときどうすれば良いのだろうか? VALUでは仕組みが不完全ながら自身の株式を発行することができます。身元証明を自分の手の上に引き戻そうとしているふうに感じられます。

ハックされやすい評判

Reputation(評判)はハックされやすいでしょう。Google検索はフェイクニュース量産サイトや信頼性の低い医療系サイトを上位にランクしました。

www.j-cast.com

VALUの参加者のスコアリングはかなり大雑把かもしれません。Facebookの友だち数やTwitterフォロワー数が時価総額に大きく影響しているようですし、自社株買いが有効です。でもこれらはお金をかけたりすればハックできます。

結論:テストケースとして面白い

VALUは一般層に気づきを与えていると思います。自分自身に価値があり、その価値に対して投資してもらうことができるということです。こういう気づきが行き渡れば、ブラック企業で働く人はいなくなると思います。

昭和の投資術が最適:暗号通貨のバリュー投資

f:id:taxi-yoshida:20170612160010j:plain

暗号通過に関してこういうツイッターがありました。

これで思いついたのは、暗号通貨はバリュー投資がワークするよなという推測です。バリュー投資はウォーレン・バフェットが長い間採用する投資手法として有名です。

 

億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術

億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術

 

 

私の仮説は以下の通りです。

ある程度パフォーマンスを把握できる暗号通貨に対しては、Hodl(ホールドの意)する「ロイヤルユーザー」がつきやすい。そこにレイトマジョリティの新規ユーザーが加わる形で、長期的な価値上昇を期待できます。パフォーマンスを理解しないギャンブラーが集まる銘柄はボラティリティが激しく、ババ抜きになりがちです。

実際昨年から今年にかけてBitcoin, Ethereumは続伸しています。Rippleはどうなったでしょうか。しっかり研究していると群衆に対して相当情報優位に立てるのが、いまの暗号通貨市場です。GWから流入した日本の投機家は、5月中旬の暴落でかなり損を出したはずです。

バリュー投資自体は枯れた手法です。金融工学が発展しトレードのロジックは複雑化を極めています。市場に生まれた価格差を一瞬でなくしてしまうアルゴリズム、一見何者かよくわからないほど複雑なデリバティブ。複雑なものたちが、複雑なものを売り買いしています。

www.nikkei.com

しかし、暗号通貨はかなり難しいので、他人が見抜いていない価値を見つけることが容易です。価格の歪みを発見しやすいでしょう。私にとってはビットコインゲーム理論上の課題を解決している部分は興味深く、最近は勉強量を増やして技術面に詳しくなろうとしています。そうすればより勝ちやすくなるでしょう。

ただし、バリュー投資の敵もあります。それは暗号通貨市場では超不合理な投機家たちが、市場の効率性を大いに損ねているところです。バリューが必ずしも正しく評価されるかわかりません。でも、長期的に見れば、賢者は勝ちやすい、そういう単純な造りの部分が暗号通貨市場に残っていると信じます。